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災厄スキルで人類追放〜しかしそのスキル最強なり!?〜  作者: しゃむしぇる
第一章 変わり始めた運命

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第18話


 ゼラとアイの後を必死になって追いかけていたラナは、途中で足を止めて呆然と2人の蹂躙劇の跡を見つめていた。


「い、いったい何が起こったんだ。」


「よっと、戻りました。」


「ふ、2人とも、もう戻って来たのか!?アイ君が少し魔力切れで怠そうなだけで、怪我は無さそうだな。アイ君にはこれを飲ませるといい。魔力回復のポーションだ。……味はあまり美味しくはないが、そこは我慢してほしい。」


「ありがとうございます。」


 ラナさんからもらった魔力回復のポーションをアイに飲ませる。最初はポーションの味に顔をしかめていたが、それをグイッと一気に飲み干すと、アイの症状が少し緩和された……ような気がする。


「ご、ごちそうさまでした。ありがとうございます。」


「いや、この位なんてことはない。……それにしてもキミ達の戦いは凄まじかったな。やはり元王国騎士達は強かったか?」


「いえ、別にそんなに強くはなかったですよ。ただ、今回はダンジョンを経て強くなった自分達の力を確かめたかったので、多少豪快にやってしまいましたけど。あとは1人……めちゃくちゃ不快な奴がいたので、そいつを消すのにアイが大きな魔法を使ったぐらいですね。」


「不快な奴?」


「自分の人間の身体に、魔族とか魔物の身体の部位をくっつけてる変な奴でした。」


 そう奴のことを話すと、ラナさんは表情をしかめながら頭を抱え、絞り出すように奴のことを口に出した。


「その特徴、間違いない……王国騎士第(・)二(・)階(・)位(・)まで登り詰めながらも、裏で行っていた人体実験が公になりその座を追われた、第一級指名手配犯……異形のグレイグ。そんな奴まで集まっていたとは。」


 アイツのことを説明し終えるとラナさんはその場に座り込んだ。その表情は少し疲れているようにも見えるし、同時に安心しているようにも見える。


「キミ達が居なければ本当にソレイドが奴らに占領されていてもおかしくなかった。私やソレイドの騎士たちでは元王国騎士の1人にさえ敵わなかっただろうからな。公な場所でキミ達に感謝を伝えることができないのが残念だが、ソレイドの騎士団長として心から感謝の言葉を伝えさせてほしい。」


 ラナさんはそう言うと俺とアイの前に跪いた。


「ソレイド騎士団長ラナより、ゼラ殿並びにアイ殿に多大なる感謝を申し上げます。どうかこちらをお納めください。」


 跪いたラナさんが差し出してきたのは、例の黒いカード。これがあれば身元の確認無しでソレイドに自由に出入りできるようになるという、俺達にとってはとてもありがたい代物だ。


「ありがたく受け取らせてもらいます。こっちはアイの分な。」


「頂戴いたしましたゼラ様。」


 これがあればようやく人並みの生活が手に入る。8年ぶりの人としての生活が……。


 思わず感傷に浸っていると、ゆっくりと頭を上げたラナさんが今後の俺達の生活について一つ提案をしてくれた。


「時にゼラ君、今回の事件でキミ達は一気に有名になる。元王国騎士が率いていた盗賊達を殲滅した強大な力を持つ者達として。」


「ラナさんが殲滅したってことにはできないんですか?」


「それは無理だ。私では明らかに実力不足。元王国騎士に敵う実力の持ち主じゃないからな。そこで一つ提案がある。ゼラ君とアイ君、2人とも私の副官として働いてみないか?」


「副官ですか……。」


「あぁ、そうなれば……少し苦しくはなるが今回の大規模な盗賊の討伐も騎士団で殲滅したという事にできる。それともちろん仕事をこなしてもらえれば給料も出せる。」


 悪くない条件だな。これからソレイドで普通に人間としての生活を送るのであれば金は必要。ラナさんの副官という立場になれば、他人からある程度の信頼も得られるだろう。それに今回の件について、国への言い分が多少苦しくなったとしても、俺とアイという存在の隠れ蓑にはなる。だが、一つ問題なのは仕事の方か。


「良い条件なんですけど、その仕事っていうのは……。書類仕事とかやったことないですよ。」


「それに関しては問題ない。適材適所、基本的には2人は魔物討伐や街の治安維持の仕事をしてもらう。」


「まぁそれなら……。」


「やってもらえるか!?」


「はい。やってみます。」


「よし、そうと決まればまずは報告書を作りにソレイドに戻ろう。っと、その前に2人にはこれを渡しておく。」


 ラナさんが腰につけていた袋から取り出したのは、顔全体を覆い隠せる仮面と、何かの模様が刻まれた青いローブ。


「一応顔バレはしたくはないだろう?ゼラ君は背中さえ見られなければ問題ないかもしれないが、アイ君は顔を見られただけで魔族とバレるからな。」


「でも私にはこの角が……。」


 アイは額に生えている一本角を手で擦った。


「それに関しても問題ない。この仮面は魔道具でな。着用した者の姿を隠蔽できる。まぁ、実際に着けて効果を試してみてもらった方が早いだろう。アイ君、着けてみてくれ。」


「分かりました。」


 アイがその仮面を着けてみると、驚くことに彼女が魔族であるという最大の証拠である額の角が消え、肌の色までも俺達人間と同じ色になってしまった。


「アイ君本人は何も変わっていないように見えるが、ゼラ君……キミなら彼女の変わりようがよくわかるだろう?」


「はい、もう人間にしか見えませんね。」


「とまぁ、これがあれば普通にソレイドでも生活はできる。ただ仮面を着けている人物として街の人達の目には映るが……。それくらいは些細な問題だろう?」


「まぁそうですね。」


 ラナさんの話に頷きながら、俺も仮面を着けた。意外にも視野は仮面を着けていないときと変わりない。


 そうして仮面の着用具合を確かめていると、魔力感知にたくさんの魔力の反応が引っ掛かった。


「ん?何か来る……この魔力は、多分人間ですね。」


「あれだけ派手にキミ達が暴れたんだ。私の部下達が様子を確認しに来ているのだろう。」


 ラナさんの言った通り、すぐにここに騎士団が駆け付けてきた。その人達にラナさんは俺とアイの事を説明してくれた。


「そういうわけで、これからこの2人には私の副官として働いてもらう。異議のあるものはいるか?」


 その問いかけに、1人の女性の騎士が手を挙げた。


「ん、シオか。何か申し立てがあるのか?」


「恐れながらラナ騎士団長。私にはこの2人と共にラナ騎士団長が元王国騎士が率いている盗賊を討伐したという話が信じられません。」


「ならば2人の実力を確かめてみるといい。……一応言っておくが、この2人はこの私よりも遥かに強いぞ?」


 チラリとラナさんは俺の方に視線を向けた。俺にやって欲しいということか。その意図を汲み取って、俺は一歩前に出た。


「それじゃあ俺が相手になりましょうか。」


 シオという女性の騎士は腰に差していた細剣を抜くと、こちらにその切っ先を向けてくる。


「実力を確かめるため、本気で行かせてもらう。」


「……もう終わってますよ。」


「は、何を言って……。」


 俺は無詠唱で威力を弱くした黒風を発動させ、彼女の細剣を根元から折ったのだ。


「な、剣が……。くっ、剣の腕だけで私は騎士団に入ったわけじゃ……。」


 彼女は今度は拳で殴りかかって来ようとした。それを隣で見ているアイが、カタナを抜き放とうとしているのを必死に抑えながら、俺は力いっぱいに地面を踏み抜いた。


「ふん!!」


 すると、俺を中心にその場が大きく陥没し、殴りかかって来ようとした彼女は体勢を崩してその場に尻餅をついた。俺は先程折った細剣の刀身を拾い上げ、尻餅をついている彼女へと切っ先を向けた。


「まだやりますか?」


「う……ま、参りました。」


 かくして、俺とアイはソレイドの騎士団長のラナさんの副官として、新たな生活を始めることとなったのだった。


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