2話 歓迎会
今日も大学だ。しかし学校にいるのは1年生のみ、俺はため息をつく…
「はぁ…」
「おはよ! どうした、元気無くね?」
声をかけてきたのは綾人だ。
今日は1年生だけが登校日なのだ。なぜなら、新入生を歓迎するということで近くの旅館に1泊して友達づくりなどが出来るように親睦を深めようとのこと。しかも午前中は学校で国数英のテストをする、それから旅館に行く。
「もう、帰りたい…」
「俺も帰りたい、てか、東根からこの荷物持ってくんのめちゃくちゃ恥ずかしかった…」
「激しく同意」
「んじゃ、行くかぁ…ふあぁ…」
欠伸をしている綾人と一緒に重たい足を動かす。
テストも無事終わり、あとは旅館に行くだけ。
先生から泊まる時の部屋割りのプリントを渡され見てみると
「507号室か」
「部屋一緒だな!安心した〜、俺人見知りだから〜」
俺は綾人と一緒の部屋だった。俺も人見知りが激しいほうなので一安心していた。しかし…
「暁人〜部屋何号室〜?」
「503だな、七音は?」
「え! 部屋一緒じゃねぇじゃ〜ん! 俺507号室だよ〜」
「まぁ、しょうがないだろ学籍番号順っぽいし」
え、マジでか…俺と綾人は顔を見合わた。
あの二人は1番関わりたくないと思っていたのに部屋が一緒だなんて…
そうあの二人は入学式の時に一際目立っていた2人組だ。
俺は旅館先で何も起こらない事を願ってバスに乗った。
旅館に着き、荷物を部屋に置き、大広間に全学部学科の1年生が集まりそこで先輩方の話を聞いてそれから学長の話を聞いて…とりあえず退屈だった。
これらが終わりレクリエーションを割り振られた部屋で各学科ごとに行った。
そこで人は見た目によらないとはこの事だなと感じる。
レクを行う際班が決められていて俺は綾人と一緒だったのだが紫髪のピアス男とも一緒だった。名前は鴫原七音。見た目は怖いが言っていることがいちいち面白い、そして何よりレクを真剣に行う姿勢に関心した。
ちなみにいつも一緒にいる金髪ピアスは高校から一緒らしい。名前は佐々木暁人。
俺と綾人はすっかり2人と打ち解けた。
ご飯も食べ入浴の時間。ここは宮城でも有名な旅館、もちろん温泉がある。だが俺は温泉があまり好きじゃない。理由は簡単…人が多いからだ。というか俺は風呂は1人で湯船に浸かっていたいタイプだ。
部屋のみんなは温泉に入りに行くとの事だったので俺はゆっくり部屋の風呂に浸かることが出来た。
「はぁ…やっと一人の時間だ…」
「ビビビビッ、ビビビビッ、ビビビビッ!」
誰かの目覚ましが鳴っている。もう朝になったらしい、みんなまだ寝てる。綾人がセットしたであろうアラームを止めて俺は一足先に準備する。あとでワタワタするのは嫌だからだ。
6時半頃にみんなが起きたやっぱワタワタしている。早起きして正解だった。
部屋から出て朝食を摂るため大広間へ向かう。
前を歩いている女子2人たぶん違う専攻の人だろう、でもなぜか見覚えがある女子がいる。
あ、そういえば…俺は思い出したのでその子には話しかけないで歩いていたが、あちらが気づいてしまった
「あ、蒼! いたんだ、声掛けてよ〜」
「うん、おはよ」
この子は高校が一緒でクラスも一緒だった菅原由衣佳だ。高校ではソフトテニス部の部長で、顔は童顔で可愛いのでかなりモテていた。ちなみに入学式開始直後に席に着いたあの人物は由衣佳だ。
久しぶりに会って少し懐かしく感じた。
そして由衣佳の友達であろう子はスマホをいじっていた。人見知りなのかもしれない…
そう思い俺は由衣佳たちを後にして大広間に向かった。
朝食を済ませ、またレクをしてそれが終わったら帰りの支度。大広間に集まり学生リーダーたちの話を聞いて…だるすぎ。
全ての過程が終了しバスに乗る。
「なぁ、体育館でサークル紹介するらしいんだよね、行かね?」
サークルか…まぁとくに入りたいとこ無いけど行ってみてもいいかもなぁ
「いいよ」
学校に着いて俺たちは体育館に向かった。
「どうですかー!やりがいあるサークルですよー!」
勧誘がすごい。そして人もすごい。
こんなんだったら帰ればよかったかも、とか思っていると後ろから声をかけられた
「蒼、また会ったね。どこに入るの?」
由衣佳だ。
「決めてない、そもそも入るかもわかんない」
「そっかー」
隣に目を向けるとさっきも一緒にいた子がいた、スマホを見ながら周りをキョロキョロしている。誰かを探しているようだ。
「あ、なんか高校の友達と一緒に回る予定らしいんだけどまだ来てないみたい」
そんな話をしていたらいつの間にか綾人が見当たらなくなってしまった。この人混みの中探すのは面倒なので2人といることにした。
「まだ来ないみたいだね」
「うん、ごめんね。なんか迷惑かけて」
「全然大丈夫だよ!」
なんだろうこの子…すごい懐かしい感じがする…。
顔は割と大人っぽくて控えめな感じだ。そしてなんだろう優しいオーラがある。
「ちょっとトイレ行ってくるね」
由衣佳がトイレに行った。
俺、人見知り。たぶんあっちも人見知り…
なんとも言えない空気が二人の間を流れる。こういうの苦手だ…
意を決して俺はカバンの中からグミを取り出し
「グミ食べる?」
「え、あ、ありがとう」
あぁ、やっぱ俺コミュ力低いわ…話しかけるためのアイテムがグミって第一印象かなりやばいだろうな
時間を巻き戻したいと思っていると
「あの…由衣佳ちゃんの友達…?」
「え、あ、うん。高校とクラス一緒で」
突然話しかけられ驚いたがそれよりも…ものすごく落ち着く声だ…そう思った。
「私、由衣佳ちゃんと同じ言語聴覚専攻の後藤卯衣です」
「あ、俺は保健専攻の鷹平蒼です」
ニコっと笑ったその子から目が離せなくなっている自分がいることにすぐ気づいた。何事も無かったかのように目をそらす。ちょうどその時由衣佳がトイレから帰ってきた。
「ごめ〜ん、混んでて遅くなった〜」
「大丈夫、ちょうど自己紹介して終わったとこだから」
「そうなの?」
「うん、したよ」
珍しい〜みたいな目を向けてくる由衣佳。いや、あの状況で喋んないのは俺的に辛い。まぁ、わかんないと思うけど…
「あ! 着いたって」
「よかったね! じゃあ楽しんでね〜バイバ〜イ」
由衣佳に手を振る彼女は俺の方も見て手を振ってくれた、俺も振り返す。
そして立ち上がって友人の元に行く彼女から控えめな、でも、頭に焼き付くような甘い香りがした…まるで金木犀のような…




