合流と漁業の村・イゴ
同等の力を持っているだろう仲間が…まだいると言うスバルに驚きを隠せないルクス一行は、スバルと共にペインの帰りを待っていた。
その間スバルはこの世界ヴァルハラにおいての異業種について聞く事にした、正しくはこのトレニア大陸においてにはなるのだが。
「ルクス…王子に聞きたいんだが…このトレニア大陸では異業種とはどんな存在とされてるんだ?」
「異業種かぁ、この大陸ってよりは…世界認識としてかなぁ?異業種ってのは、想像を超えた強さを所有しているあらゆる生物を指しているんだ。…まあ、特にペインのお嬢ちゃんは、自分の髪の毛を自由自在に操るなんて事をやってたしなぁ、分かりやすいんだ」
なるほど…とスバルは頷き苦笑いを浮かべる。
「ありがとう、それと…さっきはペインがすまんな。でもペインの言う通り…あんた達は強くなると思うよ。…特にルクス王子に関しては恐らく王国で一番強くなるかもしれない素質がある」
「ほ、本当かよっ!?り、理由はあるのか!?」
刺客を全て葬りさる強者達の、太鼓判とも呼べるこの言葉を疑うわけでは無い…ルクスは確証が欲しかったのだ、心の安心を求めていたのかも知れない。
「あー、すまん…怒らないで欲しいが…あの殺気は常人が当てられたら気絶する位に強めな殺気だったんだ。それに耐えて更には立っていたあんた達には素質がある…直に受けてたルクス王子は特に、な?」
そんな言葉にルクス、ザイカ、ミンの三人は限界を超えれる可能性に喜ぶのであった。
「因みに…三人は攻撃力上昇のスキルは何処まで到達してるんだ?」
「俺は王子の中では武闘派ではあるが…それでも攻撃力上昇・三だなぁ」
「私は、攻撃力上昇・四だ」
「俺も攻撃力上昇・四ですね」
聞いてスバルは疑問に思う、ザイカが団長と言う立場で攻撃力上昇・四止まりだったからである。
あまり戦闘を重ねる場所や、訓練などはしていないのか?
逆に…密偵であるミンが攻撃力上昇・四に達していたのも少し驚いたスバル。
密偵の漠然としたイメージが消えてしまうスバルだった。
「そうか…なるほどな。うーん…王国最強の強さならば、箱庭がない場合…二ヶ月から三ヶ月って所か?」
その言葉を聞いた三人は驚愕する、未だかつてそんな言葉を吐くものは存在しなかったからである。
「さ、三ヶ月で王国最強だって?流石にそれは信じられねぇな…トレニア大陸の三光に匹敵する意味だぞ?」
「…三光?何だそれは?」
三光と言うくらいなのだ、どれ程の強者か尋ねてみる事にしたスバル。
「…攻撃力上昇・六に到達した三人を三光と称しているんだ…内一人は王妃のお抱えだ、けっ!」
言いながら何かを思い出したように表情が険しくなるルクス。
「そうか、なら問題無いな」
三人は何が問題無いのか分からない、スバルは本当にこの大陸…と言うよりも世界に疎いのだと感じていた。
何故ならトレニア大陸で攻撃力上昇・六の到達者は三人、ヴァルハラ世界において更に上の攻撃力上昇・七に達しているのはたったの二人しか居ない。
七星と呼ばれる二人は全種族に知れ渡っている。
魔族の頂点に立つ、グリード・ヴァルヘイム。精霊族の頂点に立つ、ルルキアラ・アウラ。
現時点…いや、百年前からその名を世界に轟かせている。
しかし、攻撃力上昇・六も人外の域に達している強さなのだ…世界で見れば十二人しかおらず、トレニア大陸ではその三人の強さに敬意を評して三光と国王自らが名付けたのである。
それの何が問題無いのか?…ザイカが口を開く。
「いや、すまないスバル…何が問題無いと言うのか?君はこの世界について知らな過ぎる…この世界、ヴァルハラにおいては…攻撃力上昇・七を有している者は二人しかいない。攻撃力上昇・六にしても十二人しか存在しないのだ」
「…な、何だと?!」
「…分かってくれた見たいですね?ウンウン」
ザイカの説明に理解したと見たのだろう、ミンは頷きながらこちらを見ている。
しかし、スバルが驚愕したのはそうでは無い…各種族に対して思う疑念…セブンシリーズ到達者が少な過ぎる事であった。
圧倒的に少な過ぎるのもそうだが、何故に魔族と精霊族は多種族を攻めないのだろう?攻撃力上昇・七などを習得しているのだ、一体何故だ………異能、か?
ステータスをひっくり返す程の異能が存在する可能性を知っている?…いや、駄目だ…分からないな、今はまだ。
「あ、いや…そうじゃなくてな……」
「ただいまじゃ!」
スバルの言葉を遮り帰ってきたペインの後には、先程言っていた仲間であろう存在が三人いた。
三人を見つめるルクス、ザイカ、ミン…すると一人の男が話し出す。
「この度は僕達の仲間が、とんだ御無礼をっ!全く、二人ともっ!」
「ごめんね?皆んな…鍛錬ばかりの日々…生まれてからずっと、だから…許してね?」
「この度は私達に鍛錬を付けてもらいたいとの意向は、道中にペインから経緯を説明されていますから、御安心下さい!ウフフ」
「ス、スバルがそうしろって言っておったのじゃー」
「おい待てコラ!ペインお前は!このっ…あ、待て!」
ペインはスバルに全てを擦り付け逃げそれを追いかけるスバル、ルクス達にはまるで兄妹が追いかけっこをしている様にも見えた。
スバルとペインを苦笑いして見ているシエン達とルクス一行はお互いの自己紹介を先に済ませる。
そうして自己紹介が済んだシエンとリイサが、追いかけるスバルと逃げ続けていたペインを止める。
「スバル!とりあえずイゴの村の隠れ家に向かいますよ!早く移動して安全を確保っ!更にはイゴの村にまだ刺客が居る可能性がありますから!注意して下さいよ!もう!」
「ペインちゃん?…そろそろやめないと…アイテム欄のティラミスが、あらら?魚のおやつになってしまいますわ」
「わ、わかった…とりあえずイゴの村に行こう」
「よすのじゃぁあああ!妾が悪かったのじゃ!ティラミスだけはぁぁあ!」
「早く歩く…ルクス王子達についていくよ!ほら!」
そんな二人を見たルクス一行は、シエン、アカリ、リイサの三人が常識寄りに見えたのだった。
イゴの村はスバル達の場所…ルキア海域付近の崖から三キロほど離れた場所にあった。
道中には滑車の跡があり少し海水の匂いがする、イゴの村は漁業が盛んで、村人は漁業で生計を立てており屈強な男や女達が多い。
だからこそルクス王子と合うのだろう、来たばかりは王族であると嫌な目もされたが、今では仲良くなり村人全員はルクス王子を支持している。
ルクスには他の王に無い資質があった…それは、すぐに他人と仲良くなれる事である。
これは紛れもなく才能であり資質であった。
スバルは道中話しながらにしてルクスのその才能に気付いたのだった。
「ふっ…あ、そう言えば皆んなは指輪を装備したか?」
ルクス達から離れた背後で仲間達に小声で聞くスバル、それに応えるように全員が頷く。
スバル達は余りに力がありすぎる為にあるアイテムを装備していた。
《秘匿の指輪》と言うアイテムで、スカルウォーカーと言う骸骨のボスモンスターが落とすレアアイテムだ。
効果は自身の強さを秘匿する指輪、周囲からの索敵スキルに該当するスキル効果を全て無効化する。
つまり、ステータスを覗かれないし強さを隠せる指輪だ。
システマキングスではスキル習得の方法は秘匿中の秘匿である、そんなスキル習得を調べ情報を売買するプレイヤー達から守る装備として重宝されたのだ。
スキルの習得自体は分からないが、システマキングスをある程度理解している中級者や上級者ならば条件さえ分かれば、後は鬼畜の道をひたすらに走る作業ゲーと化していたのだから。
スバルとペインの戦闘状況すら情報として、スバル達はこの世界であまり目立たぬようにと装備したのだ。
「ピキィ!キィィイ!!」
「ここは俺がやるよぉ、二人には助言を貰いたい」
剣を抜くルクスが鍛錬を付けると言った二人に対してそう言うが、これは寧ろ逆に価値を見出している最中の試験的な要素もあるルクス。
「妾は特にモンスターに対しての助言はないのぅ」
「…なら一つ、イースラピッドを突きで倒すんだ。以上」
鍛錬だ何だと言っていた割に、そんな事しか言われなかったルクスはキョトンとした表情を浮かべた、ザイカやミンも同様である。
「…ははは!お安い御用じゃねぇか!…はっ!」
「…キィ!?ピキィィィイ………」
笑いながらも渾身の突きを放つルクス、イースラピッドは回避しようとするが間に合わない。鋭い剣筋により一撃で額を貫かれたイースラピッドは絶命した。
それを見たスバルが言い放つ。
「うん、良い!良し、ならイースラピッドをその条件で後は二千体行ってみようか?」
「………は?え、二千体?!何を言ってるだ?」
全く理解出来ない言動がスバルから放たれて固まるルクスは、その後のシエンの言葉で驚愕する。
「ああ、迅人剣の習得ですか…懐かしいですねぇ、イースラピッドを突き攻撃で二千体かぁ」
「なっ?!ま、まさか今の助言は…スキル習得条件なのかぁ?!」
「そうだが?…キツイなら止めるか?」
ルクスが驚愕した理由はキツイからではない…何故にそんなスキルを教えてくれたのか?であった。
「い、いや大丈夫だっ!すまんな、スキルの習得条件がこうもアッサリ貰えるとは思わなかったしなぁ…」
「なるほどな、まあとりあえずイースラピッドで習得出来る条件は伝えたし、後はペインとの地獄の鍛錬をこなしつつって感じだな…」
その言葉を聞いたルクス達は一瞬あの殺気を思い出し表情が青ざめる、そんな風に移動していると…。
「……む、ルクス王子…着きましたなイゴの村に、はぁ」
「着きました、な。はぁ…」
「ん?あ、ああ。着いちまったなぁ…はぁ」
イゴの村に到着した途端に溜め息を吐く三人、その表情は項垂れていた。
三人は村の警備の者に変わった事は無かったか尋ねる、警備の者は首を左右に振り笑顔で答える。
「異常ありませんでしたっ!おかえりなさいルクス王子御一行様!」
「おう!ただいま!ありがとうな、見張りなんてして貰っていつも悪いなぁ!また、一緒に網漁業しに行こうや?」
「任せて下さい!って、ええ?!良いんですか?!最高です、楽しみに待ってますよ!」
そんな会話をしながらスバル達を知人だと紹介して村の中に入る。
「さて、隠れ家に使ってるのは…あの寂れた青い屋根の家だ。村には宿も一応あるから何方に寝泊まりするかは任せるが…?」
「うーん…そうだな…」
何方にするかスバル達が迷うなか、ペインがスバルに話しかけてくる。
「スバル!この香ばしい匂いは何じゃ!?」
「え?…これは、多分…イカ焼きとかじゃないか?」
「ほぅ?!ほぅ!食うてみたいぃ!!あ!?見るのじゃ!あそこで売ってるみたいじゃ!スバルゥ…妾…欲しいのじゃ…のぅ?」
漁業を生業としているイゴの村には小さいながらも出店が二つ程出ていたのだ、その内の一つがイカの姿焼を作り出した為にペインの鼻を刺激し、食欲を爆発させてしまった見たいだ。
「あっはっはっは!ははは!…はー、すまん。時間もあるし村を見学して来ても良いぞ?宿はあの角にある緑の屋根の建物がそうだ。…一時間もしたら、中央広場のこの場所でまた会おうか?どうだ?」
「うーん、すまないが…そうさせて貰う。ったくもうペイン…」
「うむぅ!器が大きい男はモテるぞ!?流石はルクスとスバルじゃ!くくくっ!さ?金を渡すのじゃ!スバルよ!」
「す、すみません。ペイン…使い過ぎないで下さいよ?心配はありませんが、衝動が癖になったら僕達が困るんですからね?はぁ…」
何て頼み方だと思いながら金を渡すスバルと半ば呆れた様に注意するシエン。
「スバル達は宿か、隠れ家で寝泊まりするかをルクスと話し合って下さい。僕は周囲を探索してきますね」
苦笑いしながら悪いなと頷くスバルと、村の周囲を探索しに行くシエン。
何故スバルが金を所持していのかは転生してからの状態を確認したからだ。
何と転生した時点での所持金はシステマキングスをプレイしていた直前と同様の金額を所持していると判明したのである。
金を貰ったペインは無邪気な笑顔を見せながら出店に駆け出す、その前にリイサに止められるペイン。
「…最後の…猫撫で声は何ですの?ペイン…?」
「うっ…あ、あれこそ!スバルを一瞬で虜にする方法じゃとお主に助言の意味を含めて表した形なんじゃよ…」
小声でやり取りする二人、リイサはそれを聞いてルクスと話しているスバルとペインを交互に見る。
「そ、それは…ほ、本当なのですわね!?むぅっ…次からは実践あるのみ…ウフフッ」
そんなやり取りを聞いていたアカリも胸中を吐露してしまう。
「………うぅん?……ああいうの…好きなのかなぁ、シエンも…ハッ?!いやいや、何を…私は」
ペインは頷きリイサから離れ出店に向かう、難を逃れたペインは背中に冷たいものを感じるのであった。
「…あ、あやつ、スバルに関してならば…妾より怖いんじゃよ…ふぅ、あ!イカの姿焼?を四つ貰えるかのぅ!?」
そう呟くとペインは気分直しと言わんばかりに出店でイカの姿焼を注文するのであった。




