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逆襲のアルテミス  作者: 加藤貴敏
第4章「ウォー・ゲーム・オブ・ハザーズ」

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「ルアとシルヴェル」前編

「全員出るぞ!」

アキレスがそう声を張ればアルタライザー達は一瞬で気を引き締める。

「うん、封印、シーザーに破かれちゃったのかな」

ユテスが目を向けたのはエテュオン。

「そうかも知れない。やはり侮れない相手だって事」

「タイミングが悪いな」

「そうだよね、ベリカニアで大変な事になってるっていうのに」

「デリス達は人命を優先してくれ」

「おう、ベリクロ達も全員出るだろうから、連携は臨機応変にな」

「あぁ」

それから基地のヘリポートの上に集まったアルタライザー達。第1チームはアキレス、ユテス、エテュオン、リュナーク、ホーン。第2チームはベリクロ、ティヒム、バンム、シュライ、パーム。

「ベリカニアから広がってる剣の獣がケルタニアにも入ってきてる。そっちも殲滅を頼む」

「あぁ」

人間組がそれぞれ4機のヘリに乗り込めば、アキレスとベリクロは頷いた。

「連携は臨機応変に、目に付いた奴から殲滅する」

「分かった」

そしてアルタライザー、ヘリコプターは飛び立っていった。主に人間組は索敵をして、アルタライザーは戦闘機のように捕捉したモンスターに向かっていく。

「うわ、ていうか、高度進化個体ばっかりじゃん」

そう言ってボルテクスに向かって飛んでいったのはリュナーク。戦闘機が銃撃するかのように、リュナークは帯電爆発鱗を発射する。ブスンッと鱗がボルテクスの首筋に刺されば、直後の爆発と共にそのモンスターは吹き飛んでバラバラになった。一方、捕捉したスファイザントを追いかけてエテュオンが急降下していくと、そこで光剣獣も捕捉した。地上に降り立ったエテュオンを前後で挟む、スファイザントと光剣獣。逃げ惑う人々。張り詰めた闘志。最初に飛び出したのは、スファイザントだった。口から白いガスを漏らしたと思えば、直後に炎を吐いてレーザービームを放ってきた。素早くかわすエテュオン。するとレーザービームは真っ直ぐ光剣獣を襲った。

「え・・・」

光剣獣がバラバラになって消えていけば、スファイザントはすぐさま殺気の矛先をエテュオンに向けて、青黒い針を飛ばしてくる。それは難無くクウカクで防ぎながら、エテュオンは素早く横に飛び出して衝撃波を放つ。殴られたようによろめきながらもスファイザントが全方位に冷気を放ってくれば、エテュオンはサッと後退して更に衝撃波を連射していく。

国立保全樹海にやって来たのはアキレスとベリクロ。今こそシーザーを叩く時、そう2人の考えが一致した。そこで2人が見たのは、大量の岩獣と蜘蛛だった。

「リッショウボール使って、2人でシーザーを叩く?」

「あぁ。それが効率的だろう」

そんな時だった、アキレスがふと光剣獣を見かけたのは。

「ここにも。ん、何故、剣の獣と、シーザリアンが戦っているんだ」



第75話「ルアとシルヴェル」



それはまるで野生動物のようだった。意思のある“排除”。そう光剣獣は岩獣と蜘蛛を粉砕していき、シーザリアンたちは光剣獣に向かっていく。

「アキレス」

「あぁ。先ずはシーザーを捜そう」

「手当たり次第に洞窟を回るしかなさそうだ」

地上に降り立ったアキレス達。でもシーザリアンは2人を襲わなかった。意思のある“素通り”。アキレスは思わず振り返った。シーザリアンたちが向かっていくのは、光剣獣だった。

「どういう事だ」

「縄張り争いじゃないか?シーザリアンにとっては、オレ達でも蘇った者の配下でも関係無いんだろう」

「そうだな」

「オレ達にとってはチャンスだ」

「あぁ」

ベリカニアにて。クロムと共に光炎の剣獣と戦っているヘルはふと、ルアが居ない事に気が付いた。戦いながら霊気検索してみれば、シルヴェルも居ない。でもこの場から離れる訳にもいかず、ヘルは小さな焦りを募らせる。一方、海底洞窟のシルヴェルの家にて、シルヴェルとルアとペルーニは光の鏡で、光剣獣とシーザリアンとの戦いを眺めていた。

「封印、解かれちゃった」

ルアが口を開けばペルーニにも険しい表情が伝染するが、シルヴェルは腕を組んで真っ直ぐシーザリアンを見つめる。

「イエンの魔法が破られるなんて」

「でも、何ですぐに破かなかったんだろう」

「んー」

「他の誰かがやったのかな?あ、まさかクラウン」

「そうかも知れないね」

「我と同じく、蘇りし者の力か」

「そうです。今映ってる樹海、隣の国のケルタニアっていう国で、そこに居るんです」

「我に刃向かうつもりか」

「“あの子たち”から感じるの?」

ペルーニがそう聞けば、シルヴェルは真剣な顔でシーザリアンを眺めながら頷く。それから樹海には光剣獣が何体か向かい、大量のシーザリアンを簡単に倒していく。

「あ、アルタライザー」

「あれは何だ」

「ケルタニアの軍の人達です」

「そうか」

「シーザー、倒しに来たのかな」

「でも大丈夫かな、2人しか居ないみたい」

「あんな大量じゃ多分街にもシーザリアンが向かってるし、戦力分散させられてるんだと思う」

そんな時にふとルアは見つめてきたシルヴェルと目を合わせた。

「ルアが望むなら、手を貸してやろう」

「え?」

「あの蘇りし者の力からは、自然の殺気を感じる」

「自然の殺気?」

「人はいつの時代も、自然の猛威には為す術は無い。殺気無く、自然は平等に、理不尽に命を奪う。あの蘇りし者の力からは、そんな自然が意思を持ったかのような殺気を感じる」

「シーザーって人、自然が好きだったのかな」

「王として、あの蘇りし者の力から民を守るのも使命の1つなのやも知れん」

「殺気を持った自然・・・」

「どうする」

そんな問いを投げかける“王の眼差し”に、ルアはゆっくりと決意を固めた。

ケルタニア、国立保全樹海。洞窟から出来てたアキレスとベリクロは落胆している暇も無くシーザリアンを無視して歩いていく。

〈アキレスさん〉

振り返るアキレスと、ベリクロ。アキレスは足を止め、拳銃を突き出すように尾状器官を構えた。何故なら目の前にいたのは光剣獣だったから。張り詰めた空気。

〈私です、ルアです〉

首を傾げるベリクロの隣で、目を凝らすアキレス。光剣獣の額には人の顔を映っていた。

「ルア・・・なのか」

〈この光剣獣は蘇った人の力ですが、この人は味方になってくれましたから、安心して下さい〉

「・・・はあ?」

「サクリアには英雄的な評価を得ているディンクルスがいるし、味方になってくれる人がいてもおかしくないのかも」

「た、確かに、そうかも知れないが。ベリカニアの騒ぎの奴、だよな?」

〈はい。この人はシルヴェル・ゴラーさんです〉

「あ、聞いた事ある。確か1000年前にホールズ文明を築いた、ホールズ王の2世じゃない?」

〈如何にも。我の父は、ホールズ王その人だ。我はシルヴェル・ゴラー・ホールズ〉

「で、ホールズ2世が、この剣の獣が、俺達に加勢すると?」

〈シーザリアンの数が多過ぎて大変ですよね?〉

「それはそうだけど」

〈シーザーは、自然の猛威のように人々の脅威になるから、シルヴェルさんは王として人々を守ってくれます〉

「・・・ルアが、アルテミスが関わっているなら、信用しても構わない」

〈ありがとうございます〉

「じゃあ早速、シーザリアンの足止めを頼むよ」

〈はい〉

シルヴェルの家にて。新たな数十の青カビ色の光が外に向かって飛び立っていく。それはシーザリアンを倒す為の援軍。その光たちを放ってそれから、シルヴェルはふっと笑った。そしてルアに歩み寄り、そっと頬に触れた。

「我々は、力を分け合い、我が物ように使う。それは最早、愛も同じだ。我が生きていた時代、婚姻の儀式ではお互いの宝を交換する。故にその対価として、我らは夫婦(めおと)。それでいいな?」

ルアはゆっくりとペルーニと顔を見合わせた。お互いに目を見開き、言葉を失った。でも確かに、人の力をタダで使おうなんて厚かましい。力を使う代わりに夫婦なんて、ちょっと騙された感はあるけど、その要求には、全く悪意を感じなかった。

「・・・分かりました」

急に何かドキドキしてきた。そんなルアを前にシルヴェルは独り頷き、再び光の鏡を見つめた。

「大丈夫?」

ひそひそとペルーニは問いかける。

「でも、シルヴェルさんの力は、必要だと思う」

「そうじゃなくて、いきなり結婚って」

「でも、何か、悪い気はしない、かな」

「そっか。なら良いんだけど」

「あ、そうだ、他の人にも言わないと」

振り返るシルヴェル。

ケルタニアにて。街を闊歩する光剣獣はふと立ち止まる。遠くに見つめたのはシーザリアン、ボルテクス。すると光剣獣は青カビ色の光を全身に燃え上がらせ、フェニックスダイブのようにボルテクスに向かって突撃していった。そんな状況を見て立ち止まったエテュオンに、別の光剣獣が歩み寄る。

〈エテュオンさん。ルアです〉

ベリカニアにて。光炎の剣獣は突如として戦いを止めた。張り詰めた緊張の中、ヘルとクロムは息を整える。そしてヘルが再び向かっていこうとした瞬間。

〈待って待って、ヘル。私だよ〉

「(うお?え?ん?何だ?)」

〈ヘルもクロムも、心配しなくていいよ。シルヴェルさんは味方になってくれたから〉

「そうなの?」

「(今どこ)」

〈あの海底洞窟。それより先ず、今シルヴェルさんは光剣獣でシーザリアンと戦ってくれてる。今さっきシーザーの封印が解かれてシーザリアンが沢山出てきちゃったから、ヘル達もそっちを〉

「(マジで!何で封印が)」

〈分かんない〉

「とりあえずシーザリアンっていうのを倒した方が良いんだよね」

「(クロムはまだ見た事無いっけ?)」

「うん」

「ねえ」

「(あ、イエン)」

〈イエン。あの〉

「聞こえてた。封印が解かれたって」

〈うん。イエンお願いね〉

「うん、一緒に来るの?」

〈私は・・・もうちょっとここにいる〉

「そっか」

「(イエン、ボク達も連れてって)」

「うん」

〈テリッテ達も行かせるから〉

「(あ、じゃあこの“ボク達モドキ”も連れてった方がいいね)」

そしてパッとケルタニアの国立保全樹海にやってきたイエン、ヘル、クロム、光炎の剣獣。その直後、ヘルは真っ先にボロボロのアキレスと倒れているベリクロに目を留めた。2人と戦っているのは初めて見るタイプのシーザリアンだった。それは赤と青と黄の腕をした、人型のボルテクス。

「(2人共!)」

治癒玉を出しながら駆け寄るヘル。すると普通の光剣獣たちと戦っているシーザリアンたちがロボットのように眼差しを向けてきて、鋭く殺気をぶつけてきた。

「(大丈夫?)」

「いや、ダメだった、助かったよ」

ベリカニアにて。光剣アーサーからのルアの呼びかけで、例のように戸惑うテリッテとアーサー。それから事情を説明していけば──。

「(何だって!?シーザーの封印が)」

〈シーザリアンはアルタライザーの人達もいるし、光剣獣で何とかするから、テリッテ達はシーザーをお願い。さっきイエンとヘルとクロムもシーザーの所に行って貰ったから〉

「うん、分かった」

「(良い感じに体も温まってるしな)」

パッとペルーニがテリッテ達の前に現れ、転移でテリッテ達をケルタニアの国立保全樹海に送る。そんな時にふとルアはシザクの事を思い出した。もし、シルヴェルが居なかったら、シーザリアンはどれほど世界を破壊していただろうと。まさかシザクは、シルヴェルという存在を待っていたのか。──だから、“抵抗による進化”をシーザーにさせない為に、私達をわざと戦わせないように?・・・。

「え」

ヘル達と話す為にと光の鏡の前に立っていたルア。気が付くとシルヴェルにバックハグされていた。まさか2人きりになった今、何かしてくるのかとルアは気構える。

「指揮の才覚も持っているようだな」

「どうなんでしょう。自警団の団長としては、いつもみんなに助けて貰ってばかりで」

「我もそうだ」

「え」

「力があるだけが王にあらず、王とは徳の深さ。民を束ねる者は、いかに民に支えて貰えるか。いざという時に民に働いて貰えないなら、王としての威風もないと。世には様々な王があるが、我は、そんな父のような王でありたいと思っていた」

「すごく良いと思います」

「時に、この者達には伝えなくていいのか?」

そうシルヴェルが光の鏡に手をかざせば、映し出されたのはジュピターズ。

「あ、忘れてました。伝えないと」

「だがこの者達は、まだ目覚めてはいない」

「でもリッショウを、強い魔法を教えてあげました」

「重要なのは武器ではない。戦う意思だ」

「そう、ですよね」

「この者達にとっては、光剣獣も、シーザリアンとやらも変わらないだろう。ここは、放っておいていい」

「きっとすぐに気付くと思います」

「あぁ。それでもいいだろう。この者達には、自分で気付かせる」

ベリカニアにて。殺気なくただ街を闊歩する光剣獣を捕捉し、ササラギとハイロとクワイオが向かっていく。戦いたいという意思に応えて光剣獣が3人と戦いながら、“適度に逃げていく”。その方向はケルタニア方面。やられては別の光剣獣が顔を出し、少し誘導してはまた倒される。それが少し続いたところでやがて、ハイロはベリカニアに越境してきたボルテクスを捕捉する。

「何で!?」

「え、うわまじかボルテクス?」

「どうなってんだ」

思わず戦いの手を止める3人。それから3人が見たのはボルテクスに向かっていく光剣獣。だからこそ3人は余計に混乱していく。そしてそんな状況が方々で見られて、3人は立ち尽くす。

「何なんだよ、これ。何で剣の獣が、シーザリアンと」

「蘇った者同士の・・・戦争?」

「ていうか、シーザーの封印解かれたって事だよな?ヤバいよな、ソウタどうする?」

「どうするって・・・・・」

「イエンじゃないとどうにも出来ないから、連絡取るしかないわよ」

「だよな」

〈あの、皆さん〉

ゆっくりと振り返るササラギ達。

〈ルアです。今の状況について説明します──〉

ケルタニア、国立保全樹海。人型ボルテクスがテリッテによって粉砕された直後、5体のボルテクスが人型ボルテクスに変化して、そんな状況をアーサーは鼻で笑う。

〈──なのでジュピターズの皆さんもシーザリアンの殲滅をお願いします〉

そんな“一斉連絡”が、散らばっている全てのジュピターズに伝わったところで、1人森の中、シュウズンは膝から崩れ落ちた。そして直後に思い切り地面をぶん殴った。

「ざけんなよ!」

海底洞窟。光の鏡の前でルアが安堵すれば、シルヴェルはそんな彼女の体の向きを優しく自分に向かわせた。

「生真面目な女だ」

「どうせ、連絡されるでしょうから。それに、一緒に戦ってくれている方々ですし」

そっと顎を上げられるルア。シルヴェルは真っ直ぐルアの目を見つめ、少しずつ顔を近付けてきた。だからルアは、覚悟した。その直後だった、戻ってきたペルーニにシルヴェルが顔を向けたのは。キラキラした目をしたペルーニ。でもシルヴェルは気まずそうにルアから離れた。

「え、いいのに。私、応援するよ?」

「だったら・・・2人にしてくれ」

意外と人間らしく可愛いところもあるんだ。そうペルーニは嬉しそうに家を出ていった。パートナーのルアが幸せならそれが嬉しい。そんな時だった、海底洞窟の広場にジュピターズの1人がすっ飛んで来たのは。シルヴェルの家の前、ペルーニと見つめ合ったジュピターズが人間に戻ると、その男はシュウズンだった。

「シルヴェルに会わせろ」

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