No.24 介添人
おや、レイカの様子が…。
BBBBBBBBBBB!!
「ごめんなさい、脅かす気はなかったの。アダムと一緒に散歩をしていたら銃声が聞こえて思わずこちらに来てしまったの」
確かに事情も知らない人が銃声を聞いたらそうなるだろう。
「シュン君、大丈夫?怪我をしているのね。どうしてこんな事に?」
「俺は大丈夫ですから。それよりメイさんの方が重傷なんです。申し訳ないんですが、一緒に寮まで運んでもらえますか?」
その言葉にメイさんの存在に気づいたのかそちらに向かっている。
レイカさんを見つめていると、イブさんの時と服装が変わったのか黒のスカートにブラウス、矛盾するが黒の白衣を着ている。
そのあと、レイカさんはメイさんを見つめている。
しかし、その目は何故か冷たい。
俺とメイさんでは見る目が違っていた、何故だろうか?
「この森には2人しかいないはずよね?なら、お互い傷つけ合ったって事でしょ?やっぱりペルケレ先生の教育は信用できないわね。こんなんだから悪い生徒が生まれるのよ。でも、よかったわ。重傷だし、もうすぐ死ぬわね。アダム、顕現して。このままにしておいたらシュン君が傷つくだけだもの」
その言葉に冷や汗が出た。
レイカさんは俺の為にメイさんを殺そうとしているのか?
咄嗟に彼女達の間に入り、レイカさんの腕を掴む。
手には警棒が握られていた。
「レイカさんやめてくれ!!違うんだ!!俺はメイさんを助けて欲しいって言ったんだ!!」
「どうしてメイちゃんを助けないといけないの?だってもう用済みなのよ?主人の力にもならない。このまま野放しにしていたらシュンだけじゃない、カンナや在校生のお友達が傷付く事になるのよ?…もしかしてシュン君は悪い子なのかしら?」
ダメだ、このままでは拉致が開かない。
レイカさんの過剰な正義感。
その歪んだ思考を正すには時間がかかるようだ。
「シュン、お前は逃げろ。あたしはこいつと一緒にいる。お前があたしを構えば、間違いなく0はお前を殺しにいくぞ!!」
「ダメだそんな事、俺は…」
そんな時、カンナさんの顔を思い出した。
もしこのままレイカさんと戦って彼女を傷つけてしまったらカンナさんは悲しむかもしれない。
ハロウィンの時、涙を流しながら再会した母娘を見た俺はどうする事も出来なかった。
何も出来ずにいると、手に警棒を振り下ろされショットガンを奪われる。
「えっと、これってどうやって使うのかしら?警棒ってね、殺傷能力がないからこう言う時困るのよね。どうしたらいい?シュン君」
そう笑って言う彼女は余りにも悍ましく人間なんてもんじゃない、人間の形をした「化け物」と言った方がしっくりくるぐらい恐ろしかった。
「0、銃の下にあるフォアエンドを前後に動かせ。それであたしの心に銃声を響かせろ。いいな?」
「ありがとう、メイちゃん。とてもいい子ね。心、そうね心臓かしら?それともコッチの方がいいかしら?私もね、とっても痛かったのよ。脳がぐちゃぐちゃになるぐらいね。コッチの方が確実に死ぬわね。大丈夫、保証するわ」
と頭にショットガンを頭に打ち付けている。
「隼、戻れ!!」
「あら、残念。やっぱり2人揃って悪い子ね。じゃあ、コッチにするわ。拳銃はどうやって使うの?」
とメイさんが握る拳銃を奪う。懲りない人だ。
「シュン、これでわかっただろ?カードに書いたあたしの願いが。こいつなんかにあたしを殺させるな!!…どうせなら唯一のライバルとの戦いで死なせてくれお願いだから」
「嫌だ!メイさん、俺はずっと貴方と一緒に戦いたいんだ。これからもずっと。もっと色々な事を教えてくれ、お願いだからそんな事を言わないでくれ」
そんな願いも虚しく、レイカさんは俺達の会話に興味もないのか拳銃を動かしている。
そんな彼女に嫌気がさし、拳銃を奪い取りショットガンの銃口をメイさんに向ける。
「レイカさん、これはメイさんの銃だ。主の元に返す。俺がメイさんの心臓に銃声を響かせる。これでいいな」
「まぁ、ありがとう。とても助かるわ」
余りにも軽い返事に反吐が出る。
全て彼女の掌で転がされているのがとても悔しい。
「シュン、お前はあたしのライバルだ。もっと強くなれる。こんな奴に負けるな、あと仲間は大事にしなよ。喧嘩しても最後は仲直りするんだよ」
「…メイさんは母さんみたいな事を言うんだな。わかった、その言葉忘れないから」
「I’m deaf. So,make a gunshot in my herat」
(あたしは耳が聞こえないの。だから、あたしの心臓に銃声を響かせて)
「パァン!!」
その銃声で全てが終わった。
銃を下ろし、泣きながらメイさんを抱きしめる。
どうして大切な人はいつも突然居なくなってしまうんだろう。
そんな事を考えていると「化け物」が俺の肩を優しく叩いた。
「シュン君はとても良い子ね。よく出来ました。伯父さんとは違うのね。将来有望ね、これからが楽しみだわ」
「…は?何で知ってるんだ伯父さんの事」
「だってお願いしたんだもの。外にいる私の仲間達に悪い大人を殺して欲しいって。貴方の伯父さんも一緒だもの、だから殺したの。わかる?シュン君」
その言葉に頭が真っ白になった。
俺の大切な2人はこの化け物の手によって奪われたのだ。
一気に涙が引き、何か彼女しなければいけないと言う気持ちになったが何も出来なかった。
「そういえば、カンナに渡してくれた?あのペンダント」
「…いや、まだ」
「まぁ、そんなものよね。私が直接渡した方がいいかしら?」
上着にペンダントを入れているが、その写真を思い出し憎悪が溢れてきた。
俺の大切な人を奪っておきながら、家族と共に笑う彼女に負の感情を抱かざる終えない。
今までの言葉も嘘偽りではないものの、違う捉え方や彼女の考えがあったのではないかと勘繰ってしまう。
それを考えるとカンナさんはレイカさんや理事長と一番深く関わっている人物なのだから、俺の敵である可能性が高い。
ずっと仲間だと思っていた自分が悔しい。
でも信じたいという気持ちもあるから優柔不断で宙ぶらりんの状態だ。
カンナさんの言葉を確かめる他ないだろう。
「…いえ、これは自分で渡します。丁度話したい事もありますし」
「わかったわ。じゃあ、くまさんに食べられちゃう前にメイちゃんを移動させないとね。こう言う時は主人が頼りになるわね。任せておいて」
そのあと、理事長が来てメイさんを運んで行った。
俺には何も触れず一言「今日はもう帰りなさい」と言われ2人と別れた。
メイさんの返り血がついている事を理事長は知らないはずがない。
しかし、やるべき事が残っていたので寮には戻らずペンダントを握りしめながらカンナさんのいるドラゴニクヴァルガン寮を目指した。
今日の内に渡しておきたかったのだ。
自分にけじめをつける為に。
カンナさんが俺の敵でも受け止めるつもりだった。
夜中なので人もおらず、一直線にカンナさんの部屋へと向かう。
部屋に入るにはカードキーが必要だが、カンナさんの部屋は少しだけ空いていた。
きっと、ミオンさんが看病していたからだろう。
出入りできるようになっていた。
ベットの近くに行くと、カンナさんは苦しそうにしながらも寝息とたてているようだった。
しかし、その姿にだんだん怒りと憎悪が湧いてきたのだ。
自分がこんな事になっているのに何故安らかに眠れるのかと。
あの化け物も大切な人を失えば俺の気持ちも理解できるのではないか?とそう思うようになってしまったのだ。
「…隼、顕現してくれ」
『坊っちゃん、何するんか!?』
銃を構えた時、カンナさんが目を覚ました。
「シュン君?メイさんは?」
「メイさんは死んだんだ。もういない」
その言葉にカンナさんは起き上がり銃口を自分の方へと引っ張っている。
「シュン君がメイさんの事を大切に思っているのは知ってる。シュン君は何も悪くないんだよ。全部私のせいにしていい。私を殺したいなら殺していい。シュン君にはその権利があるから」
真っ直ぐ向けられたその瞳に嘘偽りはなかった。
それでわかったのだ、俺はカンナさんの言葉を信じていいと。
涙を流し、思わずカンナさんに抱きついてしまった。
「シュン君、よく頑張ったね」
カンナさんはカンナさんだ。あの化け物じゃない。
声も瞳も違う。それだけで安心感があった。
それに、カンナさんは一緒に泣いてくれるのだ。
あの化け物とは違う。
そのあと、血だらけになってしまったがペンダントを渡した。
「…その。カンナさんは自分の両親の事をどう思ってるんだ?」
「どうだろう?幼い頃からいなかったから余り思い出が無いんだよね。絵本を読んでもらった事はあるけど、お爺ちゃんとお婆ちゃんに育ててもらったのと一緒だし」
「そうだったのか…。あ、あのカンナさん!…もし、両親が俺達とは離れて自分達に協力しなさいと言われたらどうする?」
「私はお父さんの考えがよくわからないけれど。多分、自分の為じゃなくて誰かの為に行動に移す人だと思うの。ママを生き返らせるのは自分の為じゃない。誰かの為、それこそ私の為かもしれない。でも私はママの死を受け止めているし、バラバラになってしまった遺体を集めて供養したいなって思うぐらいかな?両親の気持ちを無視する事はできないかもしれないけど、自分の意見や気持ちを持つ事はできるし。今は守護者の皆さんもそうだしシュン君や皆んなを守る事が最優先だよ」
「ありがとうカンナさん。その、よくわかってなかったんだ。カンナさんの立場や気持ちが。多分これからも同じ事があると思う。そうなったら同じように言ってくれないか?俺を正しい方向に進ませて欲しい。大きな太陽のように道導になってほしいんだ」
「イヤイヤ、そんな大層な人間じゃないよ私!…でも、そう言うって事はシュン君は両親に会ったの?どこで?」
「…メイさんと戦っている時にレイカさんが現れたんだ。そしたら、レイカさんがメイさんを殺そうとした。悪い子、生徒と言ってな。なんと言うか、レイカさんは偏った思考、過剰な正義感と言った方がいいのかそう言うのを持ってるのかもしれない」
その言葉にカンナさんは目を見開き、動揺しているようだった。
そのはずだ、自分の母親がメイさんを追い詰めたのだから。
「ママが、嘘でしょ?…いや、そもそも私ママの事よく知らないんだ。幼い頃に居なくなったし、それっきりだった。ママがそんな危ない思考の持ち主だったなんて知らなかった。ずっと被害者だと思ってた、でも殺された可能性があるならそれ相当の理由があってもおかしくない。ママを恨んでる人がいてもおかしくないんだ」
と頭を抱えながら苦しそうに言う。
「…もしかして、ママがメイさんを殺したの?」
「いや、違う。嫌だったんだ、レイカさん…こんな奴にメイさんの命が奪われるのが。だから俺が撃ったんだ、メイさんの心臓に…」
その後、カンナさんは泣き出す。
そのあとプルプルと震え、唇を噛み締めているようだった。
「シュン君、絶対メイさんの仇は討つよ。でもごめんね今じゃない。まだ、守護者の皆さんが残ってる。それにママの考えも予想つかない。対策は皆んなで考えよう。明日、仲間を紹介するね。みんなにも警戒する様に言っておくから」
「ありがとう、カンナさん。その言葉だけで十分だ。…今日は疲れた。寮に戻る。カンナさん、また明日」
そのあと、カンナさんに見送られ寮に戻った。
その途中でメイさんの最期の言葉を思い出だす。
仲間を大切にして欲しいというメイさんの願いは正しい物だろう。
また、彼女に会いたい。声を聞きたい。
そんな虚しい思いだけが残った。
今思うと俺の強さと言うのは大切な人を失いたくないという気持ちが源となっているのだろう。
伯父さんが亡くなった時もそうだったからだ、残った家族を守りたいという思いがあったからだ。
その気持ちを胸に前に進むしかないのだろう。
こうして5月の満月の夜は終わりを告げた。
No.24を読んでいただきありがとうございました。
こんな鬼畜めいた主人公の母親を見るのは初めてです。
もう黒幕の皆さんはお揃いですね。ケンシロウ、ヤン、ペルケレ、レイカ。この4人です。
第2部で全部出して大丈夫なのか作者も不安になりましたが、レイカを出すならここしかありませんでした。
レイカはカンナじゃなくてシュンと因縁があるんですよね。
一応、第一部からレイカの発言を見直して黒幕として出しても大丈夫だろうと言うことで出しています。
元々、主人公であるカンナに黒幕説があったのですが生い立ちから言って他の黒幕と連携を取るのは無理があるということで真っ白です。本気天使です。
保険として「魔女」と周りに言わせてましたけどね。
こう考えると誰でも黒幕になれるのかもしれません。
一応、ヒントとして「悪魔」とか「化け物」とか文中にありましたよね。
寮父のマルコが「どうしてこんな所に天使がいるんだい?悪魔に意地悪されてしまうよ」と口説いていましたが黒幕の男性陣は全員悪魔と関わりがあります。
ケンシロウは悪魔の守護霊を持ち、ヤンは悪魔の声が聞こえる。ペルケレは名前の由来が雷神と悪魔です。
あとレイカの名前の由来はメイも言っていた通り数字の0です。全ての元凶という意味でつけています。
次はNo.25「僕の妹がこんなに強い訳がない」をお送りします。
タイトルからしてふざけてますし、温度差が凄いですけどキョウとの戦いになるのでしょうがないね。




