第13話
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アイが食べさせてくれた毒に耐性のつく薬草のおかげで、7階層の毒を吐いてくる魔物も毒沼も、苦も無く突破することができたのだが……一つだけアクシデントがあった。
毒の沼地から湧いてきた巨大な毒のスライムの吐いた溶解液がアイの服にかかって、もともとボロボロだった服がさらに穴だらけになってしまっていて、そ、その……胸のあたりがだいぶ開放的になってしまっているのだ。本人は気にしていないようだが、絶賛思春期真っただ中の俺にとってはかなり刺激的だ。
「ゼラ様っ、あちらに階段がございます!!」
「あ、あぁ。」
指さしたり、アイが体を動かすたびに彼女の胸についている大きなものが、露わになりそうになってしまう。悶々とした気持ちを抱えながら、8階層に足を進めると、そこでは魔物じゃなく盗賊の一団が俺達のことを待ち構えていた。
「なんだぁ?定時報告が戻ってこねぇから、ついに騎士団が攻め込んで来たのかと思ったら、ガキと魔族の女が一匹ぃ?」
盗賊のリーダーらしいモヒカンで巨漢の男は、ぼりぼりと頭を掻きながら、こちらを指さしてくる。
「野郎ども、ガキは殺せ、魔族の女は金になる。傷つけんなよ。」
「ヒャッハァァッ!!わかりやしたぜお頭ァッ!!」
その号令と共に下っ端の盗賊たちが一斉にこちらに襲い掛かってくる。
「アイ、ここは俺がやる。下がっててくれ。」
「はっ、了解しました。」
下手に動けばアレが零れてしまいそうなアイを後ろに下がらせて、俺は盗賊たちへ向かって魔法を使った。
「まずは軽く……ダークグラビティ。」
魔力を少なくして、威力を控えめにしたダークグラビティを放つと、もれなく盗賊全員が地面に磔になってしまった。
「ぐぅぅぉぉぉぉっ!?」
「う、動けねぇっ……潰れちまう!!」
この魔法は人間相手には少し強すぎるか?それとも魔石を吸収してたおかげで、魔法の威力が上がってるのか?ま、どっちでもいいか。動けないこいつらを仕留めるのは簡単だ。
「さてと、お前が確かお頭って呼ばれてたよな?」
さっき盗賊たちに号令を出していたモヒカンの男の体を踏みつけながら、こいつの武器らしい手斧を奪い取った。
「うん、扱いにくいな。短剣みたいに小回りが利かない。こんな武器でできることといえば……。」
「な、にを……。」
奪い取った手斧を男の首擦れ擦れの地面に向かって全力で振り下ろした。その一撃で手斧は粉々になって壊れてしまう。
「こんな感じで叩き斬るぐらいか。でも武器の強度が足りないな。」
いつでも首を切り落とせるという意味を込めた脅しをかけてやると、その効果は覿面だったようで、モヒカンの男の表情はすっかり青ざめていた。
「で、さっき俺を殺すとかほざいてたけど、今の気持ちは?」
「し、しませんっ!!す、すいやせんでしたぁぁぁっ!!」
「よし。」
言質を取ったところで、モヒカンの男だけダークグラビティを解除してやった。そしてその男に俺は命令を下す。
「お前の仲間が持ってる武器を全部回収しろ。」
「わ、わかりやした。」
命惜しさからか、男はせっせと仲間から武器を回収し、俺のところへと運んで来た。
「こ、これで全部でさぁ。」
「ん、わかった。」
で、今から何をするのかというと、武器の選別だ。もちろん俺が使う武器を探すのだが、アイの手に馴染む武器も見つかればいいな。
「ん、この短剣は使いやすそうだな。」
手に馴染んだ短剣を一回素振りしてみると、根元からぽっきりと折れてしまった。それを見たスキンヘッドの男は体を小刻みに振るわせている。
「ダメか。こっちのはどうだ?」
緑色の刀身の特徴的な形の短剣を手に取り素振りしてみると、巨大な斬撃が生み出され、素振りした方向に飛んでいった。
「これは……。」
「ゼラ様、恐らくそれはマジックウェポンと呼ばれる武器かと思われます。魔法の力が込められた武器です。」
「マジックウェポンか、次の相棒はこいつにしよう。アイはこの中で使いたい武器はないか?」
「それでは私はこちらを所望します。」
アイが選んだのはスラリと刀身が反った片刃の剣。この武器は確かカタナって武器だったっけ?俺に剣の稽古をつけてくれた人が同じ武器を使っていたのを覚えてる。
「よし、じゃあダークグラビティ解除。」
スキンヘッドの男以外の盗賊にかけていたダークグラビティを解除した後、俺はスキンヘッドの男に歩み寄った。
「俺達はこのまま10階層まで進む。言ってる意味が分かるな?」
「へ、へぇっ!!」
「よし、アイ行こう。」
最後に圧をかけて、俺がアイと9階層に行くために奴らに背を向けると……。
「あ、甘ぇんだよぉクソガキィッ!!テメェら、魔法で女共々ぶっ飛ばせ!!」
「「フレアランスっ!!」」
スキンヘッドの男の号令で盗賊の中にいた魔法使いが魔法を詠唱し、炎の槍が大量に俺とアイに向かって飛んで来た。魔法が使えるなら、盗賊なんかよりもよっぽどいい仕事につけそうなものだが……。
「脅しが足りなかったかな。」
俺が振り返るよりも先に振り返っていたのはアイで、彼女の表情には怒りが露わになっていた。
「ゼラ様の情けを無下にするとは……愚か。メガフレイム!!」
迫りくる炎の槍の魔法の前に、アイは巨大な炎の玉を作り出すと、盗賊の魔法使いが放った魔法は全てその炎の玉に吸収されてしまった。
「ゼラ様、奴らに制裁を下してもよろしいでしょうか?」
「任せる。」
「はっ!!」
俺から許可をもらったアイはメガフレイムを盗賊達へとむけて放った。それと同時にカタナに手をかけながら盗賊たちに向かって突っ込んで行く。
結果は言うまでもなくアイの圧勝。最初に放ったメガフレイムでモヒカンの男を含む盗賊の8割が焼死し、運よく残ったやつらは彼女のカタナによって一人一人首を刎ねられた。
そして盗賊を片付けて進んだ9階層。この階層は洞窟の迷路の階層で、確かに盗賊達の根城にするにはぴったりの階層だった。出てくる魔物はゴーレムという体が岩でできた人型の魔物。剣による攻撃は通りにくいが、魔法で簡単に倒せてしまう。動きも遅く、大して驚異的な魔物じゃない。
「確か盗賊が占拠してた階層もここだったよな?」
「情報によるとそうらしいですね。」
「ならこの階層のどこかに何かアイツらがため込んでるものとかあるんじゃないかな。」
それこそ盗賊の宝みたいなやつがあるかもしれない。こういうのってワクワクするよな。
「よし、探すぞアイ。」
「はいっ!!」
9階層の地図を魔物を倒しながら網羅するように進んでいくと、俺達は自然と盗賊の拠点らしき場所へとたどり着いた。
「あっ、多分ここだな。」
「うっ……ゼラ様ここ臭いです。」
「強烈なアルコールの匂い。酒瓶も転がってるし、好き放題飲んでたんだろうな。まっ、ちょっとの辛抱だアイ。さっさとあいつらが隠してたお宝をいただくとしよう。」
予想通り、盗賊達が拠点としていた場所には、金や宝石が溜め込んであった。いくつか武器もあったが、装飾目的で作られたものが多く、実戦で使えそうなものはほぼ無かった。
「さて、宝を見つけたはいいが、これを持って帰る手段がないな。さすがに全部は持って帰れない。」
「あ、それでしたらこちらにマジックバッグがありますよゼラ様。」
「マジックバッグ?」
「はいっ、収納魔法の魔法陣が刻まれたバッグです。この中に全て入れて持って帰ってはいかがでしょう?」
「便利なものがあるんだな。この際だ、ありがたく使わせてもらおう。」
アイが見つけてくれたマジックバッグという物は、とても便利な代物で、この拠点にあった金目の物は全て中に収まってしまった。
「いよっし、これで金目の物は全部だな。」
いざ次は10階層へ……と進む準備をしていると、アイがまだ何かを探し回っていることに気がついた。
「アイ?まだ何か探しものか?」
「あの盗賊達もダンジョンで暮らしていたわけですから、魔石を溜め込んでいるんじゃないかなと思いまして。」
「このマジックバッグの中にすでに入ってたりしないかな?……ちなみに物を取り出すときはどうしたらいい?」
「取り出したい物を意識しながら、バッグを逆さまにすれば出てきます。」
「じゃあ魔石出てこい。」
すると、思った通りマジックバッグの中から、大量の魔石がザラザラと溢れ出して、その場に山のように積み重なった。
「これだけあれば、めちゃくちゃ強くなれるな。良しアイ、半分ずつ吸収するぞ。」
「はいっ!!」
せっせと盗賊達が集めてくれた魔石を、俺とアイで半分ずつ吸収し、さらにパワーアップしてから、いよいよ10階層へと歩みを進めるのだった。
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