第19話
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ラナさんの副官として、ソレイドで治安維持を仕事に生活するようになって一週間が経った。俺とアイは仮面を着けているから最初こそ怪しまれたものの、人の慣れとは恐ろしいもので、俺達はすっかりこの街の住人として馴染んでいた。
そして今日も俺とアイはソレイド周辺の魔物を少し倒してから、ダンジョンに潜っていた。
「ふっ!!」
今日まで毎日ダンジョンに通い詰めて魔石を吸収し続けた俺とアイは、あの固いメタルビートルをも一撃で倒せるようになっていた。毎日順当に強くなっている自覚はあるが、とある問題に悩まされていた。というのもここ最近、魔石の質が悪いのかステータスが今までのようにぐんと伸びるような感じがしない。ボスの魔石を吸収しても、メタルビートルの魔石を吸収しても……急激にステータスが伸びないのだ。
「……やっぱりあんまり上がってないな。」
素手で倒したメタルビートルの魔石を吸収して自分のステータスを確認するが、あまり上昇していない。アイも同じ現象に陥っている。
「同じやつの魔石を吸収し続けても効果がどんどん薄くなっていくのか?」
「私もこんなにたくさん魔石を吸収してパワーアップしたのは初めてですから何とも……申し訳ありませんゼラ様。」
「いや、アイの謝ることじゃない。」
湧き直したメタルビートルをアイが刀で一刀両断し、その魔石を回収して俺達はダンジョンを出た。すると、俺達の名目上の上司であるラナさんが俺達の帰りを待っていた。
「今日もダンジョンで腕磨きとは精が出るなゼラ君にアイ君。」
「お疲れ様ですラナさん。でもこのダンジョンじゃもうあんまり手ごたえが無くて。」
「ははは、キミ達の力じゃあこのダンジョンの魔物に手ごたえを感じなくなるのも無理はないな。……私もそれぐらい強くなれればいいんだがな。そうすればこのソレイドを一人でも守り抜いていけるんだが。」
悔やむようにそう言ったラナさん。その表情は本当に自分の無力さを嘆いているような表情だった。俺のスキルでラナさんを改造すれば、ラナさんも魔石を吸収できるようになってもっと強くなれると思うけど、それは多分無理だし……。
「あぁ、それはそうとだな。明日、他の街の騎士団長が集まる会合があるんだ。今回はソレイドでの開催になったから、2人とも私の副官として会合に出席してくれないか?」
「騎士団長どうしの会合なんですよね?俺達が出席しても良いんですか?」
「もちろんだ。というか今回に限っては他の騎士団長達からの要望が強いんだよ。元王国騎士たち相手に大立ち回りをしてみせたキミ達を一目見たいとね。」
「……わかりました。」
「度々迷惑をかけてしまってすまないね。それじゃあ明日の明朝に迎えに行くから、早めに支度を整えておいてくれ。」
そしてラナさんと別れた後、俺とアイはローザさんのお店に立ち寄って夕食を食べることにした。
「こんばんは。」
「いらっしゃい!!ってなんだ、アンタ達か。新規の客が来たのかと思ったんだけどねぇ。」
相も変わらずこのお店には他のお客さんがいない。そして人がこないとわかっているからこそ、この仮面を脱げる場所でもあるのだ。
「ふぅ、ローザさんいつものお願いします。」
「はいよ、アイちゃんの方はどうする?」
「私もゼラ様と同じものをお願いします。」
「あいよ、ちょっと待ってな。」
俺達はいつもここで夕食にオムライスという料理を食べている。ローザさんの一番の得意料理らしい。思い返してみれば、俺達が事情聴取でここに来た時に作ってもらった料理もオムライスだったな。
「にしてもアンタ等は毎日どんどん魔力がデカくなってここに来るねぇ。ダンジョンの中で相当ヤバい訓練でもしてんのかい?」
「ただ魔物を倒してるだけですよ。主にメタルビートルとか、メタルゴーレムとか……。」
「普通の冒険者なら、まずメタルビートルに出くわした時点で逃げ帰ってくるもんだけどねぇ。たいていの武器はアイツにゃ歯が立たないし。メタルゴーレムなんてその倍は堅い魔物だぜ?自分たちがどんだけヤバいことやってるのか、少しは自覚しといたほうが良いと思うんだがねぇ。」
「肝に銘じておきます。」
「っと、まぁそういうわけで出来上がりだ。熱いうちに食いなよ。」
「ありがとうございます。」
目の前に運ばれてきたオムライスを見ながら、俺とアイは2人で手を合わせた。
「「いただきます。」」
食前のあいさつをしてから、湯気の立ち昇るとろとろの卵とケチャップで味付けされた米を一緒にスプーンで頬張った。やっぱりめちゃくちゃ美味い。最近アイが作ってくれる朝食ももちろん美味しいが、プロが作る料理は一味違う。
「ローザさん、今度オムライスの作り方教えてください!!私もゼラ様にオムライスを作ってあげたいです。」
「はっはっは!!アタシみたいに作れるようになるには時間がかかるぜ?プロの仕事を舐めてもらっちゃ困るよアイちゃん?」
「そ、それでも頑張ります!!」
「その気合は気に入ったよ。作り方は教えてやるからあとは自分で頑張りなぁ。」
そして翌朝、アイは昨晩教えてもらったオムライスの作り方を早速自分のものにしていたようで、ローザさんが作るものと遜色のないオムライスが朝食に出てきた。
「あ、アイ……い、一回でこれを?」
「いえ、昨日ゼラ様がお眠りになった後でちょっと練習したんです。是非朝食に召し上がっていただきたくて……。」
アイの技術吸収能力はどうなっているんだ?昨日教えられているところを横で見てたけど、とても一朝一夕でできるようなものじゃなかったと思ったんだけどなぁ……。
「ささ、ゼラ様。熱いうちにお食べください。」
「あ、あぁそれじゃあ……いただきます。」
スプーンでとろとろの卵とケチャップで味のついたご飯を一緒に口に運ぶと、思わぬ衝撃が俺の味覚を打ち抜いた。
「うっっま……ローザさんの作るやつよりも美味いぞ!?なんだ何が違うんだ……。」
「それはですね、ケチャップにオークの肝をペースト状にしたものを加えているんですよ。そうした方がもっと美味しくなるんじゃないかと思って試してみたんです。」
「試みは大成功だな……。」
このことはローザさんにこのことは黙っておこう。下手に言うとローザさんの料理人としてもプライドに傷をつけてしまうかもしれないからな。
そしてめちゃくちゃ美味しい朝食を食べ終えた後、身支度を整えていると部屋の扉がコンコンとノックされた。
「ゼラ君、アイ君。私だラナだ。予定の時刻だが、身支度はできているかな?」
「はい、今行きます。」
扉を開けると、そこには普段と変わらない甲冑姿のラナさんが立っていた。
「あのラナさん、その恰好で行くんですか?」
「あぁ、これが騎士団長の正装だからな。」
「俺達はこのままでいいんですよね?」
「構わない。取り繕うのは私達だけで十分だ。それに、万が一の時にはキミ達は動きやすい格好のほうが良いだろうからな。」
「万が一って……そんなに物騒なんですか?その会合は。」
「まぁあくまでも可能性の話だ。私は騎士団長の中では最も実力的に劣っているからな。」
最後にラナさんはポツリと少し悲しそうに、そして悔しそうに言った。その表情は直視できないものがあった。
「っと、すまない。時間が迫っている。会合の場へ向かおう。ついてきてくれ。」
俺とアイは2人で向かい合った後に一つ頷いてから、ラナさんの後に続いて騎士団長の会合が行われるという場所へと向かうのだった。
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