第5話
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俺と一緒に起きている……と、さっきまで必死に眠気に抗っていたアイだったが、やはり疲労していたという事もあり睡魔には勝てず、眠りについてしまった。
「風邪を引かないようにな。」
俺が睡眠不要のスキルを取る前に作った、ウルフの毛皮の毛布をアイの体にかけておく。そして俺はさっき軽い夕食を取った時にアイから教わっていた、魔法の練習をやってみることにした。
「まずは魔力の流れを手のひらに集める。」
これはさほど難しくはない。普段使ってる魔力感知のスキルは、自分の魔力を周囲に放って、魔力のある相手を見つけるスキルだ。それの逆……自分の魔力を一点に集めるだけでいいんだからな。
「………………。」
手に魔力は集まった。後は自分が使役できる精霊を呼び出すだけ。この時、複数の精霊を呼び出せると、高位の魔法使いの証になるらしい。ちなみにアイはこれで3体の精霊を呼び出したらしいな。
精霊を呼び出す言葉はアイから既に教わっている。
「我が呼びかけに応えよ。属性を司る精霊達。」
その言葉の後に、手のひらに集めた魔力を一気に弾けさせる。この段階で精霊が現れない場合、残念ながら魔法の適性はないとのことらしいが……。
「現れない……か。」
まぁ、やっぱり俺には才能がなかったってだけの話だな。そう諦めかけていた時だった……。
「ごめんなさいねぇ?邪魔者がた〜っくさんいたから遅れちゃったわぁ。」
突然頭上から女性の声が聞こえてきたのだ。
「はっ?」
顔を上げると、そこには夜闇に溶け込むような黒い髪の女性が立っていた。彼女の腰からは黒い翼も生えている。
「こんばんは、ボクちゃん。そしてはじめましてねぇ。」
「あ、は、はじめまして。あなたは、せ、精霊なんですか?」
「そうよぉ?私は闇の精霊。名前はペルっていうの、よろしくねぇ。」
「ぜ、ゼラです。」
「そっかぁ、ゼラ君っていうのねぇ。ってあら?これは運命のイタズラかしら?キミ、人間なのにずいぶん面白いスキルを持ってるわね。」
「魔物誘引の事?」
「そうよそれぇ。うふふ、厄介なスキルよねぇ〜。でも悲観することじゃあないわぁ。」
彼女は俺のことをふわりと抱きしめると、耳元でこんな事を囁いてきた。
「そのスキルはキミの敵じゃない。むしろ味方よぉ?」
突拍子の無いその言葉に俺は少し苛立ちを覚えた。
「その言葉の意味が分からない。散々俺はこのスキルには殺されかけてる。」
すると、彼女は魔物誘引というスキルについて少し教えてくれた。
「うふふ、それはスキルがキミに課している試練。でもこのまま生きてるだけじゃ絶望しか見えないだろうからぁ、希望が見える良いこと教えてあげる。その魔物誘引のスキルは進化スキルよぉ。」
「進化スキル?」
「ある一定の条件を満たすと、進化するスキルの名称ねぇ。」
「ペルはその条件を知ってるのか?」
「うふふ、知ってるけど……キミならきっとすぐに気付くわ。だから自分で見つけて、喜びを噛み締めて……ねっ?」
そう言ってペルは俺の前で妖しく笑う。彼女はこれ以上魔物誘引のスキルについて教えてくれそうにはない。それなら、本題の魔法の適性について聞いてみよう。
「……ところで、俺は自分の魔法の適性を確かめたくて精霊を呼んだんだけど、俺には魔法の才能はあるのか?」
「んもぉ〜適性はありありよぉ?だって炎も風も水も氷も、雷も地も挙句の果てには光の精霊まで、キミの前に現れようとしてたんだからぁ。」
「え、じゃあなんでこの場にペルだけが?」
「ふふふ、どんな属性の精霊も全てを飲み込む闇には打ち勝てないのよぉ?だからぁ、他の精霊の強〜い力を私が吸収して、私だけがキミの前に姿を現したってわけ。」
ニヤリと笑うペルの笑みには、狂気のようなものを感じざるを得なかった。
「でも安心していいわぁ?他の精霊の力を吸収したおかげで、私の力は今までにないほど強くなってるのよぉ。」
「それじゃあ俺は強い魔法使いになれる……のか?」
「それはお姉さんが保証するわぁ。なんなら歴代最強も夢じゃないわよぉ?……っと、そろそろキミの魔力じゃ、姿を顕現していられるのも時間の問題ねぇ。」
名残惜しそうにそう言った彼女は、俺の頬に両手を当てて、まっすぐに瞳を覗き込みながら最後に一言、こんな事を言ってきた。
「もし、本当に力が必要なら……私の名前を呼びなさい?その時はお姉さん張り切って力を貸しちゃうからぁ。」
「分かった。ありがとうペル。」
「うふふ、それじゃあ末永〜く、よろしくねぇゼラ君♪」
その言葉を最後に、ペルは俺の体に吸い込まれるようにして消えていった。それと同時に目の前に文字が書いてある画面が表示される。
『闇の大精霊ペルと契約しました。精霊との契約により闇魔法(特殊)Lv1を覚えました。』
「闇魔法(特殊)か。」
さっき他の精霊の力を吸収したっていうのと、関係あるのかな。……いや、今は深く考える必要はない。俺には魔法の才能があった。その事実だけで十分だ。
闇魔法(特殊)を覚えたと同時に、俺の頭の中にどんな魔法が使えるのか流れ込んできた。まずはそれを一つ一つ試してみよう。
「まずは……黒炎。」
魔法の名前を唱えながら手を前に出すと、ちょうど手のひらサイズの真っ黒な炎が現れた。
「手を近付けても特に熱くはないけど、これ攻撃に使えるのか?」
そう疑問に思っていた時、ちょうど俺を狙って魔物が向かってきていることに気がついた。
「……丁度いい。そんなに強い魔物じゃないけど、試し撃ちにはなる。」
魔物が向かってきている方向を注視していると、茂みからコブリンが姿を現した。
「いけ黒炎。」
放り投げるように黒炎を放つと、それはゴブリンに直撃し、体内に吸い込まれていってしまった。すると、黒炎はゴブリンを内側から焼き尽くしてしまったのだ。
「内側から焼き尽くす炎か。なるほど……。」
Lv1で使える魔法はあと2つ。
「次は……黒風。」
この魔法がどんな魔法なのかは、使った瞬間に分かった。なぜなら、放った先にあった木々が軒並み倒れたからだ。その倒れた木々の断面は綺麗な切断面ではなく、抉り取られたようになっている。
「どっちも戦闘に使えるスキルだ。でも次は……多分違うな。」
俺は残る最後の魔法をアイに向かって唱えた。
「闇の祝福。」
その魔法を使った瞬間、少し痕になって残っていたアイの切り傷が綺麗さっぱり消えてなくなった。その光景にホッとしたのも束の間、凄まじい倦怠感が襲い掛かってきた。
「うっ、今の……魔力がすごくたくさん体の中から出て行った感覚があった。黒炎や黒風みたいに、何回も使えない魔法だな。」
魔力がもっとあればいいのか?それとも魔力を節約できるスキルがあればいいのか……。できれば両方とも欲しいところだな。とにかく、これから魔法の練習は毎日続けていこう。そうすれば自ずとそんなスキルも獲得できるかもしれないし、闇魔法(特殊)のスキルレベルも上がるかもしれないからな。
そう決意していると、寝返りを打ったアイが安らかな寝顔で寝言を呟いた。
「うぅ~ん……ゼラ様ぁ、良い匂いです~。一生お仕えします~。」
「良い匂いって、魔物誘引で発せられてるフェロモンのことを言ってるのか?まぁとにかく臭いとか言われなくてよかった。アイからすればいい匂いではあるらしい。」
俺の魔物誘引スキルで発せられるフェロモンのことについても、まだあんまりわかってないんだよなぁ。明日になってアイが起きたら、俺の匂いのこととか少し聞いてみようかな。自分で自分の匂いのことを聞くのはかなり恥ずかしいけど、まぁこれも自分のスキルを知るためだ。
「っと、倦怠感も少し落ち着いてきたし、魔法の練習を続けようかな。」
それから朝になるまでひたすらに黒炎と黒風の練習と、自分の魔力の限界の確認などに時間を費やした結果、朝日が昇ってくる頃には闇魔法(特殊)のレベルは1から2に上がり、更に新たなスキル魔力操作と詠唱無視の2つが手に入った。
ちなみに闇魔法(特殊)がレベル2になったことで新たに使えるようになった魔法は2種類。闇水という相手を黒い水の中に引きずり込んで圧力を掛けて潰す魔法と、黒雷という黒い稲妻を相手の頭上に落とす魔法だ。
これがあればまた、このゴミスキルに抗っていけるだろう。……それにしても、このスキルが進化したらいったいどんなスキルになるのか、それはそれで楽しみになってきたな。
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