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21話 鍛冶屋の親子と炎刃刀

本日2話目です。




マルルは魔法書を買うために毎日魔法の館で手伝いをしている。


始めは店内の掃除だけという話だったはずがどうも店主のお婆さんにマルルが気に入られたとかで倉庫の片付けやら仕入先への荷物の受取などのおつかい的なこともさせられているそうだ。


マルルがそれでいいのなら僕としては止める気はないのだけど、これが不思議でお婆さんと何故か打ち解けているようなのだった。


なによりあのお婆さんがマリリンという可愛らしい名前だったことが僕にとっては一番の衝撃ではあったんだけど。


「マリリンさんは魔法の知識もすごいんだよ?私マリリンさんに魔法が使えるように教えてもらうの。だからしばらくはポーツとは別行動になっちゃうね」


自分が決めたこととはいえ寂しいという感情が無いわけではないみたいなので、これも将来二人が支え合っていくためには必要なことだと言い聞かせて納得した。


僕だってマルルが居ないとなると寂しい。


でも森で会ったブラックエルフのギャダルのように得体の知れない者といつ遭遇するかも分からない。


マルルが魔法を使えるようになって次のステップに進める時までに僕は今以上に強くなっておきたい。



◇◇◇◇



一人で冒険者生活を送って数日、僕はGランクからFランクへ昇格することが出来た。

途中からマルルは依頼を受けるよりもマリリンさんの店の方を優先するようになって差がついてしまった。

何か月も依頼を受けないと冒険者登録を抹消されると聞いていたのでマルルはたまに町の中で済んでしまう依頼をこなしてはいる。


それでも毎日依頼をこなし、魔物の素材を売るだけでも僕はそれなりにお金を稼ぐことができていて今ならマルルに魔法書を買ってあげられるくらいの蓄えはある。


でもそれは必要ないとマルルに言われてしまったので僕は自分の武器を新しくすることにして、町にある鍛冶屋の元へと向かった。



ここがスザン鍛冶店か。


確かに店の中から金属の叩く音が外まで響いている。

古めかしい建物で所々傷んでいて手入れされていないことがわかる。

入口付近に取り付けられている剣の意匠が描かれた看板は片方の留め具が役割を果たしておらず傾いている。


ほんとうにここがおすすめなのだろうか。


僕はまだこのネクトスの町には明るくないので知り合いとなると冒険者ギルドの受付かマリリンさんくらいだ。

ギルドでも聞いてみたけど商業ギルドとの軋轢を生むとのことで鍛冶店の全てがおすすめです、という決まり文句のような返事しか返ってこなかった。


それに比べればマリリンさんから得た情報は、スザンの鍛冶の腕は間違いないとのことだったのでそれを信用してここに辿り着いたのだ。



今では少し疑心暗鬼になっているが、入る前から考えても仕方がないと思い足を踏み入れた。



建物の中も外見に負けじとボロイ。


それに炭を多く使っているからか煤により壁や床は黒ずんでいる。


店の中には剣や槍、斧といった様々な武器が置かれている。

それ以上に木箱が多くてどうやって選べばいいのかも分からないのでとりあえずスザンという人物に相談しようかと思ったら僕よりも少し大人びた女の子が近づいてくる。


赤い髪に煤まみれで頬を黒くしていて熱いからかタンクトップ1枚の格好は少し目のやり場に困る。

それにマルルよりも主張が強い胸には男として少なからず魅了されずにはいられなかった。


「いらっしゃい!この鍛冶屋は初めてかな?」


「はい、魔法の館のマリリンさんにおすすめされてきたんですけどスザンさんはいますか?」


「あ~マリリン婆さんの紹介か。親父なら奥で鉄叩いてるところだから私が要望聞くよ。それでどういったモノをお探しで?」


「あ、はぁ。剣を新しくしたいと思ってるんですけどどんな剣がありますか?」


そう聞くと、よっしゃ!と言って手を叩き、至る所から木箱を集めてきた。

あの体系なら・・・うん。あ、腕の長さ的に・・・とか呟きながらさささっと5箱の木箱を用意してくれた。


やっぱり木箱の中に武器が入れてあったんだな。

外に出されていた武器はどれも煤で黒くなっていたから心配していたんだよね。


箱の蓋を外し、それぞれ紹介してくれる。


「これがよく使われている両刃の直剣ミドルソード。それでこっちが片刃の刀という剣。次が曲剣のカットラスでこっちは鋼製のロングソードと最後に赤い刀身のがうちの自慢の剣、炎鉄を使った炎刃刀だ。どれか気になるやつはある?」


一気に5つの剣を紹介され、一番気になったのはやはり炎刃刀だ。


「この炎刃刀っていうのは刀とは違うんですか?」


「まぁね、自慢の剣というだけはあってこの刃は熱に強い材質なんだ。だから熱を帯びたまま切りつければそれだけ攻撃力が増すってことだよ。魔法使いに火の魔法でエンチャント出来ればそれだけで1ランク上の性能に出来るよ」


なるほど、ということは僕がエンチャントを使うことが出来れば自分で攻撃力を上げられるということか。

それにしても剣にもいろんな種類があるんだな。

村で見たことがある剣と言えば最初に紹介してもらったミドルソードくらいだ。


それによく見たら村で売っていたミドルソードに比べて刃の光沢が鮮やかだし、見るからに出来の良さが素人目でも分かる。


カットラスも自分の体形で考えれば使い勝手は良さそうな気もするけどあれだけ曲がった剣を扱いきれるかが不安だ。


よし、店の自慢の一品らしいし炎刃刀を買おう。



「この炎刃刀が欲しいです!」


「ふふ、そう言うと思ったよ。じゃあ金貨100枚になるけど支払いはどうする?」



たっけぇー!!!



そりゃそれくらいの価格はするのかもしれないが、想像以上に高くて予算が足りない。


値段を聞いて衝撃を受けていた僕の顔を見て鍛冶屋の女の子は不信そうな顔をしてくる。


そのやり取りを聞いていたのか店の奥から顎髭たくましいガタイの良いおっちゃんから声がかかる。


「おい、スピル!!てめぇまた吹っ掛けやがったな?バカヤロー」


「げっ!?親父!!なんでこっち出てきてんだよ!」


「てめぇがまた客からぼったくってるんじゃねぇかって俺の鼻が利いたんだよこの野郎!おいそこの坊主、その炎刃刀なら金貨30枚で売ってやる。払えるか?なんなら分割でもいいぞ」


「あっ!バカ親父!なに勝手にそんな安くしてんだよ!」


「どっちがバカだ!金貨100枚をすぐに払える冒険者なんて数える程しかいねぇんだぞ?ちょっとは商売を学びやがれ!」


「なんだとこのバカ親父!安くし過ぎて店の経営がやべぇってこと分かってんだろうな?炎鉄の材料費だけでほとんど利益取れてねぇじゃねぇか!」


「んだと?炎鉄の材料費は確か・・・うっ、だがもう金貨30枚って客に言った以上これより貰う気はねぇ!ほらどうすんだ坊主?」



「か、買いますっ!!」


もうこのやり取りでこの二人の大体の苦労が理解できた。

それであれば金貨30枚というのは破格の値段なのだろう。


買うと告げたあとこの二人は目を合わせてからこちらに向かって「「まいどっ!!」」と息ぴったりの口上を述べた。


その笑顔からは今さっき破格の値段だと確信したことが揺らぐほどに。


本当はもっと安いんじゃ・・・あぁ不安になってきた。

でももう買うと言った手前後戻りも出来そうになく、冒険者の稼ぎをほとんど使う羽目になってしまった。


「私はスピル。炎鉄製の武器の手入れは他の鍛冶師じゃなかなか上手くは出来ないからうちを頼ってね!」


そう言って、固定客となった僕は新しい武器を手に入れた嬉しさ半分、なんだか残念な気分も併せて持って帰るのだった。

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