No.20 万の鏡
「もち「万華鏡」を展開する。そのあと俺を投影し吸収しろ。いいな?」
『わかってるぞ。もち様は優秀だからな』
そのあと、一瞬にして私は暗闇の中へと落とされた。
月光や星も見えず、空港の光すら見えない空間へとやってきた。
「何ここ?きゃ!?」
歩を進めようとすると足元が歪んでいるのか転んでしまった。
体制を立て直すが、体が何故か傾きはじめる。
「何がどうなってるの、ここは!?」
「万華鏡の中だ。これを見れば自分がどんな状態なのかわかるだろう」
「バッ」と目が眩むような光の後、私は反射的に手の平を目の前に翳した。
落ち着いてきた頃手を退けると何かの模様が見えてきた。
いや、模様ではない自分自身が何枚もの鏡に写され模様のように見えていただけなのだ。
それが左右の壁や床、天井まで散りばめられ長い筒のような、トンネルのような物が奥へと続いており出口がみえない。
恐る恐る歩を進めるが、ある事に気づいた。
「か、顔が痛い。何なのこの空間」
まるで入学式の時、八咫烏さんに足で蹴飛ばされた時と同じような痛みを感じる。
(…これって、もしかして)
もし私の考えがあっているなら無闇に動く事が出来ない。
鏡には自分の顔が映っている。
そして私は今、床の鏡を踏んでいるのだ。
でもこの空間を抜けるためには動かなければいけない。
「理解が早いな。しばらくここにいろ。お前は最後だ、まずは外にいる男を始末する」
「ウサマルさんの声。待ってください、貴方は一体どこから話しかけているんですか!?
「ここにある鏡の中の一つだ。娘、どうする?足掻くか、ここで大人しくしているか?」
「足掻きます。早くシュウマ君と合流しないと。八咫烏さん近くにいる?顕現せよ」
『ようやくこの空間に入れたぜ。おいバカンナ、気をつけろ。
俺達守護霊は霊体の状態に強制的に戻された。しかもこの空間には霊体が入れない。言ってしまえば武器の鏡と同じだ、実体しか写せない』
「そしてそれを吸収出来ない。…わかった、ありがとう八咫烏さん気をつける」
「多分私の考えが正しいなら「万華鏡」には突破口があるはず。だって、ヤンさんやジャンヌさんはこれを経験した上でウサマルさんを捕まえている訳でしょ?…もし2人ならここをどうやって攻略するかな?」
霊体は使えない。
でも実物顕現や武器は使用出来る。
協力な武器を持つ2人だ、案外単純な作戦だったのかもしれない。
「八咫烏さん、ここはもうシンプルに出口まで走るよ!!」
『バカンナ、お前本当に馬鹿だったんだな。俺様霊界に戻るぞ、呆れて何も言えねぇ』
「ちょっと待って!!これは私なりの考えなの。だってヤンさんやジャンヌさんだったら戦車で攻撃したり、真っ直ぐ走り出しそうじゃない?ずっとここにいるよりなにか行動した方がいいと思うの」
『しょうがねぇな。まぁ、俺様は何も関係ねぇしな。空間にいるわけだしな』
(空間。あっ、確かにそこにいれば痛くならずに済むかも)
試しに飛び跳ねるように走っていたら八咫烏さんに笑われてしまった。
しかし、痛い思いをしたくはないのだ。
床に接すれば接した分自分にダメージがくるのだ。
出来るだけ踏まないように移動する。
「逃げられると思うなよ。もち、回転だ」
「うゎ、今度は回転!?いや、でもこれなら」
とその場で飛び跳ねると自分の体が軸となり全ての面と接しなくなる。
「よし、だんだんこの空間にも慣れてきたかも」
その時だった、自来也さんが手裏剣の状態で飛んでくる。
そこには紐が括り付けてあった。
『小娘よ、わしらに感謝せい。助けに来てやったぞ。ふぇ、ふぇ、ふぇ』
「カンナ殿、拙者の声が聞こえているでござるか!!外も中々危険な状態でござるがそこにいるよりかはよかろう。引き上げるでござるよ!!」
「俺達が逃すとでも?もち、万華鏡を縮小せよ」
手裏剣を掴んではいるものの、筒全体が縮小されそれによって鏡と接してしまい顔に大きな痛みを感じる。
押し潰されるような感覚、まるでママと同じようだと感じてしまった。
息が出来ない、苦しい、助けて…
「死ぬなよ?死なれたらあの医者が許さないからな。俺が殺される。安心しろ感覚だけだ、本当に顔を潰している訳じゃない」
意識が途切れそうになりながら、その声の主を探す。
するとある事に気づいた。
左側にある鏡の一つにウサマルさんがいた。
私は反射的に剣を振りかざし鏡を割ろうとする。
正直に言うと私はウサマルさんに殺意を持っていたのかもしれない。
自分を苦しめる彼が嫌で仕方なかったのだ。
鏡を破ろうとするが何故が思いっきり振ったにも関わらず鏡が割れなかった。
鏡が頑丈なのかもしれないが、もしかしたら力が分散されている可能性もある。
この鏡のせいで1の力が1万分の1と自分が写っている数だけ分散しているのだ。
「ウサマルさん、私も苦しい状態ですけど、それは貴方も同じですよね?このまま縮小して鏡が壊れたら自分の居場所がなくなってしまう。この「万華鏡」ってどう言うシステムなんですか?」
「簡単な話、鏡を鏡で投影したのだ。作りは「無限回廊」と差ほど変わらない。俺を本気で殺したいならここにある全ての鏡を割ってみろ、お前も同時に死ぬぞ?あの2人ですら一直線に駆け出しただけで死にそうになってたからな。動かない方が身の為だぞ」
〜外〜
「これは厄介でござるな。というか何故拙者は外に残されてでござるか?」
「「「お前が外にいるのは保険だ。あの娘が絶望して自殺などしないようにだ。生け捕りにするように言われているのでな。お前が助っ人として残っているなら逃げ出したりしないだろう」」」
「ウサマル殿、其方影分身が使えるでござるか?めちゃくちゃいるでござるよ!!滑走路が埋まってるでござるよ大丈夫でござるか!!」
「「「お前はここで大人しくしていろ。娘を生け捕りにした後、たっぷりと痛めつけてやる」」」
「もち、このまま転がせ。そのままあの医者の元に持って行く」
「そんなの絶対に嫌!!こうなったら、八咫烏さん剣を縮小して」
縮小した剣を自分の胸に突き刺す。
もしこの空間じゃなかったら深く突き刺さっていたかもしれない。
でも非力な今の自分には関係ない事だ。
「死ぬなと言っただろう。もち、戻れ!!」
その言葉に私は思わず「ニヤリ」と笑ってしまった。
ウサマルさんは私が死ぬのを恐れていた、相手を利用することになるがこれでよかったのだろう。
「娘、よくも俺を騙したな」
「私、結構演技には自信があるんです。「万華鏡」のシステムは貴方が1番よく知っているんじゃありませんか?騙される方がわるいんですよ」
「くそっ、万華鏡はコストが高すぎる。スペアの鏡ももうないぞ」
その会話を聞きつけたのかシュウマ君がやってくる。
「ウサマル殿、其方達であろう?拙者の兄上が申しておったのだ。ここシャトランスには行方不明になった生徒がいると。拙者は兄上の力になる為ここに来た。さぁニホンに帰るでござるよウサマル殿。皆心配しておろう?」
そのシュウマ君の話に驚きを隠せないが、ウサマルさんを説得するなら今しかない。
「ウサマルさん、私達は貴方と戦いに来たんじゃない。貴方を救いに来たんです。…確かに助けられなかった人もいるのは事実です。でもだからこそ貴方を失いたくないんです。私達と一緒に来てくれませんか?」
「それはお前の我儘だろう?もう6年も行方不明になってるんだぞ?7年になれば死亡したと扱われる。生きて戻った所で何をしろと言うんだ。だったらいっその事死んだと言わせておけばいい」
「カンナ殿、相手はなかなか意識が硬そうでござるよ。どうされるのか?」
「こうなったら無理矢理でも捕まえるよ。行くよシュウマ君!!」
No.20を読んでいただきありがとうございました。
結構下書きが最近ぐだぐだなんですけど、本番になると結構まともになりますね。
下書きと投稿文は結構違ったりします。
というか下書きを書いても作者の字が汚すぎて半分ぐらいしか読めてないのでアレンジしたりカットしたりしている所もあります。
下書きは全体の流れを作る物なので大雑把でもいいんですけどね。
次は「オオクニヌシ」の回想 後編をお送りします




