モンスターの変化点とソウルイーターとは?
トレーニングルームでの…あのくだらなくも一致団結した勝負から十日が過ぎていた、恩恵により実質は二十日分だ。
現在スバル達は二組に分かれ擬似戦闘を行なっている。
「ギャ!ギャ!ギャッ!!」
およそ三メートルはある巨体からスバル目掛け剣を数回振り下ろすモンスター。
「受け流し!!…今だ!シエン!」
キリリッ!とモンスターの剣は軌道が変えられスバルには当たらない、物理攻撃無効化のスキルなのだから。
「分かりました!…くらえ!タクティカルアロー!」
体勢を崩したモンスターに絶対改心の矢が頭部目掛けて放たれる。
「ギィ?!ギャアエアアア!!!」
シエンの放ったスキル【タクティカルアロー】により苦痛に叫びながらドサリと倒れる、頭部に刺さった矢から血を流し絶命したモンスターの名称はゴブリンキングと呼ばれるボスモンスターだ。討伐難易度は高くは無いがスバル達は気を緩める事なく擬似戦闘を繰り返していた。
「ちっ…!やはりコイツも攻撃パターンが変化していたな…」
「ええ…システマキングスの時とは明らかに変化してましたね。魔法を使ってくるところなんて特に」
スバル達はシステマキングスのボスとは攻撃パターンや、使用してくるスキルに変化があると気付いたのだ。
更に多種多様なモンスターやボスモンスターの攻撃パターンや使用してくるスキルを確認しつつ、レアドロップアイテム狙いも並行して行なっていたのだった。
「…魔法のレベルは大した事なかったが、正直な話…一つ目の恩恵選んだ奴らなら間違いなく苦戦する強さだな。たかだか序盤のゴブリンキング如きだとしても」
「ですね…最低でもステータス系のスキル四は無いと楽にはならなそうな強さを持っていましたね。スバルのおかげで…僕らはみんな攻撃力のセブンシリーズまで辿り着けましたがね」
擬似戦闘とは言え、実戦に変わりない状況で二人はそう感じたのだ、例えセブンシリーズの攻撃力を解放したスバル達でも戦闘の度に驚かされていた。
あの勝負の後、十日を費やしシエン、アカリ、リイサの三人はスバルからコツを伝授して貰い、パーティの全員が攻撃力のセブンシリーズに到達していた。
その後は話し合いの末にゲームとは違う戦闘経験を積む事、ボスモンスターのレアドロップアイテム狙いの二つを並行して訓練する事になり今に至る。
「チャットでアカリとリイサにも情報を送っておくか…、シエン悪いけどその間にドロップアイテムの確認をしといてくれるか?」
「あ、はい。もう確認作業に移ってます、任せてください」
流石流石と頷いて返すスバル。パーティ内で千強者も百鬼もランキングも関係無い、と発言したスバルだが…実際シエンの手際の良さや判断力の高さ、戦闘センスには助かっていた。
全てにおいて圧倒的に楽なのだ。今まではソロでプレイしていたスバルにとって衝撃なくらいの楽さ。
理解している者同士でパーティを組むとこんなにも楽だったと知らなかったスバルは最高に楽しかったのだった。
「…殻に閉じこもり過ぎていたのかもな」
「…?今何か言いましたか?」
ポツリと呟いた言葉に反応したシエンに、首を左右に振り何でもない、と伝えるスバル。
「…?そうですか…ん?あっ?!」
急に驚いた声を出したシエンに駆け寄るスバル。遂にお目当のレアドロップアイテムがきたか!?
「…アッサリと出ましたね…ゴブリンキングのレアドロップアイテム…キングブレイカーが」
よーし!きたか!ゴブリンキングのレアドロップアイテム…キングブレイカーは剣装備で俺が欲しかった武器だ。攻撃力が格段強いわけじゃないが、ごく稀に相手の武器を破壊する特殊効果があるので欲しかったのだ。見た目も割とカッコイイしな。
「悪いな!先にレアドロ作業終了しちゃって!」
「仕方ないですよ…これに関しては内訳のドロップ率もあるので…はぁ、僕は運が悪いし長そうですよ…」
ゴブリンキングからはキングブレイカーの他に後もう一つレアドロップアイテムがある、緑王の弓だ。
緑王の弓にも特殊効果があり、通常攻撃時にごく稀に矢がヒットした敵を麻痺状態にする事がある。
状態異常が付いている武器はかなり貴重な為…剣よりもドロップ率は低い。
避けては通れないドロップ率との闘いを想像したのだろう、シエンは少し憂鬱なため息を吐いた。
「ははは、まぁまぁ。その内通る道だシエン…お?リイサから返信だ…何々…ふむ、これは…」
「…内容はどうですか?」
「うーん…皆んなでロビーにとりあえず集まろう。話はロビーする事になった」
「なるほど、なら丁度良いので休憩がてらにロビーで話し合いましょう」
確かに丁度良いタイミングだったな、と頷いて返すスバル。ロビーとはスバル達の各部屋に通じてる真っ白な部屋の事だ。真っ白な部屋とは呼び難いためにロビーと名付けられたのだ。
ゴブリンキングの残り素材をアイテム欄に収納していく二人。アイテム素材は白色のクリスタル、レアドロップは赤色のクリスタルが出現するのだ。
「なぁ、シエン。ドロップアイテムの話はムースに聞いた事あるか?」
「はい…一応聞いてみました…転生先ではクリスタルでの出現なのか、剥ぎ取りになるかは分からないらしいですよ、正直な話…剥ぎ取りなら難儀な話ですよね」
「本当だよな…はぁ…」
苦笑いしながらそう答えるシエン、これにはスバルも苦笑いで返すしかない。
剥ぎ取り要素などないパーティからすれば生きていく上で最重要な案件だった。もちろんアカリやリイサにもそんな経験などある筈は無いのだから。
まあ、でも…楽しみが一つ増えるかも知れないと思っておくか!
アイテムを収納し終えた二人はコンソールを操作してロビーへと向かう。コンソールからならロビーに直接移動出来るのも実際ありがたい仕様だ。
ロビーに移動するとサンドイッチを食べているアカリとリイサがいた。急に食欲を刺激されたスバルの腹の虫が鳴る、シエンも腹の虫は鳴らないが同様の表情を浮かべてイスに座る。
シエンはオレンジジュースとカルボナーラを注文するしていた、注文した瞬間に出来上がる不思議なテーブル。
俺も席に着いて注文する、炭酸水とレモンそしてピザだ。システマキングスをプレイしていた時の名残り食とでも言うべきか?普通に好きなだけなのだがな。
ある程度の雑談と昼食を済ませた所でスバルがリイサに問いかける。
「んぐっ、ゴクッ。…で魔法使用のSP管理についての相談だったよな?リイサ」
「あらあらまあまあ、そうなんですよねぇ…ヒーラーとして昔の様な自己完結が未完成の状態ですので、SP管理に若干の不安要素が出ててきてしまうので…」
システマキングスには魔法使用時にSPと呼ばれる数値が消費される。ヒーラー、ソーサリー職に就いている者には管理するセンスが問われる。
素人ほど派手にSPを無駄にさせるが、熟練者はSPを管理して状況を見極めて攻撃を組み立てている。
「確かにな、魔法を使うのはほぼほぼリイサしか居ないしな。かと言って上級職の常時アビリティも手に入る状況では無いしな」
「…上級職には、ヒーラーに必須な常時アビリティがあるのですか?」
「…ある。…常時アビリティに毎秒SP回復五%と言うのが…」
「あらあらまあまあ!その通りですよーアカリさん!ウフフ」
上級職の常時アビリティにもなると常時回復系の必須アビリティが出てくるため、後々は狙う価値がある。
あくまでも後々なのはスキル習得こそが重要だからだ…何故ならスキルにはそもそもSPの概念が無いのだから。
代わりにCTと言う次回発動までのコストタイムと言うものがあり、特殊なスキル以外は一つのスキルを無限に放てない仕様になっているのだ。
特殊なスキルとは受け流しとかのスキルを差している、この様なスキルは任意のタイミングで使用出来るのがメリットだが、発動中と同時に攻撃は出来ないと言うデメリットがある。
「…皆んなはSPを多少回復が出来る攻撃スキルがあるのを知ってるか?」
それを聞いて三人は驚いた表情を浮かべスバルを凝視するが、直ぐに疑問の言葉を飲み込み三人はお互いに視線を向けるが、知らないスキル名に首を左右に振りスバルに視線を戻す。
「…そうか、まあ、だよなぁ…。あのスキルめちゃくちゃ取るの面倒だけど…取りに行きたい人ー?」
はーい!と教師と生徒かの様に手を挙げ主張する三人。
SPを多少とは言え回復出来るスキルなど知らなかったのだ、習得すればどれだけ戦闘の幅が広がるか分からない貴重なスキルを三人が取りに行かない訳が無い。
「…スバル。…私達を少しからかった…でしょ?」
「…アカリさんと同意見です。全く、もう」
「あらあらまあまあ、楽しいから許してあげましょうね皆さん?…次回はいつスバルさんをからかうか三人で会議ですわね!ウフフ」
実は多少からかっていたスバル、顔にはニヤニヤした感じの聞かなくても分かっていた様なふざけた表情を浮かべていたのだ。
しかしスバルのこの変化は自身にとっても嬉しい変化だった、スバルはずっとソロでひたすら鬼畜の先を探求していた孤高のプレイヤーだった。
喜びを共有する仲間も居ないのはもちろんのこと…今みたいに冗談めかしく話せるパーティも組んでいたわけではない。
それが今は目の前にあるのだ、創造神エデルには感謝してもしきれない。
ありがとうエデル、そう心に思いつつスバルは自身のトレーニングルームに移動しようと三人に話し移動をするのであった。
移動する為には部屋に入ってからコンソールを操作してトレーニングルームに移動するのだが、その前に色々と設定しながら三人に話すスバル。
「…スキル名は【ソウルイーター】って言って、スキル効果は自身のSPを全て消費して攻撃をヒットさせた相手のSPをゼロにするスキルだ」
「…ん?それは回復効果では無いのでは?…あ、もしかして付随するアビリティがあるんですか?」
「…む、なる」
「あらあらまあまあ…一瞬ヒヤリとしましたわよ?ウフフ」
「その通り…付随するアビリティ効果は通常攻撃又はスキル使用時に自身のSPを二十五%の確率で一〇%回復だ」
「凄い…!」「…私も欲しい!」「あらあら…凄いですね!」
控えめに言ってかなり強い部類に入るスキルだ、何故スバルはこれ程のスキルを知ってるのか。
それは彼が楽しんでいたからである、システマキングスを鬼畜の作業も苦痛も…その先にスキルがあるならスバルは楽しかった。
「さて…習得条件だが…回数では無いんだが、タイミングがかなり難しい。ソウルイーターってボスの体力を残り五%以下にした時に低確率で使用してくるアブソーバーってスキルがある、効果はこちらの体力の二〇%を吸収してくるスキルなんだが、この吸収しきった丁度のタイミングでソウルイーターの体力を一撃で倒すと習得出来るんだ…タイミングはかなりシビアだ」
三人は内容を聞いて更にスバルの反応を見たのもあり全てを察してしまう。ソウルイーター狩り周回と言う鬼畜ロードが待ち受けているのだと。
「…僕、まだゴブリンキングのレアドロ周回も残ってるんですよね…はぁ、先は長いですね…」
「…気合い、そして…楽しめ…」
「あらあらまあまあ、待ち遠しいですわ!早速ソウルイーターを狩りに行きましょう!あ、恐らくソウルイーターも攻撃パターンが変化していると思われますので皆さん油断しない様に行きましょうね?ウフフ」
「ああ、そうだな。リイサの言う通りだ、みんな注意してくれ」
スバル達はリイサの注意を頭に再度刷り込ませ、油断しない様に心に確認をする。
コンソールでソウルイーターを出現させる設定にしてトレーニングルームへ移動する四人。トレーニングルームに移動すると、天井に三十秒と数字で表示されカウントダウンされていく。
「ソウルイーターの体力五%以下には俺のコンボで出来るはずだから、その間リイサには全員のバックアップと敵の体力をスキルで調べ周囲伝達して欲しい、もしパターンが違いコンボが中断せざるを得ない状況になったら入れ替わり要因に直ぐに残り体力を伝えてくれ」
「あらあらまあまあ、お任せを!ウフフ」
リイサはヒーラーだが一番忙しいパーティの柱と言える部分を担っている、周囲伝達スキルや、感知スキルを持ち合わせ味方と敵の情勢を見極めてバフやデバフに回復など、実は一番難しい職とスバルは思っている。
「アカリには俺の入れ替わり要因で俺とソウルイーターの半径五メートル位の距離を保ちながら追撃の準備をしておいてくれ、万が一攻撃パターンや行動パターンが違った時の為だ、この間にパターンを記憶したなら俺との役割を交代しても良いかも知れないしな」
「…おっけー!…任されたー」
システマキングスではソウルイーターは周回するようなボスでは無かった。その強さとは裏腹にレアドロ枠が無いからである、不人気ボスだ。
アカリを含めた三人はそれほどパターンを覚えているわけでは無いし、その部分を埋める為の役割でもある。
「シエンにはパターンに変化があっても無くても通常攻撃での削り要因で、スキルを使う場合は弱めのスキルを使ってくれ。さっきみたいなタクティカルアローとかはダメージがデカいから禁止で頼む」
「はい、任せてください!」
シエンの遠距離攻撃での削りもかなり助かる要因である、スバルがソロでソウルイーターのスキルを習得しようとしたらコンボを編み出すしか無かったのだ。
ソウルイーターの体力はボスモンスターの中ではかなり少ない方であり、もし体力残り六%とかだった場合…スバルの攻撃では倒してしまう可能性がある為だ。
さて…そろそろか!パーティとしての初戦闘だな、キングブレイカーを装備し忘れていて、いま装備したのは内緒にしておこう…。
カウントダウンの表示が…ゼロになった!




