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説明と選択

 目の前に広がっている星、直ぐに分かったよ。システマキングスの星だ。間違いない…俺には分かるんだ。

 目を覚ました俺に流れ込んでくる歓喜と混乱の渦。この場所は何処なんだ?あの銀髪の子は…何者なのだろうか?と疑問を抱きながらも、周囲を見回しながら様相の違う目の前の人物に問いかける。

「その…君は一体何者なんだ?それに…この場所は何処なんだ?」

 その言葉と共に注目が銀髪の子に集まる。まさか目の前にいる存在が創造神エデルとは皆知らない。


「やあスバル、そして他のみんなも起きたね?僕は創造神エデル。あらゆる万物を創造している神様なんだ」

「………は?」

 恐らくこの場所にいる者全ての人間が、ムースを除いて、思ったであろう一言が吐き出される。


「あー…うん。まあ理解出来ないよね?でも理解して?順応して?そうした方が思考を紐解く事が出来るからね?で、まあこの場所は普段僕が仕事している場所なんだよ。宇宙であり宇宙では無い場所、誰にも干渉されない場所。あえて名付けるなら…箱庭とでもしようか」


 待て待て待て…そうか!コレが新しいアップデートのイベントだったのか!凄い!凄いじゃないか運営よ!素晴らしいアップデート内容だ!流石ラストアップデート内容はシークレットにされていただけはある。

 この精密差と、感覚度合い良く作れたなこんなにも素晴らしい情景を。

 周囲からもヒソヒソと会話している声が聞こえてくる。どうやら俺と同じ結論に至っているみたいだ。

 だがプレイヤー達は考えていなかった、いや…考えた可能性を放棄する為にその結論にしただけに過ぎない。


「ああ…ごめん。順序が逆だったかな?まずは君達の状態の説明をした方が良かったかも知れないね」


 状態?どういう事だ?イベント専用の特殊状態異常とかの事か?


「君達は皆んな死んでしまった存在なんだ」


 ざわざわと周囲に伝達されてしまう焦燥、恐怖、混乱。


 誰かが言った。


「嘘に決まってる!アップデート内容のイベントの話だろ!?」

「いや、事実であり。現実であり。創造されただけだよ君達は今はまだ」


 誰かが言った。


「…あなたは何故?私達が死んでいるのが分かるの?」

「創造神だからだよ?創造神が呼ばれるのは、死者になる時の想いが叶った者だけにしか呼ぶ事は出来ないからね」


 誰かが言った。



「あ、あの!しかしですね!僕達は死んだ状況を見てません!しかもゲームしていただけですよ?全く理解出来ません!」

「なら実際に見てもらった方が早いかもね?ふふっ」

 そう言うとエデルは右手をかざす…するとかざした場所に大きな鏡が出現する。そこには皆が理解したくない事実が映されていた。


「繰り返し速報をお伝えします!現在人気VRMMOゲームのシステマキングスで最終アップデート時にログインしていたプレイヤー二千人以上が頭から血を流して死亡している状況が判明しています!理由が明らかになり次第さらなる速報をお伝えしていきます!」


 プレイヤー達は、どうせ作られた映像だろうと言いたいが言葉は出ない。

 プレイヤー達が疑念を抱きながら立ち上がり、半信半疑で見ていると急にプレイヤーの一人が呟いた。


「う、嘘だろ?あれ…俺の部屋だ…」スバルだった。


「受け入れて貰いたいかな?スバルには特にね?」


 受け入れて貰いたい…だって?当たり前じゃないか!寧ろ最高だ!ありがとう!創造神様!!

 そうスバルだけは他のプレイヤー達とは違う想いに寄っていた。何故なら彼はアップデート内容を攻略したら死ぬ予定だったのだから。

 そんなスバルだからこそか、創造神が存在して、システマキングスの星が存在して、スバル達が創造された意味をある程度察していたのかも知れない。他のプレイヤー達が驚愕し泣き出す者も居るなかで、順応していると表現される様な余裕もあった。

 スバルはただ一言、核心を突いた言葉を放つ。


「転生…させてくれるって事で良いのかな?エデルが創造したシステマキングスの星に」

 するとエデルは驚愕した表情を一瞬浮かべ笑ったのだった。


「あははは…は、はぁ。あー…久しぶりに笑ったよスバル君。そう、君のその考えで合ってるよ…転生とはまた違うんだけど、まあ概ねその解釈で違わないしね」


 その言葉を聞いてようやく全てを受け入れていくプレイヤー達。不安だったのだろう、泣いていた者も泣き止み困惑しながらも受け入れていった。


「うん!うん!良かった!とりあえず受け入れてもらえたみたいだね?それじゃあ細かい説明は僕の隣のムースに説明して貰うから。僕も秩序があるからそろそろ行かないとね?創造神って創造するだけじゃないだよねぇ仕事…はぁ」

 愚痴みたいな言い方に思わず笑うスバル。周囲でも分かるのか頷いている者もいた。

「じゃあムース頼んだよ?皆んな頑張ってね!バイバーイ」

 気さくな表情で笑いながら去ろうとするエデル。手を振りながら去ろうとすると…。

「エデル!ありがとう…本当にありがとう!…最高だよ!」

 スバルはありったけの感謝を込めてお礼を言う。その姿を微笑みながらエデルは頷いて消えたのだった。


「さて、それではこれより我が主である創造神エデル様より紹介仕りましたムースです。説明致したいのですが宜しいですね?」


 プレイヤー達はスバルも含めお互いを見ながらムースに視線を向け頷く。緑色のロングヘアーの美女ムースは良く見ると本を片手に持っていた、綺麗な本だ。


「ありがとうございます。皆様方が理解しやすいワードで説明させていただきます、先ずは皆様方の転生先は元はシステマキングスと言う名のVRMMOゲームの世界を媒体にして創造されたあの星です。皆様方はこれからあの星で生きていく事になりますが、システマキングスの世界ではゲーム同様のスキル、スキルに付随するアビリティが存在しています。もちろん魔法も使用可能です…ここまでで質問がある方はおられますか?」

 はいはいはーい!とスバルが直ぐに手を上げ質問する。


「スバル様どうぞ」

「はい!スキルの習得条件はゲームと同じなんでしょうか?」

「はい、その通りでございます。スキル習得条件はゲームと同じでございます」


「なるほど…」


 周囲のプレイヤー達も同様に話を理解する。しかしある不安を覚えたプレイヤーが声を上げる。


「あ、あの!すみません!死んだらどうなるのでしょうか!?」


 は?


「そ、そうだ!死んだらどうなるんだよ?」


 いやいや死んだら、死ぬだけだろ…。スバルは半ば呆れた様に驚く。


「…死ぬだけ、でございます。しかし皆様方にはエデル様より恩恵を選択出来るように思念伝達を承っております故に説明をさせていただきます」


「恩恵…?」


「選択出来る恩恵は三つ御座います。一つ、箱庭の滞在日数無し、ゲームとは別にエデル様より与えられる特殊なアビリティ《創造の魂》全魔法耐性30%と強化魂(HP10%、SP10%上昇効果)と、初回から中級職が三つランダム解放、更に全ステータス系スキル二まで解放済みで転生。二つ、箱庭の滞在日数三日、ゲームとは別にエデル様より与えられる特殊なアビリティ《創造の魂》と、初回から中級職が一つランダム解放、更に全ステータス系スキル一まで解放済みで転生。三つ、特殊なアビリティ無し、中級職解放無し、習得スキル無しの代わりに箱庭滞在日数五十日、となっております。皆様方にはこの三つの恩恵を選んでいただきシステマキングスに転生してもらう事になっております」


 なんて魅力的なアビリティなんだ…欲しい…と初心者や中級者なら思うだろうなぁ、だがそれは間違っている。これは恐らくエデルが試している様な選択だろう。

 システマキングスを理解している者なら一つ目と二つ目は絶対に選ばないはずだ…しかし分からないのは三つ目だ。恐らくこの場所、箱庭がかなり重要な事は間違いない説明だった。

 確かにシステマキングスには初級職、中級職、上級職が存在するし、職専用スキルも上位の職の方が良いのは間違いない。しかしシステマキングスはスキルを解放しまくった者こそが強者になるのだ。

 理由はスキル習得時に付随する全職で効果を発揮するアビリティにある。職専用スキルではその職を選択していなければ発揮されない効果とは違い永久的な効果になる。

 なら上級職でその永久的なスキルを習得すればいい話じゃないの?違うんだ、だからこそ鬼畜仕様なんだよシステマキングスは。

 ほとんどのスキル習得条件が途方も無い内容ばかりなのだ。例えばだ、スライムを九百九十九匹連続で一撃で倒し

 千体目を残り体力一になるように攻撃した後に全治ポーションを使用する事で習得出来るスキルがある。

 このスキルは慈愛の心と呼ばれるスキルだが、スキル使用の効果は三十秒間一撃死する様な攻撃を受けても一度だけ体力一で耐えると言う効果になっている。正直言って苦労する割に見合わない効果だ。しかし付随する全職対応のアビリティがかなり優秀である。

 アビリティ効果は体力を毎秒持続回復する。体力回復量二%である。これを理解するからこそ上級者達はスキル習得の苦痛を我慢出来るわけだ。いや、本当苦痛だけど俺は楽しかった。


「な、何だよそのアビリティ!凄いじゃないか!」

「スキル習得条件無しで破格なアビリティだ!」

「本当ですね!あのアビリティさえあれば死ななくて済みそうです!」

「ステータス系スキル三まで習得済みとか絶対負けないわー、俺達元プレイヤーだぜ?誰でもかかって来いって位だな?」


 システマキングスを理解してないプレイヤーばかりだった。直ぐに死に怯える者を一瞬見て視線をムースに戻し、元々死んでいたくせに…と思いながらも、直ぐに心を三つ目の話の内容へと切り替えるスバル。

 はしゃぐプレイヤー達を除き三人程がスバルの様に考え込んでいたが、その内の一人が口をひらく。


「すみません、一つ質問なんですが宜しいですか?」

 サラサラとした髪質と、前髪は目にかかるか位で肩くらいまである長髪の男性が質問する。恐らく男…だと思う。それくらい顔が美形だったし、声も少し高く迷ったがスバルはそう思うのだった。


「どうぞ、シエン様」

 名前が何故分かるのか?と言う様な動揺はシエンと呼ばれた男には見えなかった、周囲は驚いていたが。


「箱庭に特別な効果とかがあるのでしょうか?三つ目の選択は誰もしないような選択肢だったので」


 俺も考えていた内容だった。箱庭に特別な効果が無ければ日数に差を付けている理由が無いし、恐らく理由があるはずだと推測していた。

 しかし俺も考え込んでいた数人も一瞬驚く返事が返ってくる事になる。


「いえ箱庭には特別な効果はございません」

 一瞬驚く…が思考は放棄しない。シエンを含めた他の奴らも同様の反応をしていた。

「…そう、ですか。分かりました、ありがとうございます」

 と返したシエンだったがまた考え込む。

 うーん…箱庭には特別な効果は無い…かぁ、うー…ん?待てよ?箱庭にじゃなくて、箱庭には?これって選択した後に伝えられる情報を示唆しているんじゃないか?

 システマキングスの運営ぼいんだけど…このムースって人。運営ならやりかねない様なやり方だ、分かりづらい、鬼畜、頑張れ!見たいな三拍子表現あったらシステマキングスの運営にピッタリなんだがな。


「他に質問ある方はおられますか?…無いようですので皆様方には選択していただきます。あちらをご覧下さい」


 手を向けた先には三つの数字が書かれた扉が現れた。恐らく選択肢順だろう。

 扉を見ながら考える。箱庭が重要では無く…箱庭の日数が重要なのか?明らかに日数に差があるにもかかわらず箱庭には特別な効果はは無いと断言している。滞在日数ってのはそもそも何だ?システマキングスはスキル習得条件が鬼畜…時間がかかる…五十日あれば全ステータス系スキルを五位までなら可能だが、それなら大した恩恵には俺には感じないんだよなぁ…時間がもっと…時間?


「一つ目しか無いっしょー!俺いっちばーん!」

「あ!ずるーい!私もー!」

「あ、ぼ、僕も!置いていかないでぇ!」

「何だかんだで楽しみだよなぁ!」


 先程までの空気が嘘のように明るくなっているプレイヤー達。まるでピクニックでもしているかの様な表情である、一部を除いてだが。そんな様子を無視して考え込んでいる数人のプレイヤー達。


 待てよ?考え込んでた中の仮説に当てはまりそうな三つ目の選択肢の答えがあるが、あくまでも仮説だ。

 先程のムースの返答を聞いたなら誰もが一つ目の恩恵しか選択しない。なら、何故二つ目、三つ目を選択肢として増やしたんだ?試しているのもそうだが、実は選択した選択肢にも恩恵があるパターンか?理由があるとしたら俺の仮説しか無いはずだが実際は分からない。

 いきなり新しい人生を左右する選択とはなぁ、楽しいね!


「スバル様、貴方が最後の選択者でございます。扉をお選び下さいませ」


 ムースの呼びかけに気がつくとスバルとムースのみを残し他のプレイヤー達は恩恵を選択し扉に入り居なくなっていた。


「…ごめん!考え込んでた!…決まったよ、俺は…!」


 スバルはそう言いながら数字の書いてる扉を開け光に包まれて消えていく。閉まった扉の音は乾いていたが箱庭に少し響いた、扉には三の数字が書かれたいた。


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