六種族の世界と異業種
「…六種族?…四種族では無いのか?」
瞬く間に王妃の刺客を葬り去った目の前の二人に光明を見いだしていたルクス王子。
今はスバル達に対して情報を教えている最中だった。
「ああ、そうだ…この世界には人族を含め六種族が存在する。…四種族だったのは百年も前の話だぞ?…本当に端の端から来たんだな…お前達は」
六種族か…恐らくこれもアップデートに含まれているのだろう。
俺達が知ってる四種族は…人族、魔族、獣族、精霊族だったのだが、一体何の種族が増えたんだ?
「六種族は、人族、魔族、獣族、精霊族だけだったんだがなぁ?およそ百年前に空から突然…大陸が降って来てな。そこに新たな種族…神族が来たんだ」
「…神族だと?」
ルクス一行はスバルに真剣な表情で頷く、そんな表情から疑念はすぐに晴れ考えるスバル。
神族…明らかに神の存在を確定させる様な種族だ。新たな敵になる可能性が高いか?
「…神族はこの世界に置いてどうなんじゃ?敵かのぅ?」
「いや…分からない」
「分からない?どう言う事だ?」
「神族の大陸は魔族領地に降って来た為に、当初は魔族との争いをしてたから確認出来たらしいんだがなぁ?…それ以来の情報は見聞にすら残ってないんだ…すまん」
「お、王子の責任ではありません!」
「百年前に王子がいれば必ずや見聞を広めた筈です!どうかお気に為さらずに!」
ルクスは苦笑いしながら二人を見て溜め息を吐く、やれやれと言う表情が何処か安らいでいる様に見えた。
「もう一つの種族は?」
「ああ…もう一つの種族は、堕族と呼ばれ蔑まされた各種族の集まりだ…別の名称で抗う者とも呼ばれているんだが、俺は其方で呼んでいる。神族はいないがな…」
あらゆる種族の蔑まされた集まりを堕族…か。アップデートに含まれている辺り今後も重要視するべき種族だな。
それにしても…抗う者か、ナインシリーズを解放してから習得する、最上位に位置する全ステータス系上昇のスキルと同じ名前とはな…。
「蔑まされたか…何じゃか原石の匂いがしそうな種族じゃのぅ!抗う者かっ!くくくっ!」
ペインはスバル達に鍛錬をつけた実績があるせいか、素質ある者や努力しそうな者を探し、またあの鍛錬をつけたいと思っていたのである。
「種族の情報は以上だ!さて、やっと自己紹介出来るな?俺はこのトレニア大陸の王国で産まれた第五王位継承権を持つトレニア・ルクス・アルフレッドだ、助かったよ!本当にありがとうな?よろしくな!」
「私は黄金騎士団団長のザイカ・サハールと申します。救援感謝致します!」
「俺は王国密偵のミンだ、実際はルクス王子に忠信しているんですがね?…完全回復の貴重なグミをありがとうございました!」
「俺はスバルだ、出生についてはさっき話した通りだからヴァルハラの情報については全く無知だ。よろしくな?」
「…妾こそが千年を戦い抜いた闇夜の…いぎっ!」
ペイン自身も初めて漏らした声にハッとするが、直ぐに頭にゲンコツしたスバルを見る。
余計な発言をするんじゃないと、視線により分かるペインだったが、ゲンコツの恨みを忘れない表情を見せていたのであった。
「悪いな、師匠の作り話に夢中な奴なんだ。この子はペインだ」
言いながら誤魔化すスバルは別の質問をする。
「…なあ、疑問があるんだが…ルクス…王子は何故追われていたんだ?第五王子なんだろ?」
某略と刺客が暗躍される王国の宮廷で日夜繰り広げられる醜い争いを経験してきたルクスにとって、スバルの質問は心地良かった。
ルクスはキョトンとしながらもそんな感情を抱きながら答える。
「ははっ、何故だと思う?簡単な理由さ…王妃にとって俺が邪魔だからだよ。俺は唯一…あのババアの秘密を知っているんだからなぁ」
秘密を知っている…か、迷うな…踏み込み過ぎている気がする。
そもそもルクスは王子だと俺達に知られて、何故平気なんだ?
助けた恩義に報いる振る舞いにも思えるが…ザイカもまだ良い、しかしミンの先程の自己紹介は致命的な筈だ。なのに何故だ?
「そうか、なるほどな」
スバルは少し考えてからそう答える。
まだまだ世界状勢を知らないスバル達にとって、どう行動するかは仲間達と共に話さなければならないと判断したからである。
「…何の秘密か聞かないのか?」
「特に興味は無いからな」
そうか…と小声で返事をしたルクスは内心で焦りを感じていた。
実はスバルの読みは正しく、ルクスは王妃の秘密を共有した後に頼みごとをする気だったのだから。
王妃の刺客数十人を一蹴して討ち取る強さを持つ二人を前にして、ルクスが何としても頼みたかった願い。
それは…王妃の存在をこの世から消す事である。
そんな肩を落とした様なルクスや、そんなルクスを見て視線を送り合うザイカとミンに対して…ペインが口を開く。
「…くくくっ!分かりやすいのぅ?…若輩の王とその配下達よ…妾達に頼みたかったのであろう?王妃を討って欲しいとな?」
半ば見透かされた感覚が三人を驚愕させ、刺客数十人を一蹴した人物ならばそれも当然か…とルクスは頷き返事をする。
「…ああ、お嬢ちゃん…ペインの言う通りだ。…あんた達二人は俺達にとって最後の希望に近い、それに…ヴァルハラに伝えられてきたお伽話の内容と全く同じだったんだよなぁ、あんた達はさぁ?」
付け足す様に希望の光のお伽話の内容を説明するルクス…そんなルクスを見てスバルとペインはお互い視線を向け、ペインが先に口を開く。
「…ふむ。まあ、何にせよ決めるのはスバルじゃ。…恐らくじゃが…結果がどうあれ、妾達は王妃を葬りには行かんと思うがのぅ?」
「…それは、何故か聞いても良いかい?ペイン」
ルクスはその後に用意していた台詞を、スバルの発言により無力にされる。
「それはな、担的に言っても金や名声に興味が無いからだよ…ルクス王子。悪いが…今すぐどうこう出来る話では無いんだよ俺達からしてもな」
スバル達はシエン、アカリ、リイサの三人にこの世界ヴァルハラについて聞いた情報や、今回…聞いてしまったと表現するのが正しい、ルクス王子と王妃の敵対関係などを伝え話し合う必要があったからだ。
「…そう、だよなぁ…何を俺は焦ってんだよ…って話なんだよな。…ふふふ」
「………ルクス王子…!」
「……ルクス様……くっ!我等に力が無いばかりに…!」
苦笑いしながら言ったルクスの表情に反応するザイカとミンは、自身の力の無さに歯痒い胸中を露わにしながらルクス王子に顔を向けそう呟くとすぐに地面に伏せる。
「…甘い甘い甘いのぅ?顔を上げよ?…ザイカに、ミン?じゃったな?お主らは何を成す為におるんじゃ?…全く、だらし無いのぅ」
「な、何だとっ!?だらし無い?我等の苦悩が貴女に分かると言うのかっ!?敵は…この王国半分以上を牛耳る程の力を有しているのだ!簡単では無いのだぞっ!?団長など言われている私がっ、対抗するので必死な強さの敵!更に力が欲しいなど、何度思った事か!?願った事か!?」
「お嬢ちゃん…俺達はルクス王子を守り…この国を守って欲しいだよっ!俺達が成す為に存在する理由はそれだ!我等がもっと強ければ良いなど分かっておるのだ!」
ペインの言葉に自身の思いをのせ吐き出す様に叫ぶザイカとミン。
「言い過ぎだよ…ペインお前…ったく、もう。あー、すまんなこの子はまだ幼いから、人に対して失礼な部分が…」
「嘘だな…スバル、お嬢ちゃんは幼い子では無いだろ?」
遮られたスバルはルクスに顔向けで返す。
「…何故そう思うんだ?」
「…お嬢ちゃんがさっき自己紹介をした時…千年を戦い抜いた闇夜…と言いかけた瞬間、スバル…あんたがお嬢ちゃん…ペインの言葉を遮り話題を変えたからさ。…ペインは異業種の子だな?」
(へぇ…これは少し見くびってたかも知れないな。あの時の動きでそこまで見透かすとは…これは、王の血筋と言うよりルクスが優秀なんだろうな。…まあ、異業種と言う情報があったからとも考えられるが、さて?どうするか)
スバルはペインに視線を送るとペインは笑う。
「…くっくくくっ!あはははは!やるでは無いか?あの時の動きで良くもまぁ…原石の匂いがするのぅ!どれ?」
ペインはそう言いながら笑いルクスに向けて圧をかける様に殺気を向ける。
まるで大気が揺らいだかの様なペインの殺気を受けるルクスの表情には先程までの余裕など全く無い。
顔からは汗が吹き出て、呼吸は荒くなり辛く、体が震えを抑えきれない程の殺気。
ペインは先程の刺客に向けた殺気よりも、更に強力な殺気をルクスに放っていたのだから無理も無い。
一瞬向けた殺気をペインは解いて…ルクスは殺気から解放された。
「かはっ!…はっ!はっ!はっ!はぁ、はぁ!」
「がっ、はぁ!はぁ!はっ、はぁ!はぁ!」
「ぐっ、うっ!はぁ!はぁ!…っう!?げえぇえ!」
ペインの強力な殺気に当てられたザイカも同様な反応をして、ミンに至っては吐いてしまう程であった。
何をするか!と叫びたくても出来ない三人は息を整える為に体が小刻みに震える。
「…ペインやりすぎ、でも確かにこれは…三人は強くなるな。特に…ルクス王子に関しては驚いたよ、何せペインの殺気をまともに受けて立っていたんだからな?」
「じゃろ?じゃろぅ!?素晴らしい原石なのじゃ!鍛え甲斐があるのぅ!くくくっ!」
そんな会話をする中…息を整えたルクスが話しかける。
「はぁ、はぁ…き、鍛え甲斐があるってのは?と言うか死ぬかと思ったぜ?ははは」
ザイカとミンはまだ息を整える作業をしている、ルクスには本当に素質がありそうだ。
「ルクス王子…ペインがすまなかった。貴方の言う通り…ペインは異業種だ、そして…俺達は貴方の頼みを聞いてやる事は出来ない、だが…」
スバルの言葉に半ば諦めかけたルクスだったが、続きがある間に耳を傾ける。
「恐らくだが…あんた達を王国で最強の強さにはしてやれるぞ?」
「ほ、本当かっ!?是非!頼む!覚悟はあるっ!」
そう言うルクスには微かな希望を繋いだと言う表情が表れていた。
「……ぜはぁ!はぁ、ふぅ!…私もっ!ルクス王子について行きます!しかし!あなた方はやり過だ!」
「はぁ、はぁ、はぁ…うっ、自分もザイカに同じくっ!うっ、オエッ」
覚悟を決めたルクス王子と共にある事を意思表示しながらも注意されるスバルとペインであった。
「そうと決まれば…何処か人目のつかない落ち着ける場所とかは無いか?」
「…一度襲撃されてしまったが、近くのイゴと言う村に隠れ家があるが…そこでも良いかぁ?」
一度襲撃されていると念を押されたが、刺客を全て葬り去っている為にその場所にまだ新たな刺客が潜んでいる可能性は低いと見たスバルは頷く。
「良し、ペイン。シエン達を連れて来てくれ」
そうペインにお願いするスバルに驚くルクス一行だった。




