第16話
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『おめでとうございます。ステータス値がスキル進化の条件を満たしたので、スキル魔物誘引が進化します。』
突然現れたその画面に困惑していると、パッとまた画面が切り替わる。
『スキル魔物誘引が進化したことにより、誘引効果を制御することが可能になりました。』
「お、おぉ〜っ!!これはいいぞ!!」
「ぜ、ゼラ様?」
「アイ!!さっき言ってたことが現実になったんだ!!魔物誘引のスキルが進化して、誘引効果を制御できるようになったんだよ!!」
「わ、お、おめでとうございますゼラ様!!」
2人で喜びを分かち合っていると、また画面が切り替わる。しかし俺は喜びのあまりその画面を見ることができなかった。
『尚、注意点として、魔族に対しては変わらず誘引効果を発揮し続けます。』
そして気づいた時には、その画面はパッと消えてしまっていた。
「さて、兎にも角にも……まずは試してみるか。」
魔物誘引と頭の中で思い浮かべると、目の前にまた文字の書かれた画面が出てきた。
『魔物誘引効果を以下の中から選んでください。①周囲の魔物全てを自分の元へと誘引する。②魔石を持つ魔物のみを誘引する。③魔物誘引の効果を切る。』
「へぇ、なるほどな。便利になったもんだ。今のところは③でいい。」
俺は迷いなく選択肢の中の3番を選択した。そして何とも言えない清々しい気分で、地べたにゴロンと横になろうとすると、すかさずアイが俺の頭を膝枕で受け止めてくれた。
「散々困らされたこのゴミスキルにも、ようやく活路が見えてきた。」
魔物誘引のスキルを自在に操れるようになったことをアイに教えると、彼女はこんな事を言った。
「ゼラ様のスキルが危険のないものになったのなら、もう好きに人間の街に出入りできるのではないでしょうか?」
「…………それはたぶん無理だな。この背中の紋様がある限りは街へは入れないだろう。それに、自由に操れるようになったって、説明したところで素直にやつらが信じるわけがない。」
そんな事を2人で話していると、魔力感知に反応があった。この反応は……人間か?
徐々に近付いてくるその反応の方向を警戒していると、さっき俺達にご飯をご馳走してくれたラナさんが姿を現した。
「ぜぇ、ぜぇ……や、やっと見つけたぞゼラ君にアイ君。」
「ラナさん……俺達に何の用ですか?」
魔法の発動準備をしながら、俺は腰に差した短剣に手をかける。
「あぁ、そう警戒しなくていい。別にキミ達のことをどうこうするつもりはないんだ。……というか、私にはキミ達に対抗できる力はない。それはキミも理解しているんじゃないかい?」
アイの膝枕から体を起こしてその場に座ると、ラナさんは俺達の前に座った。
「単刀直入に聞きたい。キミ……いやゼラ君は8年前に災厄認定されたスキルを授かり、追放処分を受けた子で間違いないかな?」
「間違いないですよ。俺のスキルは魔物誘引。近くにいる魔物をおびき寄せるスキルなんです。」
そう説明すると、ラナさんは辺りをキョロキョロと見渡して1つ頷くと口を開いた。
「そのスキルの効果が正しいのなら、その辺を彷徨いているゴブリンが襲いかかってきてもおかしくはないんじゃないかな?私の魔力感知が正しければ、この辺を5匹ウルフが彷徨いているようだが……。」
「それはたった今魔物誘引のスキルを、ある程度自由に操れるようになったからですよ。」
「なるほど、つまり今のキミには全く危険は無いわけだ。」
ふむ……と状況を理解した様子のラナさんは、こんな提案を俺達に挙げてきた。
「キミ達のその強大な力を見込んで一つ提案がある。私に力を貸してくれないか?」
「具体的にはどういう事をすれば?」
「今私はソレイドの騎士団長を務めている……という事は自己紹介で言ったことは覚えているかな?」
「それは覚えてます。」
「実は近頃、このソレイド周辺に盗賊やら山賊やらが集まってきてるみたいなんだ。情報だとそいつらの中には元王国騎士だった者も何人かいるとのことでね。」
王国騎士。それは国王自らが力量を見定めた国王直属の護衛の騎士のことだ。ラナさんのような普通の騎士とは力量も名誉も全く違う。
「元ってどういうことですか?」
「王国騎士に選ばれた故に、その地位と己の欲に溺れ、王国騎士の称号を剥奪された者達だ。」
「その件について国に協力の要請とかってしてないんですか?」
「もちろんしたさ。だが、お国は今魔族との問題で大忙しらしい。」
ラナさんの言葉の中に無視できない言葉が含まれていた。
「魔族との問題?」
「あぁ、私達人間は愚かにも魔界に住む魔族を、こちらへと強制召喚する方法を確立させてしまった。キミの保護者だというアイ君もその口だろう?」
「まぁ、そうですね。」
「それに対抗して、魔族側もこちらへ色々仕掛けてきているようなんだ。」
アイが言っていたこっちに召喚されてしまった魔族が逃げる為の穴とか、そういうやつだろうな。
「ま、お国はそういうものの対処に忙しいから、強力な人手をこっちに送るのは無理との事だ。」
「なるほど……。」
「腐っていても王国騎士に選ばれるような実力者が集まっている。とてもじゃないが私とソレイドの騎士団だけじゃ勝ち目は無いに等しい。そこで、キミ達に協力をお願いしたいんだ。」
「仮に協力したとして、ラナさんは俺達に何をしてくれるんですか?」
「私がキミ達への報酬として考えているのは、まずソレイドへの出入りの自由化。」
「出入りの自由化って、関所で必ず背中を確認されるじゃないですか。」
「そこでこのカードの出番だ。」
そう言ってラナさんは黒いカードを取り出してこちらに見せてきた。
「この黒いカードは、ソレイドの騎士団長である私が完全に安全だと身分を保証し、信頼している者にのみ渡すことのできる特別な物だ。これを関所で見せるだけで、背中の確認無しでソレイドの中に入ることが可能になる。」
「そんなものを俺達なんかに渡して大丈夫ですか?まだ出会って少ししか経ってませんけど……。」
「キミ達にとって、単なる金なんかの報酬よりも余程こういう物の方が価値があるだろう?」
ラナさんの言っていることは的を射ている。仮に報酬で金を渡されたとしても、使い道がない。なんてったって街の中に入れないんだからな。
「そして次に、ソレイドでの住居の提供。」
「家まで!?い、良いんですかそんなに……。」
「構わない。どちらにせよ、盗賊どもを一網打尽にできなければソレイドは滅びることになるのだからな。」
この条件……あまりにも俺達にとっては破格。ソレイド限定だが、普通の人間としての生活を送ることができるようになる。
「ど、どうだろうか?」
頭の中でいろいろな思考を巡らせていると、ラナさんがおずおずと上目遣いで問いかけてきた。
「……ラナさん、俺にはあなたがそんなことをするような人だとは思えません。でももし仮に今の約束を反故にして俺とアイのことを裏切ったら……俺達がソレイドを滅ぼします。それでも良いですか?」
大量に魔力を放出し、ラナさんに強烈な殺気をぶつけながらそう問いかけると、ラナさんは大量に冷や汗をかき、体をフルフルと震わせながらも俺の目をまっすぐに見て一つ大きく頷いた。
「ラナさんの覚悟と真摯な心、十分に伝わりました。協力させてもらいます。」
「か、感謝する!!」
「それじゃあさっそく今から殲滅して来るので、盗賊達の居る場所に案内してくれますか?」
「へ、えっ?い、今……から?」
「はいっ。」
善は急げだ。元王国騎士が何人いようと、今の俺とアイの力なら負ける気がしない。
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