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ソウルイーターと????

 カウントダウンの表示がゼロになり、四人は武器を構える。前方に黒いフードを被った二メートルくらいの浮遊霊の様なモンスターが現れ右手には鎌を携えていて、顔は微かに骸の容姿がうかがえた。

 ソウルイーターは魂を刈り取る者の説明の通りの様相だった、スバルは皆に叫びながら突進する。


「基本的にソウルイーターは振り下ろしの斬撃後に回転斬り、空中に浮かびながら真下にフレイムブレスを吐き出して着地後にストーンサークルを放ってくる!全てバックステップでかわしきれる範囲だから覚えてくれ!」


「…ククク…ヒヒヒ!」


 強烈な笑い声を出しながら鎌を振り上げスバルに体を向けるソウルイーター、突進するスバルにヘイトが集まった証拠だ。

 両者がお互いの間合いに入ったのだろう、ソウルイーターの振り上げた鎌がスバルに向かって振り下ろされる。


「はぁぁあ!昇竜風塵閃!!」


 寸前の所を見極め回避して地面を削りながら一回転したスバルから繰り出された回転系の打ち上げスキル【昇竜風塵閃】がソウルイーターに放たれる、鎌を地面に残し螺旋の斬撃がソウルイーターにダメージを与えながら、二メートルはあるその体躯を空中へと斬り上げられる。


「…ククッ!!?…シィィイイ!!」


 痛みと共に斬り上げられたソウルイーターは真下にいるスバルに髑髏の口を怒りの声と共に開く。


「皆さん!周囲伝達を送りましたわ!残り体力は七十二%ですわ!」

「了解した!ありがとう!」


 ゴォオオオオ…!と言う熱風を帯びながらスバルに放たれた火炎の吐息、その大きさは流石はボスモンスターであろう直径にすれば範囲は二メートルはありそうな強力なブレスを吐き出すソウルイーター。

 アカリはそれを見てバックステップを踏みフレイムブレスの範囲だろう地点から離れる。


「待ってたぜ!フレイムオーラ!!バーストステップ!!」


 叫びながら空中の火炎の吐息に向かい飛び上がるスバル。


「シィィシィシィ!…クク!クククククク!!…シィッ!?」


 勝利を確信したソウルイーターの笑い声は直ぐに掻き消される事となる。

 フレイムブレスが全て飛び上がってくるスバルに吸収されて掻き消されたのだ、ソウルイーターは混乱する。【フレイムオーラ】とは五秒間だけ炎属性の攻撃を吸収し、吸収した量のダメージを攻撃に1/10蓄積する事が出来るのだ、CTは六十秒と少し長いがそれなりに重宝するスキルだ。

【バーストステップ】により移動力が九〇秒間五十%上昇しているスバルの今の突進をソウルイーターに止める術も回避する術もあるはずもない。


「…お前のダメージも蓄積されてるから味わってみろ!ディバインブレイク!!」


 放った技は剣の刃の部分では無く、側面の平らな面での剣撃のスキル。【ディバインブレイク】は剣撃により相手の防御力を十五%ダウンさせる効果を持つスキルだ。

 フレイムオーラの蓄積を上乗せしたディバインブレイクを打ち下ろしで喰らうソウルイーター。


「…シィ!!…ッカ?!」


 ドゴン!…と重みのある重厚な音がしてソウルイーターの体躯は急下降して地面に叩きつけられる。

 ドカッ!ミシッ…!叩きつけられた音がトレーニングルームに響く。


「残り体力三十二%ですわ!シエンさんは支援攻撃を弱めにお願い致しますわ!」


「了解しました!ならば…チェーンロックアロー!!」


 ダメージが大きい体躯を動かそうとする仰向けのソウルイーターに放たれる【チェーンロックアロー】は両手両足に矢を放ち動きを五秒程止める妨害系スキルだ。威力より阻害の役割が強いためダメージは出ないのだが、この状況では最も適したスキルの一つである。


「シィッ?!カッ?!グッ!!シィィイイ!!?」


 放たれた四本の矢は的確に狙った部位に命中し、ソウルイーターはその動きを止める。


「残り体力二十七%ですわ!アカリさんは攻撃態勢を解除して防御回避態勢に!!」


「…りょ!!」


 リイサの指示は的確で素晴らしい!シエン、アカリも判断が早くて助かる!信頼する仲間だと…パーティだとこんなにも違うのか!!…楽しい!最高だ!!良し…最後はド派手に決めてやる!!


「…終わりだ!!…絶空・無撃斬!!」


 下降しながらスバルはスキルを放つ、現在スバルが所有するスキルで最も威力の高い技。【絶空・無撃斬】は無属性の飛ぶ斬撃を抜刀の構えから放つスキルである。飛ぶ斬撃は一つに見えるが実際は四回攻撃スキルだ、残り三つは敵には見えない斬撃となり襲いかかるのだ。

 強力なスキルなだけありCTは六千秒とかなり長い、しかしダメージがかなり高く四回攻撃ならば納得の長さだった。


「…シィッィイイ!!?シィィイイ!!ギャ!!シィッ!!シギャアアア!!!!!」


 全て命中したソウルイーターは悍ましい断末魔をあげながら消滅していった。…良し、とりあえずパターンが変化無いって収穫は得られたな、うん。…あれ?皆んな凄い勢いで俺に駆け寄ってきてるな。…うん、謝ろう。

 スバルも初めてみる三人の形相が迫り来る内に謝ろうと決心した。


「スバル!ズルいですよ!!何を一人だけ気持ちよくなってるんですか!かなり楽しんでましたよね?!…味わってみろ!とか!終わりだ!とか!」


「あらあらまあまあ…あれ程に的確に残り体力をお伝えしていたのに…何故?な・ぜ?あんな強力なスキルを使ったのでしょうね?…終わりだ!とか言う気持ちは分かりますが…先ずは習得してからですわ!」


「…終わりだ!…絶空・無撃斬!!…ホントに終わったし笑えない!…一番何もしてない…ズルい」


 終わりだ!の部分めちゃくちゃ言われてるんですけど?冷静に思い返したら恥ずかしくなってきた…。違うんだよ…

 なんかさ、こう、ね?感極まってしまったんだよ…。


「ははは、悪い悪い…いやーなんかさ、初めてパーティ全員でボス戦したらさ…凄い楽しくなっちゃったんだよなぁ…信頼出来る仲間がいるだけでこんなにも違うんだなぁってさ。…そしたら、その、ついつい…ごめん!次は気をつけるから!」


「…ま、まぁ次は気をつけましょうか」「…失敗は誰にでもある…許そう…!」「…そんな言い方されたら何も言えませんわ、もう!…フフ」


 信頼出来る仲間、と言われた三人はやはり嬉しいのか照れ隠ししながらスバルを許してしまう。

 スバルが垣根を無くしたとは言え、システマキングスで最も知識があり不動のランキング一位から…信頼出来る仲間などと言われては照れない訳が無いし寧ろ三人は心地良かった。


「悪かったって…さて、気を取り直して次行ってみようか?動きは皆んな流石だったし何も言う事なし!」


 やれやれと言う表情を浮かべながら次のソウルイーターを出現させる為に、足早にコンソールパネルまで移動してコンソールを操作しているスバルに視線を送る三人。

 視線には気付いていたが気にせず操作しているスバルはふと思う。

 先程のソウルイーターは変化パターンは無かった、やはり一部のモンスターだけなのだろうか?ソウルイーターとまだまだ戦うしその時にわかればいいか…。


「よーし…設定完了っと!さあ、皆んな次が来るぞ?注意してくれ!」


 早く三人の意識を次のソウルイーターに向けたい為に、いつもより臭い台詞を言う。

 カウントダウンが開始する…しかしこの時スバル達は気付いてなかった。

 この戦いが生死を分ける戦いになろうとは………。


「…はぁ、分かりましたよスバル」


「…おーけー」


「あらあらまあまあ、大丈夫ですよ?ウフフ」


 まだ…何処か…浮かれていた部分があったんだろうな、おれ達には。

 カウントダウンが開始されていたが、今回のカウントダウンの色が赤く表示されている事に誰も気付かなかった。そう、スバルでさえも。


 そうしてまた武器を構える四人、カウントダウンがゼロになった。

 ゾワリ…と背中に冷たい悪寒を感じるスバル…否、パーティ全員が感じていた。

 先程とは違い、何も無い所から空間を開いて出現したソウルイーターは、まるで違う様相を成していたのだ。

 人間の女の子…と表現するかの様な背丈、そして地面に着きそうか位の長い髪型、口だけが見えている髑髏の半面を顔に付けた幼女にも見える外見。

 体は漆黒のマントに包まれている見た目は幼女の様なソウルイーター、異常事態である。

 しかし四人の強者達は呑み込まれたりはしなかった、ここで異常なソウルイーターの存在の圧に潰されない四人は流石と言うしかない。


「…あれ、いや、あの子はかなりマズイですよ…一体何なんですかあのソウルイーターは?…スバル?」


「……………馬鹿な、知らない。……俺の知らないソウルイーターでも存在したのか?」


「…それって………かなりマズイ状況…それにあの子?……かなり強い」


「………ええ。恐らく全員で戦っても今の私達では…ほぼ勝てないかと、窮地ですわね」


 リイサの言葉に反論が無い時点で全員がそう感じているのは間違い無かった。ランキング一位のスバルがいて勝てる可能性が皆無なソウルイーター…信じられない事実である。

 現にシエン、アカリ、リイサの三人はスバルの表情を確認してみるが、スバルは驚愕して出現したソウルイーターを凝視して固まって何やらブツブツ呟いている。

 スバルが知らない種類のソウルイーターなど存在するのだろうか?と疑問にさえ思ってしまうが、現実から状況を把握しなければならない事態で余計な思考は捨て目の前のソウルイーターに武器を構え警戒する三人。


「…………アップデート後の要素?新ボスか?……いや、俺が設定したのはあくまでソウルイーターだ。…隠しボス………レアボス?」


 警戒したまま思考を止めずにブツブツ呟いているスバルに聞こえてくる声。


「………くくくっ!その中の二つが当たりじゃのう?小僧よ?」


「………な、んだと?!モンスターが喋るだと?!」


「当たり前じゃろう?…人如き矮小な輩だけと思うておるのか?これじゃから人間とは…傲慢じゃ…のぅ?」


 話してる声が近づいて聞こえていたスバル、ソウルイーターが話し終えた瞬間にはスバルの目の前にまで間合いが詰められていた。


「…簡単に死ぬでは無いぞ?小僧よ?」


 すると地面まで着きそうな髪が変形して鋭い鎌の様に姿を変える…そしてそのまま髪の鎌はスバルを薙ぎ払う為に攻撃してくる。


「「「スバル!」」」


「!?…受け流し!!!」


 ギャリリリ…!と言う重厚な金属音、ソウルイーターの攻撃がどれ程までに重くて頑丈なのかを物語っていた。

 咄嗟に受け流しで対処した辺りは流石と言うしかない反応速度だ、もちろん仲間達のおかげでもある。


「…ちぃ!…本当にソウルイーターか?!」


「…こんなソウルイーターなんて初めて見ましたよ!」


「…そもそも…ソウルイーターにバグでもあったの?」


「…いえ、そんな事は一度も聞いた事ありませんわ」


 リイサでさえも笑えない状況である、目の前のソウルイーターの速度、攻撃力がかなり高いと感じているのだから。しかし、自分にも目の前のソウルイーターを止める事は出来ない。


「くくくっ!何やら…お主らは勘違いしておるようじゃのぅ?…妾はソウルイーターなどと言う矮小な存在では無い」


 な、何を言っているんだ?コイツは…俺は確かにコンソールでソウルイーターを選択している!なのにコイツはソウルイーターでは無いと否定した…待てよ?コイツは俺の呟きに対して二つ正解があると言っていた…考えるんだ!

 アップデート後の要素の新ボス……いや、なら強さが跳ね上がり過ぎている。

 俺達のパーティは三人がセブンシリーズに到達している。俺に至ってはエイトシリーズ…【攻撃力・八】も習得済み、それを習得していて勝つ可能性がほぼ無い新ボスなどあり得ない。

 アップデート後の要素のレアボスか?…いやそれなら出現するのはソウルイーターのレア種ソウルアブソーバーの筈だ。ソウルアブソーバーも強敵だが、この四人のパーティで勝てない程は強くない。

 アップデート後の…要素で……隠しボス……!?


「………お前、まさかと思うが…アップデート後の要素の…隠しボスとかの存在か?!」


「…そうじゃ、良く辿り着いたのぅ?矮小な人間ではあるが、傲慢な者では無いようじゃな…くくくっ」


 目の前の存在の発言にシエン、アカリ、リイサの三人は警戒は解いてないが唖然とする。


 何故、自我を持っているんだ!?システマキングスにおいてモンスターが自我を持つなど存在しなかった筈だ。待て待て待て待て………柔軟に考えろ。

 アップデート後の新要素として作った…?何故……?モンスターと話せる様にする意味は何だ?

 システマキングス…アップデート………最後の……モンスターと話せる……パートナー化?……使役出来る要素があったのか!?


「さて、もう出ないか?お主の思考から答えは…?」


「…いや、分かったかも知れない」


 ほう…と感心した声を出す漆黒のマントを身に付けた隠しボス。矮小な人間にしてはと言いたげな表情が残るその口元は薄らいだ笑みを浮かべている。


「………お前を倒せば、使役出来るんじゃないか?又は…従属させる事が出来る使い魔の要素って所か?」


「…くくっ…くくくっ…あはははは!お主は素晴らしいな!?矮小な人間で無ければ惚れておるやも知れぬぞ?くくくっ…大正解じゃ!」


 そうと分かれば一度ここから脱出しなければ!どうする!?考えろ!考えろ!考えろ!


「なぁ、俺達をここから逃がしてくれないか?」


「……何を言っておるのじゃ?逃すわけなかろうて!」


「…そっか、残念だなぁ……お前は俺達に倒されて従属しなきゃもう二度と外には出られないのにな?そんなに強いのに名を知られないまま歴史にも残らない…ある意味悲しい存在で終わりか」


 シエン、アカリ、リイサに目配せをしながら隠しボスを煽る様に喋るスバル、その視線に気付く三人は微かに頷く。


「………何を言っておる?妾はまた別の出現を待つのみじゃ!」


「……次があると思ってるのか?はは、ははははは!笑っちゃうわぁ」


 ブワァ!と髪の毛が逆さまに鋭く巻き上がり怒りを露わにする隠しボス、すると髪の毛が伸びてスバル達に放たれる。

 ギュル!ガキィィイン!!

「ぐっ!?…がはぁ!!」

「…うぐっ!?ううっ!!」

「…ううっ!?…かは!!」


 直撃はしなかったものの、余りの速さの攻撃に防御した筈が吹き飛ばされてしまうシエン、アカリ、リイサの三人。

 慌てて体勢を立て直して驚愕する三人…体力の約二〇%を削られていたからである。


「…受け流し!!っはぁぁぁぁああ!!」


 スバルは最高潮の反応速度を見せて攻撃を受け流す、そして敵を見据えて叫ぶ。


「隠しボスのお前には…出現率があるんだろ?」


「……まぁの。じゃが!だからどうしたと言うのじゃ!それでもお主ら以外に倒す者が現われるのを待つだけと言っておる!小僧は気に入っていたのじゃが?最初に殺してやろう!」


 スバルとの距離を詰めて目の前に一瞬で迫ってきた隠しボスは、髪の毛をドリル状にしてスバルを貫こうとする。


「例え…その確率が一〇億分の一だったとしてもか?」


 その言葉の瞬間…隠しボスの攻撃がピタリと止まる。


「…な、なんじゃと?」


 明らかに見て取れる動揺である、システマキングスを十五年プレイし続けてきたスバルは、運営の鬼畜アップデート要素を紐解く為に半ばハッタリ、半ば運営ならやりかねない仕様を考えて発言していくスバル。


「更には…お前の出現場所なんて創造神エデルによって作られたこの箱庭のトレーニングルームでしか可能性など無いに等しい…本当に理解しているか?」


「………確証など無い虚ろな話じゃ、矮小な人間の、な?」


「…最近、俺も学んだんだが…自分だけが知ってる様に生きてる奴は…傲慢だな」


 隠しボスの髪の毛のドリルが解除されてバサリと普通の髪の毛に戻る。そして………。


「………………少し待て、妾も考える」


 絶望的な状況から活路が開く音を、確かに聞いた気がする。



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