「ウェウェコヨトル」の回想
楽しい事と苦しい事、どっちがいいかと言われたら前者の方だ。
でも、俺は気まぐれな人間だ。
一瞬の判断で良いと思った事を実行する。
チャンピオンリーグもその一つだった。
大会に参加すれば注目してくれるし、それをきっかけに応援してくれる女の子も集まってくると思ったのだ。
いや、普段から女の子には囲まれてたよ。…本当だからね!!
でもその気まぐれが悲劇に変わるなんて思いもよらなかった。
元々、ヤンやジャンヌの事は知らなかった。興味も無かったし。
大会に積極的に参加する優等生ちゃんって感じだ。
そんな大会に参加した俺だったけど、案外いい所まで行けた。
というか、優勝してしまったのだ。
ジャンヌちゃんのあの悔しそうな顔、そんな顔してたら綺麗な顔が台無しだよ?
女の子は笑顔が1番可愛いんだからさ。
その後からはさ、女の子に言い寄られて大変だったよ。
連覇とか興味ないし、カッコ悪い所も見せたくないから参加しなかったけど卒業後、優等生ちゃん2人からある手紙が届いた。
力比べしよってさ。
… 何か嫌な予感がしたから行かなかったんだけど、わざわざ来てくれたんだよね。ご丁寧に。
「2人ともどうしたの?俺の演奏でも聴きにきた?」
「えぇ、太鼓の演奏を聴きに来ました。聞かせていただけませんか?私達に」
「…ごめんよ、ヤン。今日はギターだけなんだよね。また今度じゃダメ?」
「2人とも、何で睨んでますの?…あぁ、なるほど。サフィール顕現していただけます?さぁ、マルソ一緒にいきましょう。大丈夫痛くしませんわ」
「そういう人に限って絶対痛いんだよね。歯医者とかもそうじゃん!!アミーゴ逃げるよ!!」
「逃しませんよ。エルヴァイラ、顕現してください。太鼓の音色は素晴らしいと聞いています。12時の方向に撃ちましょう。fewer!!」
「あの野郎、周りに人がいるのにお構いなしかよ。アミーゴ顕現しよう。周りを巻き込んだらおしまいだ」
ヤンの戦車砲は凄まじい物だった。まぁ、弾き返したけどね。
アミーゴの音はどんな物にも反響する。
本気出すと喜ぶ人がいるから出さないんだけどね、特に目の前の2人には。
それにこの力は人を傷つける物じゃないからね。
これでもセーブしてんの。
「やはり同じ守護者なだけありますね。マルソ、貴方にはもっと相応しい場所があるはずです。一緒に地下に行きましょう。永遠の命を手に入れられますよ」
「あのさ、相応しいとかじゃなくて俺は好きな場所にいたいの。2人とも周り見えてる?人が残ってるんですけど。この戦闘狂、脳筋ちゃんが。君達も勝手な事してるんだから俺も勝手させてもらうよ」
「えぇ、結構ですわ。無理矢理でも連れて行きます」
「本当にしつこいよ2人とも!!」
長々と攻防戦は続いたが、戦況は悪くない。
ジャンヌちゃんは近づけないし、瓦礫を動かせば戦車砲の盾に出来る。
だが、1対2の場合長期戦になると俺の集中力と体力が持つかわからない。3分間の試合とは訳が違うのだ。
(助けを呼ばないと。そういえばウサマルはどこにいるんだ?寮の中だったらさすがに太鼓は使えないぞ。グノームを怒らせたら怖いし、1人でなんとかしないと)
しかし1人ではどうにもならないものだ。
隙を見せたら一気にやられる。
体力、集中力ともに無くなっていき1時間もすれば戦況は覆っていた。
周囲に戦車砲の煙が立ち込め、首元には手甲鉤がある。
「…わかったよ降参だ。俺は負けた。それでいいでしょ?」
「わかればいいんです。クラーケン、念のため彼を拘束してくださる?」
そのあと、水中から巨大なタコが出現する。
俺とアミーゴは一瞬にして捕らえられた。
こんな巨大な守護霊を持つ人物がシャトランスにいただろうか?
校舎前まで着くとクラーケンの触手から逃れる。
「クラーケン、ご苦労様でした。ここからはDr.に任せましょう。貴方をロボット人間にして差し上げます。準備が出来る間は長い眠りについていて下さい」
「ロボット人間?長い眠り?何言って…ガハッ!?」
そのあと首の後ろに衝撃が走る。
この馬鹿力はジャンヌちゃんのものだろう。
一瞬で動けなくなってしまった。
「後はウサマルだけですわね。あちらの方が苦戦しそうですわ」
(ウサマルも狙われてる!?動け!!…くそ、動けない)
そのあと、4年もの長い眠りにつく事になった。
しかし、あるときだけ眠りから覚める事が出来た。
「守護者狩り」の時だけだ。あの時だけは俺達は自由だった。
戦うためのものとして目覚めさせられたとしても生きていると感じる事ができた。
しかし、島から出る事は許されなかった。
俺達は常に監視された状態だったのだ。
もう生きているのかも、死んでいるのかもわからない。
いっそ殺してくれた方がよかったのかもしれないと思った程だ。
9人が揃った時、ヤンやジャンヌちゃんを除いた7人が手術着に着替えさせられた。
殺されると直感的にそう思った。
しかし、それでいいと受け止める自分もいた。
でも現実は甘くなかった。
「マルソは両足が良いと思います。手を使う武器ですのでそこは動かせた方が良いかと」
「そうだな、これから麻酔を行う。マルソ安心しなさい、後で義足をつけよう」
その言葉に絶望の淵へと叩き込まれる。
注射針を持つDr.の手を払い、手術台から降りようとするがヤンとジャンヌちゃんに組みつかれる。
「お前達、本当に頭がおかしかったんだな。両足がいい?馬鹿言うな。俺はお前達のおもちゃじゃない。1人しかいない人間だ。あの時、抵抗するか死んでおけばよかった」
「マルソ、死なれては困ります」
「それは俺の為じゃなくて自分の為だろヤン。ロボット人間?本当に感情がないのはお前だよ。周りを見ろ、皆んなお前を恨んでる。俺もだ」
「…Dr.後はお任せします。早く麻酔を」
「嫌だ!!離せ!!俺はこんな事をする為に生まれてきたんじゃない!!」
「マルソ、動かないで下さい。動いたら本当に死にますわよ!!」
その言葉に「ピタッ」と体を止める。
俺だって死にたいんじゃない、生きたいんだ。
この地下を抜け出して太陽が見たい。
一度でもいい、俺に希望を見せてくれないか?
お願いだから…。
「あ…ああっ」
注射針を入れられる瞬間を見た後、深い眠りについた。
「ウェウェコヨトル」の回想を読んでいただきありがとうございました。
…マルソはな、守護者の中でも1、2を争うぐらい暗い過去があるんですよね。
言ってしまえば最初の犠牲者になりますからね。
というかヤンがこう見ると安全に鬼畜野郎と化してますね。殺した方が良かったかもしれませんが、死んでも厄介だと思うのでスルーしておきましょう。
ジャンヌもこの環境からか、段々狂気に侵されている感じがしますね。
ジャンヌは自分が一番大事なので周りの事はそんなに興味がありません。
クレイジーサイコパスがこれ以上増えない事を祈るしかありません。
次はNo.18「日の出」をお送りします。




