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逆襲のアルテミス  作者: 加藤貴敏
第4章「ウォー・ゲーム・オブ・ハザーズ」

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「奇跡の戦士」前編

「お、おい、あれ、ヤバくないか?」

「グガ?」

ブレンとジャガーノートの声など聞こえていないかのように、ディンクルスは呆然とそれを見上げていた。近付いて来れば来るほど、隕石はとてつもない大きさだと分かった。──この束の間で、あれを作っただと。

「ディンクルス、さすがに無理だ逃げるぞ」

ディンクルスは噛み締めるように頷いた。それはエイシンの言葉に対してだった。

「そういう事か」

「え?」

「行くぞ」

転移で離れてからディンクルスは眺めた。街中の白銀が集まって作られたような隕石を。あの竜巻で、怪物と隕石を作ったのか。そんな考察をしているとやがて、隕石は平和な田舎街に落下した。まるで水風船でも弾けるように隕石は大爆発し、白銀は瞬く間に広がっていく。そこに住む者達には為す術も無い一瞬の出来事。転移でもしない限り逃げる事は不可能。そして田舎街、リースンは白銀に呑まれていった。ディンクルスは空を見上げた。

「何だと」

「マジか。隕石、2発目かよ」

ディンクルス達の居る場所とは関係ない方向に落ちていく隕石。──このままでは、兵力に差が付けられる一方だ。何か、手は無いのか。

「グガグガ!」

「いや、飛んで向かったところでガルゼルジャンを止められるほどの力は私には無い。止められるとすれば、カンディアウスだろう」

輸送車の中、サウサンは壁を叩いた。無線からの報告は、リースンが丸ごと白銀に呑み込まれたというものだった。リースンで推定される白銀の兵隊は約10万人。すぐにサウサンは輸送車から出て空を見上げた。どこかに落ちていく白銀の隕石を睨みつけていた。そんな時だった、エストーンがイシュレからリッショウボールを受け取ったのは。微笑んで頷くエストーン。そして、エストーンの気迫と存在感は爆発した。

「おりゃあああっ!」

それからエストーンはロケット弾を思い切りぶん投げた。いつものよりも大きなロケット弾。空気を突き抜け、激しい炎と煙を尾に引きながら白銀の隕石へと向かっていく。そんな間にもレヴァクがイシュレからリッショウボールを受け取る。リッショウボールを使ったレヴァクは空に手を掲げて、意識を集中していく。やがて視えてきたのは、遥か上空、雲の上、澄んだ空に漂う白銀とガルゼルジャン。レヴァクの手に強く輝く光弾が作られた時に白銀の隕石は爆発した。

「ふう、何とか決まった。けど、白銀が散らばったなぁ。ついでにもう1発」

高さ7000メートルくらいの上空で、ガルゼルジャンは白銀を操り、集めて球を作っていく。──まだ足りない。こんな“街1つしか落とせない小さなもの”では、まだまだ足りない。その瞬間だった、一筋の光弾がガルゼルジャンを突き飛ばしながら空に消えていったのは。



第65話「奇跡の戦士」



「クッ・・・・・・目障りなものよ」

ふわふわと流れていく、作りかけの白銀の球。体勢を整え、ガルゼルジャンは手をかざして意識を向ける。それは空中で迎撃された隕石が残した白銀。白銀は風に流されるように集められ、形を作っていく。そんな間にもロケット弾が飛んできて、ガルゼルジャンはそれをかわし、白銀を撃ち込んで爆発させる。すぐにまた意識を向けて白銀を固めていく中、再び光の速さで光弾が撃ち上がってきて、ガルゼルジャンはまた空中を突き飛ばされる。それからレヴァクはキョロキョロした。何故なら白銀の霧が濃くなり、ガルゼルジャンを見失ったから。それでもレヴァクは霧に向かって光弾を撃ち、エストーンもロケット弾を投げていくが、やがて隕石が迎撃された上空では、大きな翼を持った“全長20メートルの白銀の飛竜”が生まれた。そして直後、白銀の飛竜は翼をはためかせて数百の光弾を降り注がせた。

「・・・・・・ん?うわっあれ、レヴァク!」

その飛竜自体は遠くて普通に肉眼では見えない。だから2人が気が付いた時にはもうすでに大量の白銀の光弾が迫ってきていた。

「イシュレ、イエン、壁を頼む!」

ジェクスの言葉にイシュレとイエンが頷けば、2人は軍人達と小さな臨時基地を囲っている光壁に力を注いでいき、ジェクスとレヴァクとエストーンも光壁の中へと避難していく。ドカドカと街を破壊する白銀の雨。そのひとつひとつに威力があり、あっという間に辺り一面が破壊し尽くされた。その有り様に軍人達は皆膝から崩れ落ちたり、怒りを吐き出したり。

「まったく、めちゃくちゃだな」

そう言ってエストーンは呆れたように微笑み、ロケット弾を肩に乗せる。

「んーおりゃあ!」

光壁から出るとエストーンはロケット弾を投げた。視点を飛ばして後を追うと、ロケット弾は白銀の飛竜に届くことなく、飛竜が吐き出したレーザービームに迎撃された。

「こりゃ、どうしよう」

エストーンの隣に並んだレヴァク。それから光弾を撃ち放てば、一筋の光弾は光の速さで激突して飛竜を“少しだけよろめかせた”。

「強敵だな。ガルゼルジャンよりも頑丈なのか」

ニーゼカレナ・ヴォーガ大聖堂にて。白銀の竜人だけじゃなく、周囲には白銀の兵や鎧兵の大軍が集まっていて、ルアやヘルは竜人と戦うカンディアウスとアポロンとテリッテの動きを気にしながらとにかく兵隊の数を減らしていく。

「(何か、ちょっと疲れてきたと思ったけど、ルアのネイチャーソウルの緑色の風さ、もしかして治癒力あんの?)」

「うん!分かる?」

「(おー。いいね。スタミナ回復スキルって)」

大軍でも白銀の鎧兵が相手だと全然余裕。そうヘルは本当に気持ちが落ち着いたように燃える光弾を撃っていく。ヒーターもとにかく青雷のダガーを投げ続けていくが、とにかく数が多いので終わりが見えず、休憩するように物陰に隠れて白銀の竜人を気にして振り返る。

二極火柱(ドゥボージ・ストグニア)十層(ディシアーソ)!」

紫と朱の炎が放たれていくが、白銀の竜人はそれを白銀の霧で防いでいく。それでも横からカンディアウスがダークグリーンの集束した嵐を放っていけば、竜人はガードしているものの動けなくなった。だからこそテリッテは尾状器官の手でエクスカリバーを握り締め、背後から竜人に突撃した。

「(うおおお!)」

蒼白い炎を纏わせたエクスカリバーは竜人の背中でサクッと止まった。表情を力ませるテリッテ。少しは刺さった。けどこれ以上は刃が入らない。それからテリッテは背中の頭に噛みつかれて投げ飛ばされた。

「(くそ!何て硬さだよ)」

その直後に白銀の竜人が砲身の両手から爆撃すればアポロンもカンディアウスも吹き飛んでいき、そしてその砲身はテリッテに向けられた。

火光矢三層(スヴェンジャストレ・トリーソ)!」

鋭く燃える光矢が一瞬で白銀の竜人の右腕を弾き上げる。ギョロッと振り返る竜人。そしてその右腕がルアに向けられれば、その一瞬でテリッテはエクスカリバーを振り上げる。しかし振り下ろされたエクスカリバーは尾剣で受け止められ、しかもすぐさま左腕から爆撃されればテリッテは吹き飛んでしまった。建物に激突するテリッテ。テリッテとアーサーはお互いの息遣いを共有した。体が重い。全然敵わない。アーサーはマガツエルフとなったイエンと戦った時を思い出し、テリッテはカルベスとの戦闘を思い出していた。起き上がるテリッテ。ルアは転移して何とか竜人の攻撃をかわしていた。

「(俺達じゃなきゃ、だめだ)」

「ふう、私達なら、もっとやれる。やらなきゃ!」

「(とにかく力を、全部だ!)」

テリッテは目を閉じた。何となく、でもそれしかないと確信した。翼の力とリッショウとオージャソウルとエクスカリバー。その力を全部合わせる。全部を出し切る。

「はああああ!

 (うおおおお!・・・・・・ここだ!)」

テリッテとアーサーはただ一点、自分を見つめる白銀の竜人の眼差しを睨み付けた。何でもいい。ただぶつけてやる。そう突き出したのは拳だった。でもその瞬間、ヘルは見た。白銀の爆撃にテリッテが呑み込まれたのを。

「(あ・・・テリッテ、アーサー・・・)」

でもその時だった、今まで見たことのないくらいの蒼白い炎の輝きが、白銀の爆風を押し退けながら白銀の竜人の顔をかち上げたのは。それからアッパーからのストレートパンチが決まれば竜人は吹き飛んでいき、大聖堂近くの高いオフィスビルに激突した。

「(え・・・)」

呆然と目を奪われるヘル。テリッテは蒼白い炎に包まれていた。でもそれはオージャソウルとは違って、すごく儚く、奥ゆかしく、神秘的だった。しかしそう思った矢先、その壮大さは消えていき、普通のオージャソウルの状態に戻った。

「(行ったな)」

「ふう、うん。私、リッショウ3段階目になってる。でも今の」

「(俺が感じてた可能性だ。俺達のリッショウが完全に合わされば、リッショウを超えられる)」

「リッショウを超える・・・」

バラバラとビルの壁が落ちていき、その中から白銀の竜人は姿を現した。頭を振る仕草が急に人間っぽい。

「(でも消えちまった。もう1回だ)」

「うん」

リッショウボールの効果が無くなった。でもテリッテとアーサーは感じていた。リッショウボールを使わなければ出来ない、強化オージャソウル。でも今なら、自力で手の尾状器官の武装を3倍に大きくさせ、蒼白い翼の先端に小さなブースターを作り、短い尾状器官の隣から同じような尾状器官状の剣を作り出した。

「(なあ、さっき、オージャソウルにリッショウと翼の力とエクスカリバーを集めたよな?)」

「え、翼の力にじゃない?」

「(おいおい、違うだろ。・・・あれ?)」

飛び掛かってきた白銀の竜人は、尾剣を振り回して来ながら爆撃もしてきて、同時に背中の頭で噛みついてくる。でもテリッテはその尾剣を尾状器官状の剣で捌き、その背中の頭と爆撃を手の尾状器官でガードしていく。それでも見る限り防戦一方。そうヘルは濃縮魂子を作った。それは炎と光を融合させた“聖なる炎”の濃縮魂子。リッショウボールはもう無くなってるので、そして濃縮魂子安定装置に聖なる炎の濃縮魂子を嵌めた。

「(うわああお!)」

もうヘルの姿が見えないくらい、それは炎と光の塊。

「(フェニックスダァイブ!)」

白銀の竜人が振り返った時にはもう、炎と光の塊が飛んで来ていた。ガードする間もなく、そこには炎と光の大爆発が広がり渡っていった。大聖堂の壁、ステンドグラス、国宝級の装飾品が宙を舞っていく。白銀の竜人もテリッテもヘルもみんな見えなくなった。そんな猛烈な攻撃をルアとヒーターが遠くから見守っている傍らで、人知れずカンディアウスの前にディンクルスがやってきた。

「空高く、ガルゼルジャンは私達を見下ろしている。お主なら、引きずり落とせるのでは」

「・・・やってみるか」

ダークグリーンの嵐に乗って飛び上がっていったカンディアウス。ふと考えていたのは、この戦いには1つ退屈な部分があるという事。己の為に死力を尽くしてきただけだった。だが今は、まるで英雄にでもなりたいかのよう。嵐が凝縮されていく。雪を降らせる分厚い雲を押し退け、そこだけ嵐となっていく。リッショウというのは本当に心地が良い。

「(ヘル。派手過ぎるぞ)」

「(へへっ良いでしょー)」

「(ま、強いからいいけど。何も見えねえ)」

炎と光の爆風からテリッテとヘルが出て来て少しした後、白銀の竜人が墜落してきた。でも四つん這いでドスンっと大聖堂に着地すると、ギロッとヘルを見上げた。

「(そんな、まだまだ全然だ)」

すぐに両腕から白銀を速射してきた竜人。その光の速さで向かってくる弾はかわせない。だからガードするか転移するか。

「砂みたいに力を吸収しちゃうあの鎧、何とかしないと」

「(あぁけど、今俺達がやるべき事は1つだ)」

「うん。やっぱり翼の力に集めるのが良いと思う。翼の力は1番心と体に密着してるから」

「(じゃあそれで。ヘル!なるべくあいつの気を逸らしてくれ)」

「(うん)」

ヘルが燃える光弾を放ちながら通り過ぎていくと、白銀の竜人はその姿を捕捉していき、白銀の光弾を撃っていく。でもヘルは飛びながら転移して、死角から攻撃してはまた飛んで消えてを繰り返し、竜人を翻弄していく。そんな中で、テリッテとアーサーは感覚を研ぎ澄ませた。翼の力に全ての力を集める。さっきは偶然にそんな感じになったけど、意識してとなると雲を掴むような感覚。──そっか、リッショウはもう半分くらい翼の力と溶け合ってるんだ。翼の力とリッショウが融合したらどうなるんだろう。

「(なあ、何で翼を解放するって言うんだ?)」

「え。んー。心の中にある力だから、心の中から解放するっていう事だよ」

「(あー)」

ヘルとアイコンタクトを取ったルアはプリマベーラを構えた。そしてヘルが飛んでいった時に、狙いを定めて火光矢三層を放つ。細く儚く、強く一直線にそれは竜人の背中の頭の1つをガツンッと弾いた。でもルアは苦々しい表情で竜人を見上げた。

「(じゃあ翼自体を解放するって感じはどうだ?)」

「ん?翼を解放・・・・・えっと心の中からって意味じゃなくて?」

「(翼の力を解放して、リッショウやらを全部取り込むんだ)」

「んー」

ヘルとアイコンタクトを取ったアポロンは2本の剣を構えた。そしてヘルが飛んでいった時──。

二極火柱五爪(ドゥボージ・ストグニア・ピアーノ)!」

2本の剣が踊らせた2色の炎からは、五閃の2色の火柱が放たれた。白銀の竜人が目の前を爆撃して白銀の弾幕を張り、火柱を防いでいくが、他の火柱が湾曲していけばドカンドカンと竜人の体が波打っていく。それでもアポロンは手応えなど感じず、表情を引き締めた。

「そんな考え方した事なかった。翼を解放、翼という力を解放かぁ」

「(この翼の感覚、何となく、もっと力を高められるんじゃないかって思ってたんだ。翼の力だけを上げるんじゃなくてさ、何か、もっと新しい何かにさ)」

「んーそっか」

ヘルとアイコンタクトを取ったヒーターはもう1度リッショウボールを濃縮魂子安定装置に嵌めた。そしてヘルが飛んでいった直後、ヒーターは真っ白な長剣に青雷を纏わせ、雷のような速度で白銀の竜人に斬りかかった。青雷と共に剣身が竜人の腕を滑っていく。振り返る白銀の竜人。その瞬間には6本の青雷のダガーが投げ撃たれていて、グサグサと竜人の胸元に刺さっては、スルスルっと落ちていく。再びヒーターが突撃していったがその直後、白銀の爆撃によってヒーターは大聖堂に墜落した。

「じゃあやるよ?」

「(あぁ)」

テリッテとアーサーは共に翼の力に意識を集中させた。明らかに分かったのは、心が2人分になった事で、翼の力にも余白が出来たという事。翼の力だけでも、リッショウのように高める事が出来ると思う。でもそうじゃない。テリッテの頭に過るアーサーの言葉。「ここだ!」というその感覚。それが何となく分かった気がした。リッショウの“循環力”、オージャソウルの“鎧”、そしてエクスカリバーの“剣”。それを翼の力に。

「(来た来たあ!)」

エクスカリバーもオージャソウルも消えた。でもその直後、テリッテが纏う蒼白い炎は眩く輝いた。更には翼自体が蒼白く燃え出した。それは羽毛の翼というより、炎の翼。

「(そうだこれだ!・・・うおおお!)」

突撃していくテリッテ。振り返りながら白銀で爆撃する竜人。ヘルは目で追っていた。大聖堂に墜落していったテリッテを。

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