3話 再び
歓迎会から土日をはさんで月曜日になった。やっと今日から本格的な授業が始まる。うちの大学は5限まで授業がある福祉系の4年制大学だ。
俺の1年前期の月曜時間割は2限の現代史と4限の生物、5限の現代社会と福祉、というような時間割構成にした。
2限の授業が開始する時間は10時50分からだ。俺は割と時間に余裕を持って行動する方なので授業開始の20分前くらいに大講義室という地下にある教室に着いた。
ちょっと早く来すぎたか…
俺は一番後ろの入口側に近い席に座った。教室にはまだ10人程度しかいなかった。
綾人まだ来ないよなぁ〜
実はこの授業は綾人も履修している。だがバス時間に合う電車にしか乗れないので今はまだ電車のなかだろう。
暇なのでスマホをいじる。
ふと、体育館で会った彼女を思い出す。実は土日の間ずっと頭からその子が離れないでいた。あの甘い匂いと懐かしい感じが漂う笑顔が忘れられないでいたのだ。
なんでた?
当たりを見回してみる、斜め前方の方に彼女に似た後ろ姿の子がいた。少し胸が高鳴る。
「おはよー」
「…! お、おはよう」
「何ビクッてなってんの?笑」
「いや、ぼーっとしてた…」
ビックリさせんな…!
その頃には大講義室は100人以上が講義室内にいた。
綾人が来てその5分後に授業が始まった。担当の先生は60代前半のおばさんだった。
「なんか顔ちょっと怖くね、テスト難そう…」
「どうだろうな、簡単だといいなぁ」
今回は1回目ということで授業の説明や成績の評価の付け方についての話のみのガイダンスだけで終わった
荷物を片付けていると斜め前の子が席を立つ。
……
彼女ではなかった。胸の高鳴りが少し冷めたのがわかった
「学食行こ〜、腹減ったわ〜」
「だな 俺も腹減った」
ほかの授業もガイダンスだけだったのか、まだ12時になっていないのに学食は結構人でいっぱいだった。
幸いにもまだ空いてる席はあるようなので誰かに取られないうちに荷物を置いて食券を買いに向かう。
学食のメニューはA定食、B定食、日替わり定食、アラカルト、イベントメニュー、ラーメン類、うどん類、そば類、カレー、などがある
… ピッ
俺はカレーを選んだ。
理由は2つ。
1つは定食類、アラカルト、イベントは既に売り切れていたからだ。
2つ目は、俺はカレーが一番好きだからだ。
以上の理由でカレーにした
「カレーとかどこでも食えるくね?笑」
「好きだから別に関係ない、いただきます」
綾人はちゃんと弁当がある。毎朝作ってもらえるってお前幸せだからな
「お、いたいた」
夏と智亮、七音と暁人がやって来た。この4人は2限の授業で文化人類学という授業を受けていたらしい。
七 「マジであいつ何言ってるかさっぱりわかんなかったわ〜、ずっとスマホいじっていたわ 笑」
暁 「シラバス見たらレポート課題だけみたいだったから履修したけど、話の内容意味不だったなぁ」
智 「夏は途中で寝てたもんね〜」
夏 「うん!」
七 「てか、可愛い子探そーぜー」
もしかしてここのメンツってやばいやつらが集まった感じかな?
1時が過ぎると学食はかなり人がいなくなる。さっきまでうるさかった食堂内は20人程度しかおらずがらんとしていた。
3限は6人とも空きコマだ。みんなスマホをいじっている、みんなSNSを見ることに必死のようだ。
俺もSNSをやっていない訳ではない。ただ、見るものがあまり無いのだ。チャットアプリで会話などあまり得意ではないという理由で連絡を取り合う人もいない。
5人が主に見ているのは自分の今の気持ちや出来事を発信するバズッターと近況をシェアしたりするインスタントグラムだ。
一応俺もやってるよ…ただフォロー数が少ないからそんなに見れないんだよ…
だから友達といる時スマホをいじるやつはあまり好きじゃない
4限が始まる20分前の14時40分になり、そろそろ移動する時間帯となった。
俺、綾人、智亮は生物。夏、七音、暁人は哲学だ。
それぞれの教室に移動する。
生物は先程の現代史同様、大講義室だ。
入口側の席にはもう座っている学生が結構いたので真ん中の列より少し右側の一番後ろの席に座ることにした。
俺たちが座った席から4列前の席に見覚えのある髪型と後ろ姿の学生を見つけた。
「あ、蒼だ〜 蒼も生物受けるの?」
由衣佳だった。
声はあまり張りたくないのでとりあえず頷いとく。
「相変わらず声小さいなぁ」
頷いただけだから、声出してねーから
そんな由衣佳に気づいて彼女の隣に座っていた子がこちらを振り向く
……あ、あの子だ……
鼓動が早くなる、目がその子を離そうとしない、
その子は「あっ」という顔をして俺に向けて会釈をする。俺も正気に戻り会釈をする。視線を外す、目を合わせられない…不意打ちすぎた。
授業が始まり、例によってガイダンスのみの授業内容だった。だが、俺はそれすらもちゃんと聞くことが出来なかった。ずっと彼女の背中を見てしまっていた。
どうしたんだ俺…さすがにキモすぎだろ…
本気で変だ。
生物が終わり片付けをする。
「バイバーイ」
「じゃ」
すると彼女がこちらを見ようとしたのですぐに由衣佳から視線を外して教室を後にする。顔が熱い。
5限の授業が始まった。担当教員は小渕というハゲメガネだ。
まだドキドキしている、集中出来ていない。なぜなら毎週月曜4限は彼女に会ってしまうことが確定したのだ。俺の心はよく分からなくなっている。
寒いオヤジギャグをちょいちょい挟んでくるハゲメガネの話が全く入ってこない。こんな感覚になったのは初めてだ、風邪も引いたのか、いや違うなぁ…
「やばっ、なんかダメだわ、あの先生のオヤジギャグ寒いんだけど笑っちまう」
綾人お前は幸せ者だよ
俺はこのモヤモヤしたなんとも言えない感情がなんなのか、答えを見つけ出すことに精一杯だった。




