表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
逆襲のアルテミス  作者: 加藤貴敏
第4章「ウォー・ゲーム・オブ・ハザーズ」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

161/275

「白銀の帝国」後編

ジェクスは振り返った。パッとやって来た、エストーン、レヴァク、イエン、ルア、そしてアルファとヒーターに。

「何か面白い事になってるな、へへ」

エストーンがリラックスしてそう呟いたところで、イエンはイシュレに微笑み、イシュレは真顔の笑顔で頷いた。

「人間を生き返らせる場所を確保しなきゃならないから、先ずはひたすらこいつらを倒してくれ」

「人間じゃないのか?」

早速襲ってきた白銀の兵を1人、光弾で砕いたところでレヴァクが尋ねる。

「あぁ。意識と魂が塗り替えられた人間だから砕いて魂子を解放する」

「そういうことか」

「じゃあみんなお願いね」

エストーンが軽く笑って応えたところで、ルアとアルファとヒーターはパッと消えた。それからヘル達の下に来ればルアが事情を説明し、ヒーターはアルファと合体した。

「(敵の数が増えたんなら二手に分かれた方がいいだろ)」

「(じゃあ、ボク、ヒーター達と向こうに行こうかな。テリッテ達とアルファ達は別々の方が戦力のバランス取れるでしょ)」

「うん」

ニーゼカレナ・ヴォーガ大聖堂前。5メートルくらいの白銀の巨獣、それはどう見ても、正に神話に出てくるようなケルベロスだった。でもブレンは子供だましだと鼻で笑った。白銀を纏うケルベロス。直後にその白銀は雄叫びと共に氷の柱となって全方位に波打っていった。銀青と金青の光にぶつかれば、白銀の氷柱は跳ね返って散らばっていく。

「派手なだけか」

すると今度は3つの頭が白銀の炎を吐き出し、氷柱と街の雪を溶かしていく。ブレンはその炎の中に居た。ディンクルス達を丸ごと包み込む凄まじい火炎放射。それでも炎は切り裂かれた。金青の一閃によって。バチンッとケルベロスが仰け反り、そこに銀青の光が撃ち込まれ、巨獣は後ずさった。そんな時だった、更に2体のケルベロスがやって来たのは。2体のケルベロスは3つの白銀の光弾を吐き出し、ディンクルス達を襲っていく。

「チッ手強いな」

それでも本気を出せばブレンはケルベロスの猛攻を払い除け、むしろ少しずつ追い詰めていくが、ジャガーノートは互角のようで、ディンクルスはゆっくりと剣を作り出した。ブレン、ジャガーノートと紺碧の鎧兵、そのどちらもを相手にしていない3体目のケルベロスがディンクルスを捕捉する。

ヘルがフェニックスソウルで、ヒーター達がグローソウルで白銀の兵隊を蹴散らしていく中、とあるビルの屋上に白銀が集まった。

「(ん、何だろう)」

そして白銀は凪ぎ、訪れる沈黙。ヘルは何となくビルを見上げていて、ふと様子を見に行こうかと思ったその時だった、ケルベロスが飛び降りてきたのは。

「(げっケルベロス・・・)」

「何か、見るからに手強そうだね」

足音が雪を踏み固めていく。ふと振り返ったテリッテとルア。威圧的な殺気と存在感。やって来たのはケルベロスだった。すると“アーサーはカシャカシャと震えた”。

イシュレは瞳を虹色に光らせる。突然“発生”した2体のケルベロス。新手を前に、エストーンはロケット弾を肩に乗せてリッショウをした。

「・・・・・500人分くらいの魂子」

「倒さなきゃ、当然魂子は解放出来ないよな」

ケルベロスは走り出した。そしてその大きな口で噛みついていく。カチンっと牙と剣がぶつかる。頭が3つなので素早く別の頭が噛みついてくるものの、ディンクルスはそれをかわして紺碧の一閃を放つ。

「ほう。侮れないな」

白銀を纏っているせいか、ケルベロスは仰け反っただけ。しかしそう言ってディンクルスは微笑んだ。何故なら全く本気ではなかったから。

「最早、心など無いと思わせるほど、見えない。人から作られしものだからどんなに寄せ集められようと心はあるはずだが、覆い護るものが分厚いのだな」

3つの頭からの火炎放射がディンクルスを襲う。しかし剣から紺碧が迸れば、その電気の1つ1つが炎を引き裂き、また巨体を硬直させる。その一瞬に、ディンクルスは剣を構えた。

「ディスペリオン!」

振り上げられた1本の剣から放たれた電気と衝撃波。白銀と雪の街に、紺碧の閃光が瞬いた。ただの一閃とは違う、迸る衝撃波。それは広範囲に渡って全てを押し退ける“退魔の呪文”。ディンクルスが生きていた500年ほど前にあったおまじない。雪が吹き飛び、白銀が消え去り、そしてケルベロスは舞い上がって粉々になった。

「グガグガアア!」

振り返るディンクルス。ジャガーノートは銀青に輝いていた。負けたくない、生きたいという欲望。それが高まれば当然、力は増す。銀青の砲撃も、レーザービームもその威力が高まり、ケルベロスを押し返していく。ふと足音が聞こえた。それは大聖堂の中からで、ケルベロスが3体やって来たのだった。

「ガルゼルジャンよ。お主は、何を創る」

大聖堂内にて。ガルゼルジャンは小さく首を傾げた。視ているのは、ゼリア・ノヴァ。それから手をかざせば、目の前には1体のゼリア・ノヴァが転移させられた。キョロキョロするゼリア・ノヴァ。素早く白銀が入り込めば、その機械生物はスッと機能停止する。

「ん、何か来た」

ボソッとイエンが口を開けば、アンゼルジからゼリア・ノヴァが1体、“軍隊が配備されていたこの場所”に戻ってきた。するとゼリア・ノヴァは軍人が居ないことに戸惑っているのか、キョロキョロしていた。

「なあイシュレ、あいつだけでも蘇らせるか?」

ジェクスがそう言うと、イシュレは手をかざした。蘇ったのは司令官のサウサン。

「・・・これは、一体、どうなって。やはり、あの雪崩に巻き込まれて」

「あぁ。お前以外、塗り替えられた」

「・・・くっ。何という事に」

「そうだ」

ふと思い立ったジェクスは周囲を見渡しながら手をかざした。

「とりあえずこの中に。光壁を張っておいたから、またあんな事されても中に居れば安全だ」

「・・・すまない」

無表情という自信のある雰囲気は無くなっていて、サウサンは深刻そうに肩を落として1台の輸送車に乗り込んだ。するとそのバックドアの前にゼリア・ノヴァが来て、サウサンの顔色を伺う。

「ん・・・」

徐にサウサンは輸送車の中のタブレット端末を手に取った。確認しているのはゼリア・ノヴァの状況。

「1体機能停止か。仕方ない。80パーセントまで引き上げよう」

機械音が鳴り上がり、ゼリア・ノヴァからプシューッと煙が漏れていく。人知れずそれを見たイエンが一瞬だけ笑いを堪える。

「・・・特に問題は無さそうだな。30分したら100にしよう。ゼリア・ノヴァは、引き続き殲滅活動を」

するとゼリア・ノヴァはきびきびと動き出し、サウサンを守るように周辺の白銀の兵隊を攻撃し始めた。

「おりゃっ」

ぶん投げられたロケット弾に火が点けば、それは真っ直ぐケルベロスを襲った。雷光と氷炎の爆風はケルベロスどころかその周辺の白銀の兵隊も大勢巻き込んで、それを見てエストーンは「へへっ」と鼻の下を擦る。狙われたケルベロスは跡形もなく消えていた。

「決まったよな?」

「うん」

「なあ」

ジェクスは振り返る。いつの間にかサウサンが輸送車から出てきていた。でも表情が暗いのは相変わらずだった。

「軍隊だけでも元に戻せないか?100人程度でいい。外の軍隊や上層部との連携を確保したい」

「分かった」

「感謝する」

通信機能のある軍用車を数台確保しながら、ジェクスは軍人達を蘇らせる。蘇った軍人はランダムで、上官や指揮権のある者が蘇ればサウサンは少なからず安堵した。

「周辺の状況を確認し、直ちに上層部へ報告を」

「はい」

ルアは濃縮魂子安定装置に(スーヴェ)の濃縮魂子ボールをはめた。そして狙いを定め、テリッテが一瞬飛び退いた時に光矢を放った。遥か遠く空の彼方まで真っ直ぐ突き抜けていく巨大な光矢。その中でケルベロスはバラバラになっていく。

「(まだ居やがるぞ)」

テリッテが振り返れば道を歩いて来るケルベロス。ルアが見上げればビルの上にはケルベロス。それでもアーサーだけは笑っていた。深呼吸するルア。きっとケルベロスもキリがないくらい出てくるはず。それにもっと強い何かも作られるかも知れない。ケルベロスに負けてしまうくらいじゃ情けない。ルアの体を纏う“風と光”。

「ネイチャーソウル!」

「(ん?)」

振り返る尾状器官のアーサー。テリッテとは別のケルベロスと対峙するルアは、緑がかった風を纏い、更に花びらのような光を舞わせていた。それからルアが飛んでいけば、その跡には花びらが舞っていく。

「(うえー、どんどん来る)」

4体のケルベロスに囲まれているヘルとヒーター達。でもヘルには余裕だった。何故ならケルベロス達が吐く火炎放射には全くダメージが無いから。それからヒーターが尾状器官から6本の青雷のダガーを投げ撃っていけば、ブスブスと刺された1体のケルベロスがバラバラになる。それでもケルベロスは少し強敵で、そのパワーに押されてしまうとヒーターは倒れ込んでしまい、白銀の氷柱に襲われればヘルも硬直してしまう。

雪の道に舞い落ちる花びらの光。するとその瞬間から光は芽吹き、光の蔦となってケルベロスを襲った。それでもその巨体でもって光の蔦を振り払うが、そこに光矢が放たれれば身構える間もなくケルベロスは仰け反って倒れ込む。そこに別のケルベロスがやってきてルアに火炎放射を吐くが、光の蔦が瞬時に壁となればルアは無傷で、ルアが動けない間にも光の蔦がそのケルベロスを牽制していく。また別のケルベロスがビルから飛び降りてきて、白銀の光弾を吐き出せば直撃を受けたルアは倒れ込んでしまうが、緑の風に乗ってすぐに飛び上がり、3体のケルベロスの間を駆け抜けていく。

「(にしても、ずっと足止め食らったままなのもマズくないか?)」

「そうだけど、この大きなのが街に行ったら危険だよ?」

「(ああ、くそ、明らかに人手が足らないな。かといって全員来たら何かあった時に困るもんな。どうしたらいいんだ)」

「じゃあ、カンディアウスさんに来て貰う?」

「(へ?あ、あいつ・・・に?)」

「だって、強い人と戦いたいって言ってたし」

「(いやまぁそうだけど・・・んー、そうだな、アリか・・・。おーい!ルア!)」

サンジャラ、スンバ上空。エイシンはふっと笑った。何故なら視ている未来に“ノイズ”が出たから。その選択は誰が為したものかは分からないが、未来が枝分かれした事は事実。──ならば、某も選択を増やすか。

それからルアは転移して消えた。テリッテとアーサーは揃って深呼吸し、7体のケルベロスを見渡した。2人の気持ちは重なっていた。

「(行くぞ)」

「うん」

リッショウボールを使ったテリッテ。振り返るイエン、ヘル、ディンクルス、そしてガルゼルジャン。飛び出したケルベロス。すると直後、振り上げられた尾状器官の拳によって、ケルベロスは天高く舞い上がった。怯えるという感情は無いので次々と向かっていくケルベロスだが、あっという間に7体は消滅した。

「あれ・・・」

「(お、そうだな。俺も感じる。もうすぐ3段階目のリッショウだな)」

その直後、テリッテ達の目の前に白銀の巨大な渦が発生し、白銀の兵隊が吸い込まれていく。

「(・・・うお、出やがったな)」

それは3つの頭はあるけど、人型だった。美しい重鎧で全身を包んだ5メートルの巨人。水晶のような羽が2枚あり、頭が2つ背中から伸びていて、両腕は砲身になっていた。白銀の騎士とテリッテが対峙するその静寂は白銀と雪に包まれて神秘的ですらあった。最初に動いたのは白銀の騎士だった。スッと右腕を上げて、白銀の光弾を放った。それは融合光壁にぶつかったが、その爆発は道の両端に立つ建物を破壊した。当然、目の前は白銀に染まって何も見えなくなる。それでも、アーサーは拳で白銀の騎士のまるで尾状器官のような頭をバチンッと弾いた。しかし直後、吹き飛んだのはテリッテだった。格段に飛躍した格闘能力。白銀の爆風を抜け、視界が開けたと思った時にはすでに白銀の騎士は頭を伸ばしてきて、テリッテはまた殴られて吹き飛んでしまう。テリッテを受け止めたビルはへこみ、パラパラとコンクリートが落ちていく。それでも、顔を上げたテリッテの蒼白い瞳は輝いていた。

「(面白いじゃねえか)」

剣を振り払ったディンクルス。大体10体くらいケルベロスは倒した。それでもディンクルスにとっては少しのウォーミングアップくらいになっただけ。するとそんな時だった、ニーゼカレナ・ヴォーガ大聖堂から“白銀のゼリア・ノヴァ”が出てきたのは。

「急に趣が変わったな」

手が空いたブレンやジャガーノート達もやってきて数で優勢になったところで、白銀ゼリア・ノヴァの背中から6枚の水晶の羽が浮かび上がった。直後に鋼鉄のボディーは更なる白銀の重鎧に覆われ、また更に両腕だけ巨大化した。静かに前に出ていくブレン、銃口を向けるジャガーノート。その瞬間、白銀ゼリア・ノヴァから周囲の足元に向けて白銀が広がった。

「来るぞ」

足元周囲30メートルくらいに広がった白銀。それは突如大爆発した。舞い上がるように吹き飛んだジャガーノートと紺碧の鎧兵。

「くっそ!」

ヘルとヒーターはふと立ち止まって周りを見渡した。何故なら周りの5体のケルベロスがいきなりバラバラになり、1ヶ所に集まったから。

「(こういうの、やっぱりガルゼルジャンが操ってるんだよね・・・。ずっと視てるのかな)」

そして誕生したのは、9つの頭を持った白銀のドラゴンだった。

「(ヤバそう。やまたのおろ・・・あれ、9か)」

9つの頭が一斉に白銀の炎を吐き出せば、その勢い、衝撃はまるで核爆発かのよう。ビルは溶け、アスファルトも粉々で、雪景色は炎の海と化した。

「(いいのかな。自分の街なのに)」

とりあえずヒーターを連れて上空に転移していたヘル。その隙にヘルとヒーターはリッショウボールを使った。最早ヘル自身が火の玉のようで、ヒーター達は雷そのものかのよう。9つの頭でも追えないくらいヒーターは高速で飛び回り、ヘルが突撃していけば頭の1つがガツンと地面に叩きつけられる。それでも頭達が各々白銀の光線を吐いていけばヘルとヒーターはその数の多さに翻弄されていく。

「現在、白銀の被害を受けているのはアンゼルジ、トリマ、そしてウイルクの一部、白銀に毒された者の数は凡そ13万人程度かと思われます」

「分かった」

通信が切れるとサウサンは肩を落とした。アンゼルジから南に位置する、自分が居るトリマだけではなく北側のウイルクまで被害を受けていたとは。このままでは、止められない。被害が広がる一方だ。輸送車から出たサウサン。眺めたのは、ジェクス達が戦っている新たなモンスター。“素早くしなる1本の尻尾の先が巨大な剣となっていて、全身に砲身がある重戦車のようなケルベロス”。エストーンのロケット弾は完全に迎撃され、近付けば斬られ、遠ければ砲撃される、そんな強化版ケルベロス。たった1体なのに、5人のマガツエルフを追い込んでいく。そんな時だった、ジェクス達の近くのビルにルアとカンディアウス、そしてアポロンがパッと現れたのは。

読んで頂きありがとうございました。


果たしてゾーンは本当に復活してしまうのか。まだウォーゲームが始まったばかりなのに、相手がでか過ぎですかね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ