第4話
苦しくも俺の持つクソスキル魔物誘引のおかげでアイという頼もしい仲間に恵まれ、久々に体をリフレッシュして洞窟に戻ろうとしていた最中、道中に転がっていたレッドサイクロプスの死体を見たアイが、こんなことを進言してきた。
「ゼラ様、あのレッドサイクロプスの魔石を取り出しても良いでしょうか?」
「魔石?何だそれ?」
「魔石は強力な魔物の体内で生成される特殊な石です。私達魔族はそれを体内に取り込んで、更に強くなることができるんです。」
「へぇ、そんなのがあるんだ。そういうのは俺の許可を得ずに取っちゃっても良いぞ。」
「ありがとうございます!!」
すぐにアイはレッドサイクロプスの胸に剣を突き刺すと、慣れた手つきで胸を切り開いて魔石を取り出してしまった。血で汚れているそれを水の魔法で洗って、アイはこちらに持って来てくれた。
「ゼラ様、こちらがレッドサイクロプスの魔石です。」
「ほぉ〜……石っていうよりかは宝石みたいだな。」
「高純度の魔石はこのように宝石のような輝きを得るんですよ。つまり、このレッドサイクロプスはすごく強い魔物だったという事になります。」
「……それちょっと触っても良いか?」
「はい、もちろんです。」
アイから深紅色の魔石を受け取った瞬間、その魔石が光り輝き始める。
「え?何が起こって……。」
何が起こっているのか理解する間もなく、その魔石は俺の体の中に吸収されてしまった。それと同時に、体の内側から漲るような力が湧き上がってくるのを感じた。
「ぜ、ゼラ様、今魔石を……。」
「うん、と、取り込んだみたいだ。すごい力が湧いてくる。」
なんとなく、魔石に触れって体が命令してきたような気がして、魔石に触れてみたらこの通り……。
「魔石を取り込むのは、魔族にしかできないはず……。なのに人間であるゼラ様がそれを成し遂げられたのは、いったいなぜでしょう?」
「まぁ何となく見当はつくよ。どうせこの魔物誘引ってスキルのせいだと思う。このスキル、たぶんまだ俺の知らない効果があると思うんだ。」
でも魔石を取り込んで強くなれるって事実が分かった以上、これから強い魔物には注意しないとな。俺はもちろん、アイも強くなれるのなら、魔石は取りこぼしたくはない。
「ひとまず俺が魔石を取り込めるってことはおいておこう。アイ、これから魔石のありそうな魔物がいたら、俺に報告してくれ。」
「かしこまりました。」
「それじゃ、次いつ魔物に襲われるかわかんないから、今のうちに休憩しておくとするか。」
そして洞窟の中に入ろうとして、いつもの癖で魔力感知を使った瞬間、そう遠くないところに人間の一団が近づいてきていることに気が付いた。少なく見積もっても10人以上いるな。
「ゼラ様?」
「アイ、ここで休んでてくれ。ちょっと片付けなきゃいけない用事ができた。」
「わ、私もお供しますゼラ様!!」
「これから戦うのは人間だ。魔物とは違う。それにあいつらは多分アイの追手だ。罠の可能性だってある。」
「そ、それでも行きますっ!!」
「わかった。ただし、アイは姿を隠しておくように。アイツ等の前には俺が出る。いいな?」
「わかりました。」
アイと簡単な作戦を立ててから、俺達は人間の一団が屯している場所へと向かう。その場所はさっき俺がアイを襲っていた3人を殺した場所だった。俺とアイは少し離れて、木の上から様子を窺っているとこんな会話が聞こえてきた。
「お頭、み~んな殺されちまってますぜ。」
「みりゃあ分かる。しかもコイツは殺すことに躊躇がねぇ。暗殺者か何かか?こいつは喉を、こいつは心臓を一突き……こいつは首を圧し折られてやがる。」
「ところで、あの魔族はどこ行ったんですかねぇ?」
「大方こいつらを殺した奴が攫って行ったんだろ。お遊びで泳がしてみたが……この辺でお開きだ。」
そう言ってこの一団のトップらしき男が取り出したのは、アイが着けていた奴隷の首輪によく似た腕輪。
「戻ってこい。」
その腕輪に向かって男はそう命令するが、一向に反応はない。そりゃあそうだよな。だってあの首輪は俺が解除したから。俺は念のために……と、取っておいた首輪をポケットから取り出した。それを見ていいことを思いつく。
「良いことを思いついた。アイ、そこにいろよ。」
「はいっ。」
俺は木の上から一気に飛んで、リーダーらしき男の頭上をとった。すると、俺に気が付いたほかの男たちが声を上げる。
「お、お頭っ!!上でさぁっ!!」
「遅い。」
「あん?へぶっ!!」
落下の勢いそのままに、ちょうどよく上を見上げたリーダーの男の顔面を踏み抜いた。軽く踏んだつもりだったのだが、レベルアップと魔石を取り込んだ影響で、威力が普段とはケタ違いに上がっていたらしく、リーダーの男の顔面は大きく陥没してしまった。
「お、お頭ァッ!!」
「話を聞くなら一人いれば十分だな。アイ、出てきていいぞ!!」
「はいっ!!」
俺と同じく木の上から飛んだアイは、そのまま男を3人まとめて切り裂いてしまった。
「なっ、アイツは……。」
「ひとまず話を聞くのはお前でいいや。」
「あぎっ!!」
視線を後ろのアイの方に向けた男の足の腱を切り、その場から動けなくさせる。
「アイ、コイツとそこのハゲ頭以外全部殺すぞ。」
「はいっ!!」
リーダーの男も動けない状況で、統率の乱れた男達を片付けるのは、俺とアイなら容易いことだった。
「さてと、残ってるのはお頭って呼ばれてたハゲ頭と、お前だけだな。」
ぐったりしているリーダーの方は後回しにして、足の腱を切った男に尋問を始めることにした。
「お前らはアイの何なんだ?」
「そ、その奴隷は……あぐぅっ!?」
未だにアイのことを奴隷扱いしている男が不愉快だったので、手の平を踏み抜く。パキパキ、ボキボキと小気味の良い音を立てて、男の手の平はぐちゃぐちゃになった。
「もうアイは奴隷じゃない。首元をよく見てみろよ。」
「なっ、く、首輪がねぇ!?お、お前は何者なんだよっ!!」
「質問してるのは俺。お前は答えるだけでいい。で、さっきの質問の続きだ。お前らはアイの何なんだ?」
「お、オレ達は関係ねぇ。関係あるのはお頭だ!!お、お頭がそこの魔族を買ったんだよ。他の奴に売るために!!」
「なるほどな。他にこいつが持ってる奴隷は?」
「い、居ねぇ。いたらさっきの命令でお頭のところに全員集合するはずだ。」
「わかった。じゃ、最後の質問だ。他の仲間は?」
「こ、ここにいる奴で全員だ。」
「そっか、じゃあお前はもう用無し。」
話すことは話してくれたから、苦しまないように首の骨を折って殺した。これで残るのはここで気絶してるリーダーの男。
「ぜ、ゼラ様、この男はどうしますか?」
「コイツには使い道がある。だからこうするよ。」
腕に着いていた腕輪を引っこ抜いて、それの代わりに男にアイが着けていた奴隷の首輪を着けてやった。
「良し、これでいい。」
首輪を着けた後、俺は男の顔を平手打ちして目覚めさせた。
「おい、とっとと起きろ。」
「い、いでっ!?な、何しやがる!!」
「口の利き方がなってないな。……コホン、跪け。」
起きた男へと俺は命令を下す。
「ぐっ!?なっ、どうなってやがる!?」
「お前らがアイに着けてた奴隷の首輪を外して、お前に着けたんだよ。」
「ば、馬鹿な。奴隷の首輪を外せるのは、主人だけのはずだ!!」
「生憎俺のスキルがちょっと特別らしくてな。それよりも、今からお前に命令を下す。命令の内容は……そうだな、今すぐアイのことを召喚したやつと、お前にアイを売ったやつを殺してこい。で、そのあとお前は自害しろ。」
「ど、奴隷に自害は命令出来ね…………。」
男が反論しようとすると、首輪から機械的な音声が鳴った。
『主人の命令に従ってください。体を強制的に動かします。』
「ばっ、馬鹿な!?こ、こんなのありえねぇっ!!」
「あと、そのうるさい口も閉じてろ。二度と開くな。」
「〜〜〜っ!?」
俺の命令に従って、口を閉ざした男は街の方へと武器を構えて歩いて行った。その日の夜に、着けていた腕輪からこんな機械的な声が聞こえてきた。
『奴隷ダールが死亡しました。』
それを聞いた俺は、腕輪を外して足で踏んで粉々に破壊した。こんな物は世の中にあっちゃいけない。




