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逆襲のアルテミス  作者: 加藤貴敏
第3章「ロードスターの進撃」

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「連鎖する想い」前編

ジェクス達でさえ無意識に後ずさって、睨み合うイエンとカルベスを見渡した。“立てる建物が無い”から光壁で足場を作ったイエン。そして直後、イエンは足を踏ん張り、カルベスは身構えた。ソニックブームで瓦礫を吹き飛ばしながら飛び出したイエン。巨大な岩石のようなカルベスの拳とイエンの拳が衝突する。弾かれたのは、カルベスの拳だった。

「ぐっ!!」

すかさず懐に飛び込み、イエンが岸壁のような胸元を蹴りつければカルベスはズドンズドンと後ずさり、それから20メートルの巨人は絶方の中心まで追いやられると、野次馬の血剣族は歓声を漏らした。

「(すごいねイエン。マガツの力、精霊の力、リッショウ、全部が一緒になってる)」

「じゃあカルベスが動けなくなったら、濃縮魂子での浄化をやっちゃおう」

「(うん)」

紫黒の衝撃波が轟音を上げた。ハッとしたようにルアやヘルが見つめる中、衝撃波は受け止められ、そのまま歪んで消えていった。更にイエンは銃弾のようにカルベスの顎に突撃して、遂に巨人は倒れ込んだ。とはいえただバランスを崩して倒れ込んだだけで、スタミナという概念も痛覚も無いカルベスは受け身を取って立ち上がった。しかしその直後だった、カルベスが目を見張ったのは。空に手を伸ばしていたイエンは、頭上に火球を作り出していた。まるで宇宙から本当に取ってきたかのように熱く、眩しい炎の塊。ファウンデイル達でさえ眩しそうに目を細めるそれがそして放たれた瞬間、身構えながらカルベスは全身に紫黒を纏った。

「(わああ、光壁してないとボク達も焼けちゃう)」

眩しすぎて、その中心で焼かれるカルベスを直視出来ないが、ルア達、ジェクス達はその肌で感じていた。とてつもない熱を。照明弾のように爆発して、嵐のように轟音を撒き散らし、瓦礫を押し退けては溶かしていく。やがて全てを焦がす白い爆炎が消えると、カルベスはゆっくりと片膝を落とした。そう、片膝を落としただけで、その眼差しはしっかりとイエンを捉えていたのだ。

「貴様・・・」

「(えー、あれでもまだ・・・でもチャンスだよ!あれやっちゃおう、止めの光火柱)」

「うん」

飛び出したヘル。同時にルアは濃縮魂子ボールをプリマベーラのシリンダーに装填する。一方、イエンは自分の体を見下ろした。存在感と気迫、その爆発的な力が消えていったのを感じた。

「(あっイエンのリッショウが普通の3段階目に。こんなに早く戻るなんて)」

「もしかしたら力を使いすぎたとか」

カルベスのアイガードからレーザービームが放たれた。それは一瞬だった。イエンは直撃を受けて墜落してしまう。



第62話「連鎖する想い」



それでもカルベスに向かっていくヘル、カルベスに銃口を向けるルア。その直後、カルベスはキリッとルア達を見た。放たれるレーザービーム。

「(わっ危なかった)」

光壁で防いだとはいえ、衝撃が強くて足止めされたヘル。再び飛んでいくが、レーザービームから逃げ、衝撃波を受け止め、また衝撃波から逃げていく。

「(近付けない、どうしよう)」

ふとルアは見た。立ち上がり始めたカルベスだが、その体の動きはとても遅い。それはまるで錆びたロボットのよう。

「さっきの熱で鉄の体が溶けてるんだよ。だからさっきからアイガードからしか攻撃出来ない」

「(うわっ・・・でもさ、あっと・・・近付けないんじゃさ)」

「よお」

「(ガグナ!いいところに)」

「イエンは大丈夫だ。それより手伝うぞ」

「(うん。とにかく気を逸らして)」

「あぁ」

雷弾を放つガグナ。それは落雷のように瞬き、ミサイルのように爆発した。レーザービームが放たれてもガグナは転移してかわし、更に雷弾を放っていく。その間に飛んでいくヘルだが、しかしカルベスは全方位衝撃波を放ち、ヘルもガグナも身動きが取れなくなる。

「(うえーん、近付けない)」

「・・・だったら、近付かないでやる」

「(へ?・・・あっそうか)」

ルアはプリマベーラを構えた。ガグナが雷弾を放ち、エストーンがロケット弾を放ち、レヴァクとジェクスがそれぞれ光弾を放つ。すると直後にカルベスはレーザービームを高速連射した。ジェクス達、ガグナ、ヘルに的確に放たれたそれをそれぞれが凌いだところで、ルアは振り返った。

「ルア」

「イエン」

頷き合うルアとイエン。それからイエンは一直線に飛んでいった。顔を上げないカルベス。しかしカルベスは頭上に居るイエンにアイガードからレーザービームを放つ。それをイシュレは見つめた。

「ジェクス、あれ、霊気検索しながら攻撃してる。誰がどこに居ても、一瞬で攻撃出来るように」

「手強いな。誰も近付けないが、だったらこっちだって遠距離攻撃で追い詰めていけばいい」

誰がどこに居ても必ず捕捉され、そしてレーザービームの高速連射。ただそれだけでも余裕は無くなり、ジェクス達はイシュレの光壁に隠れ、イエンは逃げ回る。そこで、プリマベーラを構えていたルアは光矢を撃った。それはただの光矢。カルベスは視ていた。自分の膝にカチンと当たって消えた光矢を。その最中、イエンはずっとルアを見ていた。

──少し前。

「ルア」

「イエン。これから光火柱の濃縮魂子を、カルベスの足元に置いて、濃縮光火柱で止めを刺すから。私が濃縮魂子ボールを置くまで、カルベスの気を逸らして欲しいの」

「分かった──」

ルアとヘルはリッショウボールを使った。凄まじい存在感と強烈な気迫を纏ってそれから、ルアはプリマベーラを天に向けた。それがルアとイエンの合図。直後にカルベスの頭上を飛び回っていたイエンは遠くに転移していった。カルベスの足元で、光と炎が弾けた。

光火柱(スヴェンジャスト)!!」

「・・・・・ぐおおおおお!!」

地響きだけで、カルベスの足元の溶けかかった瓦礫が崩れていく。やがて地面に亀裂が生まれ、舞い上がった瓦礫が隕石のように降り注ぐ。その直後、絶方の天井は粉砕された。

「(あちゃ。大丈夫かな)」

消えていく絶方。しかしファウンデイルが指示を飛ばせば絶方は再び形成され、空は塞がずに四方だけを塞ぐ壁となった。同時に全てを焦がし突き上げる白い光火柱は消え、澄んだ空気と瓦礫の雨が残った。

「(やったかな。げっ倒れてもない)」

「でも、動かない」

片膝を着いたカルベス。アイガードの光は消えていた。不気味な沈黙だった。ゆっくり近付いていくヘル。するとイエン達やジェクス達も“静寂に歩み寄り”、カルベスを観察し始める。やがて絶方の外の人達には安堵が広がり、ファウンデイルが絶方の中に入っていくと、その直後、カルベスの胸元の水晶体が紫黒に輝いた。

「(ヤバ、ルア、浄化の準備)」

「うん」

すると水晶体からまるで液体のように溢れだした紫黒のテムネルが体全体を覆い尽くし、巨人という形はゆっくりと歪んでいった。

「(あれ?)」

鉄が溶けて“形なき形”になるように、巨人はそしてドロドロした何かの塊のようなものになると、紫黒に輝きながらそれは小さくなっていった。

「何だよ、あれ」

思わずイシュレに問いかけるジェクス。

「・・・小さくなってる」

「それは分かる。それだけか?」

「んー、硬くなってる」

「いやドロドロだから」

「中で新しく何かが作られてるって事だろ?」

レヴァクがそう言えば頷くイシュレ。そんな2人に呆れたように笑みを溢すジェクス。

「よく分かるな」

もう周りには瓦礫すらない。だからカルベスと思われるドロドロしたものがよく見える。

「(そのまま消えちゃったりして。ドロドロ~、キュ~、パチン。って)」

「さすがにどうだろ」

浄化した方がいいのか、そうルアが観察していると、ドロドロしたものは6メートルくらいの人型のものっぽい形になり始める。

「(光弾(プルスーヴェ))」

飛んでいく光弾。しかしそれはドロドロした人型に呑み込まれるように消えていった。

「(何かまずくない?)」

ドロドロしたものが人型に形成されると胸元の水晶体は輝きだし、不気味な沈黙は緊張感を纏っていく。そして直後、アイガードは紫黒の光を点した。

「(骸鬼みたいな大きさになった。もしかして、もっと体を溶かせば、弱体化するんじゃない?)」

「そうかも」

「羅刹を甘く見ないで貰おう」

「あ?けど実際小さくなっただろ」

そう言うとガグナは雷弾を連射した。5発の雷弾の爆発で瞬く間にカルベスの姿は覆われ、ガグナはそれを鼻で笑う。その直後だった、紫黒の衝撃波が全方位に駆け抜けたのは。しかもその速度は、まるで核爆発かのよう。

「・・・ぐうっ!」

「・・・ガグナっ」

油断していたガグナは建物に激突していき、そのまま崩落の下敷きになっていった。ヘル達が駆け寄る一方、転んだイシュレは立つのも忘れ、口を半開きにしたまま固まった。

「イシュレ?」

「小さくなって、強くなった」

「何でだよ」

「こ、コストが削減されたの」

「は?」

「巨大な体を動かす分のテムネルが、攻撃に回ったって事か?」

レヴァクがそう言えばイシュレは頷く。すると今度はジェクスも小さく頷いていた。

「さすがにオレもそうだとは思った」

そんな時にふとジェクスは振り返った。そして目を見開いた。カルベスは手を天に掲げ、濃縮された紫黒の球を作り出していた。すると直後、それは破裂した。無数のレーザービームが全方位に放たれ、それはそれぞれ衝撃波を放つほどのとてつもない爆発を生んだ。反響し合う衝撃波は細かく飛び散って更に建物を破壊していって、やがて絶方の中は紫黒と粉塵に満たされた。

「(・・・みんな!イエン!)」

ルアは治癒玉を発射した。みんなの下に連れていってと願いを込めて。それからルア達が辿り着いたのは治癒玉が回るジェクスの下だった。

「くそ・・・まさか、これほどとは。お前達は平気なのか?」

「(まだスーパーリッショウ中だからね)」

「もう、マガツと精霊の力じゃ、歯が立たない。ここまでやっても、まだ倒せないなんてな」

「まだ諦めちゃだめだよ」

そう声をかけたのはウリネックだった。

「精霊たち、もっと集まってきたよ?」

エターがそう言えば、ジェクスはふと辺りを霊気検索した。カルベスのテムネルのせいで反応は鈍い。しかし絶方の外にその存在は確かに感じていた。

「みんな、ジェクス達を応援してる。ジェクス達に委ねるしかないから」

歩み寄ってきたレヴァク、エストーン、イシュレ。深呼吸したジェクス。するとその眼差しに力強さが宿ったのを、ルアとヘルは見た。

カルベスはレーザービームを放った。それは絶方の壁に向けられて。何十人もの力で濃縮されたその壁は砕け散った。しかし穴が空いた瞬間から再生されていき、その様をカルベスは鼻で笑った。──精霊も、人間も数が増えていく。しかし、私と戦うものを葬れば諦めるだろう。望むところだ。私はもう、完璧な存在になってしまった。もう誰にも止められはしないのだ。それからカルベスは悠然と立ち構えた。イエンのように“存在感と気迫を手に入れた”ジェクス、エストーン、レヴァク、イシュレ、ガグナが煙たい粉塵の中から姿を現したから。6人のマガツエルフ、そしてルアとヘルと対峙するカルベス。

「私は不死身だ。いくら貴様らが強くなろうと、私は倒せない。軽量化によりパワーもスピードも上がった」

「お前を倒すやり方ならもう分かってる」

「何だと?」

「な?」

ジェクスがそう顔を向けたのはイシュレ。するとイシュレは慌てたようにうんうんと頷いた。

「テムネルの分析は出来てるよ。さっきみたいに消しちゃばいい」

「フッ。浅はかな。永遠に絶える事のないものに足掻くだけだというものを」

ファウンデイルは見つめていた。マガツエルフ達、そしてルアとヘルがカルベスに“翻弄されている”のを。彼らは、カルベスとは無関係だ。これは血剣族の問題で、エルフはただの隣人のようなもの。指定自警団に至っては異世界の者。

「がんばれー!」

子供達の声が響いていた。ふと振り返るファウンデイル。精霊と手を繋いで、固唾を飲んで戦いを見守る子供達、戦場から避難してきた者達、彼らの眼差しは“助けてくれる他人”を見るもので、しかし期待が溢れている。何故彼らは、こんなにも必死で戦ってくれるのだろうか。そうファウンデイルは再び絶方の中へと歩き出した。

「族長!危険です」

「すぐ戻る」

イエンの放つ火弾は最早小さな隕石。しかし当たらなければ意味は無い。軽量化したカルベスは紫黒の衝撃波を“纏っていた”。それは全ての攻撃を歪ませ、弾いていく。エストーンのロケット弾も、ガグナの雷弾も。そしてまた紫黒のレーザービームにレヴァクやジェクスは吹き飛んで転がっていく。しかしそこに一筋の光を見せたのはルアの光矢。スーパーリッショウの中、その光矢は逆に衝撃波のバリアを歪ませた。そこにイエンが火弾を放てばカルベスは爆発に呑まれて吹き飛んでいく。それでも端から見る限り、攻防に終わりは見えない。誰もが何となく感じていた。カルベスを倒すには、決定打が足りないと。

「邪魔する」

ファウンデイルが転移していったのはアーサー達の下だった。しかしアーサーは何故か倒れていて、テリッテ達は困ったように佇んでいた。

「あ、あなたは」

「血剣族の一族長、ファウンデイル。先程から見ていたが、それは何だ?」

「濃縮魂子です」

テリッテが応える。

「みんなの力を合わせて作ったんですけど、使えなくて」

石ころのように転がっている濃縮魂子とやらをふと見下ろすファウンデイル。

「これは、まるで千紅玉。これほどまでに濃縮された霊気、魔力を、この短時間で」

「くそ・・・何でダメなんだよ、せっかく出来たっつうのに」

「これで何を?」

「あ?リッショウだ」

「リッショウ」

「あー、なんつうか、魔力の循環力を上げて、戦闘力を上げるんだ」

「なるほど。確かに、これでないと、もうカルベスを伏せられまい」

「やっぱり、もうちょっとちっちゃくした方がいいんじゃないかな。使えないんじゃ意味ないし」

マスカットが呟く。

「だよねえ。張り切って大きくしちゃったけど。みんなの力を合わせてるし、ちっちゃくても普通のリッショウボールより強いはずだし、とりあえず、それをみんなの分に分けちゃおうか」

しかしホープが歩み寄った時、ファウンデイルが先に濃縮魂子ボールを拾い上げる。

「おい待てよ。カルベスだぞ?でかい力じゃないと倒せない」

「でも使えないんだし」

「どうにかして使うんだ」

「どうにかって?」

対峙するテリッテとアーサー。ちょっとケンカしそうな雰囲気の2人なので、そこにテリッテが歩み寄る。

「俵に棒を刺す」

「え?」

アーサーとホープとテリッテは同時に顔を向けた。濃縮魂子ボールを見下ろしながら呟いた老人に。

「この国の古い言葉だ。米俵が重たい時は、棒を刺して2人で持てばいいと。つまり、この大きすぎる力を使うには──」

紫黒のレーザービームの雨が降り注ぐ。ジェクス達は倒れ、何とか残ったルアとヘルは光壁ごと殴り飛ばされた。8対1で何とか互角。つまり所詮1人ずつの力ではやはりカルベスは倒せない。そうイエンは息も荒くカルベスを見つめていた。そんな時だった、また1つ、巨大な力が生まれたのは。

「何だ、貴様は・・・」

カルベスは思わず、その存在感と気迫を纏う“異形の天使”に目を奪われた。放たれた“蒼白い光矢”。瞬く間に、超音速のそれはカルベスを突き飛ばした。建物を突き抜け、そのまま絶方の壁に激突すれば、凄まじい轟音と共に壁には亀裂が走った。だらんと倒れ込むカルベス。

「(えええー、何あれ、すごい、どうなってるの?)」

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