No.11 幼馴染
朝いつも通りバスに乗り、スクールを目指している時だった。
「あれ?珍しいな、こんな時期に飛行機が来るなんて」
そう、クロスロード空港の近くに飛行機が飛んでいるのを見たのだ。
白をメインに黒と赤のラインが入った飛行機だった。
飛行機の一番後にある垂直尾翼には日の丸のような物が見えたのでもしかしたら日本の飛行機かもしれない。
カラーリング的に似たような物は見た事あるが、少し違う所もあるので特別な飛行機なのかもしれない。
気になりはするが、もうすぐスクールに着くので飛行機を見送り、校舎内へと入った。
昼休みになり、食堂で昼食を取ろうとした時だった。
なんだが食堂が騒がしい。
近くにヒデキチさんがいたので声をかけてみる事にした。
「ヒデキチさんもこれからお昼ですか?なんだが騒がしいですね。何かあったんですか?」
「カンナ殿か。今日のメニューなのだが珍しくうな重にするらしくてな。海外では見慣れないから皆驚いていたのだ」
「昼食にうな重ですか!?これはまた豪勢ですね。でも、メニューの予定表だと違う物でしたよね?和食でしたけど」
「なんでも大切なお客様の好物だそうだ。あちらにいらっしゃるだろう?」
ヒデキチさんが見ている方向を見ると、トワコ先生とダイスさん。
そして、坊主頭に知的に見える「キリッ」とした目を持つ20代半ばの男性だった。
青いYシャツに肩や胸に飾りがあるのでお巡りさん?というか自衛官のように見える。
その彼のいるテーブルには軍帽と何段も積み上げられた重箱があった。
いや、重箱なのだから積まれてもおかしくないのだが、凄い速さでうな重を平らげ今もなお積み上がっている。
「すみません、おかわりお願いします」
と手を上げ、調理師さんに声をかけているようだが近づいてきた調理師さんは謝りながらこう言っている。
「申し訳ありません。これ以上になるとお時間をいただきますし、生徒の分がなくなってしまいますので。まさか大食らいが2人もいるとは思いませんでした」
「ちょっとコテツ食べすぎだよ。さっきもお菓子食べてなかった?将来が心配だよ、太っちゃうよ」
と言いながらダイスさんがコテツさんのお腹をツンツンしている。
「まぁ、まぁダイス君。むっくんもずっと貴方を探し回って疲れてるみたいだし、折角来てくれたんだもの。スタミナつけて帰ってね」
「ありがとう、とわちゃん」
どうやらトワコ先生とコテツさんはお互いあだ名で呼び合うぐらい仲がいいようだ。
学生時代からお互い知っていた見ただし、幼馴染というやつだろうか?
それにコテツさんをむっくんと呼んでいる。
やっぱり彼の顔立ちやあだ名に既視感があった。
昔、テレビで見たことある筈なのだが思い出せない。
思い出せるかな?と思いコテツさんに近づいてみる事にしたのだが、その行動に不思議に思ったのかヒデキチさんが声をかけてくる。
「カンナ殿、どうされてのだ?」
「いえ、あの人見覚えがあるなと思って。昔、ニュースで騒がれていませんでしたっけ?」
「確かに、もう何年も前の話になるだろうな。今でも将棋を指しておられるのだろうか」
「将棋…あっ!?」
そう、そうだ。やっとコテツさんの本名を思い出す事ができた。
珍しい名前の筈なのに、あだ名が印象に残っていて出てこなかったのだろう。
多分、名前の数字を全部足した数があだ名になっていたからさらに混乱してしまったのだろう。
さらに彼の近くに行き、確認を取ろうとする。
母譲りの好奇心からか、確かめずにはいられないのだ。
「あら、カンナちゃんも昼食?よかったら隣使う?」
と言いながら、トワコ先生が椅子を引いてくれる。
「ありがとうございます。あ、あのもしかして貴方は元プロ棋士のミヤベ・ヒフミさんですか?」
「驚いた。まさか今でも知ってる人がいるなんて思わなかった。改めて自己紹介を。航空自衛隊、特殊部隊所属、コードネーム:コテツ。本名は先程の通りミヤベ・ヒフミと申します」
と丁寧にお辞儀までしてくれる。
ミヤベ・ヒフミさんは数々の記録を持つ、プロ棋士だった。
高校を卒業する18歳までに8段と4冠を達成。
プロとしてのデビューも一番早く、13歳7か月という記録は今でも破られていない。
彼の将来を楽しみにしていたファンも多かっただろうが、自衛官になると志した彼が今後プロ棋士として活動するのは不可能だった。
その為、高校卒業と同時に引退したのだ。
当時の人達は納得している人もいれば、納得出来ない人もいた。
しかし、本人はそれに関係なくこうして自衛官となっているのだから受け入れなければいけないのかもしれない。
「ご丁寧にありがとうございます。ヒフミさんも霊感があったんですね。なんとなく親近感があったのはそのせいだったのかもしれません。テレビに映る貴方は凄く印象に残っていましたから」
「あれは私の実力ではない。いつも対局中に霊の声を聞いてその指示に従ってただけだ。本当の私を見たら皆落胆するでしょう。だから将棋を指すのはやめたんだ」
「あら、そんな事ないと思うわ。むっくんは殆ど試合に集中しててアドバイスなんて聞いてなかったでしょ?というか、ノイズだって言ってなかった?」
「まぁ、確かに」
「あれ?そういえばコテツさんの守護霊ってどこにいるんですか?ここにいらっしゃいませんよね?」
「瑞希さんなら空港で待っている。元々彼女は本来の姿を見せるのが嫌なんだそうだ。だから、武器の切り替えも霊体を挟まずに出来る」
『確かに瑞希を上から見ると中々グロいからね。そういえばむっくんはもう帰るのかい?ゆっくりしていけばいいのに。ハニーも2人がいないと寂しがるよ』
「とわちゃんには悪いがダイスが居なくなって皆混乱している。早く本土に帰還しないと私まで上官に大目玉を喰らうからな」
「悪かったよコテツ。まぁ、いい気分転換になったかな。よかったらカンナも見送りにきてね。日が沈む前には帰るからさ」
「はい、勿論です。大切なお客様ですから」
その日の夕方、私はトワコ先生と一緒に空港へと向かい見送りをしようとしたのだが、何かアクシデントがあったようだ。
『コテツさん、嫌です!!私はこのまま飛びますよ!!』
「瑞希さん、早く霊体に戻ってくれ。燃料がない。補充の為に一緒霊体に戻らないと。燃料は切り替えも共通なんだから」
と瑞希さん?とコテツさんが口論している。
朝飛んでいた飛行機の正体は守護霊だったという事か。
(コテツさんの守護霊。白、黒、赤。飛ぶ物?鳥?あっ!?)
「あの、もしかしてヒフミさんの守護霊って鶴ですか?」
『えっ、なんでわかったんですか!?あわわ…』
「瑞希さん、これで詰みだ。素直に戻ったらどうだ?」
その言葉に瑞希さんは霊体の戻るもののヒフミさんの後ろに隠れている。
私が近づいて見ると、
『もうお嫁にいけません!!』
と言いながら遠くへ飛んで行ってしまった。
「瑞希さん、顕現せよ。これで燃料は大丈夫だな。待たせたなダイス。さぁ行こうか?」
「うん、またね2人とも。大丈夫、僕達はまた君達の元へ帰ってくるよ。また会おうね」
とお互い手を振りながら2人に別れを告げた。
「僕は戻ってくる」それはどういう意味があるのだろうか?
疑問に思いながらも2人を見送った後、トワコ先生と一緒に寮へと戻った。
No.11 を読んでいただきありがとうございました。
コテツの本名は宮部 一二三と言います。
色々モデルが混ざっていますが、岩本徹三中尉がモデルの1人となっている小説の主人公のパイロットの苗字が宮部と言います。
その宮部は元々囲碁棋士を目指していたので、将棋に変えてコテツの本名を有名な棋士の名前である一二三にしました。
モデルの棋士の方か引退されていますが、現役中に勝負飯として食べていたのがうな重でした。
むっくんとあだ名を付けたのはモデルの棋士の方もあだ名があるからですね。
むっくんは道産子の北海道出身です。唐揚げをザンギと言います。
次はNo.12「お迎え」をお送りします。10/23、16時投稿予定です。
やっとおまけの守護者の皆んなを出せますね。お楽しみに。




