ドランの料理
「………美味い」
ドランの作る料理の数々は絶品で味合う時間と美味いと呟きながら食べ進めていくスバル達。
「んぐっ!…なあ、これは何の肉なんだ?美味すぎるんだが?」
「ふはははは!それはなぁ?俺とエルが冒険者をやってた時に倒した飛竜の肉だ!その肉を使ったステーキなんだがひと手間加えてから焼いてあるんだ、一度…半燻製状態にしてから焼いてんのさ!自信作だ!」
「これは…大変美味でございますね…長く生きてきた私でも味わった事の無い美味ですね」
「ヴェルゴ同様…私達も味わった事無いわ、こんなに美味しいステーキは…」
魔族も妖精も絶品と認めるドランの料理、飛竜の肉を使ったステーキは世に出回った事など無いのだ。
「…飛竜?ドラン…あんた相当強いだろ?…最低でも攻撃力上昇・六は無いと飛竜を仕留めるのは無理だぞ?」
スバルの言う通りだった、飛竜…システマキングスにおいて竜種のモンスターは強く、パーティでの討伐を推奨されている設定だった。
それをエルと二人で討伐したと言ってるのだから相当な実力者であるとスバルは言う。
「ふははは!その通りだ!俺達二人は攻撃力上昇・六までは到達してるぞ!」
「ちょ…はあ、余計な情報は言わないでよね…もう!」
エルは溜め息を吐いてドランの頭にゲンコツする、痛がるドランはバツが悪そうにエルに謝っている。
「…あれ?何故ペインはドランさんとエルさんを鍛錬したいと言わないんですか?」
「あ、確かに」
攻撃力上昇・六に到達していると知ったいつものペインなら…原石じゃ!などと目を輝かせながら鍛錬させるはずなのにとシエンとスバルはふと思う。
「もぐ…むぐ…んく。…妾は気付いておったぞ?最初に二人を見た時からのぅ?…重心の掛け方と移動する時の足捌きに強者のソレが表れておったからのぅ、じゃが…二人は宿を開いておるんじゃ、妾とて無碍にして誘ったりせんのじゃ」
「…ありがとうございます、ペイン様。…はぁ、皆んな貴女見たいな方々なら私達も疲れなくて済むんですがね」
ペインに礼を言いつつ苦笑いするエル。
「…まあ、自分でそこまで行こうとする奴が居ないのは…悲しいし、腹も立つよな」
「全くだぜっ!俺達にはやりたい夢がある!って何度も言ったのによ、周りの奴らはコイツをアイツをソイツの討伐を手伝ってくればかりだ!ったく!そのくせ宿を開いたら誰もこねぇし!」
「ドラン…分かるぞ!その気持ち…!」
スバルはドランと熱い握手を交わす、そして料理も宿の雰囲気も気に入っていたスバルは言う。
「ドラン…しばらくこの場に居る俺達が宿を貸し切るが良いか?」
「なにっ!?そりゃ嬉しいぜ!…だ、だがなぁ、実は宿泊料金はそんな安く無いぞ?遠方にある村だからな、割と高めに設定してる…その代わりもてなしは最上級にしているんだがなぁ…大丈夫なのか?」
「スバル様ありがとうございます…憩いの宿エルドラを九人で貸し切るとなると、部屋は八つありますから大丈夫かと思いますが…金額がその、ドランも言ってる通り高めになっておりますので…」
ドランは心配しながら、エルは身体をもじもじと震わせながら懸念してくる。
そんな二人を見ながらスバルは言う。
「心配するな、金には大分余裕があるからな?無駄遣いは嫌いだが、価値ある浪費には意味がある!」
そんな言葉を聞いた二人は身体を震わせながら感動していた、自分達の宿を評価されたのだ。
「うぉおおお!宿を開いた甲斐があったな?エルっ!」
「う、うん!あ、コホン!…ありがとうございます、スバル様!では料金ですが、お一人様一万ゼルとなります故…一日九万ゼルから貸し切りになります」
その言葉を聞いた瞬間…ルクスとルウ達が飲み物を吹き出しそうになる。
「…っぐ!?…はぁ、はぁ、大丈夫か!?俺は王子って言ってるが…そんな大金ないぞ?」
「っ!?ちょ、ちょっと!私達だって急だったし、そもそもそんな高い料金払えないわよっ!?」
そんな言葉が聞こえ途端にしょんぼりとした表情になるエルとドランだったが、スバルの言葉を聞いて明るくなる。
「何の問題も無いぞ?とりあえず…そうだな、二か月程は滞在する予定だから一応九人分で計算しておいてくれ、支払いは俺が持つから皆んなは気にするな」
「に、二か月っ!?あ!は、はい!かしこまりました!ありがとうございます!!」
約六十日を九人全員分で五百四十万ゼルになる計算なのだが…妖精のルウ達はアジトに戻る可能性も出てくる為にそう言うスバルであった。
「ちょ、ちょっと!シエンあんたの仲間ってどんな富豪な訳!?」
「え?あ、いやぁ…まあそれ位なら僕らも払えますし、スバルが一番持ってますがね?ははは」
「それ位!?…シエンどれ位あるのよ?」
「僕は…二億五千万ゼル位ですね」
「………は?」
言った途端に周りの視線がシエンに集まる。
「お、お前達分かっているのか?その額はもはや年間の国の予算並だぞっ!?」
ザイカは困惑しながらも驚きを隠せない。
「…シエン…胸触ったのお金請求していい?」
ルウ自身もあまりの額に訳の分からないことを言いだしていた。
「…そ、そんな額とは知らなかったです」
「ま、まあとりあえず鍛錬中の金の心配はするな」
「妾の給金を上げるのじゃ!スバル!妾の給金が三万ゼルは安いのじゃ!」
シエンのせいで飛び火したスバルはアイテム欄からティラミスを取り出した。
「このティラミスと五万ゼルだ…嫌ならこのティラミスは俺が食うが?」
「ああ!?ズ、ズルいのじゃ〜!!」
半ばティラミスを人質の様にされたペインはそう叫ぶ、そんな中で一人の男が声をあげる。
「…な、何だ?この香りはっ!?まさか…それはスイーツなのかっ!?一つ食わせてくれないか!?」
憩いの宿エルドラの料理長ドランが目を鋭くしながら懇願してきたのだ。
「え?ああ…別に構わないが」
言いながらティラミスをドランに渡すスバル。
「すまん!…何と言う軽さ!?何層ものコレは何だ!?…いただきますっ…もぐ…っん!!?」
「ああ!?妾のティラミスがぁぁぁぁあ!………うぅ」
ドランの口に消えたティラミスを見てペインはそう言う、しかし…スバルはペインを励ます様に囁く。
「ドランがティラミスを作れる様になったら…一生心配いらなくなるぞ?」
「……え?……あ、ああ!確かにその通りじゃな!流石はスバルじゃ!」
あっという間に立ち直るペインであった。
シエンは一連の流れで自身の話が逸れたのを安堵しながらそんな様子を見守り続ける。
「………こ、こいつぁ、美味い!なんて濃厚で、フワリと舌で溶けやがるんだ!!作りたい!ペイン!待ってろよ!必ず体現してやらぁ!」
「うむ!任せたぞぃ!ドランよっ!」
二人が握手を交わす約束をするなか、ヴェルゴがワインを飲み干した後に口を開く。
「…ふぅ、ご馳走様でございます。本当に美味な料理ばかりでした…それで、一つ…宿長様に質問があるのですが?宜しいでしょうか?」
「ありがとうございますヴェルゴ様。はい、なんなりと承ります」
エルの返事にヴェルゴがこほんと咳をした後に質問する。
「こちらの宿には…御風呂などはございますか?」
そんな言葉に目を丸くするルクス王子やルウ達だった。
そもそも風呂などは普通の宿には付いてない、トレニア大陸全ての宿を確認した訳ではないが、聞いたことは少なくとも無かったのである。
「魔族も風呂とか好きなのか?意外だな、ははは」
「実は憩いの宿エルドラには…温泉がございます」
温泉と聞いた全員は驚愕した。
何故なら温泉とは、源泉を探し当てなければならなかったり、当たり外れで土地を購入していては、元冒険者だったエルとドランでも一体幾らになるのか?
地表を見たりの作業すらあるのに二人で出来るとは思えなかったからである。
「私達は冒険者時代にあるアイテムを入手しました…遺跡アイテム『湧き出る源泉』という名の獣がモチーフにされているモノでして、そちらから無限に温泉を作り出せるのです」
「遺跡アイテムだったか!…凄い宿だな、確かにそれも宿泊費に入ってるなら安いくらいかも知れない…」
「シエンに出会ってから、周りに凄い人だらけだわ…」
エルの返事に驚愕しながらもそう言う二人、そしてルクスはヴェルゴに言う。
「良かったな!ヴェルゴ!温泉なんて入れてよ?王国の宮廷とかでしか入れねぇからな」
「え?いえ、特に風呂が好きとかでは無くてですね…余り言いたくなかったのですが…スバル様達の匂いがですね…ペインお嬢様も含めて、その…」
そんなヴェルゴの言葉を聞いた途端に身を隠す様にする女性達。
ペインですら…顔を赤くして泣きそうになっていた。
「いえそうでは無く…いささか血の匂いが強いと思ってまして…」
「…そ、そうか、なるほどなぁ…丁度料理も食べ終わったし、温泉に入ろうか?」
スバルはチラチラと女性達を見てからそう言う、ヴェルゴを除いた男性達も同じ仕草をしており、女性達からしたら何を期待しているんだと言う目線だった。
エルにもそれは伝わったのかはっきりした口調で話す。
「因みに!…別々に用意してあります故、混浴の作りなどではありませんので…男性の皆様には申し訳有りませんが」
途端に顔を背ける男性達、そんな男性達に鋭い視線を送る女性達であった。
ふとそんなやり取りを見ていたヴェルゴは思わず言葉にしてしまう。
「ふぅ…やれやれ…この先どうなる事やら」
明日から鍛錬が待つであろうヴェルゴは魔族でありながらも、不安に思うのであった。




