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逆襲のアルテミス  作者: 加藤貴敏
第4章「ウォー・ゲーム・オブ・ハザーズ」

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「リュナーク&ホーン」後編

「こちらホーン、目標は殲滅した。あぁ。これから帰投する」

「・・・ねえホーン、あれ」

リュナークの声に振り返ると、指が差された方ではボルテクスの死体があった。

「何だ」

「いやだからあれ」

するとリュナークは何やら走り出し、ボルテクスの死体を通り過ぎていった。

「おい、何やってるんだよ。逃げるな」

リュナークが破壊された建物の裏に消えていったと同時に反対側からは1人の男が出て来て、男はすぐさまカルバーニに捕らえられた。

「放せよ!」

「何してたんだ?おーいリュナーク」

「あ、居た。さっき、ボルテクスに何かしただろ」

「え、そうなのか」

「何してたんだ」

「・・・・・サンプル、採ってるだけだ」

話を聞けば、どうやらそいつはジュピターを開発した民間企業の関係者らしい。そしてジュピターのアップデートの為にボルテクスの体を狙っているのだそう。

「あんたらアルタライザーも、こういう事してるんだろ?」

「えっと、さすがにボルテクスの遺伝子は、要らないかな。敵じゃん」

「人知を超えたものに立ち向かう為に、それを知り、それを取り入れる。人間はいつもそうしてきた。ウパーディセーサはそういうものだろ」

「まあ、そうか。でも、シーザリアンだしなぁ。安全性に問題ありそうじゃない?」

「リスクはつきものだ。それでも余りある利益がある。今のジュピターじゃ高度進化個体に勝てない。ならこうするのが1番だ。政府は、ウチのウパーディセーサ開発を認可してるんだよな?」

「それは、そうなんだけどさぁ」

カルバーニが静かに男を放すと、男はやれやれといったように溜め息を見せつけた。

「まさか、スファイザントも取り込むのか?」

「あぁ。強くならなきゃ、志願してくれた者達に面目が立たない」

「苦労してるんだな」

ボルテクスの死体から細胞を採取する男を後にして基地に戻ると、相変わらずアキレスはモニターに釘付けだった。

「戻ったぞ」

「ん、あぁ。ホールズを越境していったシーザリアンは殲滅されたが、被害が大きいそうだ」

「オレ達は、シーザーに勝ってるのか?」

何気なくそう問いかけたが、アキレスは応えなかった。

「で、でもさ、負けてはないんじゃないかな?ドロー続き、みたいなさ」

「ドロー、か」

アルタライザーは、確かに進化してきた。高度進化個体にも対応した。我々だけじゃなく、周辺国からもそれぞれシーザリアン撃退のニュースが増えてる。だが、何だ、この先の見えない感覚は。不安じゃない。だが、この戦いの終わりが、全く見えない。

「アキレス」

「何だ」

「シーザーを直接叩けないのか?」

するとアキレスはふっと笑った。

「・・・行くか」

自信を感じていた。今なら、行けるかも知れないと、直感的に思った。アキレスが皆に行く気があるかと尋ねれば、全員の意思は一枚岩のように固まった。

「街はオレ達第2に任せてよ」

「思い切り暴れてくるといいわ」

「あぁ、頼んだ」

そして、樹海の前に輸送車は停まった。

「おい、あいつ」

輸送車を降りて早々、樹海を前に出会ったのは例の見知らぬ男だった。

「まさか、ジュピター?」

「え?」

「・・・・・違うのか。シーザリアンの周りをうろついてるのって、てっきりそうなのかと」

「リュナークの考え方はおかしくないけど、きっと、根本的に、違う」

エテュオンがそう言う間にもその見知らぬ男は樹海に入っていったので追いかけ、やがて迎え撃ってきたシーザリアンたちと戦闘していく。

「ねえ、目的は?」

見知らぬ男は応えず、ただ剣でシーザリアンを斬り倒していくが、それでもリュナークは見知らぬ男に張り付いていく。

「リュナーク、しつこいな」

「一先ず放っておこう。シーザーのポイントまで突き進むぞ」

シーザーのポイントに近付くに連れて、進化個体の数も増えてきた。それでも相変わらず、見知らぬ男は偶然にもオレ達と共闘していて、何だか次第にオレもその男が気になってきた。

「シーザーの洞窟は、あそこだ」

「ボルテクス!」

真っ先に飛んでいったのはリュナークだった。轟音を鳴らして一瞬で空気を突き抜けて、銃撃のように帯電爆発鱗を発射した。カーボンブーストによって細胞から生まれ変わった鱗は、磁力の反発力で増した勢いに乗って、ボルテクスの硬い外殻に瞬く間に突き刺さっていった。それから鱗の爆発でボルテクスがバラバラになった直後、次に現れた2体のスファイザントにはユテスとエテュオンが向かっていく。ユテスの尾状器官がスファイザントの腹袋を掴み、ゼロ距離で水蒸気爆発を放てば、腹袋は一瞬にして破壊され、同時にエテュオンは尾状器官の先に作り出した“アイスブレード”で、華麗にスファイザントの足を切断した。それはこの前エテュオンが演習場で言っていた、“超低温”と“炭素”を合わせて生成した、超硬度の剣。

「アキレス、ここはオレ達に任せて」

「分かった」

「オレも行く」

アキレスは頷いた。共に突入した洞窟の中は当然だが真っ暗だった。同時に不気味な静寂に包まれていた。洞窟の中にもシーザリアンを配置して然るべきだが。最奧に着いたような気がして、一旦立ち止まった。それからアキレスは尾状器官から強い光を放った。その瞬間に分かった事実は、そこには何も無いという事だった。

「逃げられたのか」

「なら、何故シーザリアンはここを守っている」

「違う洞窟に移動したという事か」

「それなら、どうやって捜す」

「・・・最も効率的に考えるなら、独立自警団アルテミスに、要請する事だろう」

「何故アキレスは、あの独立自警団に懐疑的なんだ?」

「いや、そんな事は。ただ、あの者達の力は強すぎる。英雄のように語られてるが、俺は、ゼーレ帝国のあの有り様を勝利として認めない。だが、俺達は独立自警団アルテミスには到底及ばない」

「そうだな。だが、敵じゃないだろ?」

「・・・あぁ。だが、出来る事は自分でやる」

「え?」

「ヘルが言っていた、魔法で目を飛ばすと」

「出来るのか?」

「やり方は想像でしかないが、想像が魔法のトリガーならそう難しくない」

「そうか」

洞窟を出ると、リュナーク達は待機していた。そして皆、同じ方向を眺めていた。

「どうした」

「急にシーザリアンが出なくなって、そしたら向こうから音がしてさ。とりあえずアキレス達待ってた。シーザー倒したの?」

「いや、居なかった」

「え」

「だがシーザリアンがこの樹海に居るなら、シーザーは少なくとも樹海からは出ていないと思う」

「んー」

「とにかく行ってみよう」

「あの男は」

「もう先に行っちゃった」

衛星から座標を確認したところ、そこはシーザーの居た洞窟から5キロほど南下した地点だった。景色は変わらないそこにいたのは、アーサーとルアとヘルだった。

「何でお前ら」

小さな崖の上で独立自警団はシーザリアンと戦っていて、高度進化個体を相手にしても楽勝だった。

「(シーザリアンとかいってニュースも増えてきたから来たんだよ)」

「まぁそれも今日で終わる」

「どういう事だ」

「俺達が、シーザーを倒すからだ」

青く燃えるアーサーはボルテクスの電気爪を弾くと、尾状器官でその首を掴んで豪快にその巨体をぶん投げた。

「どうやって居場所を突き止めた」

「それは、これです。この光は、蘇った人の霊気を探知出来るんです」

「お前が作った魔法か?」

「いえ。仲間が作ったものです」

ふと見知らぬ男の動きが目についた。男は崖下から手を伸ばし、瞬く間にルアが持っていた光を引き寄せ、剣で斬って消滅させた。

「あ!

 (あ!何で!?)」

その一瞬の一太刀で、アーサー達の目線はその男に集中した。

「ていうかお前!そもそも誰だ!」

「お前達には関係無い」

アーサーに男が応える間にもシーザリアンはアーサー達を襲っていく。

「お前、まさか、シーザーの手下なのか?」

「(シーザー本人が岩だから、シーザーを守る部下が居てもおかしくないよね)」

そんな疑念に満たされた眼差しが男に集中する。アーサー達だけじゃなく、アキレス達も男の得体の知れない正体に警戒し始めた。だがその疑問は余計に混乱した。何故ならシーザリアンは男にも襲いかかったから。オレ達は、ただシーザリアンを倒す男を見ていた。

「いや、そもそもこいつはシーザリアンと戦っていた。一体何者なんだ」

そうアキレスが皆に聞こえるように言うが、その男はやはり何も喋らず、そして何やらアーサーを気にしているような素振りを見せていた。

「(えー、ルア、どうしよ。もう1回作って貰いにいく?)」

「いや、ここら辺なのは確かなんだ。後は検索したら分かるんじゃないか?」

「(そうだね)」

「まだその時ではない」

「あ?」

急に男がそう言えば、周囲の地面から複数の岩を浮かせてアーサー達に飛ばしていった。その行動に、オレはまた混乱したが、その男が何かの目的を持っている事は何となく分かった。

「どういう意味だ、おい」

クウカクの壁に跳ね返され、アーサー達には届かなかった岩がゴロゴロと落ちても、アーサーとその男は真っ直ぐ睨み合っていた。殺意は無いが敵意は芽生えた。でもその瞬間にもボルテクスは雄叫びを上げてアーサーに向かって飛んでいく。

「今はまだ、シーザーを討つ時ではない」

「はあ?何だよそれ」

「(今はまだって、何で分かるの?)」

しかし男は応えなかった。アーサー達も明らかに戸惑っていた。

「被害は確実に増している。シーザリアンも進化している。それでも戦うなと?」

エテュオンが問いかける。

「このままではもっと強いシーザリアンが生まれる事は目に見えている。そうなる前に手を打たなければ」

「そうだよ。ホールズの外にも出ちゃったんだから、このままほっとくなんて出来ないよ」

「(もしかして、お前も蘇った人なの?)」

ヘルの鋭い問いにはオレ達も、アーサーも釘付けになった。この世界は今、昔の時代に生きていた者が蘇り、その強すぎる力によって翻弄されている。何の為に蘇ったのかも分からない。でも全ての蘇った者が、この世界の敵ではないのかと何となく思っていた。

「私は、シーザーとは違う」

そんな時だった、ボルテクスが1体その男に襲いかかった途端、男は飛び上がってボルテクスの頭を掴み、それだけでその動きを止めたのは。そしてそれから、ボルテクスの全身には深紅色の筋が浮かび上がると、男をスファイザントから守った。

「まさか・・・」

更に深紅のボルテクスは電気爪を深紅に染め、発する電気そのものも深紅に染めた。

「操ってるのか?」

深紅のボルテクスはしなやかに電気爪を伸ばしてアーサーを襲った。でも青く燃えるアーサーの尾状器官の手でそれは簡単に弾かれ、逆に深紅のボルテクスはアーサーの燃える光槍に撃ち抜かれると簡単にバラバラになった。

「まだまだ、これでは非力だ」

「お前の目的はなんだ。世界の敵なのか?」

アキレスが問いかける中、オレは操ったボルテクスが倒されても少しも悔しがらない男の態度を見ていた。

「世界の敵・・・それを見定めるには、まだ早い」

「(まだって・・・まるで、未来が見えてるみたい。そういう力?)」

「ねえあれ」

ルアが指を差した方へとオレも何となく目を向けた。それはシーザリアンの群れだった。通常個体、進化個体、そして高度進化個体。見ただけでは数え切れないほどの、おぞましい数だった。

「(やばすぎ。これじゃ、シーザーどころじゃ)」

「エテュオン、デリスに伝えてくれ。群れが街に行くと。俺達だけじゃ、防ぎ切れない」

「分かった」

単体では脅威でなくても、生物というものの強さは群れで決まる。そう博士も言っていた。瞬く間に、シーザリアンの群れは動き出した。大地が見えないほどの群れに向かってアーサーが青い炎を放っても、シーザリアンは止めどなく湧いてくる。

「くそ、キリがない。ルア、すぐにシーザーを見つけてくれ」

「うん」

オレは尾状器官から最大限の炎を放っていく。次第に尾状器官は白く染まり、それで貫けばシーザリアンは簡単に燃えて切り裂かれていく。でもそれから、オレは群れに押し潰された。生物のようなシーザリアン。でもその重量感はまるで津波のように意思はなく、同時にその大きな力に為す術はなかった。

「(・・・・・大丈夫?)」

オレに乗っかっていたスファイザントが飛んでいった。起き上がって周りを見ると、シーザリアンの群れはなくなっていた。でもそれは殲滅されたのではないと直感した。オレを助けたのは、ヘルだった。

「群れは」

「(行っちゃった。街に)」

「くそ。皆、無事か」

「・・・あぁ」

「デリス達は?あの群れじゃ」

「おーい」

「・・・あ、デリス達」

「まずいぞ!群れが街に」

「無事だったんだ」

「エテュオンの魔法の壁で何とかな」

「すぐに向かおう」

「助かった」

ポカンとしているヘルに一言告げると、オレ達は手分けしてシーザリアンの殲滅に向かった。オレはカルバーニとペアになって移動し、ただ見えているシーザリアンを片っ端から殲滅していった。

「ホーン、その道に壁作ってくれ、避難通路にする」

「あぁ」

とにかく壁を作り、市民を守りながらシーザリアンを誘導して叩く。そんな戦いがしばらく続いた。

「ホーン、上だ!」

ビルからスファイザントが飛び降りてきた。でもオレが近くにいるのにスファイザントは炎のレーザービームで建物を破壊した。さっさと超高熱の尾状器官でスファイザントを倒して建物を燃やす火を消火したが、建物は無残にも崩壊した。

「今回の襲撃のターゲットは、恐らく、街か」

「そうかも知れないが、オレ達を遠ざけたいだけなんじゃないか?」

「そうだな。お前達が来たから、その抵抗としてこの群れか。くぅー、やっぱりキツいな、シーザーの野郎」

「甘かった」

「え?」

「オレが、提言した。シーザーを叩こうと。強くなってると自信があった」

「確実に強くなってるよ。ただ、シーザーの力が上だった。隊としてな」

これは、明らかな敗北だった。オレ達アルタライザーはまだまだだったという事だ。だが独立自警団アルテミスはどうだったんだろう。あの者達はシーザーの居るポイントに残っていたはず。魔法で居場所を特定して、叩いたのだろうか。

「・・・粗方、群れは殲滅出来たな」

「アキレス達は?」

「こちらカルバーニ。ホーンとオレはクリアした。皆の状況は?」

アキレス達と合流して、第2チームとも連絡を取って、ようやくケルタニア内の群れの殲滅は確認された。ケルタニア外に出てしまったシーザリアンはその国で何とかして貰うしかない。

「アーサー達、シーザー倒したのかな?」

「戻って確認する?」

「またシーザーが群れを作ったらどうするの」

「どうやって聞いたら良いかな?」

「単純に連絡先なら、SNSのアカウントじゃないか?」

「さすがに気付いて貰えるか分からないだろ」

独立自警団アルテミスのSNS公式アカウント。そこにダイレクトメッセージを送ると、次の日には会いに来た。ルアとヘルをケルタニア軍本部の応接室に案内すると、ルアとヘルはまるで一般人のようなテンションと緊張を伺わせていた。オレはその第一印象には少し驚いた。

読んで頂きありがとうございました。


アルタライザーも着々と強くなっていきますが、戦いはまだまだ終わらないようですね。果たして見知らぬ男の発言の真意とは。

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