第2話
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魔族の女の子を助けた後、どれだけ俺についてくることは危ないと伝えても、彼女はついてきたいと言って聞かなかったので、渋々彼女のことを連れて森の中を歩き、俺が雨風をしのいでいる洞窟へと向かった。
その道中で彼女から自分のことについての自己紹介などもあった。彼女の名前はアイ。魔族の種類では蒼角族というらしい。その名の通り、肌は蒼く、額からは一本の鋭い角が生えている。
どうして彼女がこんな所にいたのか問いかけてみると、普段暮らしている集落でいつもと変わらない生活を送っていたところ、急に魔法陣が足元に現れてこの国に転移してしまったらしい。それからは衛兵に捕まって問答無用で奴隷堕ち、そして自分の身の危険を感じ逃げ出した結果、俺と出会ったとのことだ。
アイの話を聞きながら洞窟に着いた後、俺は殺した男達の武器を確認しながら、彼女に質問を投げかけた。
「そういえば……なんだけど、なんでアイは俺に助けを求めたんだ?俺だって彼奴等と変わらない人間だぞ?」
「あ、それはですね、貴方様の魔力が人間のものよりも魔族の魔力に似ていたから……ですかね?」
「俺の魔力が?魔族に?」
「はいっ!!で、でも普通の魔族とはまた違くて、その凄く温かい感じの魔力なんです。だから、貴方様ならお情けをかけて頂けるかもと……思った次第でした。」
「なるほどな。」
俺の魔力が魔族に似てるっていうのは、それも魔物誘引のスキルの効果なのかな?まだまだこのスキルには謎が多いな。
「ところでアイ。話は変わるんだが、実は5年前にも魔族を見たことがあるんだ。魔族って頻繁にこの国に転移してきたりするのか?」
「こ、これは私が捕まっていた時に聞いた話なのですが、どうやら人間側で魔族を召喚することができるようなんです。私もそれで召喚されたみたいで……。」
「なるほど。」
わざわざ自分達で召喚しておきながら、魔族に対する扱いがひどい。まぁ、元から奴隷にする目的ではあるんだろうけど、呼び出された魔族の人達だって人間の奴隷になんてなりたいわけがない。それを無理矢理奴隷にして、最終的には5年前に見た、あの魔族の人みたいに……か。今回アイのことを救えたのは本当に運が良かったのかもな。
少し気分が悪くなりながらも、一番最初に殺した人間が持っていた短剣を新たな相棒に決め、それを腰に差した。すると、俺の作業と質問が一段落したのを見計らったアイが、おずおずと手を挙げて質問を投げかけてくる。
「あ、あの……ご、ご主人様の名前を聞いてもよろしいでしょうか?」
「ぶふっ!?ご、ご主人様ぁ?」
「は、はいっ。あ、助けてくださったので救世主様の方が良かったでしょうか?」
「そういう問題じゃないんだけど……。まぁ、俺の名前はゼラ。」
「ゼラ様ですねっ!!」
「別に様はつけなくても良いんだけど。俺はもう貴族でもなんでもないし。」
そう言うとアイは何度も首を横に振って、断固として様付けを止めない意思を見せつけてきた。さっきもついてくるなと言っても、絶対についていくと言って聞かなかったし、彼女は頑固なところがあるな。
「わかったわかった。それで、確認しておきたかったんだけど、アイは戦えるのか?さっきここに来るまでにも話したけど、俺には魔物誘引ってスキルがあって、近くにいる魔物が俺を狙って寄ってくるんだよ。こんな感じでさ。」
さっき腰に差したばかりの短剣を洞窟の外に向かって投げる。それは忍び寄っていたオークの額に深々と突き刺さった。
「これで本日19匹目。」
オークの頭から短剣を抜いて、血を拭き取りながらアイの正面に座る。そして改めて問いかけた。
「で、戦えるのか?」
「ぜ、ゼラ様には及ばないかもしれませんが、一応剣術には自信があります。蒼角族の中では誰にも剣の腕は負けませんでしたから。」
「よし、じゃあこの残りの2本の剣はアイが使ってくれ。」
「よ、よろしいのですか!?」
「うん。俺はそんなに大きな剣使わないし、戦える武器が無いと、俺と一緒に過ごすなら危険すぎる。」
「感謝いたしますゼラ様っ!!」
剣を預けられた彼女が満面の笑みを浮かべている最中、またここに魔物が寄ってきている気配を感じたので、ついでだからアイの実力を見てみることにした。
「アイ、今ここに2匹のオークが寄ってきてるみたいだ。そいつらで実力を見せてくれないか?」
「お任せくださいっ!!ゼラ様の御力になれることを証明してみせます!!」
意気揚々とアイは刃渡りの長い方の剣を手にして洞窟の外へと歩いて行くと、寄ってくるオークを仁王立ちで待ち構える。それを観戦しようと俺も洞窟の外に出たとき、ちょうどオークが2匹同時に飛び出して来た。
「ゼラ様には近付けさせません。」
アイは鋭い眼光をオークに向けながら鞘から剣を抜き放つと、流れるようにオーク2匹の間をすり抜けた。それと同時、オークの体に一本の赤い線が走り真っ二つになってしまった。慣れた手つきで剣についた血を払って、アイは不安そうな表情でこちらを向いておずおずと問いかけてくる。
「ぜ、ゼラ様、如何でしたでしょうか?」
「うん、奴隷になってたのが不思議なぐらい強いな。」
「よ、呼び出されたときには、武器も無く……訳も分からずこの首輪をつけられてしまって、これと同じような腕輪をつけていた人間の言葉に逆らえなかったんです。」
アイは自らの首に着けられた黒い首輪を、コツコツと指でつつく。
「首輪……ちょっと待て。それが着いてるってことは、まだアイは誰かの奴隷で所有物ってことだな?」
「は、はい。」
「……アイ、ちょっとこっち来て。」
目の前で跪いたアイの奴隷の証である首輪に手を触れると、目の前に文字の書かれた画面が現れた。
『周囲の魔物50匹を同時に呼び寄せる代わりに、奴隷の首輪を解除しますか?』
「はっ、俺のスキルにはこんな使い道もあったのか。」
今まで知らなかったけど、なんかできるような気がしたから触れてみれば、こんな画面が出てきた。そして選択肢は、『はい』と『いいえ』の2択。こんなもの答えは一つ。
「もちろんはいだ。」
『はい』の選択肢に手で触れた瞬間、パキッとアイの首輪が外れた。
「あっ、あれ?く、首輪が。」
それと同時にぞわっと背筋に悪寒が走る。魔力感知のスキルで辺りを探ってみると、とんでもない量の魔物がこちらに向かって来ているのを感じた。
「アイ、気合入れろよ。これから魔物が50匹来るぞ。」
「ご、50匹ですかぁ!?」
「大半は大したことないけど、一匹だけヤバいやつがいる。奴らの狙いは俺だから、アイは横から切り崩してくれ。」
「わ、わかりました。微力ではございますが、お役に立たせていただきます!!」
魔物が来るまでの間に2人で軽く作戦を立て、俺は近くの切り立った崖の上に移動した。すると、魔物の群れが進路を変えてこの崖を目指していることが見下ろせた。
「さて、やるか。」
さっき手に入れたばかりの短剣を崖っぷちで構えると、まずはゴブリンの大軍が先陣を切って襲い掛かってきた。
「50匹を同時に相手するなんて、マトモにはやってられないからな。」
ギリギリまでゴブリンの大軍を引き付けて、俺は崖から飛び降りた。すると、ギリギリまで引き付けたおかげで、後ろから押されて大量のゴブリンも一緒に崖から落ちてくることになった。
「20匹ぐらいは巻き込めたかな。上々上々。」
落下の途中で、岩肌から生えている一本の木に手をかけてぶら下がる。そんな俺の横を大量のゴブリンたちが通り過ぎていき、地面に激しく体を打ちつけて行く。ゴブリンが落ちていったのを確認した後、俺は不安定な岩を蹴りながら地面に降り立つ。
「生きてる奴はお前と、お前と……。」
ゴブリン達の生存確認をしながら、生きていた奴にとどめを刺していると、崖を軽快に飛び下りながら、アイが駆け寄ってきた。
「ゼラ様っ!!崖の上に残っていたゴブリンとオーク殲滅完了しました!!」
「何匹倒したか覚えてるか?」
「えっと、ゴブリンが13匹とオークが4匹です。」
「うん、よくやった。流石だな。」
「えへへ……あ、ありがたき幸せです。」
アイの頭を撫でていると、ようやく50匹の中でも強力な魔力を持った奴が俺達の前に現れた。赤肌の一つ目の巨人。こいつとは前に一度だけ戦ったことがある。あの時はレベルも低かったし、スキルもまともなのが少なかったから苦戦したけど、今回は違う。
「レッドサイクロプス……ウルフを配下に連れてるな。アイ、ウルフの相手は任せてもいいか?」
「もちろんです。」
「俺はあのデカいのを倒してくる。」
短剣を握り、一気にレッドサイクロプスへの距離を詰めると、当然ながらウルフが進路を塞いでくる。そんなウルフの体を蹴りながら進行方向を変えて、レッドサイクロプスの眼前に俺は詰め寄った。
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