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憩いの宿・エルドラと妖精

 イカの姿焼を堪能するペインに一時間後には中央広場に集合する旨を伝えたスバルとアカリとリイサの三人は、緑色の屋根の建物…イゴの村唯一の宿を目指し歩いていた。

 そんなスバルの手にはペインから分けて貰ったイカの姿焼があり、道中話しながら食べていた。


「寝泊まりする場所は…まあ、宿になるだろうな。もぐ…もぐ、んぐっ。…塩のみの味付けだが、普通に美味いな」


 若干マヨネーズが欲しいと胸中にあったが、塩のみの味付けでも充分美味い為にそんな思いはすぐに消える…後で考えてみようと。


「場所もそうだね…でも、この村の宿…そんなに部屋があるのかな?」


「あらあらまあまあ…た、確かにそうですわね。…男女五人で寝泊まりは、流石にあれですわね」


 スバルは苦笑いしながら確かにと頷く。

 イゴの村は中央広場があったり、小さいながらも出店があるなど村にしては広いと言える程であろう。

 しかし、だからと言って宿がそうかと言えば話は別だろうと三人は思っていた。

 ルクスの隠れ家は地下を改造しており、広く住める様な作りになっているらしい。

 広さ的には十人以上は余裕で入れる程とルクスから聞いてはいた。

 だがスバルはそこまで厄介になる訳にはいかないし、女性達の意向もあると隠れ家での寝泊まりは断ったのだ。

 そんな風に会話しながら宿の前に来た三人は驚いた。


「想像を超えて来たなぁ…」


 村の宿と呼ばれるには余りに大きな建物であり、移動しながら目に映ったイゴの村の民家の五倍はある大きさであったからだ。

 更には三階建ての造りの立派な建物だったのだから三人は驚きを隠せなかったのであった。


「す、凄い大きさ…遠目からは余り…分からなかった」


「あらあらまあまあ…木々に囲まれていて良い雰囲気の場所ですわね、ウフフ」


 遠目からだと木々に囲まれているせいもあってか、緑色の屋根と相まって建物の大きさに気付かなかったのである。


「憩いの宿…エルドラか、良し入るか…なんだか楽しみだな」


 両開きのドアの真上に宿の名前が書かれていた。

 そんな事を笑顔で言うスバルに対してアカリとリイサも笑顔を見せて頷く。


 ガチャ………リィン!


 開けた途端に鈴が鳴ったかの様な音が憩いの宿エルドラのロビーに響く。


「…ん?ふぁああ…お、おぉ?お客様だぁ!?旦那よっ!仕事だっ!!…コホン!ようこそ、憩いの宿エルドラへ!私はこの宿の女将をしておりますエルと申します。宿泊でしょうか?お食事でしょうか?」


「い、今…完全に寝て……」


 スバルが言い終わる前にロビーの奥からドタドタと言う足音と共に一人の男が飛び出してくる。


「エル!聞き間違いじゃなきゃ…おおっ!?きゃ、客だぁぁぁあ!!」


 飛び出して来た男性…恐らくは女将のエルの旦那は歓喜の雄叫びを上げる。

 エルは溜め息と共にその男性を諭す。


「はぁ………ドラン?接客中にっ!飛び出してくるんじゃないっ!厨房に戻れっ!!」


「い、いやっ!つ、つい嬉しくてよぉ?…ま、待て戻るからっ………ぶふっ!…や、やり過ぎだろぉ……ぐぅ…」


 エルのお客様に見えない様に隠し放った拳によりドランは苦悶の表情を見せながら去っていく。

 そんな様子を唖然と見守っていた三人、そんな三人に対して慌てて話すエル。


「ええっと…!大変お見苦しい所を見せてしまい申し訳ありません!…その、初めてのお客様だったもので!」


 スバルは先程の言葉を飲み込み新たに女将に聞く。


「あ、ああ良いんだ。それにしても…こんなにも立派な宿で俺達が初めての客なのには理由があるのか?」


「…はい。この村は漁業を生業としてる方々が生活しておりまして、私達は行者や商業人も多くなる筈だと見込んで宿を開いたのですが…王都や周辺の街や村から離れ過ぎていたので全く知られなくて……ううっ」


 しょんぼりした表情で話すエルだったが、初めてのお客様である俺達が来たのですぐに明るい表情に変わり話す。


「ですがっ!何と!今日!初めてのお客様が!ありがとうございます!」


「あ、ああ。…いや、でもやはりおかしいな?普通なら商業人くらいは泊まったりしそうなものだが?」


 その言葉にピクリと反応するエルは重々しく口を開く。


「そ、それは…ふぅ。…トレニア大陸では現在…魔族による侵略を受けていますよね?更には隣国であるレウス帝国からも攻撃されている状況…トレニア王国はこれにより街や村での行商行為を王国にのみ集める、とした法令を一時的に作り措置しているんです…ですから、お客様など現れなかったのです!」


 急に飛び込んで来た情報に驚いた三人は顔を見合わせる。


(おいおい、マジかよ…これがエデルの言ってた世界がどうなっているかは分からない状況って訳か…。にしても、ルクス王子はこの情報を何故俺達に教えなかったんだ?…それ以上に王妃の存在が重要だから?魔族とレウス帝国に攻められているこの状況下でも消さなければならない理由…

 何方かに内通しているからか?!)


 エルの言葉から辿り着いた可能性に気付いたスバルは口を開く。


「…なるほどな、だからルクスは王妃を…ありがとう、大体の事情は察したよ…とりあえずまだ仲間が集まって無いものでな、後で食事をしたいから席を予約しておきたいのだが?」


「あ、はい!分かりました、では皆様がお揃いになりましたら私に声を掛けて下さい。料理の内容はコースとおまかせがありますが…何方になさいます?」


 スバルはこの手の話には弱いので二人の女性に対して苦笑いしながら視線を送る。


「ん、おまかせ…しかない!」


「ウフフ!私もおまかせで良いと思いますわ!」


 そんな二人の声を厨房の隙間から覗いて聞いていたドランは気合いを入れる。


「っしゃぁぁぁあ!!最強のおまかせ料理を食わせてやるぜぇぇえ!!」


「…はぁ、すみません。旦那の料理の腕は保証致しますのであの中身は置いといて下さい!」


 そんな様子を見て三人は笑う、そしてスバルが答える。


「ははは、いやいや気にしないでくれ。良い旦那さんだと思ってな?…それじゃあ三十分くらいしたら戻ると思うけど、料理が出来てなくても…そうだな、八人程が座れる場所を頼んだよ」


「はい!お客様のお名前を伺ってよろしいでしょうか?」


「ああ、すまない。スバルと言う」


「かしこまりましたスバル様。ご予約ありがとうございます!行ってらっしゃいませ!」


 エルの声は心地良く三人に響き気分を良くしてくれた。


「ああ、行ってくる」「…いってきまー」「行ってきますわ」


 思わずと反応していた三人の表情は明るく、村の中央広場に向かうため憩いの宿エルドラを後にするのであった。




 ー漁業の村・イゴの周辺ー


「…とりあえず、村の周辺五百メートルは安全みたいですね」

 イゴの村から五百メートル程は離れている木々と岩の付近でそう呟く男の姿があった。

 そこには周辺を警戒して偵察に来ていたシエンである。


「それにしても…崖から数百メートル離れた場所に村があるとは、それもそれで驚きますね。………さて、そろそろ村の中央広場に戻りますか……っん!?」


 イゴの村の中央広場への集合時間がある為、先にスバル達に合流しようと歩き出そうとした矢先…視線を感じるシエン。


(…これは、気のせいじゃないですね…明らかに僕を見ている視線が三つ…かな。しかし…殺気は無い?どうして僕を見ているんですかね?)


 シエンが感じ取った三つの視線には殺気が無い…これはシエンが探索、探知系スキルを使用した訳ではない。

 スバル達パーティ全員が通った道…ペインの鍛錬の賜物である。

 そもそもスバル達はエデルの空間で目覚める前は、ただの一般人である。そんな彼等がどうしてこんなにも強くなれたのか?

 システマキングスと言うVRMMOゲームをプレイしただけでは培われる事の無い感覚の数々を、何度も瀕死の状態を経験し恐怖を克服していたからである。

 トレーニングルームでのデスモードを利用した、ペインとボスからの二重攻撃を受けて、躱して、また受けてを繰り返す…死と隣り合わせの数十日間はスバル達にとっては思い出したくも無い出来事である。

 だがそんな地獄の鍛錬を達成したスバル達の五感、はては第六感と言う感覚すらも向上していた。

 この世界に転生した場合すらもペインは見越していた鍛錬のおかげで、スバル達は最強スキルを極力使わないで敵を倒せる強さを身に付けていたのだ。

 最強スキルもとい忌み名シリーズのスキルの数々は、本当に強過ぎるからだ。

 転生した世界で、世界中から狙われたりする程に強いだろうとペインの判断により、使用を極力禁止としたスバル達だった。

 そんなシエンは声をかけてみる事にする。


「人…でしょうか?視線には気付いてますよー、出て来ては貰えないですか?」


 そんなシエンの呼び掛けには何の返答も無い、しかし…三つの視線も消えた訳では無い。


(やはり敵意は無いみたいですね…うーん、どうしたらいいんでしょうか?…思いきって接触してみますか!!)


 そう心で決めたシエンは三つの視線を感じる木々と岩の間に素早く移動する。


 ザザッ!


 一瞬で視線三つの場所に着いたシエンだったのだが…。


「ば、馬鹿な…確かにあった三つの気配が…消えてる?!一体どんなスキルを使ったんですかね?潜伏系のスキルでしょうか?…いや、ですがこれは…」


 視線を感じた空間を手で搔き分けるようにするが、空を切る。


「本当に何も…無い。気のせいには思えなかったんですがね…うーん」


 尚も首を傾げながら空を切るシエンの手であったが次の瞬間…むにゅ…それはシエンが生きた人生で、全く触ったことも無い感覚が頭を突き抜けた。


「ふぇーん!!ヘンタイっ!いつまで触る気なのよぉ!」


「えっ?…うわぁぁぁあ!っ?!ご、ごめんなさいっ!」


 羽根の生えた青髪の存在が目の前にいた事実に驚いたシエン。

 更にはその存在が女性であり…シエンはその女性の胸を触ってしまっていたのである。


「本当にごめんなさい!うーん…で、ですが!お、おかしいですね、存在に気付かない筈無いんですがね?」


「そりゃそうよっ!私達はフェアリーなんだから!精霊族の妖精なの!妖精は息を止めてる間はその存在自体を周囲から消す事が出来るの!実際は視ているし、触ってもいる…でも視認出来ないのっ!私達の胸やお尻触りまくっても息を止めてたから…貴方は感じ取れなかっただけ!ヘンタイ!」


 とんでもない事実を二つ知ってしまったシエン。

 一つはもしかしたら人族以外の種族にはフェアリーがしたような固有のスキルらしきものが使えるのでは無いか?と言う事。

 更にもう一つは、女性の身体を意図せずとも触ってしまった事実…そしてそんな事をアカリに知られてしまったらと思い青ざめるシエン。


「全く!堕族のエルフなのかな?って見てたらもうっ!弓使いの人族だったなんてね!紛らわしいのよっ!他の二人は直ぐに逃げちゃったわ!もう!」


「ほ、本当にごめんさい!どうかこの事はアカリにだけは…っ!?」


 言いながらシエンの表情が鋭くなり青髪の妖精はビクリと身体を震わせる。


「…な、何?も、もう分かったわよ!気にしてないから!怖い顔しないでよ…」


「…違います、一つ聞いて良いですか?…貴女の仲間は二人だけですか?」


 二人は逃げ更に目の前には青髪の妖精が一人…シエンが視線を感じた三人ならばとシエンは聞いた。


「え?ええ…そうよ?それ以外は居ないわ、それが何?」


「…どうやら話してる間に接近されたみたいですね…五人程の気配がします。恐らく狙いは妖精の貴女でしょうか?心当たりは?」


 そう言われた妖精は表情が強張り話す。


「ま、まさか…っ!?も、もしかしたら最近ウワサになってる人種売買をしてるならず者集団かも知れない…あ、貴方っ!?まさか?!」


 シエンがそのならず者集団だったのかも知れないと匂わせる発言にシエンは読みとり答える。


「一緒にしないで下さい、二人の仲間を僕等の方に…そして貴女と仲間は此処に隠れていて下さい」


「ちょ!ちょっと!?何で貴方を信じる前提なのよっ?」


 シエンはキョトンとした後に苦笑いしながら言う。


「た、確かに…なら、自分の目で判断してもらえないかなぁ?って事に訂正しましょう」


「は?ぷっ!あははは!結局前提は変わってないじゃないのっ!あはは…はー、可笑しい奴ねアンタ」


 そんなやり取りをしていると…赤髪の妖精と、黄髪の妖精がやってくる。


「ルウ〜〜〜!大変だよぉ〜!ラムがね…五人くらいに囲まれてるって〜!逃げようよぉ〜!!」


「うるさいですぅ!リムはもう少し冷静に考えるです!でも、どうしましょうです?ルウ!」


 青髪の妖精がルウ、赤髪の妖精がリム、黄髪の妖精がラムと言う名前で全員が女性と言う事が分かったシエンはルウに言い放つ。


「しっ!時間が無いので隠れて見ていて下さい!ルウさん達は!」


 ルウはその言葉に仕方なくと思いながらもリムとラムを諭しながら木々と岩の間に隠れる。


「ルウ…何でアジトに逃げないです?」


「そ、そうだよぉ…何でなのぉ?」


「わ、私だって分かんないわよっ!ただ…アイツは今までの人族とは違うんじゃないかって…勘よっ!勘っ!」


 そんな言葉を聞いた二人は泣きそうな表情になり成り行きに自分の未来を託す事にしたのであった。

 シエンは何事も無かったようにその場から歩いて出て行くと…前方の岩陰から男が現れ声を掛けられる。


「待て貴様、少し質問したい事がある」


「びっくりしたぁ、な、何でしょうか?」


 実際は全く驚きなどしていない演技である、何故シエンが演技したかの理由は現れた男の格好にあった。

 男は高価そうなフルプレートに身を包んでおり、恐らくは王国の兵士か、騎士か。

 そう判断したシエンは一芝居打ち探りを入れる事にしたのである。


「ここで何をしていた?弓使いが…」


「えっと、この周辺の崖から海に降り漁業をしておりました…あの?貴方は?」


「私はトレニア王国の黄金騎士団の騎士だ。…この辺で漁業をしていた割には獲物が無いみたいだが?」


(王国の騎士…それも黄金騎士団ですか…貴方達が獲物となりそうですね?色々と聞き出せるかどうか…)


「いやぁ、村一番の下手くそでして…お恥ずかしい。…騎士様はどうしてこちらに?」


「そうか、いや何…最近この周辺で堕族の目撃証言があってな?調査していたのだよ。奴らは人族を襲う危険な存在だからな」


 目の前の騎士がならず者集団には似つかわしくない為にシエンは考える。

 ルウ達はならず者集団を認識していたのですがね?目の前にいるのは黄金騎士団員…嘘を吐いてる様子も無いですしね…まさかとは思いますが、双方が繋がってる可能性があったとしたら…。


(そんな事実だった場合…この世から消えてもらわなくてはなりませんね…吐き気がしますし)


「そうでしたか、この辺には誰もいませんでしたよ?では僕も行かせて頂きますね?失礼します」


 そんな風に騎士の横を通り過ぎ様とした時だった。


「おいおい!俺たちゃ見てましたよ?騎士様っ!そいつがあの茂みで誰かと話してる姿をっ!反逆罪じゃねぇですかいっ?」


 下卑た目をする男が岩場の近くの土手から現れそう言い放つ。

 すると…周辺からその男の仲間であろう別の三人の男達が、シエンを囲む様に現れる。


「な、何ですか!?この人達は!?き、騎士様!」


 驚いた振りをしながらも騎士の目を見るシエン…騎士の目もまた欲望に染まった色を放っていた。


「何?どうやら貴様は騎士である私に嘘を吐いていた可能性が出たな?証言と合わせ尋問する為に同行願おうか?…証言してくれた君達!すまないがその茂みの中にいる奴らを取り押さえてくれないか?…同じ尋問しなくてはな?」


 醜悪な面を兜で隠しているのであろうとも耳障りな言いようにシエンが演技をやめる。

 そしてルウ達は身体を震わせる…駄目だったかもとルウすらも思った瞬間…。


 グシャッ!と言う金属が潰れた様な音と共に騎士の体が数メートル先に吹き飛んで行く。

 茂みに居るであろう堕族…もといルウ達を取り押さえようとした男は唖然として固まっていた。


「は?え…え?き、騎士様?」


「すみません、余りに下衆なもので…不快だったんで二発ほど殴りました」


「な、何をしたの?」

「み、見えなかったです」

「勝手に吹き飛んでました〜」

 そんな風に小声で話す三人の声を聞き流してしまう程の衝撃が男の足を動かす。

 男は茂みから離れ倒れている騎士に近づく…顔は兜内部で半分以上が肉片となっており、身体を覆うフルプレートの腹部には金属と共に風穴が開いており血の池が空洞になった部分に溜まっている。

 そんな状態の騎士だったであろう死体を見た男は吐いてしまう。


「うげぇええ!ぅえ!…はぁ、はぁ…ぜ、全員逃げろ!!そいつはヤバイ!…異業種だっ!!」


「いやいや…失礼だなぁ。僕は人間ですよ?」


 異業種…それは想像を超えた力を持つ化け物達を指している。

 ならず者集団からすれば、いやルウ達からしてもシエンの今の一撃が異業種と見られてもおかしくないのである。

 何も見えなかったのだから。


「え?いや、お頭?冗談すよね?堕族がいるんすよ?!」


「ば、馬鹿野郎っ!!そんな話じゃねぇんだよ!もう!」


 お頭の言う通りである…自分達の生き死にの話であるにも関わらず他のならず者達は諦めきれない様子を吐露していた。


「君達見たいな下衆はこのスキルで消してあげましょう」


 言いながら四本の矢を引き絞り弓を構えるシエン。


「ポイズ二ングアロー!」


 放たれた四本の矢がならず者達の足に命中する。


「ぐっ!?…あ、足に食らっちまったが、まだ生きてる…ははっ!ははは!今だ!逃げろお前ら!…あっ?あが!」


 足に矢を受け自分が生きている事に安堵していたならず者達は途端に身体中を蝕む痛みに声を上げる。


「ぐあっ!?ああぁあぁあ!!痛えっ!た、助けて!!」


「ぎぃぃい!?ぐぅああぁあ!!ど、毒の矢?!ひぃ!」


「ぐぅ!?いや、嫌だぁ!!し、死にたくなぃ!!」


 シエンはそんな四人を見つめながら言い放つ。


「殺される覚悟も無かったくせに…他人を襲い…売り買いする、しかも騎士まで汚染された心とは…人として恥を知り…今まで不幸にしてきた人達の無念を知りながら死んで下さい」


「そ!…ぎぃい!!…そ、ん……なぁ……がっ」


 毒が回りきるまで四人を見つめていたシエン。

 その目は冷たく…見ているルウ達すら凍りつかせる程であったが、シエンが涙を流すのを見て心が解けていく。


「…あ、あれ?…助けられなかった人達を思うと…まだ弱い部分があるみたいですね?僕も」


「…そんな事無いわよ?その涙は…堕族に…亡くなった抗う者達への涙でしょ?貴方が優しいってだけよ」


 茂みの中から出てきていたルウは笑顔で話す。


「…ふぅ。そうですかね?…ありがとう…って、ああ!不味い!!じ、時間がっ!」


 落ち着き涙を拭ったシエンは急に慌てる様子を見せる、そんなシエンを首を傾げ見るルウ達。


「うーん…皆さんお願いがあります!僕と一緒に近くの村に来てもらえませんか?」


「近くの村って…イゴの村?何で私達がそんな場所に行かなきゃならないのよっ!?」


「守ってくれたのは感謝です、でも!村なんて行かないですよ!」


「あのぉ〜ありがとうございますぅ〜!で、でも〜村にも危険だからって私達…抗う者の長は言ってるので〜」


 三人はシエンのお願いに却下の意思で断る、そもそも人族の村に妖精が来たなど騒がれたら仲間に危険が及ぶのだから。


「ある人達に会って話をして頂きたいのです、この国の未来の為に…ルクス王子と会って下さい」


 ルクスの名を聞いた途端…妖精達は真剣な表情でシエンと向き合うのであった。


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