告白と効果内容
正にペインを除く4人にとっては驚愕する話である。
リイサはシステマキングスの開発元の社長令嬢であり、開発チームのトップを母に持つ存在だったからである。
「本当にごめんなさい…!わ、私は…怖かったのです…事実を話せば…私は、皆さんにどう報いれば良いか分からなかった…!」
リイサはシステマキングスで起こった二千人以上が亡くなってしまったあの映像を見てから、ずっと抱えていたものを吐き出していく。
「…だっ、だって!?だって…二千人なんて…ど、どうすればいいとっ?…う、ううっ!!本当にっ…ごめ、ごめんなさいっ!」
泣きじゃくるリイサを目の当りにしたシエンとアカリは何と声を掛けてやれば良いか分からない。
そこにスバルがきょとんとして口を開く。
「…いや、まぁ二千人亡くなってしまったのは事故だし、仕方ないだろ?…亡くなった奴らには悪いが、そこが正にその時だっただけだろ。良くいるじゃないか?どうして?私が、僕が、俺が、あの人が、あの子がって奴ら、俺は理解出来なかったなぁ…まるで自分は望んだ未来を手にし終えてから死ぬんだ、みたいな感じ」
「………で、でも私の会社が起こしてしまってるんです!私も関係しています!」
「……リイサさんも、亡くなってしまってるんですから…何を謝る必要がありますか!他の人達にだって言う権利なんて無いですからね!…うう!」
「リイサは気にしなくていい…既に私達は一度死んだ身…残った人達で乗り越えなきゃいけない…だから…泣かないで?…何だか、わ、私まで…う、うう」
シエンとアカリは話しているうちに、込み上げるものを我慢出来ず…それは頬を伝いロビーの床に落ちる。
「………シエンさん…アカリさ…ん…わぁぁぁあ!」
リイサはアカリに抱きついて泣いている、抱きつかれたアカリも泣いている。
「………まぁ、青春って奴なんかのぅ?良し良し…ほれ吐き出してスッキリしたじゃろう?泣き止むがいい」
リイサの頭を優しく撫でてやるペインは、色々と抱えていたリイサに少し前の自分を重ねていた。
「…ペインちゃん!……うう!ぇええん!」
ペインは苦笑いしながら泣き止むまで頭を撫でてやる事にした。
しばらく泣いている声がロビーに響いていたが、少し落ち着きを取り戻しリイサは口を開く。
「…グスッ…ごめんなさいアカリさん…ペインさんもありがとう…、シエンさん…スバルさんは余り見ないで下さい…ふぅ!とても…スッキリしましたわ!フフ」
そこにはいつも以上に明るい笑顔をしたリイサがいた。
「リイサさん!これからもよろしくお願いします!」
「…良かった、本当のリイサはここから…よろ!」
「良い経験になったじゃろうて?…もう抱えて生きる必要は無いからのぅ?くくくっ」
スバルはリイサを見て自分を重ねていた、あそこまで自分を晒け出せる勇気に、自分に似た抱えて生きる考えに共感していた。
スバルの両親が亡くなった時…周りの親戚は挙ってウチで引き取ると主張したが、そこには真っ当な心根など無い。
保険金目当ての目つきはスバルに対してトラウマの毒として心を蝕み、心を閉ざしたスバルは一人で生き抜く事を決意する。
システマキングスと出会ったのもこんな時期である為、彼がソロプレイヤーとなっていたのも頷ける事実である。
しかし、今は違う…皆は新たな自分と向き合っていく。
スバルもシエンとぶつかり合い、アカリと話し、リイサに正されて、ペインを救った。
俺は変われた筈だった…でも違う。
俺が実は死ぬはずだったと言う事や御礼をリイサや皆んなに伝えて無い。スバルは口を開く…。
「リイサ………俺こそなんだ…俺こそありがとうと先に言わなければならなかったんだよ…ビギーの時みたいになってしまうのは嫌だから…!」
「…ビ、ビギーっ!?何故スバルさんが御礼を言うのですか?」
パーティ全員がどうしてか、と言う表情を見せてスバルに注目する。
「…ふぅ、俺は…今回のアップデート内容を攻略しきったら…死ぬつもりだったからな」
「え?えぇえええ!?」「な、何故っ?!」「…そ、そんなっ!?」「…理由は何だったのじゃ?」
四人はそれぞれ重なり合いながらも話す。そんな四人に向けてスバルは苦笑いしながら語る。
「…システマキングスが全てだったんだよなぁ…最終アップデートってさ…もう先が無いだろ?俺と同じさ…システマキングスをプレイしなくなった俺の存在意義なんて無いって当時はさ?…今は大丈夫!だからさ、リイサ…事故でも何でも全て引っくるめて!システマキングスを作ってくれてありがとう…俺を助けてくれて、ありがとうな?」
リイサはまた泣いてしまう…皆んなはどうした事か?と慌てたが、リイサは涙を拭いて話す。
「スバルさん…いえ、スバル。……あの、その…しです」
「え?…ごめん、聞こえなかった最後、なんて?」
急に体をもじもじとさせながら顔を赤くしながらリイサからもっとも衝撃な事実が告白させられる。
「で、ですから…私が…ビギーなんです!」
「…………………え?嘘でしょ?」
「当時ビギーをプレイしていたのは、私が一〇歳の時でした…スバルも仰っていた出来事があり、流石に当時の私にはあの様な出来事に耐える様な心はありませんでしたので…毎日ショックを受けました。ですが逆にそれが私に火をつけ一年後に新たなアカウントを作り今に至りましたの…恥ずかしい話ですわ」
スバルは魂が抜けたかの様な表情でフリーズしていた。
目の前のリイサが昔の唯一のフレンドのビギー…?と言うか当時一〇歳の子を連れ回して二人でプレイしてたの俺は?やばい奴じゃん…当時の俺。
「…ま、まさか、ビギーともう一度…出会えるとはなぁ。当時のプレイの面影が全く無いよな?…ビギーの頃はさ…
ポーションのクエストで…痛ッ!!」
「ポーションの話は秘密と約束していた筈ですよ!?もう!スバルぅ!!」
スバルのスネを蹴り飛ばすリイサの顔は怒ってはいるが明るい。対してスバルの表情も明るい…まるで昔の二人の様にそのやり取りには良い軽さがあった。
そんなやり取りにシエンがスバルに駆け寄り耳打ちする。
「スバル…とても気になるんで後で内緒で教えてくれませんか?僕達は男としての同盟が…痛ッ!」
「………シエン!それ…どう言う同盟か説明してくれるかな?…女の子全員にっ!」
そんな事させないと言わんばかりにシエンの頭をゲンコツするアカリ。
「ははははっ!くくっ!お主らは本当に見てて面白いのぅ?良いパーティじゃよ」
「…お前も含めてな?ペイン。ほれ良し良し!…うわっ!危ないって髪で攻撃はっ!!」
スバルの言葉に照れたのも束の間、小馬鹿にする様に頭をクシャクシャと撫でられ顔を赤くしながら髪を変化させるペイン。
そんな側から見たら…阿呆だと思われる様なやり取りをした五人は冷静になった瞬間に赤面した。
そして何事も無かったかの様に忌み名シリーズの習得を再開する五人であった。
アカリとリイサもナインシリーズからスキルリセットを行いシエンがそれを確認すると口を開く。
「と、とりあえず!僕は土龍を取りますね!ふぅ…」
《おめでとうございます。「土龍」シリーズを解放致しました。全スキルが解放されます。》
「じゃあ…私も、雷帝シリーズ取るからね!」
《おめでとうございます。「雷帝」シリーズを解放致しました。全スキルが解放されます。》
「では…私も眠り姫を…ウフフ」
《リイサ様と認識致しました。「光と闇」シリーズの光スキルを全解放致しました。
おめでとうございます。「眠り姫」シリーズを解放致しました。全スキルが解放されます。》
内容を見ながら各々は忌み名シリーズの異常な強さに驚愕している。
「どうだ?皆んなでスキル効果でも見せ合うか?」
「良いですね、お互いの効果や範囲を知れば更にパーティとしても動きやすくなりますし!」
「連携も…取れて…新しい戦法も編み出せるかも!」
「あらあらまあまあ、名案ですわね!ウフフ」
リイサが前以上に明るくなって安心したスバルは自身のウィンドウを開く。
《 ー『光と闇』シリーズ闇スキルー
【闇の宴】
・自身の闇属性スキルの威力がプラス五〇〇%。
効果時間三十秒、CT二時間。
【黒雨】
・虚空より現れる六六発の闇の弾丸を操り攻撃するスキル。
効果時間無し特殊系スキル。CT六十秒。
【光と闇召喚】
・このスキルの使用可能条件を満たしていません。
闇に選ばれし者=限定シリーズの特別アビリティ。闇耐性プラス一〇〇%
ー『水神』シリーズー
【流水制空】
・自分またはパーティの味方に半径三メートルの水のバリアを発生させる。敵からのダメージ無効化スキル。
無効化量は七五〇〇まで。効果時間六十秒、CT三分。
【水面流し】
・敵からの物理、魔法、状態異常攻撃を全て無効化する。
効果発動中は攻撃不可。CT無しの特殊系スキル。
【漣受け】
・敵からの物理、魔法、状態異常攻撃を三回相手に返すカウンタースキル。返した回数により威力が違う。一回目=三倍、二回目=六倍、三回目=九倍。
効果時間十五秒。CT二分。
【水神召喚】
・五大元素である水の神を召喚して共に戦うスキル。
後の先を極めし武人であり、数々の絶技を使用する。
召喚した時点で自分とパーティ全員に水耐性一〇〇%プラス、更に水中で息が出来るようになり、攻撃力、回避力に二五〇%プラス。
効果時間五分。CT十二時間。
使用後は水神シリーズスキル使用不可十二時間。
改めて見るともの凄い効果ばかりのスキルは正に最強スキルと呼べるものであった。
「…スバルお主…!ようもこんな反則的なスキルを使ってくれたのぅ!全く!」
「逆にこれ全て出させたペインが強過ぎたんだよ…」
スバルがそう言うとペインは恥ずかしがり、そう言う事ならと他の仲間のウィンドウを見るのであった。
《 ー『土龍』シリーズー
【大地の呼吸】
・地上にいる半径五百メートル内の敵をマーキングする索敵スキル。マーキングした敵の情報はパーティ全員に共有出来る。遠距離物理、遠距離魔法を行う場合のみマーキングした三〇〇までの敵を自動追尾する効果有り。
マーキングで分かるのは種族、名前、体力数まで。
効果時間五分、CT百二十秒。
【土龍の牙】
・土龍の力を宿した牙を八つ武器に変成して使用出来る。
土龍の牙で生成された武器は敵の攻撃では破壊不可。
土龍の牙で生成された武器はそれぞれが八回攻撃した時点で消えてしまう。自分以外にも生成した武器は使用可能。
土龍の牙を武器に組み込む事は出来ない。
効果時間無しの特殊系スキル。CT八時間。
【土龍の翼】
・自身に土龍の翼を装備して空を飛ぶ事の出来るスキル。
土龍の翼は攻撃用・防御用のオートアビリティ有り。
攻撃用=【飛土螺】翼より生成された小さき土竜が上空より降り注ぎ爆発を起こす、爆破する土竜の破片には粘着性があり、敵の動きを阻害する。空専用。
防御用=【イーステイル】自身に攻撃が放たれた場合に発動。物理、魔法、状態異常攻撃を土龍の翼が尻尾に変化して自動的に無効化してくれる。
効果時間六分。CT五時間。
【土龍召喚】
・五大元素である土の神を召喚して共に戦うスキル。
全ての龍の頂点に立つ龍であり、数々の龍技を使う。
召喚した時点で自分とパーティ全員に土耐性一〇〇%プラス。更に土龍の翼を自分とパーティ全員に発動する事が出来る。
効果時間五分。CT十二時間。
使用後は土龍シリーズスキル使用不可十二時間。》
「これはまた…凄いのぅ…先が広がるのぅ!」
「…はい、本当に驚いてますよこのスキルの数々に」
シエンの忌み名シリーズ土龍はサブアタッカーのシエンにピッタリじゃのぅ。…次は。
心中で呟きながらアカリのウィンドウを覗くペイン。
《ー『雷帝』シリーズー
【電光雷火】
・自身の武器に雷属性を付与して、前方扇型に五五発の属性付与をした武器で攻撃し、その速さにより炎をも発生させる範囲スキル。範囲は十五メートル。更に自身の雷帝シリーズスキルの威力を三〇〇%プラス三十秒する。
効果時間三十秒。CT四十五秒。
【雷震】
・雷を宿した武器を真上に飛び上がり地面に叩きつけ周囲に震電を発生させて逆上がる雷が敵を襲う範囲スキル。範囲は五十メートル。
効果時間無しの特殊系スキル。CT五十秒。
【雷帝の化身】
・雷帝の力をその身に宿すスキル。
全ステータス系スキルに八〇〇%プラス。戦闘移動速度三倍。
特殊アビリティ有り
【避雷心】雷で作り出した六体の分身と共に敵を攻撃する特殊アビリティ。
【雷帝召喚】
・五大元素である雷の神を召喚して共に戦うスキル。
雷を操りその世を馳せた帝王、数々の雷技を使う。
召喚した時点で自分とパーティ全員に雷耐性一〇〇%プラス。更に自分とパーティ全員に二体の避雷心を付与する。
効果時間五分。CT十二時間。
使用後は雷帝シリーズスキル使用不可十二時間。》
「これまた…アカリにピッタリじゃのぅ。…ん?戦闘移動速度なんて項目ステータスにあったかのぅ?」
すると同じ様にウィンドウを見ていたスバルが話す。
「ああ…それはリアル値とも呼ばれていたシステマキングスの隠しステータスだよ」
「え?!そんなステータスがあるんですか?!」
「…し、知らなかった」
シエンとアカリが知らなかったのは意外だったな、と思い説明しようとすると…リイサが手を挙げる。
「あ、えーと。私は知っていました…VRMMOのゲームにインする場合、初期設定で付属の帯電計測器がありますよね?あれによりゲームプレイ可能な状態かを見ているのですが、初期設定で登録された値や、更新された値でそのプレイヤーの身長、体格などが計算されて戦闘移動速度に反映されていたんです」
なるほどと感心する二人を他所に、ペインはリイサのウィンドウを覗く。
《リイサ様と認識致しました。
『光と闇』シリーズ解放。光のスキル全解放致しました。
ー【光と闇】シリーズー光スキル
【光の宴】
・自身の光属性スキルの威力がプラス五〇〇%。
効果時間三十秒、CT二時間。
【閃光】
・集約されし一二発の光線が上空より降り注ぎ攻撃する超広範囲スキル。範囲は一五〇〇メートル。
効果時間無し特殊系スキル。CT二時間。
【光と闇召喚】
・このスキルの使用可能条件を満たしていません。
闇に惹かれし光の巫女=限定シリーズの特別アビリティ。光属性耐性プラス一〇〇%、闇属性耐性五〇%プラス。
ー【眠り姫】シリーズー
【薔薇の行信】
・自分の前方広範囲に風の精霊の力を宿した薔薇の風吹が敵に襲いかかる範囲スキル。範囲は前方広域百五十メートル。ヒット判定の敵のSPを一〇%奪い取る。
効果時間無しの特殊系スキル。CT六十秒。
【フランエーテル】
・自分の周囲の味方の体力を五〇%、SPを二五%、CT五〇%回復する範囲回復スキル。範囲は周囲十メートル。
効果時間無しの特殊系スキル。CT三分。
※召喚スキルのCT回復は出来ない。
【眠り姫の加護】
・自分とパーティ全員に風の精霊の加護を貰いダメージ無効化付与。更に防御力二五〇%プラス。無効化量は二〇〇〇まで。
効果時間百二十秒。CT五分。
【眠り姫召喚】
・五大元素である風の神を召喚して共に戦うスキル。
女王であり精霊の頂点に立つ精霊神、数々の風技を使う。
召喚した時点で自分とパーティ全員に風耐性一〇〇%プラス。更に眠り姫召喚中自分とパーティ全員にダメージ無効化付与。更に体力、SP、CT毎秒五%ずつ回復効果付与。
効果時間二分。CT三時間。
使用後は眠り姫シリーズスキル使用不可十二時間。》
「…本当に凄いスキルばかりじゃのぅ、千年生きた妾でも驚愕するばかりじゃ…」
「…ですわね!ただ、光と闇シリーズは恐らく…お父様が私がスバルさんに会う為の口実に作られたものなので、皆さんに申し訳ないですわ」
「…ん?どう言う意味?あ、親馬鹿だった感じ?」
「それも…ありますが、ふふ。私がビギーで受けた思いや、貴方がオブジェ技の情報を流したり、セブンシリーズを流した事までお父様は知っていました。…システマキングスの人口は回復し、その要所では常にスバルの功労がありましたから。お父様やお母様はスバルに会いたがってました」
システマキングスを開発した社長や開発チーム主任が…俺と会いたがっていた、だと?!何て嬉しい事実だろうか!
「それで…いつか私とまた対峙した時に話して欲しいと言われてましたの、ふふ」
「…なるほどなぁ。ん?でもそれで俺達二人にしか光と闇シリーズが使えない理由にはならないんじゃ…危なっ!」
何故だか急にペインの変化した髪に襲われるスバル。咄嗟にかわしたスバルは驚きの声と共に倒れる。
「な、なにをしてるんだよ!危ないだろ!」
「スバル!!………腹が減ったのじゃ……うぐぅ」
空腹の訴えを言いながら倒れるペイン、そんなに腹が減っていたのか…とスバルは苦笑いする。
「んじゃまあ、とりあえず食事にするか?」
「ですね!色々ありすぎて疲れましたし…あ」
「…はぁ、気の使えない男…モテないぞ?」
「あらあらまあまあ…私はもう大丈夫ですわ。だって、素敵な仲間が沢山おりますもの!ウフフ」
リイサの言葉に四人は笑みを浮かべ頷く。…ペインは床に伏していたが、食事と聞いて力を振り絞り立ち上がる。
イスに座る前にリイサの近くを通る、そして…。
「…感謝するんじゃぞ?…お主のもう一つの秘密が露呈しなかったのだからのぅ?」
耳打ちされた内容に鼓動が高鳴り顔が赤くなるリイサ。
「…あ、あらぁ?ど、どうかされまして?ペインちゃん?あ、ああ!その件はまた部屋で話しましょうね!ウ、ウフフ!」
皆には聞こえない声で言った言葉に動揺しながら誤魔化すリイサに、大丈夫か?と言う視線を向ける四人。
「も、問題ありませんよ!」
リイサにしては珍しく大きな声がロビーにこだまする。




