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逆襲のアルテミス  作者: 加藤貴敏
第4章「ウォー・ゲーム・オブ・ハザーズ」

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「自然との対話」後編

「ここ数日、シーザリアンは脅威的な存在ではなくなり、人間や建物に危害を加えていない。しかしどうか、安心しないで欲しい。我々ケルタニア軍はシーザーと対話した。シーザーは、相変わらず何かを企んでいた。シーザリアンが攻撃的ではないのは、必ず裏がある。シーザーは巧妙に人間から敵対視されないようにしながら着実に侵略し、過度に自然を氾濫させ、気が付いた時には人間の生活インフラを破壊する、そういう計画ではないかというのが我々の見解だ。現に今、道路のあちこちで交通が乱れているし、民家においても実際に被害が出ている。市民の方々は、シーザリアンへの期待は捨てるべきだ」

「以上がケルタニア軍からの正式な見解という事です。確かに、シーザリアンの遺体が瞬時に木となって道路を塞いだり、民家を突き破ったりという情報は多く寄せられていますね。ただ一方で、脅威的ではないシーザリアンの駆除に反対する声もあります」

「そうですね。シーザリアンでなくとも人間に脅威的な野生動物は沢山存在しています。しかし野生動物たちは人間社会を破壊しようとは思っておらず、敵対視はしているけど距離を保って、ある程度は共存しています。シーザーの思惑がどうであれ、人間との共存の道がもしあるのなら、私はそれに期待したいですが」

「自然保護活動家のスーメイさんにお話を伺いました。ありがとうございました」

ベリカニア、シルヴェルの家にて。ケルタニア軍の会見をウェブ動画で見ていたルアとヘル。

「(発表したんだね、アキレス達。行動が早いね)」

「うん」

「(今回の相手は、手強いよね。単純に倒せないし、戦うことすら難しいんだもん)」

「共存、出来ないかな」

「(どうだろね。話せるのに、分かりあえない。意思のある自然だっけ。しかも敵意のある自然)」

そんな時だった、シルヴェルの家の庭先に、スカラサイとセキハ、そしてシュウズンがやって来たのは。

「(あ、ジュピターズの人達と社長だ)」

開いている窓からすぐに匂いを感じればヘルがそう言って、ルアは振り向く。だからインターホンが鳴る前に玄関扉を開けたルア。

「こんにちはルアさん」

「こんにちは。どうしたんですか?」

「今回は、折り入って、シルヴェルさんにお願いがあって参りました」

ルアとヘルが目をぱちくりさせてそれから、ルアはスカラサイ達を家に招き入れた。リビングでスカラサイ達が各々座れば、シルヴェルはちょっとだけ距離を取ったところに座り、悠然とした眼差しでその面々を見渡していく。

「何の用だ」

「私はジュピター・コーポレーションの社長をしているスカラサイ・レゲルです。このジュピターズの責任者です」

「あぁ。ジュピターズが何なのかは聞いている」

「そうですか。それでその、何故、シュウズンに力を与えたのでしょうか。というか、何故シュウズンを選んだのか」

「この者だからという事ではない。我の使命は、戦える者を目覚めさせる事。お前達こそ、何故我の力の欠片を取り込んだか、その理由を問われても明確な意思は無いだろ」

「確かにそうですね」

「だから意思を持って我の下に来たシュウズンには、王として慈愛を持って力を与えた。それに、ドラゴンやらを取り込んだ時点でジュピターズは最早、我の配下も等しい。故に、シュウズンを拒絶する理由は無かった」

「なるほど。それはそうですね。こちらが勝手にあなたの力を取り込んだ。その、今日こうして伺ったのは、他のジュピターズ全員にも、シュウズンのように力をお与え下さればと思いまして」

「それは構わないが、何故お前は、力を求める」

「私がジュピターズ計画を始めた理由は、医療の可能性を広げるという会社の理念を遂行する為です。ジュピター・コーポレーションは医療機器メーカーで、常に人々を救う為にあります。ですが最近になってウパーディセーサというものが世の中に広まって、医療の道が険しくなりました。簡単に人々が傷付けられ、世界中で医療が逼迫する危機に晒されています。ジュピターズは、傷付けられなくていい人々が傷付かなくていいようにと、願いを込めて作りました。だから、常にジュピターズはアップデートしなければなりません」

「人々を救う、か。我が戦える者を目覚めさせるのは、戦わざる者達が傷付かない為にだ」

頷くスカラサイの表情からは、分かりやすく感銘を受けている態度が伺えた。

「お前の意思は理解した。少なくともお前は、良い目をしている」

「さすが社長だな」

ボソッとシュウズンが呟くと、セキハは真剣な表情の中で、不信がるような険しい態度をふと伺わせた。

「それでですね、親衛隊の件なんですが、また力を授けて頂いた際には、今後ジュピターズ全員が、シルヴェルさんと共に戦わせて頂ければと思いまして、形としては、例えば特別警護契約を、ジュピター・コーポレーションと結んで頂くということで考えてるんですが」

「特別警護、それは、意味として親衛と同じなのか?」

「そうですね。ただ、ジュピターズは世間的に広告塔としての立場もあるので、配下というより、契約という形にさせて頂きたいんです」

「まぁ、それはお前の望む形で構わない。我にとっては、目覚めるべき者が目覚めればそれでいい」

「ありがとうございます」

すでに用意していたのかと、ルアとヘルは顔を見合わせて驚きを共有した。セキハがアタッシェケースからサッと取り出した契約書に、それからシルヴェルとルアはサインした。何故ルアもなのかというと、それは説得力の為だと、スカラサイはギラギラした眼差しで語った。

ジュピター・コーポレーション。実験室にぞろぞろとやって来たジュピターズ。実験室に入るなり、ジュピターズは各々驚いて戸惑う。何故なら強化ガラスの向こうには光剣獣の群れが寛いでいたから。

「何だ?多頭飼育崩壊でもしたのか?」

「保護犬じゃねえぞ」

リラックスした笑い声がある中、シュウズンを除いた19人のジュピターズは扉を抜けて、市民体育館ほど広い実験室に入っていく。それから1時間後、ジュピター・コーポレーション本社屋上。

「イェーイ!みんな!レッサー&オーエンだ!会社のニュースやホームページは見てくれたか!オレらジュピターズはそもそもあのドラゴンとデカい鳥獣の遺伝子を取り込んでパワーアップしてたけど、遂にモンスターを作ったシルヴェル本人とも契約する事になったんだ」

「さすが社長だよな」

「けどみんな安心してくれ。ホームページでも報せているが、この契約はあの独立自警団アルテミスとシルヴェル、ジュピター・コーポレーションの共同契約だ。これ以上の説得力は無いよな?」

「そして今回は、またまたパワーアップしたジュピターズを見せてやるぜ。行くぞ?・・・・・どうだ!カッコイイだろ。これも、ジュピター・コーポレーションとシルヴェルがタッグを組んでる証拠だ。決して他の誰も真似出来ない、ジュピターズの力だぜ?」

ケルタニア軍基地本部。シーザリアン対策モニタールーム。リュナークは「おー」と言った。両手を頭に乗せて椅子に座りながら、レッサー&オーエンの動画を見ていた。

「蘇りし者の力を取り込んだジュピターズ、そのバックにアルテミス。きっと、世界最強の自警団」

そうエテュオンがボソッと言えば、リュナークも相槌を打つ。

「オレ達も、シーザーと組めるかなぁ」

ユテスがそう口を開いたところで、リュナークは失笑する。

「いやぁ・・・無理じゃない?」

「でもさ、共存出来るならそれが1番って、テレビで専門家も言ってるよ?」

「んー。だってシーザー、ほんと何考えてるか分からないだろ?」

「でも対話は出来るしさ。道はあると思うけど。エテュオンもそう思わない?」

「簡単には倒せないから、倒す以外の無力化を考えるのは必要だと思う」

エテュオンの言葉にはリュナークも落ち着いて頷き、そんな会話をアキレスは背中で聞く。

「確かにそっか。アキレス、話した時って、特に敵意は感じなかったんでしょ?」

「あぁ」

「なら、可能性あるのかな」

「どうだかな。あいつは、絶対勝てると余裕なんだ。もしかしたら、むしろ力業じゃない方法であいつを黙らせた方が有効なのかもな」

「どうしよう」

「シーザーは、何故そんなに自然にこだわるんだ」

ホーンがそう口を開く。

「確か、生きてた時って、当時としては世界最強の軍隊を持ってたっていう皇帝で、同時に世界一の庭園も持ってたって。だから自然が好きなんじゃない?」

ユテスが応えればホーンは静かに頷く。

「しかし、蘇りし者となった影響なのか、大分攻撃的になってるが」

「とにかく、こっちもさ、何て言うか、シーザーみたいに相手の身動きを封じるような動き方をしないとさ」

しかしリュナークの言葉にはみんなも唸るだけで静寂が流れてしまう。とても不利な状況。考えれば考えるほど、シーザーという名の自然にどう対抗していけばいいのか。そうアキレスはモニターを眺める。

「先ずは、会ってみる」

するとそこで口を開いたのはリュナーク。

「オレも実際話してみる」

「確かにな、シーザーの思惑を聞いたらこっちも動き方が変わるかも」

「自信満々なシーザーの鼻を明かしてやろう」

そして大地の大樹に向かっていったのはアキレス達5人だけ。人間組は居残り。戦うつもりはないので通信機を持っていって、それから大地の大樹へ1キロメートル付近となった頃、そこには“風”が吹いた。それは歓迎するものではなく、まるで雪でも降りそうだと思わせるひんやりとしたもの。だからアキレスはみんなに着陸を指示した。アキレス達が地面に降り立った瞬間から、1本の木からシーザーが静かに姿を現した。

「近付くなって事か」

「もうオレのエリアだ。ここで十分だろ」

「ここが、お前の庭園か」

「・・・庭園?」

「前に生きてた時も持ってたんでしょ?自分の庭園」

「あれは、美しかった。あれに比べたらここは、何も無い」

「だったら作れば?」

スパッとエテュオンが言葉を突き刺すと、シーザーは不思議そうエテュオンを睨み、遠くを見つめた。その態度には殺気は無いが、隙も無い。しかしその雰囲気に、アキレスは内心で首を傾げる。

「・・・庭園、か」

「別にさ、戦うだけが全てじゃないでしょ?」

ユテスの言葉にシーザーは首を傾げる。

「お前はさ、戦う以外にも道がある事を知らないだけなんじゃないかな?」

「戦う以外の道だと」

「自然を増やして、人間を脅かすのは、何か、自然じゃないっていうかさ」

「どういう意味だ」

「自然ってさ、共存が、1番の理想なんじゃないかな。人間だって、動物だって、結局は自然が無いと生きていけないんだし。それは自然の方もそうじゃないかな」

「だが人間は、オレも、とてつもなく長い間、沢山のものを破壊してきた。そして帝国は、洪水と噴火で衰退した。人間は、いつか報いを受けるべきだ。そして今、それはオレの役目だ。共存と言いながら人間は自分の都合で形を歪ませる。国を作るのも、庭園も、戦争も。もう沢山だ、人間として生きるのも、人間との共存も」

「・・・だから、人間社会を破壊するのか?」

ふと風は弱まっていた。でもそんな事を誰も気にする事はなく、アキレスの言葉にシーザーは黙って1本の木を見上げた。その木には花も実もない。そしてゆっくりと、シーザーは木になった。そんな時だった、シーザーのエリアと国立保全樹海の境界線、アキレス達が居るところに1匹の大きな熊がやって来たのは。

「ん?」

すると熊はアキレス達と遠く距離を取って立ち止まり、警戒心を見せた。

「そういえば、大樹のエリアって動物居ないのかな。シーザリアンすら居ないけど」

「居たとしてもシーザーは攻撃しないだろうけど。何か、確かにすごい静かだな」

少し唸ったあと、熊はまるで境界線を分かってるかのように、シーザーのエリアの外を沿うように歩いて去っていく。

「不思議な奴だ」

アキレスはボソッと口を開く。

「え?」

「敵意はあるのに、対話には応じる。まるで、寂しがり屋だな」

「確かに。何か、ここって寂しいよね。花も無い」

「多分、本当は求めてるんだと思う」

「うん、オレもそう思う。シーザーは、心の底では平穏を望んでるんだよ」

「けど、その平穏を、シーザーは諦めてる」

〈おい、リュナーク!デリスだ〉

「デリス、どうかした?」

〈街中の植物が動き出した。ゆっくりだがまた根が張られて、成長したり増えたりで大変だ〉

「一旦戻るよ」

それはシーザーからのリアクションなのか。もしそうなら面倒臭い。そうアキレスが不満を抱く中、戻った街ではとにかく沢山の花が咲いていた。家屋もビルも、車も、コンビニも蔦が絡まりに絡まって、花に覆われていた。

「何だよこれ!」

戸惑う人だったり、とにかく蔦を引きちぎる民間人ウパーディセーサだったり、嬉しがってはしゃぐ子供達だったりで街が大混乱だった。地面に降り立ってから、アキレスは頭を抱えて溜め息を吐いた。

〈よおリュナーク達も見えたか?〉

「うん、何か、すごい事になってる」

〈樹海のすぐ前のその街からどんどん広がってる。お前ら、シーザーに何言ったんだ〉

「えっと、全然、ケンカしてないよ?ただ普通にさ、シーザーが前に生きてた時、庭園を持ってたから、庭園作れば?って、エテュオンが」

「それでこれ?私のせいじゃない」

〈何だそれ〉

それからケルタニア軍基地本部に戻っても、基地は案の定花で覆われていた。デリスも一緒に、アキレス達はただ花を眺めた。

「品種は、1、2、3・・・」

「数えなくていい。数え切れない」

「ったく、ここまでいったら花も暴力だな」

「こっちはバラで、こっちは、カーネイションかなぁ。あっちにはチューリップ。すごいな。もう季節もバラバラでとにかく沢山」

それから“草花の津波”はケルタニアからホールズ全体に広がった。といっても蔦は簡単に引きちぎれるし、労力さえ費やせば、ほぼ生活に支障はなかった。だから草花が取り除かれたのは道路や線路、電線や機械系統など“取らなきゃダメなところ”だけ。だから3日経った今でも、街はほぼ花畑。

「どうせだったら大樹に作ればいいのに」

「でも、生活インフラに影響したのは数時間。攻撃性は高くない」

「そういう事じゃないでしょ」

リュナークとエテュオンが街の草花を除去してる一方、ベリカニア、シルヴェルの家では、庭でペルーニがはしゃいでいた。どこを見ても花があって、早速作った花のリースをヘルの首にかけて喜んでいた。

「(対話しに行ったらシーザーのリアクションがこれってアキレス達が記者会見してたけどさ、これって攻撃なのかな?一応生活インフラはちょっと止まったけど)」

「えー?違うでしょ。だってみんな嬉しいもん」

「(そりゃペルーニは花好きだから良いけどさ、結構匂いとかすごいんだよね。それにアレルギーの人とかもさ)」

「そ、それは、そうだけど」

「(ほんと、シーザーって読めない。ほんとに自然と対話してるみたい)」

読んで頂きありがとうございました。


動きの読めないシーザーと、果たして分かり合える日は来るのでしょうか。

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