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逆襲のアルテミス  作者: 加藤貴敏
第4章「ウォー・ゲーム・オブ・ハザーズ」

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「魔王の降臨」後編

「ソウ、タ・・・」

「座ってろ。動くなよ?くそ、こんなに深い傷、どうなってんだよ」

ササラギはただシルヴェルを見上げる事しか出来なかった。本能で異変を感じていた。あれは次元の違う何かだと。次々とジュピターズが墜落していく。こんなに強くなったのに。──何が、違うんだ。

「うおおおおお!!」

「・・・シュウズン」

傷付いたハイロを背にして、ササラギとクワイオは顔を見合わせて頷いた。リッショウブーストを発動させて飛び上がり、強化した尾状器官を突き出していく。でもそれを阻んだのは青カビ色の光剣。13人のジュピターズに合わせたような13本の光剣。ジュピターズのように、シルヴェルのように、瞬間的に相手の動きを予測して、瞬間的に斬りかかってくる。

「くっ・・・」

1番速く動かせる電気爪状態の尾状器官とクウカクの壁で防ぐのがやっとで、光剣の耐久力には底が知れない。その光剣そのものは果たしてシルヴェルなのか。でも光剣を破壊したとして、シルヴェルにダメージがあるとは思えない。

「(何か、ガルゼルジャンみたいじゃない?)」

ジュピターズと光剣との戦いを見渡しながら、ルアとヘルはただ空中で立っているシルヴェルを眺める。

「(あの剣、強そうだよね。でもボク達も行かなきゃ)」

「待って。きっとすぐにアルタライザーが来るよ」

「いや、来ない」

そう声をかけてきたのは傷付いて休んでいるジュピターズの1人。

「え」

「ここはベリカニアだ。アルタライザーは、国境を越えない」

「(じゃあ、アーサー呼ぼう)」

「うん、ちょっと待ってて?ヘル、ちゃんと待っててよ」

「(分かってるよ。ボクはもう死ねないからね)」

ルアがパッと消えた一方、シュウズンは超重火状態の尾状器官から、最高火力でレーザービームを撃ち出した。それはもし光剣がかわしてもシルヴェルに届けばいいというもの。その思惑を知ってか、光剣はその身を挺してレーザービームに飛び込んだ。

「うおおおおお!」

周囲の空気すら焦がす超火力の熱線。それは光剣をも押し通してシルヴェルを襲った。その一瞬、シュウズンは手応えを感じた。しかしそれは一瞬だった。横からやって来た複数の光剣が次々とシュウズンを通り過ぎていった。尾状器官を弾かれ、腰を斬られ脚を斬られ、そして胸を貫かれた。

「ぐあっ」

「シュウズン!」

光剣が引き抜かれれば、ゆっくりとシュウズンは墜落していき、ドスンと虚しい音を響かせた。シュウズンに勝った光剣がシルヴェルの下に戻れば、シルヴェルは腕を組んだまま空中で立ち尽くす。

「ただ弱者というだけ。我を伏せんと戦う者全てを、我は讃える」

シュウズンは土を握り締めた。血液が、体から溢れていく。何に負けたかと言えば、それは恐らく威厳。そうシュウズンはゆっくりと起き上がり始める。

「負けねえ、オレは。ただ、負けたくねえ・・・くっそ、体が重たい」

そんな時だった、何なのかは分からないが、緑色の光の球が自分の周りをクルクルし始めたのは。

「ん?」

「(大丈夫だよ?回復魔法だから)」

「・・・まじか」

ふとシュウズンはジュピターズを見渡す。すると傷付いた他のメンバーも皆、緑色の光の球に傷を癒されていた。

「(もうすぐアーサー達も来るからね)」

「・・・そうか」

首を傾げたのはシルヴェル。そしてその眼差しはヘルへと向けられ、ヘルはシルヴェルと遠く見つめ合った。ヘルはスッと、ポーチから“聖なる炎の濃縮魂子”を取り出す。何故か訪れる沈黙。生きてるように、シルヴェルの隣で光剣たちがその剣先をヘルに向けてくる。号令は無かった。きっとシルヴェルには殺気は無かった。でも5本の光剣たちは一斉にヘルに襲いかかった。濃縮魂子を使ってヘルがフェニックスソウルを強化した直後、光剣たちは急に減速した。

「(フェニックスダイブ!)」

突撃しただけで空気が歪んで熱波が広がって、木々を焦がしていく。それはシュウズンでさえ思わず身を屈めてしまうほどだった。でもそれよりも目を奪われたのは、光剣たちが砕かれる光景だった。あんなにも硬く、狂暴なものがまるでガラスのように消えていくのがスローモーションのように見えた。

「ワオーーーン!!」

ヘルの雄叫びに、光剣たちが野良犬のように殺気立っていく。シルヴェルは特に何もしないが、光剣たちが勝手に襲っていくと、それからヘルは大爆発した。

「(フェニックスエクスプロージョン!)」

光剣たちが爆発に巻き込まれていけば、やがて澄んだ空気の中に光剣たちの姿は無かった。そんなヘルに、シルヴェルは頷いて、音の無い拍手をして見せた。

「何時の世も、美しい娯楽だ」

「(まさか、娯楽の為に、モンスターを作ってたの?)」

「如何にも」

「(そんなの娯楽じゃないよ!)」

「我が生きていた時代では、剣がぶつかる音が癒しであった」

「だったらお前が戦え!」

シュウズンがヘルの近くまで上昇してきてそう言うが、シルヴェルは組んだ腕を崩さなかった。

「お前達を殺してしまったら、娯楽も無くなる。我が剣は、お前達を殺そうとしていたか?手を抜かれていた事も知らずに地に伏していたか」

「何だと・・・」

その直後、シルヴェルの全身から青カビ色の光が溢れ、周囲に散らばった。

「我をもっと楽しませろ」

そして出現したのは、青カビ色の光で出来た5メートルくらいの“獣の姿をした剣”たち。その数はざっと見て30体くらい。それから顔は剣、足も剣、でも形は四足歩行の光剣たちがまた一斉に飛び出していく。

「気を付けろ。シルヴェルは、モンスターを通してオレらの戦闘スタイルを学習してる」

「(え、じゃあ、あれってボク?)」

「かもな」

“光剣獣たち”はどことなくフェニックスダイブのように、青カビ色の光を纏って突撃してきて、それをヘルは魔法の手で弾き飛ばす。

「(へへっ全然弱いじゃん)」

「・・・いや、お前が強すぎるんだろ」

「(よお!楽しそうだな!)」

「(アーサー!)」

ヘルとシュウズンが振り返れば、そこに居たのはアーサーと合体したテリッテと、シャークと合体したクロムとルアだった。テリッテとアーサーがシルヴェルに目を留めれば、蒼白く輝く炎で武装した尾状器官で真っ先に殴りかかった。するとすぐさま光剣獣たちがテリッテを邪魔していくが、ロケットのように突撃していくテリッテという存在だけで光剣獣たちは跳ね返され、そのまま蒼白く輝く炎で武装した尾状器官の拳はシルヴェルをぶん殴った。しかし目を見開いたのはテリッテとアーサーだった。シルヴェルは青カビ色の光を纏った片腕で、テリッテの尾状器官を受け止めていた。すぐさま殴り返すシルヴェル。その拳をすぐさま弾き返すテリッテ。そんな攻防の末に、最後の一撃でシルヴェルとテリッテはお互いに吹き飛んだ。

「(強えな、最高だぜ!お前の名前は?)」

「我はシルヴェル・ゴラー」

「私はテリッテです。こっちがアーサー」

「・・・顔が無い」

「今は合体してるので」

「人馬一体、か。ほう」

ふと手に青カビ色の光を集めたシルヴェル。そして素早くそれをどこかに放てば、それは20メートルほどの青カビのドラゴンとなり、更にシルヴェルがパッと消えれば、ドラゴンの頭の上に転移した。直後にドラゴンは青カビ色の光剣のような鎧を纏い、無数の鱗を周囲に漂わせた。光剣獣と戦いながら、ササラギはそのドラゴンにふと目を向ける。この前のドラゴンとは違い、光剣の鎧を纏ってパワーアップして、更に無数の鱗も光剣のように光っていた。

「ソウタ!」

「単独行動は危険だ、背中を守り合うぞ」

ササラギ、ハイロ、クワイオがそれぞれを守りながら、向かってくる光剣獣を追い払うが、ふとササラギは確信した。──こいつら、手加減してやがる。

「くそ、リッショウブーストが切れた。ソウタ、リッショウボール作るから時間稼いでよ」

「いや、無駄かもな」

「え」

「手加減されてる。例えリッショウボールを使っても」

「でも使えば使うほど慣れるんだよな?」

「それはそうだけど」

「2人の分も作るからさ」

「・・・分かった」

ササラギ達を囲む5体の光剣獣たち。クワイオがリッショウボールを作り始めても、光剣獣たちは威嚇するオオカミのようにゆっくりと円を描く。ササラギはふと感じた。ハイロが電気爪状態の尾状器官から、電気をちらつかせているというその緊張を。その緊張という隙を突くように光剣獣が1体飛びかかってきた。ハイロが竜装状態の尾状器官で対抗するが、光剣獣は光のようにすばしっこく、それからまるで遊ばれるように光剣獣はまた距離を取った。

「何なのよこいつらっ」

そんな時だった、どこからともなく青黒い光球が弾丸のように飛んできて、光剣獣の1体を強く吹き飛ばしたのは。

「大丈夫?」

「あなたは?アーサーの仲間?」

「うん。オレはクロム。一緒に戦ってるのがシャークだよ」

強い相手を前に、今まで出していなかった本気を出したように光剣獣たちがクロムに向かっていく。しかし宙を漂う青黒い光球たちも“追尾機雷”かのように光剣獣を襲い、宙に浮くクロムは余裕の闘志を見せていた。

「なあ、その強さまでリッショウを高めるには、どれくらいの時間がかかるんだ」

「んー。オレの場合は、4ヶ月くらいなのかなぁ」

「リッショウボール使っただけではそうならないのか?」

「うん、そうだね。日々の訓練が無いと分からない感覚とかあるし」

「そうか」

リッショウブーストがスッと消えた。ササラギはそれを自覚し、同時にクロムとのリッショウの違いを決定的に感じた。ブーストが切れた途端、リッショウは限界値ではなく“現在値”に戻るという事を。

「オージュン、やっぱりリッショウボール要らない」

ふとササラギは思い出した。それはサッカーの試合。ボロ負けした試合。すぐに、そして簡単に上手くなるにはどうすればいいか。そればっかり考えていた。でもその時、監督は言った。

「簡単に上手くなった人なんか居ない」

ササラギは前に出て、光剣獣と対峙した。光剣獣の1体は威嚇するオオカミのように、でも闘志に誘われたチンピラのように前に出た。

「ソウタ」

「大丈夫だ。何かあったら回復魔法をして貰えばいい」

きっと俺達は、ジュピターズの力をまだ使いこなせていない。ただ強くなっただけ。それじゃ本当に強くなったとは言えない。そんな時、ドラゴンの頭の上で、シルヴェルは人知れず微笑んだ。

「はああっ!」

テリッテは蒼白く輝く大弓から、蒼白く輝く光矢を放った。ドラゴンの鱗たちが瞬時に密集して盾となり、テリッテの光矢はその勢いを虚しく殺された。

「(だったらこっちだ)」

テリッテは蒼白く輝く炎で武装した尾状器官を鋭く固めていく。それはまるで尾状器官がエクスカリバーかのよう。それから蒼白く輝く炎の翼を吹かして突撃していくと、当然のようにまた鱗たちが盾となり、その衝突は凄まじく空気を震わせた。

「(うおおおおっ)」

力と力の押し合いが続くと、やがてパキパキと鱗たちの盾に亀裂が生まれた。しかし鱗たちの盾が破壊されようとなれば鱗たちがもっと集まってきて、また同時にテリッテは炎の翼をもっと吹かしていく。その直後だった、ドラゴンの体から溢れる白い霧のような光がレーザーとなり、レーザーと爆発でテリッテを襲ったのは。

「(ぐっ)」

弾き上げられた尾状器官。更にはその隙を突くように、レーザーは連射された。連続的な爆発に吹き飛ばされ、テリッテは墜落し、木に激突した。

「(くそお・・・)」

「テリッテ達!」

すぐにルアが駆け寄り、ネイチャーソウルの力で回復させていく。

「(カンディアウスにも勝てないんじゃ、勝てる訳無いよな)」

「(ルア、イエン呼んで来て?)」

「(いや待て)」

「(え)」

「(あいつは、遊んでやがる)」

「(どういう事?)」

「私も何となくだけどね?シルヴェルさんからは強い殺意を感じないの。だから、多分話せる相手だと思う」

「(けどその前にドラゴンを何とかしないと)」

「(だから、あいつは良い修業相手って事だ)」

「(えー、でも)」

「(もうちょっとなんだ、何かが掴める気がしてんだ)」

仕方ないという眼差し。ヘルとルアはそう顔を見合わせる。

「おらあっ・・・おら!」

シュウズンは無我夢中で光剣獣に向かっていく。電気爪状態と竜装状態の尾状器官を振り回し、超重火状態の尾状器官からレーザービームをぶっ放していくが、光剣獣は“適度にやられ、反撃していく”。それからシュウズンが光剣獣を殴り飛ばすとその光剣獣は消えたが、すぐに“見ていた光剣獣”が前に出ていく。

「ふざけんなよ。遊びやがって!くそ!」

とっくにリッショウブーストは切れている。しかしシュウズンは大きなダメージは負わず、どちらかというと“勝ち”を重ねていく。まるで、ジュピターズの再生力すら見透かされているかのよう。だからこそシュウズンは腹を立て、電気爪をバチバチと鳴らしていく。それからまたひたすら光剣獣をボコボコにしていく最中、ふと反撃をくらって地面を転がった。その怒りをぶつけるようにシュウズンは地面を殴った。

「(うおおおっ)」

尾状器官と鱗たちの盾がドカンッとぶつかり、鱗たちがワッと弾け飛ぶ。そのままドカンドカンとテリッテが鱗たちの盾を削り飛ばしていくと、霧のような光がレーザーを放つが、テリッテは素早く炎の翼でガードして、短い方の尾状器官から蒼白く輝く衝撃波を放って更に鱗たちの盾を吹き飛ばしていく。ふとようやく、テリッテとアーサーは吹き飛んでいく鱗たちの向こうに立つ、シルヴェルと目が合った。それでもシルヴェルはただテリッテを真っ直ぐ見つめていた。直後に光剣獣の3体に鱗たちが集まり、体高5メートルくらいの光剣ドラゴンが出来上がり、その3体が同時に光のレーザービームを吐き出した。素早くかわしていくが、鱗たちがその邪魔をし、霧のような光のレーザービームがテリッテの動きを鈍らせる。そこに1体の光剣ドラゴンが霧のような光を纏って突撃していき、その凄まじい自爆でテリッテを襲った。

「テリッテ!」

墜落していくテリッテに向けて治癒玉を撃って、ルアはヘルと頷き合った。真っ先に突撃していくヘル。同時にルアは上空に転移していき、プリマベーラのシリンダーに装填している光と火の濃縮魂子を解放した。

火光矢(スヴェンジャストレ)!」

反動でルアが煽られると同時に、燃える光矢が一瞬でブスンッと青カビのドラゴンの体に突き刺さった。大きくよろめく20メートルの巨体。

「フェニックスダイブ!」

それから同時にヘルが突撃していくが、それは光剣ドラゴンにタックルで阻まれ、大爆発と共にヘルが吹き飛んでいく。更にもう1体の光剣ドラゴンがヘルを追いかけていくがその瞬間、ヘルの目の前にパッとルアが現れ、そして光剣ドラゴンと共にパッと消えた。ルアが現れたのは、シルヴェルの目の前だった。更にまた瞬時にパッと消えるルア。光剣ドラゴンだけを残して。大爆発がまた青カビのドラゴンをよろめかせる。遠くでドラゴンを見つめるルア。爆風が消えるその中に目を凝らすが、そこにシルヴェルは居なかった。

「こっちだ」

振り返るルア。シルヴェルは、ルアの真後ろに居た。

読んで頂きありがとうございました。

新たな蘇りし者との戦いが本格的に始まり、ジュピターズもルア達も翻弄されてますね。果たして、その時シザクはどうしてるんでしょう。

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