第1話
新作投稿始めました。本日はプロローグまでの6話を随時更新していきます。
この世界では、10歳の誕生日を迎えると天から各々スキルを授かる。天から授けられるスキルはランダムで、戦闘に役に立つだったり、農業や商業で役に立つスキルだったりする。そのスキルによって己の人生を決められるのだ。
しかしながらどういうわけか、ランダムで与えられるスキルの中には、いわゆるハズレと呼ばれるスキルもある。社会に何の貢献もできないような役立たずのスキル……それらが総じてハズレスキルと呼ばれている。
10歳の誕生日を迎えた俺が授かったスキルは、そのハズレスキルの中でも史上最悪と呼ばれる程のクソスキルだった。
◇
「ふんっ!!」
目を血走らせながら襲いかかってきたオークの首元に、俺は刃こぼれしてボロボロになった短剣を突き刺した。そして力いっぱいに喉元を切り裂く。
「ふぅ……これで18匹目。」
そのオークを倒した直後、レベルが上がったことを知らせる天の声が聞こえてきた。
『おめでとうございます。レベル50になりました。』
「レベル50ね。本来長い道のりなんだろうが、クソスキルのおかげで、あっという間だったな。」
俺はとあるスキルを持っているせいで、国の全ての街や村に入る事を禁止されている。それどころか近付くことさえも許されていない。
10歳の頃、このスキルを天から授かった俺は、貴族の末弟という身分を剥奪され、両親や兄弟に罵倒されながら野に放り出された。
俺がこうなった原因のスキルの名前は、魔物誘引。こいつは単純な効果のスキルで、持ち主の体から特殊なフェロモンを放出し、魔物を魅了、もしくは挑発して誘き寄せてしまうというスキルだ。
このスキルの効果範囲は、まだハッキリとはしていないが……とにかく近くにいる魔物は、何よりも最優先で俺のところへと向かってくるようになっているらしい。
……実は他にもこのスキルには、もう一つある効果があることがわかっているが、今までその効果が発動したことはたった1度しかない。まぁつまり特殊な状況じゃなきゃ発動しない効果ってわけだ。
両親や俺のスキルを鑑定した神官は、たった10歳の子供が突然野に放り出されて生きれるわけがないと、高を括っていたようだが、現在俺は18歳……この生活を続けて8年も経っている。
こうして今の今まで生きていられたのは、苦しくも貴族の英才教育のおかげ。10歳になるまでに剣術等の貴族が身につけておくべきものを、徹底的にこの身に叩き込まれたからだ。
「ぷっはぁ〜……つっかれた。」
周囲に魔物の気配がないことを確認し、その場に座り込んだ。このクソスキルのおかげで、昼夜構わず魔物が襲いかかってくるため、寝る間もなく戦っていたら、睡眠不要なんてスキルが手に入ってしまった。まぁ、睡眠が不要になっただけで、疲労がたまらないわけじゃない。こうして少し休憩を挟まないと体力は回復しないんだ。
休憩がてら倒したオークを解体し、食べれる肉にして、焚き木でそれを焼いていく。そしてこんがりと焼き上がったオーク肉にかぶりついた。
「んっ、やっぱりオークは美味い。こいつの肉には体力回復効果もあるし、食う分には最高だが……。群れで襲ってくるからなぁ。」
小言を言いながらオーク肉を食べ終えて、手を合わせた。
「ごちそうさまでした。」
俺のことを襲ってきた魔物に対して、感謝するのもアレかと何度も思ったが……やはり食べ物に変わってしまったのなら感謝はしないとな。これを食ったおかげで今日も生きられる。
さて、今日はこれからどうするか……と頭を悩ませていたその時、突然頭の中に声が響いてきた。
『たす……て』
「っ!!」
これは魔物誘引の特殊な状況で発動するもう一つの効果で、助けを求める魔物の声が聞こえるというものだ。
「……5年ぶりだな。」
この効果が発動したのは約5年前。あの時は、やせ細り、ボロボロになって道端に捨てられていた魔族の助けを求める声が聞こえたんだ。……俺が声を頼りに探して、辿り着いた時にはその魔族はもう死んでいた。
「声が大きく聞こえるのは……こっちだ。」
あの時にはレベルもステータスも違う。きっと間に合う。そう信じて、俺は頭の中に聞こえてくる声がハッキリと聞こえる方向へと走り出した。
少し走ると俺の暮らしている森の奥で、武装した人間の集団と、額から角が生えた青肌の魔族の女の子を見つけることができた。魔族の女の子の方は体の至る所に怪我をしているな。
彼女を囲う人間は俺に気づいていないようだが、魔族の女の子はどういうわけか隠れている俺の存在に気付いているようで、俺の潜んでいる方をじっと見つめながら、必死に声を上げた。
「お願いですっ、助けてください!!」
「助けなんて来ねぇよ。とっとと諦めな。」
「こっちだってよ、お嬢ちゃんをこれ以上傷つけたくはねぇんだぜ?何せ大切な商品だからなぁ。だから大人しく捕まってくれって、なっ?」
「うぅぅ……。」
下卑た笑みを浮かべる人間の男たちに対して、チラチラと俺が潜む草むらへと視線を向けてくる魔族の女の子。
前は助けられなかったけど、今なら……きっと。
ゴブリンから奪ったボロボロの短剣を握りしめ、俺は音もなく草むらを飛び出し、こちらに背を向けていた男達に切りかかった。
「まず1人。」
俺の接近に気づかず、背中を向けていた男の背後から喉元を切り裂いた。人間はもう何回か殺してきた。盗賊だったり山賊だったり……だから今さら人間を殺すことに、何も感情を抱いたりはしない。
「な……え?」
理由もわらず大量の血を撒き散らす男の体を、別の男の方へと蹴り飛ばしてやると、噴き出す血が別の男の視界を奪う。
「な、何が起きてやが……ごぶっ!!」
「これで2人。」
視界を奪われた男の心臓を一突きし、命を奪う。それと同時に、ボロボロの短剣が役目を終えて根元からポッキリと折れてしまった。
「な、何だコイツは!!」
残った最後の一人が持っていた剣で攻撃してくるが……大振りで遅い。この森にいるウルフのほうがよっぽど速い。
俺はギリギリまで攻撃を引き付けてから回避し、そのまま背後に回り込み、男の首に手を回した。
「最後。」
「な、や、やめ……。」
命乞いは聞かず、そのまま首を圧し折った。男達を全て殺した後、目を見開いてその場にへたり込んでいる魔族の女の子へと歩み寄った。
「大丈夫?」
「え、あ、あの……あ、ありがとうございました。」
俺に話しかけられて、ハッと正気を取り戻した彼女は、ペコペコと頭を下げて感謝の言葉を述べてきた。元気そうではあるが、さっきの男達にやられたであろう切り傷から出血しているのが気にかかった。
「少しだけ触っても良い?」
「ど、どうぞっ!!どこでも触ってくださいっ!!」
そう言うと彼女は着ていた服をいきなり脱ぎ捨てて、スッポンポンになってしまう。
「あ、いや、ふ、服は着てていいから。」
咄嗟に背中を向けて、服を着るように促すと、彼女は少し渋る。
「で、でも触るなら……。」
「良いから着て。」
「わかりました。」
ゴソゴソと服を着る音が聞こえ始め、着終えたのか声を掛けられた。
「あの、き、着ました。」
「うん、ありがとう。」
改めて彼女の方に体を向けると、ちゃんと服は来てくれていた。これでやっと落ち着いて治療ができる。
「ちょっとだけ染みるけど、我慢できる?」
「で、できますっ!!」
「それじゃあ、ちょっとだけゴメンね。」
以前倒したゴブリンが持っていた塗り薬を取り出して、それを彼女の傷口に塗っていく。
ちなみにこの塗り薬の効果は、俺自身の体で検証済み。塗ったそばから傷があっという間にきれいに塞がるんだ。魔物との戦闘経験が浅かった最初の頃には重宝した。
「んっ!!」
染みるのか、薬を塗る度に彼女は体をビクンと跳ねさせる。
「痛い?」
「い、いえ気持ち……だ、大丈夫です。」
「そっか。」
幸いにも服の内側や顔には傷はついてなかった。主に狙われたのは足や腕だったみたいだな。
そして見える範囲の傷に塗り薬を塗り終えると、俺は立ち上がり、さっきの人間たちの服や武器を剥ぎ取った。
「それじゃ、後は好きな所に逃げれば良いよ。俺と一緒にいると危ないし……。」
そしてその場から立ち去ろうとすると……。
「ままま、待ってくださいっ!!」
背後から飛びついてきた彼女は、俺のズボンにしがみつきながら涙目で必死に訴えかけてくる。
「わ、私っ、魔族なので何処に行っても捕まっちゃうんです!!お願いですから、御身のお側にいさせてくださいっ!!お、恩返しもしたいですっ!!」
「い、いや、えっと……俺の側にいると、もっと危ないと思う。」
「ど、どうしてですか?」
「俺は魔物を引き寄せるスキルを持ってるんだ。だから俺と一緒にいると……。」
「ほ、他の悪い人間に狙われるよりマシですっ!!で、ですから、お願いしましゅっ!!」
ボロボロと涙を流して、必死に懇願してくる彼女の姿に根負けして、結局俺は彼女の同行を許可してしまった。
この出会いをきっかけに俺の最悪だった人生が少しずつ、良い方向に傾き始める。
この作品に対する感想、意見などなどお待ちしています。こうしたほうがいいんじゃない?とかそういったものは大歓迎です。単に面白くないとかそういった感想は豆腐メンタルの作者が壊れてしまいますので胸の内にとどめていただければ幸いです。




