「白銀の帝国」前編
「ん?何だ、あの犬。あぁ自警団のか」
ブレンがそう呟けば、半分だけ振り返るディンクルス。
「(何でここに?)」
「無論、戦の軸を掴む為」
「つーか、すげえ数だな」
黒と金の2色がカッコイイ感じのウパーディセーサに変身するブレン。するとジャガーノートも体の所々を銀青に染まった鎧で覆い、鼻息を強く吹かせた。
「(い、いいなー)」
ディンクルス達に向かっていく白銀の巨人。すると白銀の煙がブースターとなって巨人が飛んでいくという、その脅威にタックルを仕掛けたのはジャガーノートだった。2倍の体格差をものともしない衝撃がドカンッと響けば、巨人は失速する以上に押し返された。
「(ボク、どうしよう。いや、とりあえず数減らすか)」
ヘルが去っていった事など気にも留めないディンクルス。それからジャガーノートが銀青の光で砲撃すれば、巨人はガードしながらも後ずさり、胸元から銀青のレーザービームが放たれれば、巨人は吹き飛んで倒れ込んだ。
「大したことないな」
「ブレン、ガルゼルジャンの居場所は分かるか?」
「一応ニュースじゃ、ニーゼカレナ・ヴォーガ大聖堂ってとこに居るってなってるが、さすがにこの数はヤバくないか?」
「このような雑魚などお前達の敵ではない」
「まぁ、な」
ブレンはふと確信した。最初は“お主”と呼んでいたのに。どうでもいいが、その方が現代っぽくて親近感はあると。ガクガクと立ち上がる巨人に銀青の光が砲撃されれば、その巨体はバラバラに砕けた。そしてディンクルス達は進軍を開始した。向かってくる白銀の兵隊など、軽く力を放てば簡単に砕け散っていく。
ニーゼカレナ・ヴォーガ大聖堂。そんな状況を、ガルゼルジャンは内心で笑っていた。自分の目の前には数人の兵。ふと思い出していた。自分を蘇らせた男の言葉を。
「戦争など、弱き者の狼狽えに過ぎない。この力の使い方、少々分かってきた。せっかくの客人だ、一興を手向けてやろう」
一方、テリッテは3体の白銀の巨人に囲まれていた。アーサーは笑っていて、テリッテが本気で蒼白い光矢を放てば巨人は吹き飛んで砕け、小さな雑居ビルに大きな穴が空いた。
「あっ。やっちゃったかも」
「(気にすんなって。俺達が強すぎるんだから)」
それから素早くエクスカリバーで2体の巨人を斬り砕けば、テリッテはふうっと溜め息。
「(感じるだろ?お前のリッショウ、ほぼ3段階目に来てる)」
「うん。あとちょっとだよね」
そんな時だった、テリッテの前にドスンッと“特異な白銀の鎧兵”が降り立ったのは。
第67話「白銀の帝国」
「(ん、さっきのとは違う、のか?でも何か違うな)」
とても豪華な大剣を片手にした、豪華な鎧の兵が白銀に運んで貰って飛び立って、振り回した大剣から白銀の光を放てば、テリッテは吹き飛んだ。
「(くっそ何だ!)」
ヘルは振り返った。やって来たのはルアだった。ペルーニと合体して、黒髪の中から5本の緑色の長い三つ編みを垂らした姿で。
「(あ、初めてだっけ?)」
「うん。大丈夫?」
「(全然平気だってばー。見てよこれ)」
ヘルは炎と光を混ぜて、日光のように暖かい色の炎を作り出し、それをクウカクと融合させて全身に纏った。ただでさえシュナカラクと合体した事で毛並みが赤やオレンジ、黄色で鮮やかになったのに、炎と光のクウカクを纏えば、それはまるで──。
「すごい、何か、フェニックスみたい」
「(えっへへへ、1回死んで蘇ったし。じゃあフェニックスソウルだな)」
そんな時にシュッと現れて降り立った、豪華な槍を持った豪華な鎧兵に、ルア達は振り返る。
「(何か出た、絶対強い奴)」
素早く地面に叩きつけられた槍から放たれる白銀の一閃。それがルア達の間を通りすぎる瞬間にも、水平に振り回された槍からも一閃が放たれ、コンビニが崩壊した。
「(ヤバイ!ルア!)」
「・・・・・ふう、大丈夫」
じっとしてたらやられる一方だからとヘルは飛び出し、その一瞬の横目で“蔦の柱に護られたルア”を確認する。その直後、ヘルよりも先に鎧兵の腕を掴んだのは、蔦だった。すぐにちぎられたものの、一瞬だけ引っ張り合う間という隙が出来て、そこにヘルが突撃していけば鎧兵は吹き飛んだ。でも倒れる事なく体勢を立て直すと素早く槍で斬りかかってきたので、ヘルは魔法の手で受け流しながら放つ燃える光弾で対抗していく。
「新手が来たぞ」
ブレンがそう言えばディンクルス達は足を止め、豪華な2本の剣を持った豪華な鎧兵と対峙する。指示されなくともブレンとジャガーノートが前に出ていけば、鎧兵はブレンに激突していき、それをブレンは金青の長剣で弾き返す。
「司令官、現在の蘇生者は1320名です」
「あぁ」
常に無表情の男性司令官、サウサン。その眼差しはふとイシュレに留まり、アンゼルジの街へと流れる。
「イシュレ、交代するか?」
「うん」
散らばった大量の魂子から個人の魂子を選り分けて集め、蘇生させる。という魔法を常に意識しているので、ただ立っている見た目よりも精神力の消耗は大きい。そうジェクスが交代すると、イシュレはふうっと深呼吸。それからふとイシュレが見たのは、ゼリア・ノヴァが白銀の兵隊を“1人ずつゆっくり”と砕いている状況。といっても、テリッテ達が速すぎるだけ。
「おい!離れろ!白銀が来るぞ!」
「近付くな!」
アンゼルジの街の境界線では白銀が漂っていた。雪が積もった街では分かりづらいが、それは触れてはいけない毒の霧。魔力の無い者は意識と魂を塗り潰されてしまう。そこでふとイシュレは首を傾げた。ゼリア・ノヴァは大丈夫なのかな?と。ふわっとゼリア・ノヴァ達の足元を白銀の霧が通りすぎていく。
「ん、散らばる魂子の量が減ったな」
「どういう事だ」
ジェクスの呟きに問いかけたのはサウサン。
「手強い兵隊が出てきて、足止めを食らっているようだ」
「・・・ゼリア・ノヴァの機動力を10パーセント引き上げさせろ」
「はい」
ゼリア・ノヴァから機械音が鳴り上がる。それからプシューッとブースターから排熱されれば、ゼリア・ノヴァはスピードアップした。走る速度だけじゃなく、光の弾の威力も増し、“まぁまぁ”戦闘力が上がった。
「ゼリア・ノヴァ、速くなった」
「まだまだゼリア・ノヴァの本来のパフォーマンスではない。実戦は初めてだからな、どうしても慎重にならざるを得ないが、ゼリア・ノヴァの機動力が100パーセントに至ればガルゼルジャンなど容易く抹殺出来るだろう」
ニーゼカレナ・ヴォーガ大聖堂にて。ガルゼルジャンは手を伸ばした。目の前には100人の兵隊。すると白銀が吹き荒れ、100人の兵隊を包み、1つの渦となった。やがて渦は1人の豪華な長剣を持った豪華な鎧兵となり、王に跪いた。
「行け。ゾーンに刃向かう者を徹底的に摘み取れ」
「御意!」
テリッテは蒼白い光矢を放った。しかしそれは大剣で受け止められ、押されながらも最後には弾き飛ばした。それでもテリッテはすでに飛び込み、エクスカリバーを振り上げていた。ぶつかり合う2つの眼差し。それでもガツンッと、2本の大剣は衝突した。
「(くっ人間以上に速えな)」
押し合う大剣と眼差し。鎧兵の足がアスファルトを砕く。それでもテリッテはすでに、短い尾状器官を鎧兵に向けていた。ドカンッと放たれる蒼白い衝撃波。直撃はしたが手応えはそうでもなかった。そうテリッテは吹き飛んでも倒れる事のない鎧兵を真っ直ぐ見つめる。
「(ようやく本気出せるぜ)」
テリッテも分かっていた。その高揚を。だから返事をするようにふっと笑みも溢した。
「オージャソウル!
(オージャソウル!)」
「ブレン、ここは任せる。私達はガルゼルジャンの下へ行く」
「あぁ」
ブレンが長剣から金青の一閃、光の弾を立て続けに放っていけば、ガードしていた豪華な鎧兵は体勢を崩される。そこに素早く飛び込んでいき、ブレンが豪華な鎧兵をビルに押し付ければ、ディンクルスは先に進んでいく。先を歩くジャガーノートが両腕や両肩から銀青の光弾を連射していき、白銀の兵隊を簡単に蹴散らしていく中、ブレンは豪華な鎧兵を蹴り飛ばし、金星の一閃で追い打ちをかける。白銀の剣が1本、舞い上がってカランカランと転がった。それでもブレンは飛び込んだ。もう1本の剣を杖のように立て、倒れそうな体を支える豪華な鎧兵に向かって。
「おらあ!」
ふとディンクルスは足を止めた。聞こえたのだった、その者達の欲望が。するとディンクルスはジャガーノートの攻撃を制止した。
「ならば束の間、自由に命を捨てるがいい」
手をかざしたディンクルス。その相手は普通の白銀の兵達。白銀に染められた人間。すると直後、白銀の人間達の瞳に紺碧が宿った。一方、ニーゼカレナ・ヴォーガ大聖堂にて、ガルゼルジャンは振り返った。それは胸騒ぎであり、気配そのものだった。ディンクルスとジャガーノートの前に立ちはだかる何百の白銀の兵隊。そこに向かっていったのは、“白銅の兵隊”だった。白銅の兵隊が放つのは薄く紺碧に色付いた光。兵隊同士がぶつかり合っていく。白銀の光は白銅の兵を砕き、薄い紺碧の光は白銀の兵隊を砕いていく。
「よお」
振り返るディンクルス。そこにやって来たのは余裕の出で立ちのブレン。
「最初からそうすればいいんじゃないのか?」
「世を動かす戦とは、人が為すもの。このような屍人形では味気無い」
「そうか。まぁ確かにな。仲間がゾンビじゃな」
「この者達には束の間の安息を与えただけだ」
テリッテが振り下ろすエクスカリバーを受け止めた白銀の豪華な大剣。しかし直後、豪華な鎧兵は蒼白い炎で武装された拳に吹き飛ばされた。転がっていく大剣と、鎧兵。そして蒼白い一閃は放たれた。
「(ふう。良い運動になったぜ)」
リラックスするように、蒼白い炎の鎧は脱がされて空に溶けていく。
「今度はあっち行ってみよう」
「(うおおっ何だ!)」
2人が見上げたのは、ビルの上から吹き下ろす白銀だった。それはただの吹雪のように押し寄せてきて雪の街を撫でていく。そう思えば、あっという間にテリッテを包み込んでいく。
豪華な槍から放たれていく、雨のような白銀の弾。狙われたのはルアだった。光壁に蔦の網が覆ったものが作り上げられると、グサグサと白銀が刺さっていく。
「(双光火弾!)」
炎と光を纏った、燃える光弾。光弾とクウカクが混ざり、炎と光がそれぞれ2重に合わさった、ヘルの渾身の魔法。その爆発は周囲の雪を溶かして吹き飛ばし、アスファルト、街路樹、自動車、建物をも巻き込んだ。
「(怒られないよね?これ)」
豪華な鎧兵はバラバラになっていたが、街の一角が爆撃されてしまった。するとルアとヘルは爆笑した。
「(新技っていったら新しい名前だよなぁ)」
「あ、ヘルあれ」
「(雪崩!・・・もう来る!)」
ルアとヘルは寄り添って融合光壁に籠った。視界はもう白銀一色。
「(もしかして街の外まで行っちゃうのかな)」
白銀が過ぎ去ったので光壁を消しながら、ルアは振り返る。
「私見てくるから」
「(おっけー)」
雪の街を見下ろす為に飛び上がったルア。白銀の嵐とも呼べる波がどんどん街を撫でていくので、そのままそれを追いかけながらジェクス達の下へと戻ってきた。しかしそこで、ゼーレ軍は白銀に染まっていた。
「ジェクス」
「マズイ事になった。せっかく蘇らせた人間達も」
ジェクスもイシュレも白銀の兵隊と化してしまった軍人達と戦っていて、ルアもすぐに一緒になって光矢を放っていくが、見渡す限り白銀の兵隊でキリがなく、ふとルアは手を止めた。何故ならジェクスもイシュレも少し疲労していたから。
「大丈夫?」
「人間を蘇らせ続けるのは結構疲れるんだ」
「一旦離れた方がいいんじゃない?」
「これくらい問題ない。だが対策を考えないと。このまま放ってく訳にもいかないだろ?」
「対策・・・じゃあみんなでガルゼルジャンを」
「こいつらも放っておけないだろ。オレ達がこいつらを減らしておくから、行ける奴はガルゼルジャンを叩きに行った方がいい」
「うん。テリッテ達に伝えたら、他の仲間呼んでくるから」
それからルアがパッとやって来たのは、ジェクス達の家。声をかければやって来たエストーンとレヴァクが珍しい客にキョトンとする。それからルアが禁界のキャンプ場にやってくれば、集まってきたアルファやマスカット達は戦況の報告に気を引き締めていく。
「(2人共ーっ)」
「(おう)」
ヘルがテリッテ達に合流し、一緒に白銀の兵隊を蹴散らしながら進んでいき始めたそんな時、そこに3人の豪華な鎧兵達が立ちはだかった。
「(来やがったな。オージャソウルだ!)」
「うん!」
「(ねえねえ見て見て!フェニックスソウル!)」
「(お!いいじゃねえか)」
「(へへへ)」
サンジャラ、スンバ上空。エイシンは瞳に魔方陣を浮かべながら、遥か彼方をじっと眺めていた。上空から眺めるニーゼカレナ・ヴォーガ大聖堂。その中に立つガルゼルジャン。やがてガルゼルジャンは変身し、ゼーレ帝国の8割が白銀に染まった。ゼーレ帝国の国王は、ゾーン帝国の復活を認めざるを得ないと記者会見を開く。それから白銀の隕石が落ちれば、ゼーレ帝国から南方の国々が白銀に染まっていく。
「果たして、この顛末を変えられるか。ディンクルス・イコアよ」
ディンクルスは足を止めた。白銅の兵隊、ブレンとジャガーノートの前に立ちはだかる3人の豪華な鎧兵。
「雑魚もここまで大量だとめんどくせえな」
走り出すブレン。ジャガーノートが銀青の砲撃で援護していく中、ブレンは長剣を金青に輝かせ、白銀の大剣ごと豪華な鎧兵を斬り飛ばす。
「なあディンクルス、その強い奴操ってくれよ」
「・・・やってみよう」
ディンクルスは豪華な槍を持った豪華な鎧兵を見つめる。しかしその者からは欲望どころか、人間の心すら感じない。それでもディンクルスは手をかざした。その瞬間、その豪華な鎧兵の動きが止まり、カランカランと槍が落ちた。
「まるで機械のような心だが、干渉は出来た」
ジャガーノートの砲撃が豪華な双剣を持った豪華な鎧兵を仰け反らせ、そこにブレンが金青の一閃を放ち、その豪華な鎧兵はバラバラに砕ける。そんな時、立ち尽くしていた豪華な鎧兵は薄い紺碧に染まった。
「銅じゃないのか」
「お前達の力はお前達の欲望の力だ。だからこの人形には私の力を入れた」
「戦を起こすなら、人形でも無いよりマシなんじゃないか?この時代じゃ戦争つったら戦闘機だ」
「・・・なるほど。一理ある」
紺碧の鎧兵が槍を拾うと、まるでSF映画に出てくる戦闘ロボットのように、豪華な大剣を持った豪華な鎧兵を襲った。しかも紺碧の一閃は白銀の一閃に勝り、豪華な鎧兵はやがてバラバラとなった。そんな紺碧の鎧兵に、ブレンは口笛を贈った。それから進軍していくディンクルス達はそして、ニーゼカレナ・ヴォーガ大聖堂を目前にした。そこで敷地への大きな門を背後に立ちはだかっていたのは、3つの頭を持った白銀の巨獣だった。




