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93.群がる爪牙①

 灰色の光が薄れて、ライムがはっとした時にはもう、一同はライオンタウンの街中であった。そして着地した次の瞬間には、モッチが素早く宙に線を描いて一同を囲み、間髪を入れずに次の瞬間移動が始まった。

 3回目の瞬間移動で、一同はライオンタウンの入口近く、ステージのように周囲よりも少し高い場所へと辿り着いた。すぐにスーツを着た男が駆け寄ってくる。

「竜の筆、研究員のモッチさんですね。転送魔法装置の使用許可は出ております」

モッチが軽く頷き、ライムたちに「じゃあ、行くよ」と声をかける。途端に、ステージの中央が光り輝き、一同を包み込む。

「ちょ、ちょっとタイムっす!」

「何がなんだかまだ分かってないんだけど!」

ネガとユウヒの悲痛な叫びを残し、一同の姿はステージから消え去った。


 「ライオンタウンより転送完了!セイウチポートよりディアルーラルへの転送まで約3分!」

突然、潮風が吹き抜けた。ニマール国の北端、港町。ライオンタウンからは本来、車や電車で移動する距離だ。

「モッチさん、これが転送魔法の装置ですか?」

ライムが、どうやら質問は次の転送までにしておいた方がいいだろうという様子で慌てて尋ねる。隣でジャンベも、目を輝かせてモッチを見つめている。

「そう」

モッチが頷くと、もう喚くことを諦めたユウヒが「そもそも、転送魔法って何よ・・・はじめて」と息を吐き出した。

「転送魔法装置は、例えば地方からクジラシティみたいな都会の病院へ急患を搬送したい時とか、要人を警護して目的地へ送り届ける時だったり、囚人の護送をする時なんかに使われるみたいっす。転送魔法は、装置から装置の間を瞬間移動させるものっすね」

ネガも覚悟を決めたように深呼吸をして、説明する。

「モッチさんの瞬間移動みたいな?」

ユウヒが問うと、モッチが微かに首を横に振る。

「ううん。瞬間移動は目的地を使用者の意思で変えられるけど、転送魔法はあらかじめ設置した魔具から魔具への移動だけ。その代わり、遠距離の移動が可能」

モッチの言葉に、ユウヒが「それじゃあ、車も鉄道もいらなくなっちゃうね」と笑うと、トラヒコが呆れたように鼻で笑う。

「運べる人数に限りがある、とかですか?」

ライムがステージ、今になってそれが装置だと理解できたが、その広さは大人10人が身を寄せ合って立つ程度だと気がつく。

 「転送開始!」

また、装置の中央が輝き、ライムたちを包み込む。


 「セイウチポートより転送完了、ディアルーラルです!」

先程とは一転、気がつくとそこは、大きな森のそばに広がる長閑な村の入口であった。

「そう。転送魔法装置は利用人数に限りがある」

モッチが、何事もなかったかのようにライムの問いに答える。

「それに、車や電車を作る会社からしたら、転送魔法装置なんて無暗に設置して欲しくはないだろうな」

トラヒコがそう言うと、ネガが「商売あがったりっすもんね」と笑う。そういった兼ね合いもあり、転送魔法装置は緊急時の利用のみと制限されているのだろう。ライムは納得して頷いた。

 ジャンベが森の方を振り返り、じっと見つめる。木々の樹冠を目で辿ってゆくと、緩やかに上り坂であるようだ。遠くの方は木々の印象が違う。ブジンカ国の方でよくみられる木々だ。

「ムース森林。あっちはブジンカ。今から、あの森の中に行くよ」

そう言うと、モッチが桃色のペンを取り出し、宙に尋常ではない速さで数式のようなものを書き散らす。

「どうせブジンカの近くに行くのなら、アオイさんに植物のことを聞きたかったっす。魔力変換の効率を良くする植物がこの森に生えてたら、採取したかったっすね」

ネガが背伸びをしながら、森の方を見つめる。

 「武器、出しておいてね。この移動はわたしの魔力を大きく消費する代わりに、たぶん1回で目的地へ到着すると思うから。わたしは一時的に魔法を使えなくなるし、そもそも戦闘向きではないから、君たちに任せたよ」

宙に書き散らかされた数式が、渦を巻いて行く。座標だろうか、数字がいくつか飛び交った。モッチの言葉に、ライムたちは武器を具現化する。ジャンベも、膝を屈伸して表情を引き締めた。

 渦巻いた数式が灰色の光となって一同を包み込む。


 灰色の光が薄れた時、そこは明らかに森の中だと理解できた。ライムの目には苔むした岩や太い木の幹が映り、そして次の瞬間、長く鋭く巨大な爪がこちらに迫ってきたのを捉えた。

「危ないです!」

ジャンベがモッチに覆いかぶさり守ろうとする。しかし爪が一同へ叩きつけられることはなかった。刀を抜いたトラヒコが、風の魔力を纏った刀身で爪の主、巨大なアリクイの魔物の腕を斬り落とした。

 続いて反対方向から、木々を薙ぎ倒すようにして巨大なこん棒が現れると一同に襲い掛かる。ライムが波動を纏った籠手でそれを受けとめ、全身に波動を漲らせると、こん棒をはじき返した。へし折れた木々の向こうから、ぎょろっとした目の巨人が現れる。さらに上空からは大量の魔コウモリが降り注ぐようにして一同へ急降下してくる。ユウヒが杖を掲げ、それら全てを防ぐ規模の傘を広げるように炎を展開させる。ネガのバングルが輝くと、素早くライム、トラヒコ、ユウヒの肩や背中、脚に増強魔法が施される。

 その時、森の奥の方から、勢いよく大猿の魔物が弾き飛ばされてきた。

「おお!来てくれたか、皆!」

黄土色の廻しを締めたリキが、のっしのっしとやって来る。

「あら、思っていたよりもずっと早いわ」

その後ろからミツカが、まるで午後の散歩をするように優雅な様子で現れた。そのミツカを丸呑みしようと顎を開き襲い掛かる大蛇に、一瞬でツルが絡みついて縛り上げると、地面から現れた巨大な口のある花が吞み込み返した。


 「みんな、聞いて。今回は、意図的に引き起こされた魔物大量出現の可能性が高い。異端渡りの情報を得てから、分析の仕方を変えてみた。やっぱり、魔物が冒険譚から偶然迷い出た時と、そうでない大量出現の時とで、冒険譚内部からの作用の有無が関係している。そして現場を見て間違いないと確信した。今回はそれを作為的に利用している者がいる」

モッチの説明を聞きながら、魔物を討伐していく一同。ジャンベはモッチの隣に立ち、注意深く辺りを警戒している。

「その、大量出現を引き起こしている犯人の情報を掴むことが今回の目的。みんな、協力してくれてありがとう」


 魔物は四方八方から、どんどんと群がってくる。

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