No.18 日の出
ミルクちゃんにペガサスさんを乗せてもらい皆んなで一緒にマルソさんを探していた。
「マルソさん、どこにいるんだろ?」
「あっ!あのステージの上じゃないですか?ショッピングモールの敷地内にある」
「ワルキューレ・ミオン良く見つけた。おそらく高台目当てだろう。行くぞ」
「やっぱり見つけるの早いな。もうちょっと待ってくれもいいんじゃない?まだコンサートの準備出来てないんだけど」
「カンナお姉さん、今がチャンスです。マルソお兄さんを捕まえましょう」
「ならば力を貸そう。フェンリル、還元。現世に顕現せよ」
鎖でマルソさんの体を固定し、私は剣を顕現させ奇襲をかける。
(まずはカードキーを奪わないと!!)
ヤンさんのように破棄されていたら望薄だが、確かめてみる価値はある。
相手に目的がバレないよう攻撃を交えながらカードキーを探す。
攻撃が貫通せず、物に当たればそこに隠してあるはずだ。
「ちょっと離してくんないかな。全然戦える準備できてないんだけど」
「なら、そのままでいいですよ。動かないで下さい!!」
カードキーはどこだ?どこにある?
鎖に繋がれているというのに攻撃が当てられない。
避けられているのだ。
マルソさんではなく鎖の当たってしまう。
おそらく鎖を攻撃で破壊して脱出するのを狙っているのかもしれない。
「カンナちゃん大丈夫?全然当たってないんだけど?それでも俺と同じ守護者?」
「マルソさんは知らないかもしれませんが、私単純な強さが売りではないんです」
「何?それって?」
「ずる賢さですよ!!」
その言葉の後、足目掛けて攻撃すると「ガツン」と音がなる。
(ここだ!!)
再度確かめる為、大きく振りかぶりながら攻撃した時だった。
「ガシャン」と音がし、マルソさんの足が分断される。
その光景に血の気が引いてしまった。
何か自分がよからぬ事をしでかしたのではないかと思ったからだ。
しかし断面図を見ると出血は無く、機械が見える。
「マルソさん、貴方もしかして…」
「あれ?今まで気付いてなかったの?知ってると思ってたんだけどイブちゃんに両足持ってかれちゃったからもうないんだよ。わかった?」
その言葉に思わず涙を流してしまった。
どうしてなのかわからない。
でも、マルソさんが父に何かされたのは一瞬でわかった。
「…ごめんなさい、本当にごめんなさいマルソさん。私達のせいでこんな事に。私は父を止められなかったんです。そのせいで貴方を傷つけてしまった。何度謝っても足りません」
その言葉にマルソさんは目を見開き、動揺している様子だった。
「…そう言われると許さないといけないなるだろ。やめてくれよ。…はぁ、ならカンナちゃんは俺と同じように利用されてた訳だ。捕まえてこいって言うのも対立してるからか。少なくともDr.の味方じゃないよね?」
その言葉に頷く。
そのあと、チュール君にお願いして鎖を解いてもらった。
足を分断されたマルソさんはその場に倒れ込む。
「いいのか、ワルキューレ・カンナ。鎖を解き放てばシャトランスのブラキを再び捕えるのは難しくなるぞ」
「大丈夫だよ。マルソさんはそんな事する人じゃないし。それにあの足じゃどっちにしても無理だよ」
「…こんな足じゃもうどこにも行けないな。いっそここに住んじゃおうかな。…いや、島全体がめちゃくちゃだし後で怒られそうだからやめとこう」
そのあと、皆んなでマルソさんを介抱し最初の広場まで連れて行った。
「成る程ね、カンナちゃんは俺達じゃなくてその裏にいるDr.と戦ってたわけか。やっと誤解が解けたよ。だからもう泣かないでカンナちゃん。女の子は笑顔が1番可愛いんだからさ」
「マルソお兄さん、カンナお姉さんの事口説いてますよね。気をつけてくださいね。マルソお兄さん、色んな女の子を口説いてますから。私も同じ事言われましたし」
「こんなの常識でしょ。挨拶だよ、挨拶。で…これからどうするかな。やりたい事とか何もないんだよね。…あっ、1つだけあったか」
「何ですか?それって」
「…太陽が見たいと思ってさ。ずっと地下にいたからさ、一度でもいいから拝みたいと思ってたんだよね」
「ならマルソお兄さん、一緒に見に行きましょうよ。ここはまだ夜ですけど太陽はどこにでもあるんです。ペガサスさん、連れて行ってください」
『しょうがねぇな。ミルクの頼みだ。どこにでも連れて行ってやるよ』
そのあとミルクちゃんとマルソさんはペガサスに跨り飛びたっていった。
「マルソお兄さん、見てください。思ったより近くに太陽がありますよ。アメリカ本土方面で正解でしたね。日の出の時間でしょうか?」
「ミルクちゃんに逆に質問するけど、シャトランスとメキシコの時差って何時間?」
「えっ、え!?何時間でしたっけ?忘れちゃいました」
「…まぁ、そんなのどうでもいいよね。太陽には変わりないし。これを見てやっと決心がついたよ、ありがとう。ミルクちゃんに一つお願いしたい事があるんだけどいいかな?」
「はい、私に出来る事なら」
「…あの太陽みたいにさ、オレンジのマリーゴールドをあの広場に飾って置いて欲しいんだよね。俺が迷わないように。目印が欲しいんだ」
「わぁ、素敵ですね。メキシコでは有名なんですか?マリーゴールドって?」
「勿論、お祭りに使うんだ。俺、楽しい事が好きだからさ。皆んなで騒ぐのも好きだし、ずっと一緒に歌って演奏したいんだ」
「… Nos vemos(また、会おうね)」
そのあと、慌ててミルクちゃんが戻ってくるがマルソさんの姿がなかった。
「カンナお姉さんどうしましょう。マルソさんが、マルソさんが!!」
と涙目になりながら訴えてくるのだ。
「ミルクちゃん落ち着いてどうしたの?」
「…マルソさんが自分で海に向かって飛び降りたんです。探しても探しても見つからなくて」
そのあと私達は勿論、守護霊の皆んなや生徒会メンバーやタマミちゃんにも手伝ってもらい探したがマルソさんの姿を見つける事が出来なかった。
空が次第し薄らと明るくなる時間まで捜索を続けていた。
「アメリカやメキシコ方面で日の出を見た後、話している途中で海に落ちたんです。でも…どうして」
「ミルクちゃん、それっておかしいよね?あっちって今、夜中じゃないかな?時差3時間だし。…もしかして2人が見たのって夕日、洛陽じゃないかな。洛陽って終わりを示唆する物だし、もしかしてマルソさんは…」
「カンナちゃんー、それ以上は言わない方が良いと思うよー。ミルクちゃん泣いちゃうよー」
「マルソさん、助かっても島の外から出られないなんて可哀想ですよ!!」
そのミルクちゃんの言葉に私は何も言えなかった。
しかし、残っていたマルソさんの守護霊であるゴリラさんは私達にこう言ってくれた。
「マルソが自分で決めた事だ、お前達のせいではない。どうか、笑顔でいて欲しい。それが我が友の望みだ」
そのあと、ゴリラさんの姿が薄れていく、守護霊が消える事は主の死を意味する。
「…やっと分かり合えたのにどうして」
『分かり合えたからだよ、カンナちゃん』
広場の前にうっすらとだがマルソさんの姿が見えてくる。
「マルソさん!!」
皆んなで駆け寄り彼の話を聞く。
「正直言って、ドイツに帰ったヤンが羨ましいと思ったけどさ。でも、今の俺がなきゃミルクちゃんみたいなセッション仲間もいなかっただろうし、こんな戦いにも参加しなかっただろうからさ。過去の事を全部受け止められた訳じゃないけどあの夕日を見て思ったよ、どんなに楽しく生きても辛い人生を送っても俺はここで終わりだって」
「マルソお兄さん、ごめんなさい。私、勘違いして」
「いいんだよ。アミーゴも言ってたけど自分で決めた事だからさ。皆んなのせいじゃない。それに生きていたところで俺はどこにも行けなかった。家族を悲しませるのも嫌だし。それにここにきてやっと見えるからね俺の望んだ太陽が」
マルソさんの指さした方向を見ると、太陽が登り始めている。
その様子をマルソさんは笑顔で見つめていた。
『死ぬのもいいもんだよ。こうして友と一緒に日の出を見られるんだからさ』
その言葉に笑顔でこう言った。
「えぇ、案外悪くないかもしれません」
No.18を読んでいただきありがとうございます。
死生観というのは国や個人で異なるものですが、マルソの母国であるメキシコでは死というには結構明るい感じで受け入れられるそうですね。
マルソが言っていたお祭りというのはメキシコのハロウィンに相当する「死者の日」という物です。
日本だとお盆に近いですね。
名前に入っているムエルドスは「死者の日」の現地での呼び方です。
マルソはやっぱり明るい感じで見送って欲しいだろうなとあまり罪悪感のない感じでお別れさせました。
ちなみにカードキー見つかってませんけどずっとここにいるみたいなので、いい機会があったら渡せるようにしたいと思います。
次はNo.19「助太刀」をお送りします。




