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逆襲のアルテミス  作者: 加藤貴敏
第4章「ウォー・ゲーム・オブ・ハザーズ」

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「嵐の闘士」後編

「グガグガ」

ジャガーノートが気絶したブレンをツンツンしていくと、やがてブレンは目を覚ました。

「・・・・・くそ。つう・・・」

ゆっくり立ち上がるブレン。向こうに戦っているディンクルス達を望めば重たい体ですぐに歩きだすが、その腕をジャガーノートは掴んだ。

「グガグガ」

「何だよ。いや、分かってる、実力が違う。ディンクルスじゃなきゃ、あのバケモノは、倒せない」

そんな時だった、ブレンとジャガーノートが空を見上げたのは。

「何だ?・・・何か起こんのか?」

白銀の大斧と2本の剣の衝突は空気を震わせて、時に大聖堂の窓ガラスを割る。しかしガルゼルジャンでさえそんな事は気に留めず、それからまた流れ弾のように紺碧が大聖堂の壁を割る。紺碧を迸らせる双剣。ディンクルスの眼差しに力が宿る。振り下ろされる大斧。それを受け止めたディンクルスは白銀の大爆発に呑み込まれる。

「ディスペリオン!」

その瞬間、白銀の大爆発の中から紺碧が解き放たれた。それを真っ直ぐ見つめるカンディアウス。見極めていた。どちらの力が勝るのかを。しかしカンディアウスはふと空を見上げた。周囲を不気味に蠢いている白銀。その瞬間、白銀の霧から一筋の白銀が伸び、ガルゼルジャンの居る方に刺さっていった。

「これは・・・」

剣を振り払い、とっさに後退するディンクルス。白銀を吸い込んだガルゼルジャンは少しだけ巨大化したのだ。2メートル超えの大男になっただけだが、その“力の使い方”を前にディンクルスは剣を握り締めた。直後に大斧が地面に叩きつけられれば、その白銀の大爆発はディンクルスとカンディアウスを激しく靡かせた。

「貴様が世界を創る事は叶わない」

「・・・何だと?」

「我はガルゼルジャン!世界を支配する神だ!我が居る限り、世界は我がもの」

ぶつかり合うディンクルスとガルゼルジャンの眼差しと殺気。ディンクルスは感じていた。あれほど戦ってきた白銀から生まれた兵隊。ガルゼルジャンの背後で、その全てが跪いている。同じ根源の力なのに、その使い方で1歩先を行かれている。

「ハッハッハッハッハ!・・・」

「・・・何が可笑しい」

「我は神など信じない。力のある者が生き残る、それが全てだ」

「・・・信じなくともよい」

「何だと?」

「真実から目を背けたまま、死ぬがいい」

カンディアウスは目を見開き、拳を握った。全身鎧なのでガルゼルジャンの表情は分からないが、その言葉に嘲笑が見えたから。だからカンディアウスはダークグリーンの嵐で身を覆った。

「・・・ほう」

白銀が乱れていく。神々しい巨大な虎と、ダークグリーンの嵐という威圧を前に、ガルゼルジャンは真っ先にそう感じた。そして風が吹くように、川が流れるように、マグマが溢れるようにダークグリーンが辺りに降り注げば、天気が変わるように白銀は晴れた。

「・・・何だと」

空を見上げたガルゼルジャンが振り向いた時には、すでにカンディアウスは前足を振り払い始めていた。衝撃音が轟けば、ガルゼルジャンはディンクルスの横を通り過ぎていった。そしてそのままガルゼルジャンは大聖堂の壁に突っ込んで崩壊させて埋もれていった。ダークグリーンの嵐に包まれながら悠然と歩くカンディアウス。その眼差しは崩れた瓦礫を見つめていた。直後に瓦礫は弾け飛び、ガルゼルジャンは飛び出した。

「ウオオオオオ!」

思い切り振り下ろされた白銀の大斧はダークグリーンの嵐とぶつかり、その白銀の大爆発も嵐と激しく衝突していく。しかし白銀の大爆発は吹き飛び、大斧は受け流されるように地面に叩き下ろされた。その直後にもカンディアウスはダークグリーンの一閃を放ち、再びガルゼルジャンは吹き飛んで、大斧は転がった。カンディアウスには分かった。すぐさま起き上がり、こちらを見たその仮面の下は怒りに満ちている事が。ガルゼルジャンが走り出した瞬間、その目は横を向いた。すでにディンクルスが紺碧の十字閃を放っていて、とっさにガードはしたもののガルゼルジャンは吹き飛んで大聖堂の壁に激突した。それでも素早く高く飛び出し、大斧を作り出し、全身から白銀を吹き出させていく。

「図に乗るなぁあああ!」

白銀に染まった街から、どこからともなく白銀の霧の巨大な“流れ”が一瞬でガルゼルジャンの背後を通り過ぎるように伸びていった。そして直後、その霧の道から白銀の騎士、9頭のドラゴン、強化ケルベロスが2体ずつ現れた。そしてその巨大な流れから白銀がガルゼルジャンに降り注ぎ、その体は3メートルほどのものに巨大化する。

「我の前を歩む者あらば、地獄に叩き落とす!!」

「やべえぞ」

「グガガガ」

大聖堂の上だったり地面だったりに、ドスンと降り立った“白銀の兵隊”を見渡してから、カンディアウスは冷静にガルゼルジャンを見上げた。

「そうか、お主の力は“兵力”か」

宙に浮いたまま、カンディアウスを見下ろしたまま動かないガルゼルジャン。直後に9頭のドラゴンが一斉に白銀の炎を吐き出し、カンディアウスはその中心に呑まれていった。ダークグリーンの嵐ごと呑み込んだ白銀の炎はしかし直後に引き裂かれ、ダークグリーンの猛吹雪が逆に9頭のドラゴンに襲いかかった。吹き飛んでそのまま壊れたロボットのように動きが鈍くなったが、直後に白銀の騎士が飛び出し、背中から伸びた頭でカンディアウスに噛みついて、そのまま大聖堂の敷地の外へ連れ去った。取り残されたディンクルスはブレンとジャガーノートに振り返り、強化ケルベロスの砲撃をかわし、9頭のドラゴンの熱線をかわしていく。

「ジャガーノート、オレ達だって、こんなところで寛いでらんねえぞ!」

「グガ!」

飛び出していくブレン達の前に立ちはだかる白銀の騎士。両腕からの砲撃にはジャガーノートが対抗していき、その中でブレンが剣から金青の巨大光弾を放つ。爆発と共に白銀の騎士が吹き飛んでいくと同時に、強化ケルベロスがディンクルスに噛みついていくが、その直前に強化ケルベロスは銀青の炎雷弾に吹き飛ばされた。

「あいつ、動かないのか?」

宙に浮いたままのガルゼルジャンを見上げてブレンがそう言えば、ディンクルスは「あぁ」と一言。

「高みの見物かよ。ったく」

背中合わせに立つディンクルス、ブレン、ジャガーノート、紺碧の鎧兵。その周りを囲むのは巨大な白銀の兵隊。ディンクルスはふとカンディアウスの言葉を思い出していた。その直後、カンディアウスが連れ去られた方からダークグリーンの嵐が空高く吹き荒れた。──ならお主は、“嵐”か?

「うおらあ!」

9頭のドラゴンはブレンの巨大光弾に襲われ、ジャガーノートに噛みついた強化ケルベロスは逆に銀青の炎雷で反撃される。そんな中で、ディンクルスは大して戦力にならない紺碧の鎧兵に気を向け、白銀の騎士を見上げた。飛び上がったディンクルス。その先には白銀の騎士が居て、空に消えていった紺碧の一閃は容易くその片腕と頭の1つと水晶のような羽の1枚を切り落とした。ボタボタと落ちる度、白銀の騎士の一部は砕けて白銀の塊と化していく。それから白銀の騎士を切り刻んだ後、ディンクルスは地面に散らばった白銀の塊に力を注いだ。その直後から白銀の塊が紺碧に染まると、宙に浮き、紺碧の鎧兵に集まっていった。大きさは変わらないものの、紺碧の鎧兵は更なる全身鎧と右腕に砲身、左腕に剣、羽のような翼を装備した。それを見つめているのかいないのか、ガルゼルジャンは高く浮いたまま空を見上げる。そして地面に降り立ったディンクルスは“紺碧の騎士”の頭を掴んだ。ディンクルスの手から紺碧が迸り、それが紺碧の騎士の全身に宿っていく。

「私の力は・・・・・」

9頭のドラゴンが連続的に炎を吐き出し、怒涛の攻撃をしていけばさすがにブレンも防戦を強いられて、反撃の隙を伺っていた。するとそこに颯爽とやって来たのは、紺碧の騎士だった。紺碧の光弾を連射し、そして剣から一閃を放つ。その衝撃は9頭のドラゴンの攻撃を断たせ、大きな隙を作った。一方で強化ケルベロスと掴み合い、力比べの末に押し倒されてしまったジャガーノート。でもそこに紺碧の騎士が駆けつけてきて剣を振れば、その一閃は強化ケルベロスを押し退けた。直後にジャガーノートが倒れながらも炎雷を放ち、それから素早く銀青の砲撃を叩き込んでいけば形勢は逆転した。

「強くなったな」

ブレンが独り言を呟いたところで、集束したレーザービームのようにダークグリーンの嵐が遠くからガルゼルジャンを狙撃した。風圧の巻き添えを食らって大聖堂の一部が破壊され、9頭のドラゴンが舞い上がる。思わず避難したディンクルスも嵐の先を見つめる中、嵐の中から白銀が爆発するように洩れ出し、嵐を塞き止めた。それでも嵐は更に集束した。ディンクルスは遠くに居るであろうカンディアウスに振り返る。辺りを巻き込むほどの衝撃と風圧が一点に集中していくという事はつまり、その嵐はより強くなるという事。

──少し前。

転移してきたアポロン。何故ならカンディアウスが心配だから。カンディアウスは白銀の騎士を踏みつけていて、ダークグリーンの光で更に押し潰していた。

「白銀が集まっていたが、晴らしたのはお前か」

「造作も無い。だが、厄介だ、あの力は。恐らく我の力では敵わないだろう」

「それほどの差が。なら、リッショウを覚えるといい」

「お主らの術か・・・・・悪くない。教えて貰おう」

ダークグリーンの集束した嵐はガルゼルジャンを再び覆い尽くした。細くはなったがむしろ吸引力は増して、辺りに漂う白銀は更に巻き込まれて消えていった。集束した嵐が空に消えていくと、そこにガルゼルジャンの姿は無かった。ダークグリーンの嵐はふんわりと辺り一面を威圧する。明らかに、存在感が変わった。そうディンクルスは殺気の無い、火の粉のように風のように舞う、気迫と存在感に満ちたダークグリーンを見渡す。

「(うわ、この感じ。リッショウだ。でも知らない感じ。あ、さっきルアが言ってたカンディアウスって人か)」

「行ってみる?」

「(うん、もしかしたらガルゼルジャンと戦ってるのかも)」

ヘルとヒーターが移動し始めた一方、ルアは地面から生やした沢山の光の蔦で白銀の兵隊を減らしていく。

「(退屈だ。俺もカンディアウスのとこ行きてえよ)」

「でも、数減らさないと」

「(結局ガルゼルジャンを殺らないと変わらないんだろ?)」

ルアとテリッテは目を合わせた。それもそうだと、同意を共感した。だから2人は飛び立った。そんな時だった、空高く突き抜けていく白銀の竜巻が出現したのは。

「(お、何だ)」

「さっきから白銀の霧みたいなのが集まってるみたいだし、関係あるんじゃない?」

「そうかもね」

白銀の竜巻は一瞬だった。その中に何があったのかはルア達には遠くて分からなかった。ディンクルスは姿を見せたカンディアウスに振り返る。神々しい虎は大聖堂の上に降り立ち、白銀の竜巻から姿を現したものを見上げた。それは“大きな翼を生やし、背中から2つの蛇のような頭を生やし、両腕を動物の顔のような巨大な砲身で覆い、伸縮する長く巨大な尻尾の剣を持った、全身鎧の竜人”。

「・・・ラスボスか?」

そんな5メートルほどのモンスターを見上げてブレンが呟いた直後、“白銀の竜人”は一瞬で白銀の光弾をカンディアウスに撃ち込んだ。吹き飛んだカンディアウス。更にその速射はディンクルス達も襲い、地面に穴が空くほどの鋭い白銀からディンクルス達は逃げていく。

「なぁディンクルス、お前だって変身出来るんだろ?」

「・・・分からない。その様な事が為し得そうな感覚は無い」

「そうなのか。蘇った奴は皆出来る訳じゃないのか」

カンディアウスが出て来て、自身の体に密着させている分厚い嵐から無数の光弾を放つ中、ブレンは白銀の竜人の背後に回り込んだ。しかし直後に背中の2つの頭がギロッとブレンを見る。

「チッ」

それでもブレンは剣に金青を溜め、背中の頭が吐き出す炎の球をかわしながら巨大な光弾を放つ。その爆撃は白銀の竜人を少しよろめかせたが、見た目からして大きなダメージにはなっておらず、ブレンは再び白銀の光弾から逃げていく。ジャガーノートの砲撃、ブレンの光弾、カンディアウスの嵐が飛び交う中で、ディンクルスは気配でガルゼルジャンを捜していた。しかしこの辺り一面に、その気配は無かった。──ここに居続けるのは得策ではないな。しかしあの怪物からは容易に逃れられない。

「(あ、アポロンさん!)」

独立自警団の面々が大聖堂に集まってきた。それを理解したディンクルスは剣を消した。

「ブレン、ガルゼルジャンを捜す。隠れてまた白銀を撒かれたら厄介だ」

「あぁ。そういや居ないな、どこ行ったんだ」

ディンクルス達が白銀の竜人から離れていくのをヘルは見ていたものの、空中に作られた炎と光の球が無数に放たれるという攻撃には一先ず逃げる事しか出来ず、大聖堂の一部が破壊されてしまった事にも驚きながら、気が付けばディンクルス達を見失った。

「いいのかな、自分の街なのに」

呟くヒーター。するとヘルもその疑問をアイコンタクトで共感する。

「(うおおお!)」

全力で飛び込んでいくテリッテとアーサー。そのスピードを殺したのは尻尾の剣。それでもテリッテはエクスカリバーで尾剣を弾き、蒼白い炎を纏った尾状器官の拳を竜人の腹に叩き込む。しかしその瞬間、テリッテとアーサーは理解した。その鎧には更に白銀の霧が密集して覆われていて、砂のように衝撃を吸収していると。蹴り飛ばされたテリッテ。しかも直後に光弾を撃たれて吹き飛んでいく。

「(あっ)」

「何か、周り明るいよね」

ヒーターがそんな事を呟けばヘルは街を見渡した。

「(あ、うん、確かに。白銀の霧晴れてる。でもガルゼルジャンがまた撒いちゃうんじゃない?)」

「うん。もしかしたら、今なら新しい敵出てこないのかなって」

「(あっ。そうかも、でも白銀の兵隊は何万っているから、安心は出来ないよ)」

「うん」

カンディアウスが纏う嵐が盾となり鎧となり、弾となり剣となり白銀の竜人を圧していく一方、ディンクルスはスンバのホウ湖にやって来た。呼ばずとも気配を感じて龍のエイシンは空から降りてきた。

「エイシン」

「それは指揮か、それとも乞いか」

「選択するのなら、指揮だ。ガルゼルジャンはどこに現れる」

エイシンは遠くを見上げ、瞳に魔方陣を浮かべる。

「いや、変えられない顛末もある。順序が変わった。もう遅い」

「・・・何だと」

「だが、顛末の先にも道はある。大聖堂から30キロほど南」

「そこにガルゼルジャンが」

「あぁ。ただそなたはそこには居るべきではないが」

「どういう意味だ」

しかしエイシンは去っていった。だからディンクルスはゼーレ帝国、アンゼルジに戻った。

「どうだった」

ブレンがそう聞くと、ディンクルスはまたすぐに転移した。そこは大聖堂から30キロほど南下した、長閑な田舎街。

「ここは、どういう事だ」

「ここで待っていればガルゼルジャンは来る。そう言っていた」

「そうなのか?まぁそれならいいけど」

ディンクルスは考えていた。それでもここに居てはならないという言葉の意味を。やがて、その時はやって来た。最初に気が付いたのは空を見上げたジャガーノート。

「おい・・・まじか」

ディンクルス達は一様に空を見上げた。すぐにその街の人々もそれに気が付いた。それは、白銀の隕石だった。

カンディアウスとアポロンの参戦で戦場は更なる混沌に支配されていく。それでも白銀の竜人を前に、ルア達は更なる高みへと向かっていく──。


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