No.19 助太刀
4月の満月の夜、あの黒い包帯をつけた男子生徒を探すが探しても見つからない。
どこにいるのだろうか?
「馬鹿者、こっちだ。もち、顕現せよ。無限回廊」
既視感のある空間に閉じ込められ、目の前には私が探していた男子生徒が現れた。
赤い髪をポニーテールにし、それを白と黄色のねじれ縄でまとめており、その髪飾りの中央に私と同じ盾のバッチがある。
目は片方しか見えないが、銀色の瞳をしているようだ。
白の打掛に黒の着物、帯は黄色のようだ。
「貴方がツキミ・ウサマルさんですね?」
「ご名答、早くこっちへ来い。待つのは嫌いだ」
その後、ウサマルさんは私の反対方向へと走り出している。
小柄ながら、結構早いようだ。
彼を追うが、全然追いつけない。
「ま、待ってください!!ウサマルさん!!」
彼を追い走っていた時だった、後ろから誰かの視線を感じ振り向いてみたが、誰もいなかった。
ウサマルさんも気付いていないのか立ち止まる様子もない。
「もち、戻れ。着いたぞ、娘」
無限回廊を解除され、周りを見渡すと平地に出る。
下はアスファルトになっており、広い道路のように見える。
「娘、武器を出せ。お前は戦う為に来たのだろう?3人を破った実力は認めているつもりだ」
「ここって、空港の滑走路ですよね?成る程、マルソさんとは対極的に障害がない所の方がウサマルさんには有利ですよね」
「何だ、不満か?」
「いえ、いい選択だなと思っただけです。八咫烏さん行くよ!!顕現せよ」
『相手は鏡、しかも1対1だ。苦戦は免れねぇだろうな。行くぞ、バカンナ』
(まずは無限回廊を解除する事が最優先だ、どこにもう一つの鏡を隠しているんだろう?)
「もち、剣を投影せよ」
両手に剣と鏡を持ち、完全に戦闘態勢だ。
相手の剣の腕前がどのくらいなのかわからないが、無失点を続けていたという事は隙を作るのは難しいかもしれない。
それに無理に攻撃したら、逆に体力を奪われる可能性もある。
まずはお互い剣を構えて睨み合う。
もう一つの鏡の居場所を探しながらだ。
ふと、彼の手元に違和感を覚えたのだが今空港には春風が吹き荒れている。
しかし、着物の裾がピクリとも動かないのだ。
(ああいう所は隠し易いよね。あそこなら上手く隙を作れば、死界から攻撃できるかも)
鏡の扱い方は私が1番知っている。
武器が変わっても扱った経験は無駄ではなかったのだろう。
「八咫烏さん、囮になって。相手を引きつけている間に私が攻撃するから」
八咫烏さんを霊体に戻す。
試合とこの戦いは概念が違う。
点数などありはしないし、時間制限もない。
自分がどこまで戦えるのか極限の状態を競い合う物だ。
試合では霊体は無意味な物だったが、ここでは少しの抑止力となるだろう。
効果があったのか相手は八咫烏さんを警戒している。
私は一気に駆け出し、ウサマルさんを組みつく事に成功した。
しかし、
「反射せよ」
「きゃっ!?」
鏡の影響で3m近くまで飛ばされる。
もう一度近づくが、反射中の状態になっている限り近くのは困難だ。
受け身を咄嗟にとったのでケガはないが、このままでは相手に一撃も加えられないなんて事もある。
「あの医者の娘もこんな物か。いい機会だ、鏡の中に入れさせてやる。吸収せよ」
「自来也殿、顕現するでござるよ」
暗闇の中から何かが飛んできて、咄嗟にウサマルさんはそれを鏡の中に吸収する。
中に入っていたのは手裏剣だった。
「何者だ、姿を見せろ」
「忍者が姿を見せる訳なかろう。自来也殿、戻れ顕現せよ。余り隙を見せてると、命に関わるでござるよ」
そのあと、「バリン」と何かが割れる音がした。
ウサマルさんがその音に反応し、裾を掴んでいるので鏡が割れたのかもしれない。
「シュウマ君、いつからそこに!?」
「はぁ、カンナ殿拙者がさっき言った事覚えているでござるか?敵に名を名乗るのは御法度、拙者は侍ではござらぬ。しかし、窮地に立たされているのでござろう?助太刀するでござるよ。カンナ殿指示を」
そのあと、いつの間にかシュウマ君が私の後ろにいた。
「えっ、えっとありがとう助かります。あのね、無限回廊っていう変な空間を止めたいの。そのためには武器以外の鏡を全部壊さないといけないんだけどもう破壊したね」
「何を言ってるでござるがカンナ殿。拙者の見立てでは鏡を思しき物は複数個存在するでござるよ。拙者も無限回廊の中に入ったでござるが、相手有利に傾く代物である事に間違いない。それを作りだす物なら予備の1つや2つ持っていてもおかしくはなかろう?」
「た、確かに。じゃあ、鏡の破壊をお願いしてもいいかな?」
「任されよう。ウサマル殿といったか?ここは貴殿にとって有利な場所のようでござるな。しかし、拙者は夜が大得意でござるよ。月夜の主役はこのオガタ・シュウマが貰った!!」
「存じ上げないな。舞台を間違えていないか?退場するなら今のうちだぞ。もち、あいつらを生け捕りにする。頼むぞ」
『やい、お前達!!このウサマルともち様に刃向かうなんていい度胸だな。…う、嘘だよ。そんなに睨まないでってば』
「カンナ殿、ここは速さが物をいう戦いでござるよ。相手の一瞬の隙をつければ勝機はあろう」
「うん、わかった。行くよ、シュウマ君!!」
No.19を読んでいただきありがとうございました。
何かカンナちゃんが空気になってますけど、仕方ないね。
キャラクターの出番は均等にしないといけないので主人公も同様です。
ウサマルの漢字表記ですが津君 宇佐丸さんです。漢字は案外まともです。
守護霊のうさぎを「もち」と読んでいますが月にいるうさぎが餅つきをしているからですね。
あと作者の好きなアイスが名前をつけるとき思い浮かんだのでそう名付けました。
もちのモデルはニホンウサギですが夏季と冬季では毛が違うので有名な白の毛並みではなく4月だと茶色の毛並みをしています。冬季になるともふもふとした白毛並みに生え変わります。
次は「オオクニヌシ」の回想をお送りします。
ツクヨミとも迷ったんですがこちらにしました。コードネームは各国でテーマを変えていて日本だと神話や昔話、歴史に関係のある人や物、その人物の出身に合わせた名前をつけています。




