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逆襲のアルテミス  作者: 加藤貴敏
第3章「ロードスターの進撃」

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「連鎖する想い」後編

それはまるで太陽と月が重なったような存在感、そして地平線が見えるほどに果てのない青空のような気迫だった。ゆっくりと立ち上がるカルベスの態度には誰が見ても戸惑いと恐怖が伺えた。それから直後に放たれた紫黒のレーザービームはテリッテに届く前に霧散した。ルアとヘルはただ釘付けになっていた。

「何故だ!」

そう叫ぶとカルベスはロケットのように飛び出し、テリッテに殴りかかった。するとカルベスを“斬り飛ばした”のは“アーサーのエクスカリバーだった”。蒼白い一閃と共に跳ね返ったカルベスの体は地響きを轟かせた。

「(最高だぜ、この力。このままカルベスをぶっ殺すぞ)」

「待って」

「(あ?)」

立ち上がるカルベスの胸元には大きな傷が出来ていた。それは“テリッテ達”という存在が希望そのものだという事。

「何故だ!何故そこまでする!」

──少し前。

「この国の古い言葉だ。米俵が重たい時は、棒を刺して2人で持てばいいと。つまり、この大きすぎる力を使うには、手分けすればいい」

「手分けって、どうやって」

ホープが尋ねる。

「単純に考えれば、精霊に憑依して貰う。それは意識の器を大きくする事だ」

「そうか、ヘルがやってたよな。あれすれば、強い力も使えるようになるんだな」

「しかし今は望みは薄い」

「何でだよ」

「カルベスには精霊の力は効きづらいからな。精霊に憑依して貰ったとして、カルベスを倒すほどの力となるかどうか」

「はあ?じゃあどうすんだよ」

「何か心当たりは無いのか?意識を共有する方法」

「そんなん知るかよ。そっちこそ無いのか?魔法使いなんだろ?」

「残念だが、血剣術にそのような術は無い。力を合わせて強い魔法を生む事なら出来るが、意識を融合させた例は無い」

「何かアドバイスしに来たと思ったら違うのかよ」

「少々気になって邪魔をしに来ただけだ」

「ちょっとアーサー、心配して来てくれたんだから、そんな事──」

「あっ!」

ホープの言葉を遮ったのはグズィールだった。

「ある」

「ん?何だ?」

「あるよ?意識を合わせる方法」

「本当か!」

「私、ドルタスと一緒になって戦ったよ」

「ドルタスと・・・ああ!オレもあるぞ、何つったかな、あれ」

グズィールに続きメアまでそう言い始めたが2人はすぐに思い出せなくて唸り出す。するとアルファも「あっ」と声を漏らした。

「ドゥシピス・ゼプレ」

「それだー!」

「それって、ベクルス達と居た時、ドルタスが森の中で作ってたやつか。そういや、俺、ドルタスと一緒になった事ないな」

「それってどうやって使うの?」

「とにかくドルタスの所行こう!」

ホープの問いはテリッテの勢いに呑み込まれ、それから全員は転移した。その直後にそこが紫黒の衝撃波と爆発に巻き込まれていった事など知らずに。

「ありがとうございます」

テリッテがお礼を言えばファウンデイルは快く頷く。やって来たのは勿論禁界の合同キャンプ場。ドルタスは焚き火の前でフルーツジュースを飲んでいた。

「ドルタス!」

「え、ど、どうしたのみんなそんな慌てて」

「ドゥシピス・ゼプレ、使わせてくれ。今カルベスと戦ってるんだが、それが無いとダメなんだ」

「ああ、そうだよね、そんな時間か。う、うん、ちょっと待ってて」

テントから出てきたドルタスから奪い取るようにドゥシピス・ゼプレを掴んだアーサー。

「どうやって着けるんだ」

「あ、アーサーは使えないよ?」

「え・・・何だって!」

「それは、デュープリケーターが、それを着けてる人に憑依出来るようにする為のもので、デュープリケーター同士は、多分出来ない。もしデュープリケーター同士がやったら、細胞の融合率が高過ぎて、そのままくっついて離れなくなるかも」

「え、マジか」

「じゃあ、私、着けるよ」

テリッテとアーサーは見つめ合う。その一瞬、ふとグズィールは感じた。黙って頷き、テリッテにドゥシピス・ゼプレを手渡したアーサーの信頼を。

「それと、あれも持ってくるからちょっと待ってて」

水晶のように透明な円い装置を左胸に置き、それを1本のベルトで脇下、もう1本で左肩にかけての斜め掛け固定をするもの、というシンプルな作りなので、テリッテは深く考える事なくドゥシピス・ゼプレを装着すると、そこにドルタスが何やら片方しかない”指無し手袋型の装置”を持ってきた。言われるがまま、テリッテは左手にそれを着ける。それは手の甲部分に何かを嵌め込める窪みがあるものだった。

「間に合ってよかった。これは濃縮魂子安定装置だよ。濃縮魂子は予想以上に危険だからね。濃縮魂子ボールをここに嵌め込めば、その濃縮魂子を安定的に使えるようになるんだ。霊気の流れを緩めて全身に分散させるイメージでね」

「おお!すごいなそれ。じゃあこれも使えるのか?」

そう言ってアーサーが見せた、みんなで作った大きな濃縮魂子ボールを、ドルタスは目を見開いて凝視する。

「こ、こんなに。こんなの使ったら、危ないよ」

「いや。これじゃなきゃカルベスは殺せねえんだ」

「そ、そうなの?・・・んー、でもむしろ安定させて使わないとそもそも使えないだろうし。こりゃあ、濃縮魂子ボールの大きさに規定を設けないとだめだな。あ、ううん、多分使えると思う」

「ねえドルタス、ドゥシピス・ゼプレ、もっと作ってよ」

「いいけど、誰が使うの?」

するとドルタスの冷静な問いに、アルファはマスカット達を見た。

「マスカット達の分。4人もアルファ達と一緒になれたらもっと戦えるよ」

真っ先にマスカットが期待を込めた微笑みを浮かべると、他の3人も、そしてメアやグズィール達も期待を共有していく。

「そんなにカルベスは手強いんだね。分かった、ちょっと時間かかっちゃうけど、4人の分も作るよ」

ファウンデイルの転移で戻ってきたテリッテ達。テリッテがお礼を言えばファウンデイルは満足げに去っていったので、そしてテリッテはアーサーと頷き合った。装着者が本人の魔法で作った光に反応して、ドゥシピス・ゼプレは自動的に起動し、その光を線に変える。線を浴びたアーサーが淡い光に包まれ、やがて透明になり、光となってドゥシピス・ゼプレの円い装置に吸い込まれると、直後にテリッテの背中から、翼の力の鎧に覆われながらアーサーの4本の尾状器官が生えてきた。更には足首から下はアーサーのように鳥足となり、腕も太くなり、華奢な体は少しアーサーっぽく全体的にがたいが良くなった。

「ふう、何か、すごい感覚」

「(翼の力ってこんな感覚なのか。最高だ。これだけでもいけそうだ)」

円い装置が青く光ったと思ったら、そこからアーサーの声が聞こえてきた。そうマスカットは人知れず目を見開く。

「アーサー、ちゃんとテリッテと息を合わせるんだよ?」

グズィールがそう言うと、円い装置からは鼻で笑うような鼻息が聞こえてきて。尾状器官がカシャカシャと振るえた。

「(早速着けるぞ)」

「うん」

まるで磁石のように、大きな濃縮魂子ボールは安定装置の窪みにくっついた。

「(テリッテはまだ2段階目だよな。だったら俺が引き上げてやるよ)」

「う、うん」

呼吸と感覚は共有されているから、逆に言えばリッショウをするには息を合わせないといけない。でも逆に言えば意識が共有されているから、例えば二人三脚が神経で繋がっているようなものなので、合わせるのは難しくない。直後、テリッテの存在感と気迫は爆発した。白い翼は蒼白く染まり、全身には青い光の筋が浮かび上がった。

「ううっ!」

「(落ち着け、大丈夫だ。くっ体が破裂しそうだ。でも俺達なら抑え込める!)」

「うん」

やがてテリッテの瞳も蒼白く輝き、目尻には傷口のように青い筋が生まれた。

「ふう・・・・・ふう」

「テリッテ、大丈夫?」

恐る恐る尋ねるグズィール。気が付けば、テリッテ以外のみんなはその部屋の1番端まで避難していた。

「・・・・・うん。大丈夫」

「(すげえなこの力。よし、みんな、待ってろ)」

そしてテリッテは飛び出した。それからテリッテが自分の翼の力を具現化させた弓を作り出せば、アーサーは尾状器官の手にエクスカリバーを作り出した。

「(行くぞ!)」

「うん!──」

「何故だ!何故そこまでする!」

カルベスはテリッテを見上げながら、周りの敵も“視渡す”。何故そうまでして、この者達は身を呈するのだ。

「これは血剣族の戦いだ!何故そうまでする!」

「(違うな。これは俺達の戦いでもある)」

「みんなが手を取り合ったのは、あなたがそうさせたんだよ?あなたのやり方が間違ってるから」

「私がそうさせた、だと?違う。私は、血剣族の憎しみの集約だ。貴様らが、私をこの姿にさせた!」

怒りが形になるように、カルベスに纏っていた紫黒のテムネルの衝撃波は鎧となる。それから背中から衝撃波が吹き出し、その機体は宙に浮き、それでも止めどなく溢れる紫黒のテムネルは見えないバリアとなっていく。

「(行くぞ!)」

「うん」

先手を打ったのはテリッテだった。蒼白い光矢が放たれ、カルベスが押されていく。本来テリッテは遠距離攻撃が主体だが、アーサーの力と意識がその体を突き動かした。蒼白い光矢が霧散したところでテリッテはエクスカリバーを振り下ろす。硬直していて動けないと思いきや、カルベスはテリッテの剣を受け止めた。テリッテは眉間を寄せる。まるで生きているように、紫黒のバリアはカルベスの手に集中していた。そしてカルベスが手を振り払えば、紫黒のバリアは瞬間的に刃となってテリッテの剣を弾いた。しかしすでに、テリッテは短い方の尾状器官を突き出していた。ショットガンが轟くように、蒼白い衝撃波は至近距離でカルベスを襲った。吹き飛んだカルベス。同時にまるで水が波を打つように、紫黒のバリアは歪み、ゆっくりと元に戻っていく。

「(お前の言いたい事、全然届かなかったな。でもそれだけじゃ甘いと思う)」

「うん。・・・やっぱり、やるしかないね」

テリッテは弓を構えた。同時に光矢を作り出し、弦を引く。カルベスが向かってくれば光矢を放ち、続けて剣から一閃を放ち、湾曲して追尾してくる紫黒のレーザービームをかわしながら距離を詰め、そして斬りかかる。紫黒の欠片が舞い上がる。それはカルベスの機体を破片。墜落したカルベスの周囲の建物が勝手に粉砕されていく。紫黒のバリアは消えていないが、その腕には裂傷があった。

「(もっとリッショウ高められるだろ。まだ俺達の気が完全に融合してない)」

「うん。・・・ふう」

「(おお、そうだ、もっとだ)」

連射される紫黒のレーザービームは少し逃げたくらいじゃ湾曲して追いかけてくる。だからクウカクの壁を作ったり、剣で振り払ったりして全てのレーザービームを防いだところで、すると最後に紫黒の球が放たれた。目を見開くテリッテ。それからルアやヘル、イエン達は顔を背けて身を屈めた。核爆発のような衝撃が絶方の壁全体を激しく揺らしていく。

「(・・・テリッテ)」

カルベスは見上げていた。爆風が消えていく様を。何となく分かっていた。あれでも、まだ生きているだろうと。だからもう1発、紫黒の球を手に蓄えていた。そしてカルベスは捉えた。消えていった爆風から垣間見えた、テリッテの蒼白い瞳を。テリッテは弓を構えていたが、その手にあったのは光矢ではなかった。

「はあああ!

 (うおおお!ジャベリン!)」

放たれた紫黒の球と、蒼白い光槍。弾丸のように飛んでいった球は、超音速を超える光槍に貫かれた。ソニックブームで紫黒の球の爆風は散っていき、その直後にはカルベスの胸元の水晶体にも穴が空いた。それは一瞬だった。蒼白い光が舞い上がっていく。光槍の尾がキラキラと周囲を照らす中、ガタンと倒れた音が一気に静寂を連れてきた。

「(おーし、やったぜ)」

「うん」

カルベスのアイガードは光を失っていた。絶方の外では歓喜が湧いていた。それからテリッテが大きく深呼吸したそんな時だった、機体の胸元の穴から紫黒のテムネルが間欠泉のように噴き出したのは。

「(何だ?)」

一気に20メートルくらい噴き上がった紫黒のテムネルはそのまま宙で丸くなっていく。やがて機体から紫黒のテムネルが出なくなると、宙で丸くなっていく紫黒のテムネルは次第に小さくなり、そしてそれは人間と同じ大きさの、虹色の目尻が煌めく紫黒のギガスアーマーとなった。

「(出たな、本体。やっとだぜ。多分、あいつを殺せば本当に終わりだ。行くぞ!)」

短い方の尾状器官を吹かして急降下していくテリッテ。

「(うおおおりゃあっ)」

カルベスは動かなかった。まるで斬られるのを待っていたかのように、手さえ出さなかった。エクスカリバーは、勢いよくカルベスをすり抜けた。

「(え)」

何が起きたか分からなかったので、振り下ろした剣を素早く振り上げる。それから水平に振り抜いてからやっとテリッテ達は理解した、まるで空気かのように手応えが無い事を。なのに直後、テリッテは腹を蹴られて吹き飛んだ。

「(どうなってやがる!)」

「私は不死身だと言っただろう」

「(そんな訳ねえだろ!)」

「その訳を、理解出来ないならそれまでだ」

イシュレはハッとした。それをジェクスとイエンに伝えると、2人は(ツェピー)を放った。体に巻きついたのをゆっくり見下ろしてから振り返るカルベス。そこにジェクスとイエンがやって来る。

「お前はテムネルそのものだ。肉体も無い。だが、この魔法は気に対して働く拘束魔法だ。テムネルだろうが霊気は霊気だからな」

「確かに理にはかなっている。だが──」

カルベスの体がほんのりと紫黒に光っただけで2本の光の鎖は激しく振動し、砕けた。

「力比べでも負けない」

「力比べじゃない。今の(ツェピー)はただの道具だ」

「何だと?」

「霊気ってのは普段は目には見えないし触れない。だからそう出来るようにする為に、粒を繋げて固めて大きくする。魔法を使う時の意識が、その役割だ。お前の体に結合(ソウジュ)の魔法を注入した」

カルベスはゆっくりとジェクス達に背中を向けた。同時にアーサーが「は?」って言ったので、ジェクスはそれを鼻で笑う。

「つまり、魔法が効いてくれば、攻撃が通じるようになるって事だ」

「(マジか)」

「これくらいしか手伝えないからな。後は頼んだぞ」

「うん、ありがとう」

「ふん、無駄だ。力比べとなっただけ。勝てると思うな」

「(やってみなくちゃ分かんねえよ!)」

アーサーに突き動かされてテリッテが剣を振り下ろす。しかしそれも手応えはなく、直後にテリッテは至近距離で紫黒の衝撃波に襲われた。

「(くっ・・・クウカクも纏えば何て事ない。時間切れになる前にやるぞ)」

「うん」

再び光の鎖が飛んでいきカルベスに絡み付く。放ったのはエストーンとガグナ。その一瞬の隙にテリッテが蒼白い光矢を放つものの、穴が空いたのは絶方だった。カルベスは素早く光の鎖を粉砕し、テリッテに向けて紫黒のレーザービームを連射する。テリッテが逃げたり防いだりしている間、ルアはプリマベーラを構えた。その光矢の先端に、浄化の濃縮魂子を纏わせながら。そしてレヴァクとイシュレが(ツェピー)を放った直後、ルアは光矢を撃ち放った。

読んで頂きありがとうございました。


力を合わせて生み出していく新たな力。その連鎖していく想いが遂にカルベスを追い詰めていく──。

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