「ラ・ピュアル」の回想
「ジャンヌは私達の大切なお姫様だ。自慢の娘だよ」
「当然ですわ!自慢のお父様の娘ですもの!」
家族から「お姫様、お姫様」と言われた私はやっぱりお姫様だった。
当然だ私は可憐で美しいのだから。
私が一番、一番なのだ。でも、それが終わる時が来た。
ヤン 68ー42 ジャンヌ
試合時間 00:00
「貴方は強いですね。後でゆっくり話をしませんか?お話したい事があるんです」
「皮肉ですの?貴方の方が強いではありませんの得点板を見れば明らかですわ」
「…そうでしょうか?貴方は私にとって特別な女性です。もっと胸を張ってもよろしいのではありませんか?」
その言葉に何故か胸が騒ついた。
父や祖父に褒められるのとは違う感じだ。
なんだろうかこの気持ちは。
そのあと庭園の方に呼び出され、側には犬もおり私の守護霊が猫という事もあってまずは動物から親睦を深めるつもりなのだろうか?
「来ていただいてありがとうございます。実は紹介したい方がいまして。貴方とも仲良く出来るといいのですが。美しい貴方ならきっと気に入っていただけるでしょう」
「まぁ、それほどでもありますわ」
そのあと、じっと私を見つめてくる。
あまりに情熱的な眼差しにその場で立ち尽くしていると、目の前で両手を差し出される。
その手は私の手ではなく、首へと向けられた。
あの情熱的な眼差しは殺意であったと理解した。
「ガハッ…貴方、何するんですの」
「おや、まだ意識がありましたか。縄でも持ってくれば良かったですね。Dr.が貴方を必要としているんです。実に理想的だ。美しい四肢と顔を持っている。ご婦人に捧げてはくれませんか?」
その言葉に彼が危ない人間である事を理解した。明確な殺意がある事もだ。
首を絞めようとする彼の腕を振りほどいた。
案外力が弱いのかすぐに手を離す事ができた。
「お断り致しますわ。私はこの体が一番美しいと思っていますもの。誰の代わりにもなりませんわ。他の方をお誘いになって」
彼が今後どのような手段を使うのか知れたものではないが、私は自分が一番大事なのだ。他人などどうでもいい。
「そうですか、残念です。ですが候補なら幾らでもいますので問題ありません。では行きましょうかブロンディ、エルヴァイラ」
と何事もなかったようにその場から立ち去ってしまう。
最初から私の事など興味も無く、この為だけに呼び出したのだろう。
その言葉だけで彼の冷酷さが感じ取れた。
危ないと思った私は彼の手を引く。
「貴方、一体これから何をするつもりですの?」
「そうですね。一言で言うなら人殺しでしょうか?ドナーが必要なんです。ご婦人の為に出来るなら手術に耐えられる強い個体が望ましい。エレベーターは体温を感知しているので殺してからじゃないと乗せられないんですよね。手間はかかりますが」
そんな物騒な会話をペラペラと何事もなく言う彼に私は恐怖心を抱いた。
彼が私を殺すのではない、私が彼を殺さなければいけない程だ。
「貴方、狂ってますの。…こう言うのはいかが?そのドナーが見つかるまで私が協力して差し上げますわ」
(彼を野ざらしにしていたら、本当に人殺しされかねませんわ。私が監視しないと)
その言葉に私をじっと見つめた後、微笑んでくれる。
嫌な予感がしたが、そっと体を離されたので安心した。
「では後日貴方にカードキーを渡しましょう。それでは」
そのあと彼は去るが、私はその場でへたり込むと同時に冷や汗が出てくる。
(何なんですの!!もしかして彼、結構ヤバい奴じゃありませんの!!)
その後、夏休みに入る少し前に約束通り彼にカードを貰い一緒に地下へと進む。
「シャトランスにこんな地下があったなんて知りませんでしたわ。…こんな地下にいる奴なんてろくな人ではないでしょうね」
「そんな事ありませんよ。我が家より居心地がいいと思ってますから。Dr.はお優しい方ですしね。あちらです」
彼の目線の先に白衣をきたアジア人のような男性がいた。
目が合い、私に近づいてくる。
「お前か、フェヴリエ・ジャンヌ。大会準優勝者だな、協力者は多い方が良い。歓迎する」
「は、はぁ。えっとDr.ヤシロでしたっけ?貴方の目的は何ですの?」
そのあと、彼の妻だという女性の遺体を見せてもらった。
「Dr.はご婦人を生き返らせる事を目的としています。だから貴方の体が必要だった。ご理解いただけましたか?」
「理由はわかりましたけど、そのドナー候補を殺せば良いんですの?」
「出来るなら新鮮な方が好ましい。ヤン、お前彼女に何を教えたんだ」
「失礼、殺した方がいいのかと。ですが、生け捕りにするのは難しいですよ。やはり、ジャンヌを仲間にしたのは正解でしたね」
「確か、強い個体が必要でしたっけ?なら私よりヤン、貴方の方が適任ではなくて?私より強いでしょう?」
その言葉に2人は私を見つめてくる。
何か変な事でも言ったのだろうか?
「私は無理ですが、Dr.同じチャンピオンリーグの優勝者で有ればよろしいですか?」
「わかった、私は非戦闘要員だ。しかし、守護者を生け捕りにするという事は難しいだろう。クラーケン実物顕現しなさい」
そのあと別の部屋から移動してきたのか、部屋の一室を取り囲むように巨大なタコが現れた。
その姿は悪魔の魚「デビルフィッシュ」の名にふさわしい物だった。
「クラーケン、この2人に協力しなさい。生け捕りにした守護者を船に乗せてこちらに輸送しろ。いいな?」
『うん…わかった。2人とも僕、頑張るからよろしくね。お友達が増えるのは嬉しいな…』
「あら、外見によらず大人しいですのね。タコも見かけによりませんわ」
「Dr.と一緒です。案外良い人ですよ」
「お前は私を褒めているのか貶しているのか」
その後の事だった、学内である噂が流れた。
ヤンが心臓病を患っており、手術を受けるという。
仲間である私に何故言わなかったのかと問い詰めた。
それ以上に大会当時から病を患っていたのなら彼は本気を出していない事になる。
全力で挑まず、手抜きをしていた彼は勿論、それに負けた自分が一番イライラしていたのだ。
「貴方、そんな状態でDr.に協力してたんですの!!私の気持ちも理解して下さい!!全力で戦ったのならまだしも、病の状態で私は貴方に負けた。プライドもクソもありませんわ!!私を侮辱しないでください!!」
その口論に人が集まってしまった。
その状態を見た彼が私の口を塞ぎ、人のいない場所へ移動する。
「ジャンヌ、Dr.の事を人前で言うのはやめてください。理事長、いやそもそもDr.については表で言わないように。今後動けなくなります」
その言葉に「うんうん」と相槌をうつ。
そのあと、ヤンは手術を受け無事完治したという事もあり安心していた。
彼は大会に参加しなかったが、私は参加し結果の繰り上がりという形で第2大会の守護者に輝いた。
しかし、私が優勝した事は重要ではない。
第3、4大会の優勝者が誰なのか私達が生け捕りに出来る相手なのかという事だ。
そのあと、ヤンは大会に参加する事がなくなりDr.と地下で大会観戦をするようになった。
私は大会に参加し、マルソやウサマルと対戦し実戦経験を積んだ。
お互いの役割を分けたのは同時参加すれば、私とヤンの繋がりがバレる事を恐れた彼からの提案だった。
そのあと、私達は卒業する事になるがヤンはある提案をした。
守護者同士を集めて誰が一番強いのか決めようという物だった。
誰もいないコロシアムに2人を誘導しようとしたのだが…
「…来ないですね」
「来ませんわね。15分遅刻した私ですらきてますのに」
「貴方は時間にルーズ過ぎますよ。貴方と同じでマイペースな人達ですからここには来ないかもしれませんね。クラーケン、2人の場所はわかりますか?」
『うん、マルソなら外にいるよ。ギター弾いてるみたい…』
「居場所がわかれば結構です。ジャンヌ行きますよ。こうなったら各個撃破しましょう」
「えぇ、わかりましたわ」
こうして私達はクラーケンに案内され東の娯楽施設のある島へと向かった。
「ラ・ピュアル」の回想を読んでいただきありがとうございました。
よく、ヤンとジャンヌが一緒にいる事が多いですが初期設定に関係があります。
連載前に作った設定なのでガバガバなのは申し訳ないんですが、実はヤンとジャンヌはスクールと作者公認カップルにしようと思っていました。
ですが、1部から2部のお休みの間にヤンの設定をいじってしまったのでそれが無くなってしまったんですよね。今はブロンディやエルヴァイラが恋人だし、婚約者です。
ですので第1部の文章の意味合いが少しどころじゃないんですけど違います。
矛盾しないようには書いてるつもりなんですけどね。
ジャンヌがヤンを追いかけ回していたのは問い詰める為じゃなくて、大会後に強いヤンに惚れてストーカーしてただけです。だから、ヤンが「助けてくれ」と言っていました。
ヤンとジャンヌの体に異変がないのは初期設定を一部消してしまった為です。
守護者ごとに体の一部が欠損していますが、2人の場合男性器と女性器という初期設定がありました。
ケンシロウがイブと同等の器を作る為に人工受精かなんかして人造人間を作ったみたいな設定がありました。
人造人間は実は2人の子供だったみたいな所まで考えましたが、エグすぎるのでライトな感じにしました。
作者はカップルに非常に厳しいのでその設定だったらヤンは死んでますね。殺してます
次はNo.16「散る薔薇のように」をお送りします。
ジャンヌ視点なのでタイトルは詩的というか、ロマンチックな感じを意識してつけています。




