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今後の話

 早速スキル習得だと勇んだものの静止させられるように室内に響く声。

 声の主はシエンだった、どうやら提案があるらしいが…とりあえずチャット機能もあるんだしチャット機能を使いながらでも良いんじゃないか?と思ったのだが…聞いてみるかと応答を待つシエンに返すスバル。


「シエン…提案って何だ?」

「今後の為にもパーティを組みませんか?自己紹介を聞いた限りだと近距離職はアカリさんスバルさんの二人、遠距離職が僕に回復職にリイサさん…かなりバランスの取れているパーティですし、HPが無くなったら死んでしまうリスクを考えたら良い提案だと思うのですが?」


 パーティ関連の話がこんなに早く出てくるとはな…後々はこのメンツの誰かから出る話とは思ってはいたが。

 何故なら今シエンが言った様に、この部屋のメンツは職で見た時かなりバランスの取れた職選択をしているからだ。だがそれは中級職や上級職になっているのが大前提の話でしかない。中級職や上級職には必須スキルも必要になってくる。

 必須スキルはまだいい…問題はキーアイテムを探さなくてはならないという所。もし、転生先がシステマキングスと同じスタート地点からなら、キーアイテムなんて代物が手に入る場所では無い。

 後はHPが無くなったらの話だが、これについては経験していくしかない話だ。ここで議論しても時間の無駄にしかならない。

 それらを加味した上でもシエンの提案は説得力にかける話でしか無い。つまり現時点では組む利点が無いため却下だ。


「俺は断る。組む利点が現状見つからないからな」

「…私は別に…組むの賛成」

「あらあらまぁまぁ、私はとりあえず…保留にしておきますね?ウフフ」


 ふーん…アカリは賛成か。まあ確かにアカリは近距離職だし遠距離職のシエンと組む利点はあるからな。自由にすればいい。

 リイサは保留…か。ランキング二位のリイサならばソロでも生きていけそうなものだが、やはりゲームとは違うと言う部分に意識しはじめているのだろうか?

 良くわからない…生身の人間として対峙した独特の雰囲気が少し苦手だ。パーティを組むにしても認めた奴としか組みたくないし、こいつら全員がその可能性があるかどうかも知らないしな。


「…っ!アカリさん、リイサさんは分かりました、しかしスバルさんは正気ですか?千強者に達していない貴方には危険過ぎるんですよ?!」


 この野郎…まだ信じてなかったのか?好きにすればいいとは言ったが…なんか腹立つな。


「…いや、あのさ?俺はランキング一位な訳さ。分かる?ランキング一位!組む利点が無い!それで分からないってシエン君さ…君本当に千強者の域なの?俺からしたら今の会話で理解してない君は中級レベルにしか見えないけどね?」

「…今…何と言いました?僕はプレイ三年で千強者に達したんですよ!?貴方より明らかに格上です。貴方こそランキング一位を証明出来ないじゃないですか?」

「…むぅ…二人共…熱いのはいい…でも落ち着け」

「あらあらまぁまぁ…二人共話が逸れはじめておりますよ?」


 宥めようとするアカリとリイサの声だったが俺とシエンは聞く耳を持たない状態になっていた。

 売り言葉に買い言葉とはこんな感じみたいだな。


「証明だと?それならばリイサのランキング二位の証明はいらないのか?お前やアカリはどう判断したんだか…。どうせランキング二位はヒーラー…って情報しか無いだろうが違う。バトルヒーラーが正しいしもっと細かい答え合わせをリイサとすれば分かるが相手の情報をバラす訳も無い。実際に戦いを経験している俺はリイサの話に嘘は無かったと感じていたから信じたがな」


「リイサさんは関係ありません。目を見れば分かりますよ?心理学で習いましたし、しかし貴方は信じられません。今後…顔を見合わせる可能性があるし訂正して頂きたいものです。僕は千強者なんですから」


 出たよ…コレだよコレ…。俺がパーティを組みたく無くなったプレイヤー達にそっくりだ。

 俺がシステマキングスを始め一年経った頃にビギーってキャラ名のフレンドに出会った。ビギナーからとった名前だったらしい初心者だ。

 女性だった事もありギクシャクした部分も始めはあったがフレンドが出来たのは初めてだったし、何よりも一緒にプレイするのが楽しかった。

 彼女はお世辞にも上手くはならなかったが、俺には関係なかった。

 しかし、ある日彼女が周りのプレイヤー達からいらぬ誤解をされ批難され始めた。ランキング一位に上手く取り入ってスキル情報を貰っているのでは?千強者の俺の方が!百鬼の俺の方が!私の方が!強いのに!偉いのに!…と。

 彼女は愚直な程に真面目なプレイヤーだった…その言葉も真に受け止めてしまったのだろう。

 彼女は俺に、迷惑になると悪いので本当にごめんなさい、とメッセージを送ってそれからログインされなかった。

 一部の勘違いプレイヤー達に憎悪が湧き上がった俺だったが、誰がそんな事を言い出したかも分からない俺は…結局何もしてあげられないまま、ごめん、としか返せない程に弱かった。

 だが…今の俺なら。あの時の彼女を…唯一のフレンドを傷つけるような奴らを黙らせられると思うんだ。

 俺を…俺のフレンドを見下したらどうなるか?見てろ…!ビギー!


「おい、シエン」

「な、何ですか?」


「お前の提案に乗ってやろう。但し、パーティのリーダーは俺だ。良いよな?」

「あらあらまぁまぁ!なら先程保留した件は了承しますわ!私も!ウフフ」



 さあ…乗ってこいよ?乗るだろ?腐っても男だろ?俺達はさ?


「お二人が提案を受け入れてくれたのには感謝します…が!スバル!貴方はリーダーの器ではありません!本来パーティリーダーとは、システマキングスの知識と才能を兼ね備えたプレイヤーがなるべきです!つまりは千強者以上である僕やアカリさんやリイサさんがやるべきなので貴方にはそもそも相応しくない。リーダーの件は却下です」


 はい乗りました。こいつ本当に誘導しやすいなぁ…急にリイサがパーティを了承したのには若干驚いたが俺はシエンに返す。


「ならシエン君さぁ…勝負しない?箱庭の二日…厳密には四日分でどれだけシリーズの高いステータススキルを習得出来るかどうか?…どう?」


「話になりませんよ?それこそ僕にとってもパーティにとっても利点が何もありません」


「あるさ。俺はランキング一位…ほぼ全てのスキル解放条件をパーティに教えてやる事も出来る。もちろん俺が勝てばスキル習得条件を言う言わないは俺の自由だ。だから俺が負けたらパーティ全員に俺が知ってる全てのスキルの解放条件を教える…ってのはどうだ?」


 シエンは疑念の表情を浮かべながらも考える。スバルがランキング一位を証明する事が出来ない、シエンのこの言葉は言い換えれば、スバルがランキング一位では無い事も証明が出来ないのだから。


「………良いでしょう。しかし、勘違いしないで下さいよ?ランキング一位だったらの可能性を見た場合でなら僕が勝てば全員の利点になり得ると思っただけです。それに貴方には理解して貰わないとならないみたいなのでね?」


 システマキングスを理解して貰わないと、とか言って欲しかったよ。システマキングスへの愛を感じないなシエンよ。


「二人は証人で良い?勝手に熱くなって進めちゃったけど…大丈夫?」


「はぁ…本当に男の子は…元々リーダー向いてないから良い」

「あらあらまぁまぁ、私は自分の判断である程度動きますし、異論があれば発言いたしますので…大丈夫ですよ?ウフフ」


「決まりだな」「決まりですね」


 同時に確認したスバルとシエン。


「なら、色々と全員の為にもなる筈だし…ムースにメッセージを…送信っと」

 スバルがムースにメッセージを送っている間に三人は各々スバルを見ながら考えている。

 ピロリーン!その瞬間ムースが一瞬にして時計の側に姿を現せる。


「勝負の内容はメッセージにて理解致しました。自身の部屋の中からトレーニングルームへの移動方法についてこれから説明しておきます。部屋の中にあるコンソールパネルで操作可能となっており、様々な形状の部屋、ダンジョン、戦闘地形、一定のモンスター配置、固定、擬似戦闘、戦闘…等の要素を設定して移動したルームでトレーニングする事が出来ます。何か質問はございますか?」


 なるほど…かなり緻密に設定出来るみたいだな。少し安心したよ。さて質問していこうかな。


「この箱庭自体でプレイヤー同士が戦うのは可能?可能ならばHPが無くなったりする?」


「可能ではありますが、プレイヤー同士の場合は必ずHPが一以上残る仕様になっております。トレーニングルームでも同じ仕様ですが、例外がありレア武器ドロップのある特定種のボスモンスターのみデスモードありになりますので…ご注意下さい」


「だってさ?シエン」

「っ?!僕が質問した訳じゃ無い筈でしょう!」

「リーダーとしてメンバーが聞きたいであろう情報を聞いてあげてただけなんだけどな?あ!すまん…まだ決着してなかったな。ムースさんありがとう」


 軽く口撃しつつも半分は本音だった、シエンは何かブツブツ言っていたが聞こえなかった。

 ムースに礼を言うとムースは会釈して口を開く。


「ではまた何かありましたらご連絡を、失礼致します」


 ムースはそう言うとまたもや半透明になり消えていく。

 良し、ならば最早この真っ白な部屋に残る意味は無い。さっさと自身の部屋に移動しなくては、圧倒的に負かしてやろう…シエン君には悪いがな。


「お先に失礼します、スバルさん!」


 いち早く自身の部屋の中に消えていくシエン。強めにドアが閉まる音が真っ白な部屋に響く。明らかに苛立っているのだろう、その所作で感じ取れてしまう。

 二日後…いや四日後が楽しみだよ。昔は俺も清楚なプレイヤーだったんだがな、二度目の人生で転生…昔の俺を変える意味でも良い機会と言える。


「…じゃ…私も。…おつ」

「あらあらまぁまぁ、私もこの辺で…ウフフ」


 女性陣の眼差しは若干涼しいものはあったが、やり取りを確認し終えた二人は挨拶程度に自身の部屋の前に移動していく。

 しかし…気になる事もあるんだよなぁ。アカリやシエンがナインシリーズを知らなかったと言う点だ。シエンは始めて三年らしいがアカリやリイサはどれ位なんだ?聞いておくか。


「ちょっと良いか?アカリとリイサに聞きたいんだけど…プレイ年数は?」


「…?七年…なんか意味ある?」

「あらあら…私は十四年ですね…」

「いや特に何となくだよ?…そっか。引き止めて悪かった、ありがとう二人とも」


 二人はキョトンとした表情を一瞬浮かべたが何事も無かったかのように自身の部屋のドアノブに手を掛ける。俺も自身の部屋のドアノブを回しながら思考を巡らせる。

 三年と七年と十四年と十五年………うーん…駄目だ分からない。にしても…リイサめちゃくちゃ親近感湧くなあ。プレイ年数が近いと苦労も分かりやすいしランキングも近いしな…ははは。…待てよ?


「…プレイ年数も解放条件なのか?」


 ぼそり…と独り言を言ったつもりだったが後ろから声がする。


「…そんな事…あり得るの?」


 前髪ぱっつんアカリだった。



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