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逆襲のアルテミス  作者: 加藤貴敏
第4章「ウォー・ゲーム・オブ・ハザーズ」

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「リュナーク&ホーン」前編

手強い奴が出たけど、何とかなるでしょ。だってオレ達だって、もっと強くなれるんだから。オレ達は、守る為に生まれたんだ。国を守る為に。世界を守る為に。雷の岩獣は確かに手強いよ。でもさ──。

「こっちだ!」

そう挑発しながら鱗を飛ばし、その爆発で雷の岩獣の動きを牽制する。ダメージが蓄積しているのか、岩獣の動も鈍くなっていて、そこにアキレスの強力な衝撃波が放たれると、浮いていた岩獣は転がるように倒れ込んだ。

「逃げられる前に片付けるぞ」

ホーンが尾状器官を伸ばしていったものの、それは電気爪によって弾かれ、ユテスの尾状器官も岩獣は暴れているように冷静に弾き返していく。それからすぐに立ち上がると、岩獣は走り出した。

「チッ」

「待て!」

こういう時、1番速いのはやっぱりオレ。公園を出ればそこは街。このまま暴れさせるなんて絶対ダメだ。雷の岩獣はオレに振り返るとビルに登りやがった。でも屋上に上がったと同時に岩獣の足を掴んで、そのまま引きずり下ろした。

「うおおりゃあっ」

ドカンと岩獣を地面に叩き落とすと、そこにホーンがやってきて、炎を帯びた4本の尾状器官を岩獣の手足に突き刺した。

「ゴアアア!」

暴れる岩獣に止めを刺したのは、ユテスだった。首を掴んだ尾状器官から、ゼロ距離での水蒸気爆発。やっと雷の岩獣は動かなくなった。

「ふう、やったやった、っと」

「きっと、また出るよね」

「戦闘パターンは大体把握した。次からはもっと動ける」

「うん、そうだね」

「強かったな」

「ホーンも、メインは炎なの?」

「まぁ、炎が1番、生物が恐れるものだ」

「バリエーションは広い方が良いと思う」

「あぁ」

基地に戻った後、オレは演習場に居た。何か無性に強くなりたいって思った。オレはいつだって、誰よりも速くありたいから。

「良かったわね。雷の岩獣、大きな被害も出なくて」

「あぁ。ティヒム達も動きのパターンさえ分かれば、全然いけるんじゃない?」

「そうね」

尾状器官で空を飛ぶには、やっぱり物理的に火力が1番。だから炎を操る魔法は、もうマスト。後はどんな元素を“自分らしさ”にするか。ふと見上げてみると、空を飛ぶティヒムは尾状器官と同時に全身から青い炎を溢れさせていた。

「ねえティヒム、熱くないの?」

「リッショウをしたら全然よ」

「そっか」

オレはそれから色んな映像を検索してみた。世界中の、守る為に生まれた者達の戦闘映像。基本的にはみんなウパーディセーサベース。だから尾状器官があるけど、その先端には剣だったり斧だったり、色んな個性がある。やっぱり何もかも強さの次元が違うのは、独立自警団アルテミス。



第70話「リュナーク&ホーン」



シーザリアン対策モニタールーム。

「何であの雷の岩獣は、俺達を狙った」

「街で暴れたとしても、私達が来る事が分かってた。それなら脅威をピンポイントで排除した方が良いと判断したのかも」

「そうだな。岩獣の知能か、シーザーの意思か」

「シーザーの意思なら、大群を作った方がより私達を排除出来ると思うはず」

「うん、そうだよね」

特にアーサーは資料映像が多い。最近になって翼人と合体した姿が話題になってる。ヒーローランキングも1位。団長が1番じゃないんだ。そういえば、あの感覚は何なんだろう。アーサーのリッショウから感じる威圧感とオレ達のじゃレベルが違うというか。

「蜘蛛の群れが街に向かってる。出撃だ!」

3つの蜘蛛の群れが現れたから、オレとホーンとカルバーニで群れの1つに向かった。1つの群れの数は20だけど蜘蛛だけだから、全然楽勝。だと思ってたけど、違った。

「あとどれくらいかな」

「あと5だ」

「上だ!」

カルバーニの声と、スナイパーライフルの銃声が聞こえて上を向くと、建物の上から黄色い蜘蛛が糸を吐いてきた。蜘蛛の糸は厄介だ。群れで糸を吐かれると、一瞬で道が糸だらけになる。カルバーニに狙撃された黄色い蜘蛛が落ちてきたので止めを刺し、同時にホーンが青白い蜘蛛を倒したその時だった、赤い蜘蛛2体の後ろに、見たことのない蜘蛛が現れたのは。

「何だよ、あれ」

岩のような足、漂う冷気、赤青黄の腹袋、そして普通の蜘蛛よりも2倍ほどの大きさ。でもオレは怖くなかった。ホーンも冷静だった。だってこういうのは、想定内だから。

「何か、見るからに、全部、だよね?」

「リュナークは赤い奴を速攻で頼む。それまでオレとカルバーニがでかいのを足止めする」

「分かった」

炎を吐いてくる赤い蜘蛛。おまけに糸も高温。だけどオレの爆発鱗の方が速い。ホーンが5元素蜘蛛に向かっていったと同時に、もう赤い蜘蛛はやっつけた。そのまま爆発鱗を5元素蜘蛛に撃っていくが、その体には刺さらなかった。

「あいつの岩の外殻、もっと硬くなってる」

爆発でも怯まなかった5元素蜘蛛が全方位に冷気を放てば、ホーンは距離を取った。それでもホーンは直後、着地出来ずに倒れ込んだ。

「ホーン!」

「離れろ、ただの冷気、じゃない。触れたら、痺れる」

「だったらクウカクだ」

見えない壁に冷気は阻まれた。すると直後に5元素蜘蛛は腹袋から5発同時に青黒い針を放った。それはクウカクだったり周囲の地面に刺さった。そして爆発した。だけどそれは──。

「くっ・・・冷気じゃない。電撃と、ガス?・・・ホーン動ける?」

「あぁ」

クウカクで身を守り、爆発鱗をばら撒きながら下がっていく中、不気味な白いガスが何なのか警戒していると、直後に蜘蛛の口からその白いガスが漏れだした。

「何か来るぞ」

そして蜘蛛は炎を吐き出したが、その一瞬で炎は白いガスに引火し、一直線のレーザービームとなった。クウカクごとオレ達は押し飛ばされ、建物に激突した。

「くそ、挟み撃ちするぞ。リュナークは空から気を引いてくれ」

「うん」

建物から飛び出してすぐに上昇し、爆発鱗をばら撒く。その直後にホーンが尾状器官を伸ばしていくが、炎を帯びた尾状器官の槍でも貫けないほど蜘蛛の足は硬かった。蜘蛛が痺れる冷気を放つとホーンは上空にかわし、尾状器官の槍を腹袋に突き刺した。やっぱり腹袋は柔らかかった。それでも蜘蛛が暴れれば、ホーンは足で叩き飛ばされてしまう。オレも爆発鱗を飛ばして腹袋に突き刺し、爆発させたものの、すぐに怯む事なく炎のレーザービームを吐いてくる。でも遠くに離れれば問題無い。

「・・・危なかった。ん?」

ふと見ると、カルバーニが蜘蛛の背後に忍び寄って来ていた。手には何か持ってる。だからオレはもっと爆発鱗を撃ち放っていった。そしてカルバーニは思い切りそれを投げた。それは、手榴弾だった。しかも5つ付いたホルダーのまま。しかし直後に蜘蛛は振り返り、手榴弾は蜘蛛の頭に乗っかった。それから凄まじい大爆発に襲われ、蜘蛛も倒れ込んだが、すぐに立ち上がった。

「カルバーニ」

オレが飛び出したと同時に、蜘蛛が青黒い針を放った。間一髪、カルバーニは飛び込んで青黒い針をかわしたが、針が爆発するとカルバーニは吹き飛んだ。

「カルバーニ!」

「くそっ」

電撃を浴びてもカルバーニが立ち上がった事に、オレは混乱した。でもそこにはホーンが居て、すぐに理解した。ホーンがクウカクでカルバーニを守ったんだと。それでも蜘蛛は口から白いガスを漏らした。蜘蛛は真っ直ぐホーンとカルバーニを見つめていた。

「おりゃあ!」

もっと速く。そう考えたら、オレは炎ではなく、電気を選んだ。全身に電気を纏って、尾状器官に電気を集束させ、雷の速さで爆発鱗を撃ち放った。それが頭に刺さり爆発すると、蜘蛛は顔を逸らしてレーザービームを空に放った。電気を纏わせた爆発鱗。それは良い威力だった。スピードが増したから勢いよく体に刺さって、その傷口に電気が流れる。そのお陰で蜘蛛の動きが少しだけ鈍くなった。それから蜘蛛はオレの方に振り返り、糸を吐いてきた。それは赤い糸だった。つまり高温のやつ。でもクウカクで受け止めれば何てことなくて、すぐに“帯電爆発鱗”で反撃していく。帯電する爆発で蜘蛛が少し怯んだ時、蜘蛛は全身から勢いよく冷気を放った。そのせいでせっかく挟み撃ちしようとしていたホーンが離れていき、カルバーニも離れていった。オレは飛んでるから安心したけど、それだけじゃなかった。充満する冷気は一瞬で蜘蛛を覆うと、そのまま鎧となった。

「何だよ、こいつ・・・」

カルバーニが呟いた。構わずすぐに帯電爆発鱗を数発撃っていくが、刺さって爆発しても全く怯まなくなった。しかも氷の鎧から炎を吹き出し、オレ達みたいに空を飛びやがった。

「こいつ・・・」

蜘蛛は空を飛んで鋭い足を鎌のように振り回してきて、オレはクウカクで防御する事しか出来なかった。そして炎のレーザービームに押し出されて墜落してしまうと、蜘蛛も満足げにドスンと着地した。

「大丈夫か」

「うん、何とか」

氷の鎧なら、炎で溶かすか爆発で砕くしかない。でも素早くて狙いが定まらない。そう考えている間にも蜘蛛は鎧から火を吹いて飛んできて、ガツンッと地面に足を突き刺した。

「カルバーニ、なるべく離れて」

「あぁ。スナイパーライフルで援護する」

カルバーニが離れていくと同時に、ホーンが尾状器官から炎を吹き出した。それは空を飛ぶ為じゃなくて、槍からの火炎放射。でも4つの火炎放射でも鎧は溶けなかった。何故なら溶けた瞬間から新しく凍っていくから。それでもホーンは火炎放射を続けた。オレも帯電爆発鱗で蜘蛛の気を引いていく中、次第にホーンの尾状器官は真っ白に染まった。ホーンの周りの空気がゆらゆらと揺らめいている。見るからに熱いし、危険。蜘蛛が上空に逃げると、ホーンも飛び上がった。でもそれはもうロケットどころじゃなく、まるで隕石だった。一瞬で、すごい爆発と共に、ドカンッと、地上からホーンが蜘蛛を槍で突き上げた。更に声をかける間もなく、ホーンと蜘蛛はもう何百メートルも上昇していた。

「・・・ホーン」

「あいつ、どうなるんだ」

カルバーニとただ空を見上げる事しか出来なかった。そのまま宇宙に行っちゃうのか、はたまた道連れにするように爆発してしまうのか。そう思っていると、ホーンだと思われる白い炎の塊がUターンしてきて急降下してきた。そのまま地面に蜘蛛を叩きつけるのかと思いきや、墜落する寸前で炎の塊は蜘蛛を吐き出した。墜落したのは蜘蛛だけで、ホーンはクルッと曲がってカッコ良く着地した。

「ホーン、大丈夫?湯気がすごい」

「リッショウがなければオレも燃えてるんだろうな。試しに、限界まで炎を出してみた」

墜落した蜘蛛の下へ向かうと、蜘蛛は丸焦げで死んでいた。

「あんまり無理すんなよ?」

「少しくらい、無理しないと、勝てなかっただろ」

カルバーニがホーンの肩を労うように叩くと、そこにアキレスがやって来た。

「お前達も、こいつと戦ってたのか」

「アキレスも?」

「恐らくユテスとエテュオンのチームもだろう」

「アキレス・・・1人で、こいつを倒したの?」

「・・・まあな。デリス達4人のサポートもあってだが」

「すごい、どうやって」

「こいつの真似をした」

「真似・・・」

「夢中だったから、鮮明に感覚を覚えてないが、とにかく衝撃波に魔法を混ぜた。炎と電気、光、硬度、濃度、こいつの炎のレーザービームのようにな」

「そっか。オレも爆発鱗に電気を混ぜて強くしたよ」

岩獣に続いて、蜘蛛にも“高度進化個体”が確認された。想定内ではあるけど、その手強さはホールズをまた緊張させた。雷の岩獣は「ボルテクス」と呼ばれ、5元素蜘蛛は「スファイザント」と呼ばれるようになった。それから2日後、ボルテクスによって、ホールズ加盟国の1つ、インズが崩壊した。軍隊の壊滅と経済の崩壊。大統領も死んでしまった。でもホールズはそういう時の為にある。軍隊は借り合い、経済も支援し合う。

「ボルテクスとスファイザントはもう、生半可な兵器じゃ太刀打ち出来ないけど、人間だって抵抗してない訳じゃないのよ。ウパーディセーサベースでの兵器開発は速度を増してるわね」

「博士、オレ達ってさ、半永久的にアップデート出来るんでしょ?」

「そうね。少なくとも遺伝子レベルでは元素操作も含めて、あらゆるものを取り込める生態ではあるわね。でも遺伝子にも許容範囲があるから、新しいものを取り込むより、今の武器をどれだけ進化させられるかを考えた方が、リスクは少ないわね」

「でも、もっと体を大きくとか」

「生活に支障が出るじゃん。輸送車にも入らなくなったら」

「いや飛べよ」

「ハッハッハ」

「そうだけどさぁ」

「小回りは隊に必要だと思う」

「オレもエテュオンの言う通りだと思うけどな」

オレは何となく演習場に立っていたけど、色々と迷っていた。ホーンはただ炎を出すだけじゃなく、限界を探った。アキレスも複数の元素を混ぜた。あれ、元素を操るって、元素記号で示されてるもの、全部操れるのかな。

「アキレス」

「ん、どうした」

「単純に炎とか電気とかを衝撃波に混ぜた訳じゃないんだよね?硬度とか濃度って?」

「感覚的でしかないが、もっと強く、濃くと想像した。それが遺伝子由来か魔法由来かは分からない」

「遺伝子由来の元素操作でさ、毒も作れるよね?元素だって、色々あるし」

「確かに。毒か。良いアイデアだな」

「なら鉄も作れる」

「エテュオン」

「スファイザントとの戦闘で思いついた。元素は、混ぜてこそだと。私はもっと耐久性が必要だと感じた。だから熱で筋肉を硬化させるよりも、細胞から体組織を鉄にした方がいい」

「重くないか?」

「えっとほら、何かあるんじゃない?鉄よりもしなやかで強度もある繊維素材とかさ」

「・・・炭素?」

「ああうん」

「なるほど。筋肉繊維を炭素で」

「例えば骨をダイヤモンドにとか?」

「ティヒム」

「良い話ね、それ。炭素を色々な硬度で操って、体を強化するの。尾状器官の先端なんてそれこそダイヤモンド級の硬さにしたら良いんじゃないかしら」

「うん、そうだね」

細胞から体をアップデート。そのアイデアはアルタライザー全員に共有され、そして“カーボンブースト”というスタイルが開発された。それはただ意識するだけ。体をとにかくしなやかに硬化させる。そのスタイルを1つの意識として定着させ、スイッチのスピードを上げる。そんな訓練が続いた。するとなんと、その内意識しなくても出来るようになった。博士が言うには、遺伝子がそのスタイルに順応したのだそう。

「いたぞ、岩獣はオレが、ホーンは蜘蛛を」

「分かった」

この群れには高度進化個体は居ない。だから訓練にはちょうどいい。何だか体が軽い。でも強い。明らかに体が変わってるのを感じた。そのせいか、体から発する炎や電気の勢いも増した。炎と氷の岩獣を2体、苦戦する事なく倒せた。それはホーンも、アキレス達も第2チームのみんなも同じだった。抵抗してるのはシーザーだけじゃない。博士の言う通りだ。そんな頃だった、ホールズの外の国々にも、シーザリアンが現れたのは。

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