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逆襲のアルテミス  作者: 加藤貴敏
第4章「ウォー・ゲーム・オブ・ハザーズ」

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「未来に微笑む」中編

異世界から帰ってきてとある日、ふとヘルは庭先に居る“知らない光剣獣”を目に留めた。それは大型犬くらいのサイズで、まるで初めて来た場所の匂いを確かめたりするようにソワソワ、キョロキョロしていた。魔法の手で庭から窓を開けたヘル。

「(シルヴェル、何あの光剣獣)」

「新しいモデルだ。その方が人々に受け入れられやすいとスカラサイが言っていた」

「(スカラサイって、ジュピターズの?)」

「あぁ。これから我らはチャリティーイベントに出る。そこで我の王としての認知度を上げる」

「(そうなんだ。すごいね)」

「そういえば、異世界に連れてったテロリストはどうなったの?」

「(あ、実はさ、向こうの世界でテリッテが、ガンニアーにアルテミスに入りなよって言ってさ。それでこれからルア達にも紹介しようと思ってたんだ)」

「え、何で急にそんな事に」

「(まぁ何かテリッテが、ガンニアーが昔のアーサーに似てて、放っておけないって)」

「そうなんだ」

「(でねすごい事したんだよガンニアー。初めてやったリッショウをパワーアップさせちゃって、それを真似してみんなのリッショウもパワーアップさせられたんだよ)」

「どんな風に?」

気が付けば光剣獣はヘルに近付いてきていて、まるで知っている人の匂いを確かめるようにクンクンしていた。

「(リッショウの壁を壊して、何か新しいリッショウになったって感じ。とにかくものすごい強いんだ。スーパーリッショウよりも強いリッショウをずっと出来てる感じ)」

「へー、すごいね」

「(もうボクもマスターしたんだー。しかもねそれはリッショウって言うより、フェニックスソウルよりのリッショウっていうかね。とにかく新しい魔法なんだ。ルアにも教えてあげるよ)」

「ならば我にも教えて貰おう」

「(え、うんいいけど)」

ホールズの中で1番貧困が問題になっている国、スレイシニク。何故ならその国はここ10年に渡って国内紛争が続いているから。原因はクーデター。とある宗教から派生して生まれてしまったテロ組織がとある日、軍事施設を制圧した。それからゆっくりと軍事力を吸収して、現政治体制を破壊する名目で、とにかく無差別に攻撃を繰り返していた。宗教団体からの献金もあり、しぶとく生き残っていて、しかも最近ウパーディセーサを取り入れて更に凶悪化したそのテロ組織、デウンネス。ホールズの中ではあるが紛争地帯の為に花畑などとっくに燃え尽き、シーザリアンも寄り付かない。

「ワンワンッ、ワウワウ、ワン、ワウワウ」

「ワウワウ、ワン」

「そうね」

スレイシニクにて、比較的被害の少ない街ネーイス。そこにパッとやって来たファティマと4匹の犬たち。そこは見たところ、建物が破壊されていたりといった様子はない。それから治癒玉に導かれてやって来たのは病院。上下に揺れる治癒玉。

「ダメよ。今は我慢して」

ざわめき出す病院のエントランス。慌ててやって来る受付の女性。

「この生き物達はダメです。病院には入れません」

「あらそう。なら院長を呼んでくれるかしら。私、魔法で病気を治しに来たの。それからお金が無くて怪我も治せない人もね」

病院の入口の自動ドアの前で寛いでいるボンたち。

「ワウワウ(何か臭わない?)」

「ワン(火薬の臭いだね。すぐそこじゃない?)」

そう言うとヒュンは歩き出し、病院の駐車場に向かっていく。

「ガウガウ(いいの?)」

「ワウーン(行っちゃうか)」

コンも歩き出せばギンは不安そうに自動ドアの向こうのファティマに目をやるが、気が付けばボンも歩き出しているのでギンもついていった。

「ワウワウ(何かあるよ)」

「ワン、ワウワウ、ワウワウ?(室外機とも違う。火薬って事は、まさか爆弾?)」

「ガウガウ(どうしよどうしよ)」

「ワンワンッ(大丈夫じゃない?)」

そう言うとコンは岩片を無数に作り出し、それで何だかよく分からない黒い箱を覆い隠した。

「ワン(これでおっけー)」

「ワウワウ(凍らせても良かったけど)」

「ガウガウ、ガウ、ガウガウ(カースベルクが言ってたけど、この街って危ないんだよね?)」

「ワウワウ(紛争っていうのの真っ最中だってね)」

「ワウーン、ワン(今にもミサイルとか降ってきたりして)」

コンの言葉にギンはまた不安そうに地面を嗅ぐが、そんな様子にコンは少しだけ擦り寄ってあげる。

「ワンワン(1番大きいのにビビりだなぁ、もー)」

「ワウワウ、ワンワン(ファティマはすごく強いし、ボクたちだってすごく強い。普通の人間の群れなんかには絶対に負けないよ)」

「ワン(そうそう)」

「ワウワウ、ワンワン(ファティマは怪我人を治す為に来てるけど、この国の様子じゃ、多分戦う時が来るんじゃないかな)」

「ガウ?(そうなの?)」

「ワウワウ、ワンワン(だって、魔法で怪我を治せる人を、悪い奴らは欲しがるんじゃないかな。それに手に入らないなら襲ってくるだろうしね)」

「ワウワウ(戦うなら、ボクたち容赦しないもんね)」

「ワンワン(絶対にファティマを守るからね)」

ボンとヒュンが見つめれば、ギンは頷く。そんな時だった、コンが作った岩片の球の隙間から煙が出てきたのは。

「ワンッ(爆発した)」

「ワンワン、ワウワウ(危なかったね。ボクたちが来るのが遅かったら病院がやられてた)」

「ガウガウ(病院を狙ってたの?)」

「ワン、ワウワウ(だろうね。敵にとっては病院は狙う場所だってカースベルクも言ってたし)」

「ガウガウ(だから気を付けろって言ってたのか)」

「どうしてなんだ!何で病院が爆発してない!ちゃんと仕掛けたのか?」

「勿論仕掛けましたよ」

何やら2人の男の声が聞こえてきた。不気味で静かな街並みだから、余計に男の声が響いてきてボンたちは耳を澄ませる。そしてアイコンタクトしてみんなで1回入口の方に戻って角を曲がる。ボンが半分だけ顔を出し、角から覗いて見てみれば、やがて2人の男が黒い箱があった場所にやって来た。岩片は消したので、そこにあるのは“爆発した箱”だけ。

「爆発してる。なのに病院は無傷だと?どうなってるんだ」

「分かりません」

「仕方ない。直接叩くか」

そう言って男達はウパーディセーサに変身した。

「ワンッ!」

「ん?何だ、あいつ・・・シーザリアン?」

直後に男達が目を留めたのは、アスファルトの中を泳ぐように蠢く何か。地面の中から何かが迫ってくる。そう恐怖を感じた直後、地面からは蔦が生え、瞬く間に男達に絡み付いた。

「何だ!何なんだこれは!」

「くそ!蔦ごときが、まるで鉄みたいに固く締まって・・・」

「ワン!」

「シーザリアン、何だテメエ!」

「ワンワン!(お前らがデウンネスとかいう奴らかっ)」

「ワウワウ(ボン、言葉通じないよ)」

「まさか、これはお前らがやったのか?」

「シーザリアンにこんな力があるなんて」

「ガウガウ(ファティマ呼んだ方がいいんじゃない?)」

「何だあのデカいやつ」

「シーザリアンのボスですかね」

「ガウ(え、ボスじゃないよ)」

「くそ、シーザリアンなんてとっくに居なくなったと思ってたのに、今更オレ達に復讐か?」

「ワンワン!(ファティマが来なくても、こんな奴らボクたちでやっつけちゃおう)」

ボンが全身の“花毛皮”を震わせて力を込めれば、更に地面から蔦が飛び出してきて、その蔦は先端を拳のように膨らませた。

「や、やめろ」

「ワンワン!(仲間たちが暮らしてた街を燃やすなんて、許さないぞ!)」

そして蔦の拳が勢いよく振り回されれば、それは1人の男の顔に真っ直ぐ激突した。

「ぐはっ!」

隣の男が無抵抗のままに凄まじく殴られた様子に、手下の方の男は恐怖を感じてもがき始めた。

「やめてくれ」

「ぐああっ」

「やめてくれ・・・」

それから何度も殴られて偉い方の男がぐったりするとボンは目線を移し、同時に蔦の拳もゆっくりと手下の方の男に狙いを定める。

「やめてくれ!オレは仕方なくやっただけなんだ!本当はこんなことしたくなかったのに。デウンネスの言うことを聞かないと殺されるから」

「ワウワウ(ボン、何か事情がありそうじゃない)」

「ワンワン、ワウワウ(テロリストの中にも、こういう人は居るよね、ボン、この人はいいんじゃない?)」

「助けてくれ!頼む」

「ワウワウ(しょうがないなぁ)」

蔦の拳も、手下の方の男を締め付ける蔦も地面に引っ込んでいくと、解放された男はそのまま尻餅を着きながら人間に戻った。

「お、お前達は、本当に、街を燃やした復讐に来たのか?」

「みんな」

振り返るボン達。そこには病院の中からパッと転移してきたファティマが立っていて、すぐさまギンが不安そうにファティマにすり寄る。

「ワンワン(デウンネスの奴らが、爆弾仕掛けてたんだよ)」

「ワウワウ(でもボクたちが病院を守ったんだ)」

ギンに続いてボンたちも一斉に駆け寄っていき、ファティマはまるで甘えてくる子供達を相手にするようにボンたちを撫でていく。

「頑張ったわね」

「あんたは一体、何故シーザリアンを従えてるんだ」

「従えてはないわ。私達はただの家族よ」

「家族?・・・」

「あなた達、本当にデウンネスなのかしら」

「あ、あぁ、まぁそうだけど。でもオレは、ただ脅されて爆弾作りをさせられてるだけで、本当はこんなことしたくなかった」

「ワウワウ、ワウワウ(ねえファティマ、やっぱりデウンネスやっつけた方がいいんじゃないかな。仲間たちだってこの街に居られなくなったなんて、許せない)」

「そうね。ボンたちがそうしたいなら、私も一緒にやるわよ」

「ワン」

「こんなこと頼むのはおかしいと思うんだけど、助けてくれないか?オレの事じゃなくて、この街の事」

「お金が無くて病院にもいけない人を助ける為に来たけど、結局こうなるかも知れないって思ってはいたから、いいわよ?デウンネスを潰さないと、怪我人が増えちゃうし」

「あぁ頼む。デウンネスの事が知りたいなら協力する。オレの名前はエネクス」

「私はファティマよ」

「フウ・・・フウ・・・」

そんな時に気絶していたデウンネスの男はウパーディセーサのまま顔を上げ、朦朧とした目線でゆっくりと辺りを見渡し、エネクスを見た。

「何、して、るんだ・・・裏切る、のか」

「あぁ、当たり前だろ。もうオレはデウンネスを抜ける」

「ただで、済むと思う、なよ」

「こいつ、どうするの?」

そうエネクスがボンを見れば、ボンはスタスタと歩き出し、そして力を込めてデウンネスの男を見つめる。すると更に地面から蔦が飛び出してきて、やがて男は完全に蔦に覆われ、一見するとその中に人間が居るなど思いもしないような、ただの不気味な蔦の塊となった。

「ワウワウ(その内、土に還るよ)」

「一先ず仲間を呼べないようにしたのね」

「このままなのか?」

「そうね、このまま土に還るそうよ」

さらっと放たれたその言葉にエネクスが静かに恐怖を覚えてそれから、ファティマはまた病院のエントランスに立ち寄った。するとすぐに治癒玉が戻ってきて、ファティマの手に乗っかった。

「それじゃ私は行くわ」

「本当にありがとうございました」

深々と感謝する院長に微笑み、それからファティマは病院を後にした。エネクスの案内で街を歩くファティマ達。いつ襲撃されるか分からないからなのか、人通りが極端に少ない。人通りが多そうな、店が建ち並ぶ道路でもふと見かけたのは警官だった。だから警官は無線に向かって一言喋ってから厳しい顔で歩み寄ってきた。

「お前達は何だ。シーザリアンなんか連れて」

今にも拳銃に手を伸ばしそうな顔の警官を前に、ファティマは瞳に檸檬色の光を灯らせる。

「私はファティマ。蘇りし者よ。これからデウンネスを潰しに行くわ」

「蘇りし者・・・デウンネスを。おぉ、何という幸運。あなたは神の使者だ」

「そんな大したものじゃないけど」

「デウンネスの潜伏拠点はご存知なんですか?」

「この人が知ってるわ」

「でもオレが知ってるのは爆弾を作ってた所で、デウンネスの本拠地じゃないけど」

「何故知ってるんだ」

「それは、オレは今さっきまでデウンネスに脅されて爆弾作ってて、それで病院を爆破しようとしてた所をこの人達に助けて貰って」

「そうか。デウンネスの末端のほとんどが拉致された者だと聞く。お前も辛かったな」

「はい」

「しかしここからは警察に引き取らせて貰う。一般人にテロ組織拠点への案内をさせる訳にはいかない。もうすぐ応援が来るから、それまではここを動かないでくれ。いいかな?」

「分かりました。警察が居た方が安心なんで」

何だか大事になった。でもこの方が良い。そうファティマは理解した。だからギンも多少の不安を持ちながらもファティマにぴったり寄り添う。やがて大型警察車両がやって来て、引き続きエネクスの案内でそしてファティマ達はとある住宅に辿り着いた。その家は一見すると庭とガレージが付いた2階建ての普通の住宅だった。

「爆弾を作ってたのはこの家の地下です。あとオレと同じように脅されて爆弾作ってる奴がもう1人居るはずです」

静かに、素早く警官隊が家を包囲していく。アイコンタクトを交わし、指でササッと指示を出されればそして警官隊は住宅に突撃していった。そんな様子をのんびりと眺めているファティマ達。

「ワウワウ(ボクたち見てるだけ?)」

「今はそうね。きっと活躍出来る時が来るわ?」

「ワンワン(ボクたちの相手はボスだからね。こういうのは人間に任せればいいんだよ)」

やがてエネクスと同じように爆弾作りをさせられていた男性が救出されて、その拠点は制圧された。警官達は嬉しそうで、でも未だに緊張していた。こういう事を1つずつやっていたら、きっとすごく時間がかかるし、きっと組織を壊滅させるなんて出来そうにない。そうボンは住宅を行き交う警官達を眺める。

「本拠地に繋がる目ぼしい証拠は無かったか」

「この家を管理してた奴が居たはずだ。どこ行ったんだ」

「あ、それならこのシーザリアンが殺してしまいました」

「何だって!?」

「ワウワウ(問題無いけどね、ボクたちの力があれば人間の群れなんか簡単に見つけられる)」

「この子達なら本拠地を見つけられるそうよ」

「そうなのか?」

警察車両を出て道に出たボンたち。アスファルトではなく土のある場所に立てば、ボンとヒュンとコンは体から出した蔦を地面に突き刺し、一斉に力を込めた。何をするんだと警官達が3匹を眺める中、やがて人知れず街の至る所から細い蔦がひっそりと伸び出した。とあるマンションの中だったり、スーパーマーケットの中だったり、様々な建物の中を蔦は走っていく。それから1時間くらい経ってからだった、ボンが目を開けたのは。

「ワンワン!(見つけた!)」

「見つけたそうよ」

「本当か!」

しかし警官車両は走り出さなかった。一端の警官が勝手に決めていい事ではないから。デウンネスの本拠地が特定された。そう報告が警察本部に上がり、それから情報源の信頼性を確かめながら、どう動くかを“これから”考える。そう警官が説明すれば、ファティマは溜め息を漏らした。

「もういいわ。私達だけで行くから」

「いやそれは、ダメですよ、これは本当に大きな問題なんです。ただ組織を潰してたって意味ないんです。デウンネスの裏には宗教団体があって、その団体は2番目に大きい政党と繋がってて」

「そんな事どうでもいいわ。私はただ、誰かの未来を照らしたいだけ」

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