No.12 お迎え
「…よし、出来たぞカンナ。にしても良く覚えてたな。言った俺でさえ約束忘れてたのに」
とクリスマスパーティーが始まる少し前、私はルイスさんにメイクとヘアアレンジをしてもらっていた。
「えぇ、自分でもビックリしています。でも、なんだか早く会場に行って皆んなに会いたいと思ったんです。不思議ですよね。今年ももう終わるので皆んなの顔を見納めしたいのかもしれませんけど」
「そうだな。じゃあ俺も後で会場に向かうから、あいつらにも行っておいてくれ」
「はい、わかりましたルイスさん」
そのあと、会場の方へと向かうとなんだか騒がしい。
いや、少し違うと言った方がいいのかもしれない。
人によって反応が違うのだ。
近くにいたタマミちゃんやシュン君、アポリナルさんが目を見開いたまま動かないのだ。
少し震えているようにも見える。
「ねぇ、どうしたのなにかあった?」
とタマミちゃんとシュン君に声をかけると無言のまま目の前を指差している。
その方向を見ると9人の男女の生徒がいた。
それが何の集団なのか一瞬でわかった。
皆、それぞれ違う所にだが私と同じバッチを付けている。
守護霊にサイ、猫、ゴリラ、ウサギ、鷲、鯨、イタチ、カンガルーそしてグリフォン。
私が以前聴いていた人達が目の前に立っているのだ。
私がじっと見つめていると、タマミちゃんはキョウさんに、シュン君はメイさんにゆっくりと近づいている。
近づいて大丈夫なのかと思っていたが、彼らは武器を構える事はしないようだ。
戦うのが彼らの目的ではないのだろうか?
「お兄ちゃん会いたかったよ。…その目どうしたの?病気?怪我でもしたの?」
「…」
確かにキョウさんの右目には眼帯がつけられている。
よく見ると、ウサギの守護霊を持つ人も左目を覆うように黒い包帯を巻いている。
というか、全体的になにかおかしい。
以前写真でみた彼らと今の彼らは違うのだ。
メイさんもそうだ。以前シュン君と動画を見た時、生の銃声が好きだからと耳当てをしていなかったのに今は戦闘中でもないのに耳当てをしている。
しかし、シュン君はそれに気づいていないのか彼女に話しかけている。
「メイさん、勝手ながら俺は貴方を師匠として尊敬しているファンなんだ。握手してほしい。それと、サインをくれないか?色紙じゃなくて申し訳ない。紙類はビンゴカードしかないんだ。この裏に書いてほしい」
(この状況で握手やサインを求めるってシュン君はメイさんの事アイドルって思ってるのかな!?)
その言葉に終始メイさんは睨んでいるが、シュン君は何度も同じ言葉を繰り返している。
「握手とサインしてくれ」
そのあと、何故か素の表情に戻り握手とサインまでしてくれる。
「ありがとう、大切にする。何かお礼させてくれないか?」
その言葉メイさんはカードに追加で何か書いている。
「あたしのファンならこの意味分かるだろ?」
その言葉とカードを見たシュン君は悲しい顔をしている。
何かあったのかと気になるが、それをよそに誰かが近づいてくる。
いや、初代守護者のグデーリアン・ヴィルヘルム・ヤンさんだ。父が命を助けた人。
よく見ると軍帽のような物に盾のバッチをつけているようだ。
「貴方がDr.ケンシロウの娘であるカンナですね?こんばんは。私の名はご存知で?」
「えぇ勿論です。何度も貴方の名を聞いてきましたから。ヤンさんですよね?皆さんも一緒に集まってなにか用事でも?一緒にクリスマスパーティーをしようとしてた訳じゃないですよね?」
「話が早くて助かります。Dr.ケンシロウが貴方を求めています。イブが手術に抵抗しているのです。いや、正確にはイブの守護霊ですがね」
「…イブちゃん。もしかしてイブちゃんを作ったのは父なんですか!?レーン社のAIロボットではないんですか!?」
そんな話をしていると、猫を連れた女子生徒が近づいてくる。
金髪の縦ロールに灰色の瞳、頭には黒のカチューシャを付けている。
胸にフリルが付いたブラウスに、裾にレースが付いたロングスカートを着ている。
足元はストラップの付いたパンプスを履いている。
なんというか、今シュウマ君がいたら喜びそうな容姿をしている。
「あら、ご存知ないんですの?イブは遺体から作った人間ですわ。元々はDr.の愛する人を生き返らせようとして手術をしようとしている訳ですけど、抵抗されていては無理でしょうね。だから貴方を欲しているのですわ。唯一の適合者ですもの」
(…唯一の適合者。待って、もしかしてイブちゃんって)
「彼女は母なんかじゃありません。イブちゃんはイブちゃんです。私は母の死を受け止めています。ですから父が生き返らせるその理由がわかりません」
「私も知りませんよ、私も貴方の母を見た事がある。そして私は救われました。でも、Dr.は知らない様子でした。見えていなかったのではありませんか?私は美しいと思いますよ。遺体を愛でる。まるで白雪姫の王子のようだ」
何だろうか、今の言葉に寒気がする。
もしかしてヤンさんは父のしている事をわかっていて、それが不可能だと思いながら裏で嘲笑っているように見えるのだ。
「…ヤンさん。貴方、何か知ってるんですか?私は貴方が怖いです。貴方は全てを知りながら父に協力しているんじゃありませんか?」
「好きなように言って下さい。私だって好きでここにいるわけではありませんから。私は命をかけてここにきた。運命に従う為に」
その間、ジャンヌさんはヤンさんをじっと見つめている。
「ヤン、自分語りは結構ですわ。彼女に言う事があるのではなくて?」
「そうでした。という訳でカンナ。貴方をDr.ケンシロウの元へ連れて行きます」
「…嫌だと言ったらどうするつもりですか?」
「生憎、Dr.からは貴方を丁重にお連れする様に言われています。ですが、私達はそれを望んでいません。どうでしょう?ここは実力行使で貴方を捕まえるというのは?守護者狩りも伝統の一つですからお付き合いを。ですが、9対1というのも面白くありません。こう言うのはどうでしょう?1月から順番に満月の夜、私達が1人ずつお迎えにあがります。それを無事退けられたら貴方の勝ちにしましょう。いかがですか?」
「わかりました。その提案に乗ります。でも、私だけじゃありません。全校生徒が貴方達の敵になりますよ。それでもいいならお受けします」
「えぇ結構です」
「ちょっとヤン良いんですの!?もし、カンナさんが怪我でもしたら私達はDr.に逆らう事になるんですのよ!」
「別に構いません。私には結末がわかっていますし、カンナが死のうと私の目的に害はありませから。どうでもいいんです。なら面白い方を選びましょう」
「貴方って案外快楽主義者ですのね。ドン引きですわ」
その後、後ろから声が聞こえてくる。
ゴリラの守護霊を連れた男子生徒のようだった。
確か、マルソさんだっただろうか?椅子に座り揺らしている。
「あのさ、俺疲れたんだけど。しかも雰囲気最悪だし、パーティーなんだから楽しくいこうよ!楽しく!」
「はぁここにもいましたわね、快楽主義者が。長話はもうお終いにしましょう。ではまた会いましょうカンナさん。貴方が私達の仲間に加わる人を心待ちにしていますわ」
そのあと、守護者の皆さんが入り口から出ようとした時、シェパード先生が慌てて入り口を塞ぐようにやってきた。
「待ちなさい!!早すぎる。話が違うじゃないか、守護者狩りは対象が卒業後という話だっただろう」
「シェパード先生ですか。ご無沙汰しております。正直言って私達は役目を終えたも当然です。私達は自らの意思で戦いを選択しただけです」
「君の考えを押し付けないでくれ。ガストンを返しなさい。皆を解放し親元へ返しなさい。どれだけ皆さんが心配していると思ってるんだ」
「無理ですよ。貴方も見たでしょ?皆もう戻れるような体ではありません。この島で生きていくしかない。私とジャンヌ以外は皆なくしてしまいましたから。Dr.が守護者を集めたのはそれが目的でもありましたから」
その言葉にシェパード先生はガストンさんを見つめているがガストンさんはシェパード先生の目線を避けているようだった。
呆然と立ち尽くす私達の前に守護者の皆さんはスタスタと通りすぎていく。
最後にヴァンダさんが出ようとした時、アポリナルさんは「ハッ」と気づき彼女の腕を掴んでいる。
「ヴァンダさんどうしたん、そのガスマスク?そんなもんつけとらんやっかやろ。何で制服姿なん、おかしいやろ」
「アポリナルか、久しいな。…いいかアポリナル、彼女を守ってやってくれ。お前達は私のようになるな。私の気持ちを託せるのはドラゴニクヴァルガンのお前達だけだ。頼みぞ」
「わかった、寮の皆んなでカンナちゃんを守るから安心しとき。…どうしてこないな事になってしまったんや」
その言葉にヴァンダさんもアポリナルさんも悲しそうな顔をしている。
残った私達はこの状態ではパーティーも出来る訳がなく、これからの不安を抱えながら帰路へと着いた。
私はすぐ寮へと戻り、守護者に対する情報を確認した。
(やっぱり写真と違う部分が何箇所もある。包帯、耳当て、眼帯、ガスマスクこれに共通するものは何だ?)
しかし、すぐ答えが出るわけでもなく落ち着かない日々が続いた。
スクールはこれからどうなるのだろうか?
でも、同じように悩みを抱えた仲間がいる事に安心する自分もいる。
そのあと、ニホンで冬休みを過ごし新学期が始まった。
No.12を読んでいただきありがとうございました。
これで第2部のプロローグ的な物も終わりですね。これから守護者との戦いになっていきます。
一応、戦闘→回想→戦闘と言った流れで守護者1人ずつ描写したいと思っています。
回想では時系列順にやって守護者の過去がわかるような演出にしようかなと思っています。
例外もあるっちゃあるんですけどね。
次はNo.13「運命」をお送りします。




