第9話
ブックマークやいいね等とても励みになりますのでよろしくお願いいたします。
数分後に意識を取り戻したアイに、早速新たに使えるようになった魔法を試し撃ちしてもらうことにした。彼女はまずイフリーによって使えるようになった炎魔法を使ってみるらしい。
「め、メガフレイムっ!!」
詠唱と同時に空に向かって掲げたアイの手の上に巨大な炎が現れた。
「おぉっ、めちゃくちゃデカい炎が……。これはさっきみたいなゴブリンの大群の殲滅には向いてるな。」
「お、おふぅぅ……ぜ、ゼラ様。も、もう私の魔力が……。」
今のアイでは魔法を一発撃つのが限界らしく、巨大な炎は、ぽしゅっと情けない音を立てて消え去ってしまった。彼女の魔力が完全回復したのを見計らって水と氷の魔法も試したが、どちらも強力すぎて一回発動するだけでアイの魔力が無くなってしまうことが判明した。
「アイも俺と同じく、しばらくの間魔力の底上げに注力したほうが良いな。」
「め、面目ありません。」
「レベルアップで上がる魔力量なんて高が知れてるし、できることなら大量に魔石を取り込んで一気にステータスアップをしたいところだが……。そんな都合良く魔石持ちの魔物なんて出てこないよなぁ。」
「あ、あのゼラ様。魔石の事でしたら、もしかすると何とかなるかもしせん。」
「どういうことだ?」
「この世界にはダンジョンという迷宮が出現するんですが、そのダンジョンではすべての魔物が魔石を落とすという話を聞いたことがあります。」
「ダンジョン……名前は聞いたことはあるな。すべての魔物がってことは、ゴブリンでも落とすのか?」
「そうらしいです。」
「それは俺達からすればかなり美味しい話だなぁ。ただ問題はダンジョンがどこにあるかって話だが……。」
「他の人間に聞いてみるのは、だ、ダメでしょうか?」
「……いや、良い案だと思う。なんにせよ俺達には情報が無さすぎる。」
背中の紋様さえ見られなければ、普通に話せるはずだし……そうと決まれば一度街道に出て誰かが通るのを待ってみるか。
「アイ、俺は今から街道に出て他の人が通るのを待ってみる。アイは魔物に襲われないように少し離れた木の上で待機しててくれ。」
「了解しました。」
そして早速俺は街道に出て通りすがる人を待ってみたが……来るのはまぁ、相も変わらず魔物ばかりだ。そこで一つ思いついたことがある。
「ちょっと派手にやってみるか。」
今のところ、派手で目立つ魔法は黒雷だな。真っ黒な雷を落とす魔法だし、辺りに轟音が鳴り響くから、その音を聞いて人が駆けつけてくるかもしれない。
「黒雷、黒雷っ、黒雷ッ!!」
襲い掛かってきたゴブリン一匹一匹に黒雷を落としていると、魔力感知に新たな反応が引っかかった。この反応は多分人間だと思う。目論見は成功だ。
襲い掛かってきたすべてのゴブリンを片付けて、一つ息を吐いていると、馬に跨った騎士の人たちがこちらに向かって駆けつけてきた。
「キミっ、魔物に襲われていたようだが大丈夫か?」
騎士の人達を率いていた赤髪の女性が、こちらを見下ろしながら問いかけてくる。
「大丈夫です。魔法が使えるので。」
「そうか、キミは魔法使いだったのか。雷が落ちるような音がドンドンと鳴っていたから、とんでもない魔物でも現れたのかと思ったが……私の思い過ごしだったらしい。それはそうと、キミはどこに向かっていたんだ?ソレイドか?それともダームか?」
「実は向こうにある村に住んでいたのですが、村長からダンジョンに潜ってお金を稼いで来いと言われてしまいまして。」
「魔法が使えるならば稼ぎ頭にされるのも分からなくはない。しかしダンジョンか……。」
「近くには無いのですか?」
「私達が駐屯しているソレイドに一応ダンジョンはある。だが、あそこは今厄介な盗賊団が根城にしているんだ。」
「盗賊団ですか……。」
「あぁ、我々もなんとか討伐しようとはしているが、ダンジョンの構造も相まって四苦八苦しているところだ。」
「貴重な情報ありがとうございました。ソレイドに行って、ダンジョンについて調べてみます。」
「今はダンジョンは盗賊団がいるから閉鎖中だが、近々私達が討伐する。ダンジョン探索はその後にしておくんだぞ?」
「分かりました。ありがとうございます。」
「ん、キミも気を付けてな。では私達はソレイドに戻る。」
深々と頭を下げると、騎士の人達は一斉に踵を返してソレイドという街の方向へと駆けて行ってしまった。彼女達の後姿が小さくなった時、俺はアイの名前を呼んだ。
「アイ。」
「はいっ、控えておりました。」
名前を呼ばれたアイは、近くの木の上から飛び降りてすぐに俺の元へと駆け寄ってきて跪く。
「あの赤髪の女の人は俺のことをだいぶ怪しんでたけど、ダンジョンがソレイドっていう街の中にあるって教えてくれたよ。」
「如何しますか?」
「夜中に忍び込む。それまでは森の奥で魔石を持ってそうな魔物でも探そう。あと、オークを狩って、食料をある程度持ってから行きたいな。」
「承知しましたゼラ様。」
そして俺とアイは、辺りが真っ暗になる夜まで森の中でひたすらに魔物を倒し、魔法のスキルレベル上げと自分自身のレベル上げに奔走するのだった。
◇
辺りがすっかり真っ暗になった頃、俺とアイは動き出した。今までひたすら魔物を倒していたおかげで、闇魔法(特殊)のスキルレベルは5に上がり、街に潜入するのに都合の良い魔法を手に入れることができた。
「それじゃあアイ、ダンジョンに行くぞ。」
「はいっ!!」
街の場所は事前に確認しておいた。真っすぐに森を歩いて行けば、すぐ関所が見える。関所では街の中に入る人の背中を確認し、罪人の紋などの有無を確認している。俺が行けば……まぁその場で切りかかってくるだろう。
そこで役に立つのが新たに使えるようになった魔法……闇穴。この魔法はある程度の厚さの壁をすり抜けることができる魔法だ。だから関所から見えないところで闇穴を使って、街の中に入る。
「関所は……流石に明かりが点いてるな。こっちに回るぞアイ。足音を立てないようにな。」
「は、はい。」
関所を避けて、明かりも監視の目も届かない場所に回り込んで、街を囲んでいる外壁に手を触れる。
「闇穴。」
魔法を唱えると、外壁に黒い穴が開いた。その穴を潜ると、思惑通り街の中へと繋がっていた。ここからは大胆に行動したって構いやしないだろう。
「さてと、じゃあダンジョンを探すか。」
「ゼラ様、街はかなり広いようですが……場所に見当はついているのですか?」
「あぁ、魔力感知に変に大きな反応がある。多分そこだと思う。」
魔力感知に引っかかったその反応に方向に足を進めると、兵士が2人地下に続く大きな穴の入り口を守っているのを確認した。あの人達に見つからないようにダンジョンに入るのは無理だな。
「あそこだな。警備してる人は無力化しよう。アイ、しっかりついてくるんだぞ。」
「もちろんです。」
その兵士の人達のところに歩み寄っていくと、こっちの存在に気付いた兵士の人が、手にしていた長槍の矛先を俺達に向けてきた。
「止まれ。こんな夜中に何をしている?」
「ちょっとダンジョンを見てみたくて。」
「今は閉鎖中だ。中の盗賊団がいなくなってからまた来ると良い。」
「あぁ、そうだったんですか。警備ご苦労様です。良ければこのお菓子、食べてください。」
俺はポケットから袋を取り出して警備中の兵士に手渡した。
「ありがたく頂こう。って、ん?これは……あぐっ!?」
渡した袋の中に入れていたのは石ころだ。兵士が困惑した瞬間を見逃さず、懐に潜り込んで腹に拳をめり込ませると、あっさり意識を奪うことができた。もう一人の兵士は、こちらに注意が向いていた隙に背後に回っていたアイが首を締めあげている。
「アイ、その人もう気絶してるぞ。」
「あ、も、申し訳ありません。少々力を入れすぎてしまいました。」
「ま、生きてるから大丈夫。さっ、騒ぎになる前にダンジョンに潜るぞ。」
「はいっ、お供します!!」
そうして俺達はダンジョンの中へと足を踏み入れた。ここから出てくるときにいったいどれだけ強くなって帰ってこれるのか……楽しみだ。
この作品に対する感想、意見などなどお待ちしています。こうしたほうがいいんじゃない?とかそういったものは大歓迎です。単に面白くないとかそういった感想は豆腐メンタルの作者が壊れてしまいますので胸の内にとどめていただければ幸いです。




