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第九十八話 末永く愛し合うことを

「公都さん。そういえば、年下が好きと言っていましたね……?」

「え? 俺、そんな事言ったっけ? でも可愛いよねー年下」


 同じ事言ってる。


「あまり煽らないでください」


 希惟さんが髪を掻き上げる。いつもと違って、少し余裕が無さそうに見えた。


「やきもち?」


 兄が希惟さんに向けて、ヘラッと笑う。


「つい先日、一緒に寝て欲しいと公都さんから言った事は、内緒にしておいた方がいいですか?」

「え?」

「は?」


 思わぬ希惟さんからの反撃に、兄が慌てて弁解する。


「違っ! それは! 理由があって……」

「さっきベッドシェアはしてないって言ってなかった?」

「甲斐公都さん、照れ隠しですか?」

「違うんだって! 寝る前に見た映画が、思いの外怖くて……」

「で、一緒に寝たの?」


 ベッドに寝転んだまま、理人が兄に尋ねる。


 その体勢でそのセリフ、浮気を問い詰める恋人みたいだな。


 兄が口を一文字に結ぶ。


「返事をしない事によって、そうだと言わずとも認めてしまっているということに、気付いていないようですね」

「お兄さん、俺は気持ち分かります」


 先輩、怖いもの減ったって言ってましたけど、まだホラーはダメそうですね。


「致し方なくね! 致し方なく……! あと本当に寝ただけだからね!? sleep!」


 日本語って、難しいよな。意味が複数あったりして。でもそれ、希惟さんにとっては残酷な仕打ちなのでは?


「好きじゃなかったら、そういう事しないんじゃない?」


 理人の追求は止まない。


「確かに。希惟さんに対して、態度が柔和してるよな?」

「いや、それはご飯作ってもらってるし……」

「それだけ? 本当は好きになりつつあるんじゃないの?」

「いやいや……は?」


 兄が頬をほんのりと染め、困ったように口元を引き攣らせる。


「実を言うと……」


 鬼ちゃんさんが、二人の仲を応援する意思を示す。


「俺は、社長と甲斐公都さんが、末永く愛し合うことを祈っています」

「何で!?」

「以前は、俺の勤務時間って……?と疑問に思うほど、昼夜問わず多種多様な要求をされてウンザリでしたが、甲斐公都さんとのルームシェアが始まってから、社長が早く退社されるので、俺のプライベートが充実しています。最近は、ご機嫌も良く、時々笑顔も見られるようになって、正直怖くて誰も話しかけられないという社内での印象も変わりつつあります」


 すごい喋る……。大丈夫ですか? それ、希惟さんの事、ディスってないですか?


 先輩が、発言権を求めて手を上げる。


「はい、亜蘭くん。どうぞ」

「鬼ケ原伊織に同意します。俺も、兄が買ってくる服や靴がクローゼットを占領してウンザリでしたが、お兄さんとのルームシェアが始まってから増えなくなりました。以前より写真を撮られる回数も減って、鬱陶しさが和らいでいます」

「あ、そうなんだあ〜。よかった〜……その代わり俺の服と靴買ってくるから、うちのクローゼットもう入る場所ないよ〜。ただでさえ収納スペースないのに〜」


 兄とのルームシェアの余波、すごいな。


「いや、まあ俺だって、ルームシェアしてから気付いた事もあるし、別に希惟の事嫌いじゃないけど、そんなみんなから応援されるとな……」

「気付いた事って?」


 兄に、興味津々の視線を向ける一同。


「自分の意外な趣味に気付いたというか……、ルームシェアを断りきれなかった理由の一つが分かったというか……」

「言えよ、さっさと」

「は? な……何で……」

「公都さん、聞かせてください」

「え……うう……分かったよ……」


 兄がため息を吐き、小さな声で呟く。


「顔が好き」


 顔。


 しんと静まる一同。


「な、なんだよ! 言えって言ったくせに! だってこの顔だぞ!?」

「希惟さんの顔の良さに、今になってやっと気付いたんだとしたら、お前眼科行った方がいいぞ?」


 希惟さんに指を向けるな。


「俺だって分かってたけど、一緒に生活すると、再認識するんだって! 今まで遠くで見ていた芸能人と、突然1Kで暮らすようになったらって考えて!? あ……顔がいいってなるだろ!」

「より現実として捉えた時に、改めて気付いたという事でしょうか」

「そうそう、そんな感じ」


 そういうもの?

 俺はいつも先輩の顔がいいと思ってるけど、もし先輩と一緒に生活することになったら、益々顔がいいと気付かされるの? そんな事になったら、光を捉えすぎて俺の目、爆発しない?


「正直、顔が良すぎて、迫られたら断る自信ない。流されて一線超えちゃいそう……はっ」


 言う予定のなかった事を口走ってしまった様子の兄が、慌てて口を塞ぐ。


「……」

「そうなんですか?」


 心なしか、希惟さんの目が期待でキラキラしているように見える。


「あ、みんな揃ってるから、そろそろ始めようか、誕生日パーティー」


 話を逸らすのは、お前の悪い癖だぞ?


 希惟さんが、目を細めてクスッと笑った。ため息の出るような美しさに、思わず見惚れてしまう。


「そうですね。では、公都さんが流されるかどうか、みんなが帰った後、試してみます」

「なっ……」


 理人が他人事のように、

「今夜は熱い夜になりそうだね」と言った。


 焚き付けたのほぼ、お前だからな?

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