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逆襲のアルテミス  作者: 加藤貴敏
第4章「ウォー・ゲーム・オブ・ハザーズ」

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「ジュピター」前編

「シーザーは、見つけられませんでした」

「(何か、ダミーがいっぱい出来ちゃって。シーザーっぽい岩がいっぱいあって、分かんなくなっちゃったんだよ)」

ふとヘルはベリクロと目を合わせると、ちょっと嬉しくなった。四足歩行の体は、やっぱりどうしようもなく親近感があるから。

「あの魔法の光でも分からないのか?」

「後でまた作って貰って、もう1回捜してみます。でももし、ダミーにも蘇った人が持つ特殊な霊気が纏わせてあったら見分けはつかないと思いますけど」

「(ねえ、シーザーって最初、どうやって人前に出てきたの?)」

「どうやって」

「(普通の人間の姿だった?)」

「確か、そうだったよな?自分はシーザーだって名乗ってさ。それで、確か、世界を浄化するって言ったんだ」

「(世界を浄化・・・)」

「あぁ、それでシーザーが姿を消して、モンスターが現れた」

「(そうなんだ。じゃあさ、あの岩になったシーザー、外に誘き出せないかな)」

「どうやって?」

「(んー・・・・・どうしよ。あっ思いついた。何か魔法の壁でさ、閉じ込めちゃうとか。岩の周りの霊気を遮断したら出てくるかな)」

「そんな事が出来るのか」

「多分、イエン達なら出来るよ。ボク達の仲間で、エルフなんだ」

そしてルア達は、またシーザーの居る樹海に戻ってきた。イエンと共に。更にそこで待ち合わせてしている知り合いのように立っていたのは、エテュオンとティヒム。

「この2人がアルタライザーの、エテュオンとティヒムだよ」

真顔でイエンが頷くと、エテュオンも真顔で頷いた。

「すごいわね。エルフって、みんなそんななのかしら」

「ううん。私は、マガツになってこうなった」

「(エルフにも種類があるんだよ)」

「そうなのね」

ルアは横目で見ていた。ヘルの態度は、まるで女の子に浮かれる男の子だと。ていうか何でこんなメンバーになったのか。それは話を聞いていたティヒムが行きたいと言ったから。するとエテュオンも情報共有の為にとついてきた。

「シーザーの霊気って、本当に遮断出来るの?」

「シーザーのというより、霊気を遮断する壁を作るのは出来ると思う」

イエンは表情の起伏が小さい。という以前に、言ってる事に未だ現実味が感じられない。出来ると思う、その言葉にエテュオンはリアクション出来なかった。それからとある洞窟の前。周りには砂漠に棲む野生動物のように警戒してくるシーザリアン。だけど何故か襲ってこないという不気味な空気が流れていて、エテュオンはキョロキョロしていた。



第71話「ジュピター」



「(イエン、出来そう?)」

「多分」

曖昧な返事。それがイエンという人物の普通なのか。エテュオンはまた、ただ何となくイエンの後ろ姿を見ていた。そしてイエンが洞窟に手をかざす。

「・・・うん、出来た」

近付かず離れずカサカサと動き回るシーザリアン。勿論、洞窟の見た目は何も変わっていない。

「ど、どうなったの?」

不安げにティヒムは洞窟に近付くが、洞窟に入ろうとした途端に見えない何かにぶつかって振り向いた。

「何かあるわよ!」

「これで霊気は遮断した。でも、この中に居るのが本物かは分からないけど」

「え、そうなの」

「(ダミーってどれくらいなんだろう)」

「結構いっぱい居るみたい」

「(何か効率的な方法ないかなー)」

「だったらイシュレ達呼ぶ?」

「でも忙しいでしょ?」

「(あ、じゃあ、森ごと囲んじゃう?)」

「いや、この森は70キロ平方メートルはある。さすがに無理じゃない?」

しかしイエンは慌てる事なく、森を見渡した。カサカサと動き回るシーザリアン。

「・・・いけそう」

「(さすがイエン)」

「ほ、本当かしら」

顔を見合わせるティヒムとエテュオン。イエンはとっても不思議な人物だと、エテュオンは思った。その直後、イエンの髪はスーっと真っ白になった。その途端、リッショウ特有の気迫と存在感がその場を支配した。シーザリアンは、その全てが不気味なほどピタリと動きを止めていた。キョロキョロするエテュオン。

「・・・・・・・うん。出来た」

「(ほんと?やったじゃん!)」

「その一瞬で、森全体を?」

「森全体じゃなくて、シーザーの霊気がある洞窟の全部」

「あ、そうか」

「でも、その、霊気を遮断したら、どうなるのかしら」

「(えっとー。どうなるの?)」

「洞窟の外に霊気が出ない」

「それって、どういう事?」

「(新しいシーザリアンが生まれないんじゃない?)」

「多分そう」

「本当!?そうだとしたら、最高よね」

ふとエテュオンはシーザリアンを眺めた。さっきまで敵意と警戒心に満ちていたシーザリアンたちが、ただ怯えていた。それはきっとイエンに対してだろう。それと、少し動きが変わった気がした。

「ティヒム、何か変わってない?シーザリアン」

「んー、そうねえ。特には、変わってないんじゃないかしら」

「(何か、ホントに普通の動物みたいだね、シーザリアンって)」

「そう見えるけど、シーザリアンはシーザーの意思で動いてる。シーザーの抵抗が、そのままシーザリアンの動きになる」

「(でも、シーザーの霊気、洞窟から出ないんだし。操れないんじゃない?)」

「あ、確かに、そうよね」

イエンの髪が元の黒に戻るとまたシーザリアンはカサカサと動き出した。でもその動きはまるでただの野生動物で、とても覇気が無かった。

「ね、ねえ、エテュオン、これ・・・」

エテュオンと顔を見合わせたティヒム。直後にティヒムは笑い出した。

「ほんとに、やったわよね!」

「そうかも知れない。まだ様子見は必要だけど、今も襲われないところを見ると、本当にシーザーを封じ込められたのかも。イエン、ありがとう」

「別にいいよ」

「(まあ、結果オーライだよね)」

樹海の入口まで戻った一同。何にしても様子見しなければならないので、それからエテュオンとティヒムは消えていくルア達を見送った。

「蜘蛛って、シーザーの意思に関係なく繁殖するわよね?」

「うん。そこは叩かないと。でも今ならシーザーに邪魔されずに、シーザリアンを殲滅出来る」

シーザリアン対策モニタールーム。帰ってきたエテュオンとティヒムに期待を寄せて近付いてきたのはリュナーク。

「どうだった?」

「イエンが、シーザーの居る洞窟の全てに霊気を遮断する魔法を施した。新しいシーザリアンが生まれないし、シーザーもシーザリアンを操れないらしい。まだ実感は無いけど。シーザリアンの動きに、操縦に近い意思が感じられなくなったのは、何となく」

「本当なのか」

巨大なモニターの前から振り返り、アキレスが一言。

「でも、蜘蛛は自分で繁殖するから、今から叩きに行った方がいいんじゃないかしら?」

「そっか」

それから3日間で、樹海に居る全てのシーザリアンは殲滅された。それは世界的に大きなニュースだった。ホールズに、脅威はなくなった。そんな安心感が瞬く間に広がっていった。

「アルタライザー、出撃だ。シーザリアンの遺伝子で違法改造されたウパーディセーサが暴れてる」

「おっし。オレ行くよ」

出撃したのはリュナークとホーン、ジグとカルバーニとヴェッジ。それから出撃ポイントに輸送車が停まった。暴徒はウパーディセーサベースと思えないほどモンスターだった。辺りには冷気が漂い、8本の尾状器官は電気爪のように蠢く。そして分厚い岩のような腕からは炎のレーザービームが放たれる。

「ホーン、あいつ、何か動きがおかしくないか?」

「そうか?ただの暴徒だろ」

「いや、何て言うか。まあいいや」

「おい、大人しくしろ!」

「ん?」

暴徒に向かっていったのは1人のジュピター。ジュピターは尾状器官を8本携え、まるでウエットスーツのようにピタッと体のラインを見せつけるウパーディセーサ。真っ白なボディーカラーに1点だけ、胸元にジュピターのロゴが浮かび上がったそんな仕様。

「ジュピターじゃん、あれ?・・・てことは」

次々とジュピターが暴徒に向かっていって、薙ぎ払われていく。ジュピターはウパーディセーサベースの遺伝子に“超感覚”を組み込んだもの。視覚、聴覚、嗅覚、触覚が、人間を遥かに超える。そして幸運な事に、その超感覚は混ざり合う事で新たな感覚を生み出した。その1つは瞬間的未来予知。何が来るか、空気で分かる。本人達曰く、そんな感覚。それからギガスアーマーのような瞬間的加速。まるでカーテンを手で払うように、空気をすり抜ける。本人達曰く、そんな感覚。

「くそ、こんなはずじゃ・・・」

「シミュレーションでは問題無いって言ったよな?」

「超感覚の暴走かもな」

「何だよそれ!」

「超感覚のまま、無意識で暴れてる。コントロール出来てない。遺伝子の拒絶反応は無いってシミュレーションでは弾き出せたけど、こういう事はやっぱり未知なんだろ」

「このまま、ぼっ・・・」

「おい大丈夫か!」

リュナークはとっさに飛び出していた。事情は何となく分かったから。尾状器官を伸ばし、頭を鷲掴みにして地面に押さえ込もうとした。でも尾状器官はスッとかわされ、逆にリュナークの方が腕と脚を掴まれて地面に叩きつけられた。

「アルタライザー?」

それでもリュナークは暴徒の尾状器官を2本、自分の尾状器官で縛り、全身から電気を発生させた。暴徒の体から発せられる電気とリュナークの電気がバチバチとぶつかり合う中、ホーンがゆっくりと歩き出した。ホーンの尾状器官が白く染まり、空気まで焼くほどホーンの全身も超高温になると、正常なジュピター達は皆後ずさった。

「うわわわ、暴れるなあっ」

暴徒でさえ、本能的にホーンから遠ざかろうと暴れ出す。それでも暴徒を押さえつけるリュナークが1つ帯電爆発鱗を飛ばして、暴徒の顔を爆撃する。

「アルタライザー!オレらのリーダーなんだ!」

「いや、だからって大人しくさせないと。何か分かんないけど暴走なんだろ?ホーン、ちょっと温度下げて」

ホーンの尾状器官が白から赤に変わると、暴徒は大人しくなった。その一瞬でリュナークは尾状器官を伸ばして暴徒の8本の尾状器官を捕まえた。

「もしかして、ボルテクスとスファイザント、両方とも取り込んだ?」

「・・・あぁ。遺伝子の拒絶反応は無い。でも、意識が飛んだみたいで」

「セキハ、どうなるんだよ。リーダー、このままか?」

「どうしろってんだよ、オレだって分からない」

「ねえホーン、まさか、シーザーの意思に乗っ取られたのかな」

「だがイエンが封じたんだろ?」

「うん。じゃあ、ボルテクスとスファイザントの意思とか?」

「遺伝子を組み込んだだけだろ」

「んー・・・ん?」

そんな時だった、リュナークが見知らぬ男に振り返ったのは。

「あ、お前!こんな所で何してるんだよ」

リュナークの問いには応えず、リュナークに歩み寄る見知らぬ男。男はリュナークではなく、暴徒と化したジュピターズのリーダーを眺めた。

「何しに来た」

ホーンに振り返った男は何も応えず、そしてジュピターズのリーダーに手をかざした。その直後、ガクンとジュピターズのリーダーが気を失うと、人間に戻った。

「・・・・・あ、戻っ・・・た」

「ササラギ!」

リュナークがゆっくりとササラギを地面に寝かすと同時に、セキハが駆け寄って来て、そしてリュナークは見知らぬ男を見た。

「残留思念」

「え?」

「遺伝子にも、魂の欠片はある。雷の獣と5色の蜘蛛、その2つの残留思念が、目覚めていた。普通はあり得ないが」

「多分・・・・・超感覚のせい」

「おいおいセキハ、こいつの言ってる事信じるのかよ。てか誰だよ」

「信じる訳じゃない。で、どうやった?どうやってリーダーを大人しくさせた。残留思念に何をした」

「残留思念を封じ込めた。こいつはもう、暴走しない」

「本当か!」

「何で、助けてくれたの」

女性ジュピターが問いかける。

「・・・こいつに、働いて貰う」

「え?」

「どういう事だよ」

しかし直後、見知らぬ男は1人で歩き出し、その場から去り始めた。ポカンとするリュナークたち、ジュピターズ。

「・・・・・・ちょ、え?」

シーザリアン対策モニタールーム。

「で、男を追いかけなかったと」

報告を聞けばエテュオンが一言。

「だってさ、それから普通にリーダーの人が目覚めて、元気でさ、ジュピターズも安心してて、言葉の意味も分からなかったし。聞いても無視するし」

「あの男は未来が分かるような口振りだった。ジュピターを助けたのは、何か目的があるんだろう」

「未来が見えるって、何者なんだろうなぁ、あの人。ちょっと追いかけてみようかな。シーザリアンも居ないしさ」

「リュナーク、あんまりしつこくすると嫌われる」

「え?じゃあ、エテュオンも一緒に来てくれる?」

見つめ合うリュナークとエテュオン。そんなふとした沈黙に背を向け、アキレスはモニターを見上げた。

ジュピター・コーポレーション。それはケルタニアに本社を置き、環境問題事業に力を入れている医療機器メーカー。医療機器以外に製薬関連事業にも携わっているが、他にもサッカーチームを持ち、そのチームに関連したスクール事業もやっていたり。会社の理念は“医療の可能性を広げ続ける”。

ジュピター・コーポレーション本社20階、ジュピターズ本部。割れた窓からは風が入り、パラパラと紙が舞い踊る。

「くそ、これもだ。せっかくのサンプルが」

「おーい、風なんとか出来ないのかよ」

「ちょっと待って下さい」

“何か”が暴れてビルから飛び出した跡。そこにジュピターズがとぼとぼと戻ってきた。

「ササラギ!お前、戻ったか」

「だ、大丈夫なのか」

「まぁ、何とか、自分は記憶が無いんで」

「メディカルチェックは?」

「これから」

「そうか」

ジュピターズのリーダー、ササラギは23階にある医務フロアにて、廊下に置かれた長椅子に座っていた。自分が暴走した事実を噛み締めていた。反対などしなかった。むしろもっと強くなれるなら、その姿を見せられるならと、リスクは考えていなかった。

「終わった?」

「・・・あぁ」

ジュピターズメンバー、ハイロがササラギの隣に座る。静寂の廊下。ハイロは穏やかな表情でササラギの頭を撫でた。パチンと払われる手。

「もう子供じゃないって」

「何言ってるのよ。変わってないわよ?ソウタはずっと」

「片付け終わったのか?」

「終わった。まぁ良かったじゃない。残留思念が無くなって」

「いや、分かんないんだよなぁ。何でオレを助けた」

「借りを作ったんでしょう。また接触してくるわよ、絶対」

「気分転換してくる」

ジュピター・コーポレーション敷地内、サッカーコート。ササラギは備品庫から出てきて、サッカーボールを軽く打ち上げた。そのまま右足、左足と交互に打ち上げ、膝で打ち上げ、頭で打ち上げる。リフティングをしていると、無になれる。オレを助けたという男。皆が言うには、敵意は無いが明確な目的があるように見えたと。それはそれとして、先ずはシーザリアン遺伝子を使った違法改造ウパーディセーサのテロ組織の問題が優先だ。シーザリアンは居なくなったけど、こういう事をする奴らはほんとどこにでも居るんだな。

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