あの時①シエンとアカリ
僕は漠然としていた、死と隣り合わせの人生が待っているのだから。
不安だった…僕はただの遠距離職であるアーチャー、システムキングスを当時プレイしている時も言われた…サポーターだと。
「…お主はサブアタッカーの立ち位置じゃ」
ペインにそう言われスバルも頷いていたランキング一位も僕をサポーターとは見てないらしい。寧ろサポーター二割のサブアタッカー八割の対比になるとアドバイスを貰ったシエンは嬉しかった。
「お主らは連携について話しておくのじゃぞ?」
お主ら、とは僕とアカリの事だ。アカリはパーティのアタッカーだと言われていた。
つまり、このパーティは基本的に僕とアカリで攻めを担当する事になるのだ。
「シエン…あっちで…話そ?」
少し似ていたんだ、亡くなった妹に…だから反応が遅れてしまうシエン。
「え?あ、ああ!は、はい」
キョトンとされてしまった、シエンは慌てて何でもないと言ってトレーニングルームの隅に移動する。
スバルのトレーニングルームで話をするのは気を使いそうだったが、スバルはペインやリイサと話す事案があるそうだし、気にしない事にしたシエン。
しかし…いざお互いの立ち位置を踏まえて話し合うと意見が全く合わなくぶつかってしまう二人。
「で、ですから!アカリ!そのスキルを使ったら隙だらけになってしまってリスクが増してしまうんです!」
「むぅ!…それを補助するのが…シエン!ふん!」
「で、ですから何度も言ってますが…トドメ用に組み立てるなら良いと思うんですよ」
「…アタッカーだからって力任せで戦ってない…アカリには…速さもある!」
「それは分かってます!しかし、その…アカリが危険になりやすいからこそ僕はそのスキル連携はトドメ用にと…」
話せば話す程に平行線のままである。
二人は周りに迷惑になると思い、ロビーに移動する事にした…もちろん道中でも言い合いになる。
そんな風にロビーに来た二人はお互い向き合う用にイスに座り、テーブルに紙とペンを置き話し合う。
色々な要所を纏める為に、飲み物と一緒にロビーのウィンドウで出したものだ。
「…とにかく、僕は先程言ったように…あの様なスキル連携はアカリには危険過ぎるので嫌です」
「むぅー!………子供扱いしないで欲しい…!」
その言葉と共に急に立ち上がり、テーブルの上に飛び乗るアカリ。
「な、何をしてるんですか!?危ないから降りて下さいよっ!」
「…どうして、そんなに心配しているの?…分からない…けど…子供扱いはやめて!」
アカリにしてみれば心配するシエンの言葉は、自分を子供扱いしかしていない…話し合いでは無いと感じていた。
シエンも亡くなった妹を重ねていた為にそんな主張ばかりになっていた自分に気付く。
「…子供扱いはやめて、ですか…昔、それと同じ事を妹に言われた事があります。もう…亡くなっていますがね」
苦笑いしながらアカリを見つめるその目は、哀しさも少し混ざっている様に見えた。
「…………え?そ、そうなんだ…」
「気にしないで下さいね?…ははは、久しぶりに妹に怒られた気になりましたよ」
そう言いながらシエンはアカリに自分の妹の姿を重ね、意見を潰していたと悟り…想いを打ち明ける。
「………怖いんです、僕は。不安もやはりあります、転生したら…別の世界、そこは元の世界と違い…危険が更に増えている。…初めてなんですよ?本当の仲間って存在に出会えたの、はは。それまでは、遠距離職は扱いなんて何処も変わりませんし、サブアタッカーって言われた時は…嬉しかったなぁ…」
最初テーブル立ちながら聞いていたアカリは、無意識に正座していた…テーブルの上ではあるが。
アカリはシエンを見つめ話を黙って聞いている。
「アタッカーのアカリと連携するって聞いた時に、妹に似ていたアカリにその姿を重ねてしまいました。…だからアカリにも危険な目にあって欲しくない想いが強くなってしまい…その、本当にすみません」
「…そ、そっか。…私は大丈夫だから気にしない!…私も反省しなきゃ…サブアタッカーって存在をやはり、援護職に捉えてる…ごめん」
お互い向き合い謝る…少しの静寂と共にアカリが正座したままテーブルの上にいる状況に二人は気付き視線を合わせて笑う。
「ははは、もう…そう言えば忘れてましたよ、はははっ!この状況を皆んな見たらどう思うんですかね?」
「…ふふふ、シエンが悪者にされる未来しか視えない、あははは」
二人の笑う声がロビーに響く中…急にアカリは漠然と考えていた立ち位置に閃く。
「あ…そうだよ…別に私がメインじゃなくてもいい!…シエンがメインアタッカーで、私がサブアタッカーにもなれるはず!…スイッチ連携!」
突然言われたその言葉にキョトンとしていたシエンだが、直ぐにその考えに驚く。
「………確かに!今まで漠然と考えていた立ち位置も、柔軟になりますね!…凄いですよアカリ!」
「…で、でしょ?だから子供扱いはやめて…な、仲間を信じて…お互いね?」
褒められた恥ずかしさを隠しながらも、これからはお互いを信じようと言うアカリ。
「…僕らは、難しく考え過ぎていたのかも知れませんね…ふふ」
お互い笑顔で頷いた二人は、早速これからの新しい連携と立ち回りについて話し合う事にする。
「あ、アカリ…そろそろテーブルからは降りましょうね?はは」
「…あ、う、うん…足も痺れちゃった……あっ」
しばらく正座したまま話を聞いていた為に足が痺れていたアカリは、立ち上がろうとしたが態勢を崩しテーブルから落ちる…。
「だ、だから言ったじゃないですか!!」
言いながらシエンはアカリが怪我をしない様に、身体を滑り込ませ床に落下するのを防ぐ…重なってしまうシエンとアカリの唇。
お互い目を見開き直ぐに離れる、事故ではあるが初めての出来事に二人は無言のまま顔を見合わせ静寂が支配する。
ガチャ………
ビクッ…と身体がその音に反応して立ち上がるシエン、アカリはまだ足が痺れているので座ったままだ。
「だから!それも分かるって!でもな…ん?どうしたシエン…アカリは座ったまま何してるんだ?」
「いや、ははは…そ、そう!連携について…白熱してまして!ねぇ!?」
「…あ………うん」
お互い顔を見合わせ話す二人は、先程の出来事を思い出し赤面する。
「あーぶつかり合った訳か…分かるぞ!シエン!…ペインとリイサと俺もそれぞれの意見出してぶつかり中だから」
「何を当たり前の様に言うておるのじゃ!…スバルの組み立て方に問題がありすぎなんじゃ!シエンとアカリも混ざれ!」
「はぁ…何方の意見も有りに見ている私からしたら…試せば良いと何回も言ってますのに!シエンさんとアカリちゃんも助けて下さい…」
そんな事を言いながら更に話し合う三人を見たシエンとアカリは、自分達が遠慮して考え過ぎていたのかも知れないと思ってしまい…笑った。
アカリはシエンの側に行くと耳打ちして囁く、周りに聞こえない様に…その表情は赤くなっている。
「…あ、あれは事故…でも…皆んなには…内緒…ね?」
シエンは頷きながらも鼓動が早くなる自分がいるのを悩ましく思うのであった。
ー?????世界のとある街の部屋ー
王暦百十二年…四月二十日、ある一室に鋭い目付きをする男がいた。
彼の名はザイカ・サハールと言い、人族の王国であるトレニア王国の絶対防御と言う異名を付けられる程の騎士団、黄金騎士団の団長を務める程の強さを持つ者である。
いま彼は待っている、ただその知らせを…密偵を。
「……王よりの密偵はまだか…?くそっ!」
ザイカは苛立ちを露わにする、彼は普段ならばこんな姿は見せないのだが…差し迫った状況が彼をそうさせてしまうのである。
「…落ち着けよザイカ。焦っても状況が状況なんだから仕方ねーだろ?」
「す、すみません…ルクス様」
ザイカを諭す様に話しかける人物の名は…トレニア・ルクス・アルフレッド…トレニア王国の第五位王位継承権を持つ第五王子である。
そんな時である………コンッコンッ…。
「………ザイカ様、手紙とお届けに参りました」
「少し待て………良し、入れ」
ザイカは予め廊下の状況を鏡で覗ける様に細工をしていたのである。一人である事を確認したザイカはフードを被るその人物を部屋に入れる。
「すまないな、手紙を読むから待っていてくれ…さあ?」
「ザイカ様…手紙を渡す前に伝えたい事があります!…この場所の情報が王妃様に漏れています!」
途端に険しい表情になるザイカとルクスは視線を合わせ口を開く。
「…ならばこの手紙が届いた時点で最早…国王も!」
「はぁ…だろうな、あのババア流石だわ…直ぐに此処を離れるぞ?」
「支度は整えてあります!…すみません、私の…力が至らないばかりに!もっと…早く動けてさえいればっ!」
三人は話し合う間もなく街を離れる準備を済ませ逃げる様に街を去る…道中ルクスが密偵に声をかける。
「あんまり気にする事ねぇぞ?こんな王子に似つかわしくない俺みたいな奴について来てくれて…ありがとな」
そんなルクスの言葉に涙を流しながら街から離れる密偵、そしてザイカとルクス…それを複数の影が追って行く。
月の光がいっそ不気味な夜であった。




