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逆襲のアルテミス  作者: 加藤貴敏
第3章「ロードスターの進撃」

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「羅刹、進撃」中編

光矢(ストレスーヴェ)!」

それはまるで雷のように目映く、ミサイルのように轟いた。ただの光矢でもハドロン・フォーメーションで霊気が30倍になった状態では最早“矢”ではない。そうルアは自分で光矢を放って驚いた。顔にそれを受けた骸鬼はキレイに倒れ、地面に後頭部を強打する。やっぱり精霊の力が効きづらくてもハドロン・フォーメーションは消えていないんだ。ペルーニと頷き合ったルアはカルベスを見上げた。──私達しか居ないんだ。カルベスを止められるのは。

「(大丈夫!?)」

「・・・うん!」

テリッテとマスカット達4人が1つとなり骸鬼の1体と戦っていた。しかしお世辞にも頼りになるとは思えない。だから戦車モードのヘルはヘルプに入って、ドカンッと骸鬼を一旦退けた。テリッテも新兵4人もリッショウはまだ2段階目。ヘルは手に取るように感じ取った。新兵達の不安を。そしてテリッテですら脅えている事を。ジェクス達は2体の骸鬼を相手にして、アーサー達は全員で1体の骸鬼に精一杯。霊気が強くなってるからルアは1人にして大丈夫だと判断して、ヘルはテリッテ達に加勢したのだった。

「テリッテさん、やっぱり、僕達は、街の人達の救助に回った方がいいんじゃ」

普段は明るく、4人の先輩として堂々としているテリッテ。でも今、その表情も態度も、骸鬼に恐れ戦いている。そうヘルには分かった。

「(ねえ、みんなもリッショウボール作りなよ!濃縮魂子ボールは使えなくてもリッショウは出来るんだからさ)」

その時、骸鬼がやって来たのでヘルは向かっていった。一閃の光を放てばそれだけで骸鬼は足を止め、光の弾の連射にはガードポーズを取りながらも後ずさる。直後に紫光を放って反撃されても、見えない壁を作ればダメージは僅か。力の差があるように見えるが骸鬼もタフで、反撃を繰り返せばヘルも防御に徹したり逃げたりせざるを得ない。それでも果敢に立ち向かうその後ろ姿に、テリッテは意を決した。

「みんな、救助はロードスターに任せて、私達でも頑張れるって事、グラシアさんにも見せてあげよう!」

顔を見合わせる4人。でもテリッテの堂々としたその笑顔に、4人も不安の中で冷静さを取り戻した。

「兵士として、きっとグラシアさんやハルクさんも、戦う方を選ぶよね。僕達だって」

「あぁ、そうだな」

「その方が喜んでくれそう」

「じゃあ作ろう!リッショウボール」

カルベスは見下ろした。2体の骸鬼の動きが止まったのを。それをやったのはマガツエルフ達。マガツエルフの力なら私のテムネルの活動を停止させる魔法をすぐに作れるのか。それからふと目を留めたのは、マガツエルフ達の中で一際存在感と気迫の凄まじいイエンだった。それはまるで砂漠に混じる、天まで輝く金の粒のよう。

「やはり私の前に立つのは貴様か、エルフの女。何か宿命染みたものがあるのか」

「そんなの知らないけど」

「だが例え貴様でも、今の私には敵うまい」

カルベスを見上げるイエン。そして勢いよくジャンプすればその衝撃で踏み台にされた鉄筋コンクリートの建物は粉々。それからイエンは弾丸のようにカルベスの顎をかち上げた。

「ぐっ!・・・」

それを人知れず野次馬のラングエイが眺める中、虫を払うようにカルベスはイエンをはたく。墜落したイエン。それでも粉塵から飛び抜けてくればその手には雷光の球を作り出した。すかさずのレーザービームが襲うが、イエンは見えない壁を足場にして飛び跳ねてその後のストレートパンチも、更にその後のレーザービームもかわしていく。そして素早く懐に入り込むと、カルベスは再び天を仰いだ。突き上げられてきた雷光の衝撃に。しかしその時だった、カルベスの胸元の水晶体が紫黒に輝いたのは。

「わああっ」

思わずペルーニが身を屈めた。そのカルベスから放たれた全方位衝撃波は1キロほど離れたルア達にも届き、ルアもとっさに光壁を張ってペルーニと寄り添い合う。

「何あの、攻撃・・・もう攻撃ってレベルじゃない」

カルベスの足元の沢山の建造物が津波にでも押し流されたように跡形も無くなっていた。でもふと気になったのはさっきから住民の姿が見えないという事。

紫黒の全方位衝撃波が強い台風の風程度に感じられる距離で、ファウンデイルはパッと転移してきた部下に振り返る。

「血剣族でない者達も含め、生存者の避難は完了し、“絶方(ぜっぽう)の陣”の準備が整いました」

「うむ、直ちに陣を敷け」

「はっ」

「族長」

別の部下に呼ばれて振り向いたファウンデイルが見たのは、部下と共に居るラングエイだった。拘束はされていないが、まるで自首でもしに来たかのような塩らしさに、ファウンデイルは眼差しを突き刺す。

「賢明な判断だったとは言っておこう」

「え」

「部下をカルベスの呪縛から解き放ったんだろう?」

「やはり、野下の鉄人をけしかけたのは草鉄の」

「だがやはり、カルベスはお主らの事など気にかけてはおらんかったな」

「いえ、逆だと思います」

「ん?」

「最後に自分を1人だけにさせたのは、どうでもいい存在だからではなく、カルベス族長なりのケジメだったのだと」

ファウンデイルはカルベスを眺めた。ここからでは戦うイエンの姿など米粒以下。まるでカルベスが1人で踊っているようにも見える。

「人為らざる者となっても、意地は生きているのか」

「意地ですか」

「これより絶方を敷く」

「“閉じ込める”んですか」

「その方が戦う者も気を遣わずに済む」

「ですがあのデタラメな力を閉じ込められるんでしょうか」

「さあな。やらないよりマシというものだ」

テムネルを眠らせて消滅させ、2体の骸鬼の動きを止めたジェクス達はイエンの下に駆けつけた。それに気が付くと、カルベスは紫黒のテムネルを飛ばした。2つの紫黒のテムネルは石像のように立っている骸鬼の中に入り、その眼に紫光を灯させた。

「何だと?くそ・・・」

「これじゃキリがないじゃん」

「マガツエルフには退屈か」

そう言うと更に紫黒のテムネルは放たれ、2体の骸鬼となった。

「うわ!増えた!」

「くっ!」

飛んできたイエンを叩き落としながらも、ジェクス達を鼻で笑うカルベスをジェクスは睨みつける。ジェクス、イシュレ、エストーン、レヴァク相手に骸鬼は4体。だからといって1人1体で戦う事はせず、イシュレは壁を作り、そこに隠れながらレヴァクは狙撃し、エストーンとジェクスはお互いをフォローしながら複数の骸鬼を相手にしていく。

光矢七層(ストレスーヴェ・セムーソ)!」

プリマベーラのシリンダーが1周して、7本の光矢が1本となって放たれた。その空気を突き抜ける轟音は大砲のよう。思わずカルベスは振り返った。倒れた骸鬼の胸元には穴が空いていた。その直後にイエンに激突され、カルベスはビンタされるように目線が弾かれる。その先には女が立っていた。

光矢(ストレスーヴェ)!」

ルアは濃縮魂子ボールを押し出した。意識すれば濃縮魂子ボールは銃身に“出ていってくれ”、濃縮魂子を包む光壁の殻は“割れてくれる”。狭い銃身の中に溢れた濃縮魂子という火薬は、光矢を放つ意識という火花に引火してそれから、ルアは吹き飛んだ。土砂崩れのような轟音に振り返る遠くのヘル。

「あっ!」

でもそれは暴発ではなかった。ただ反動が過ぎただけ。直後に右肩に衝撃を受け、カルベスは大きくよろめきバランスを崩して倒れ込む。

「ルア!」

「ふう、大丈夫・・・」

「何なのだ、今のは」

カルベスとルアは同時に起き上がり、同じように立ち上がる。立ち尽くすイエンとペルーニ。ルアは生唾を飲み込んだ。──これ、危なくない?制御出来ない、強力過ぎる力・・・。カルベスは違和感にふと目を向ける。それは自分の右肩。鉄板に岩でもぶつかったかのようにへこんでいて、しかも若干動かしづらい。──あの力は一体。精霊から繋がれた増幅霊気だけではない、何か別の・・・。その瞬間にうざったく側頭部を殴られる。無論それはイエンなので、カルベスはアイガードから紫黒の衝撃波を放った。全方位ではなく、範囲を狭めてその分威力を増したもの。直撃を受けたイエンは民家の屋根に墜落した。そんな状況にルアはハッとして戦く。ギロッと向いてくるアイガード。それから問答無用で紫黒の衝撃波は放たれた。

骸鬼の肩、胸元、脇腹などに一瞬にしてザクザクと“青雷のダガー”が突き刺さる。反撃の紫光がアルファを吹き飛ばすが、そこにアーサーが突っ込んで尾状器官の拳でぶん殴る。しかし反撃のスピードは衰えず、放たれた紫光はアーサーを吹き飛ばす。

「くそ、手強い。さっきよりも動きが速くなってんじゃねえか?」

「段々見切られてきてるのかも」

「戦いながら成長してやがるのか」

アーサーとアルファを見据えて構える骸鬼。するとそこに犬形態のホープがやって来る。

「おい、下がってろって」

しかしホープは先端を束ねた尾状器官に青光を集束させて、素早く青々とした光弾を放った。レーザービームでもないのに、その爆発は骸鬼を大きく仰け反らせた。

「え?」

「私達だって見てるだけじゃないんだからね」

「何だその威力。リッショウだって2段階目だろ」

「えへへ。これだよ。今さっき、シャークとグズィールに作って貰った、濃縮魂子ボール。ドルタス達のより半分くらい小さいけど。十分でしょ?」

「アーサー、アルファ」

振り返る2人。そこに居たのはメアだった。メアもまたリッショウボールを持っていて、直後にメアは光に包まれ、3段階目のリッショウよりも強い気迫と存在感を纏った。

「オレ達だってやれるぞ」

「あぁ」

頷くアーサーとアルファとメア。先陣を切ったアーサー。弾丸のように骸鬼の顔をぶん殴れば、直後にアルファとメアが骸鬼の足を狙って攻撃する。バランスを崩しながらも紫光を放つ骸鬼。それをかわしながらホープが光弾を放って骸鬼の勢いを殺ぎ、そこに再びアーサーが激突していく。そんな時だった、デュープリケーター達の前にもう1体の骸鬼が落ちてきたのは。横目で見ながら鼻で笑うカルベス。

「あれ、アーサー、あれは?エクスカリバー」

メアがそう聞けば、アーサーはハッとした。

「だな、使うか」

「忘れてたのかよ」

「いや、その、まあ、余裕無かったんだ」

少し動きの鈍くなっている骸鬼と新品の骸鬼。その2体を見据え、アーサーは深呼吸する。

「ライコウ!テンカン!・・・・・うおおおおっ!!」

この前よりも目映く輝いたアーサーの剣。それは“今だけ”のものだが、アーサーはそんな事など気にせず、放たれた紫光の中に突っ込んだ。振り上げられた剣。直後に青光がドカンッと突き上がる。吹き飛んだ鈍い骸鬼。家屋を道連れに倒れたその胸元は大きく切り裂かれていて、アーサーは雄叫びを上げた。

「すげえぞアーサー」

メアがそう言えばアーサーは剣から一閃を放ち、新品の骸鬼をよろめかせていく。

テリッテ達はリッショウボールを作る為、自分のリッショウから“リッショウの潜在意識”を取り出していく。クウカクで作ったボールにそれを入れて、そしてそれらしくリッショウボールが出来上がったそんな時だった、ヘルが盛大に吹き飛んで転がってきたのは。

「(うわーん)」

「ヘル!」

物陰に隠れていたテリッテ達が慌てて顔を出すが、そこには骸鬼は居なかった。

「あれ?」

「(ふう、何今の、危ないやつじゃん)」

「ヘル、大丈夫?骸鬼は?」

「(えっと、あ、あっち)」

一斉に飛び上がっていくテリッテ達。しかし見つけたのは胸元に大穴が空いている動かない2体の骸鬼だった。

「(やっつけちゃった)」

「そ、そう、なんだ」

ヒーター達4人は顔を見合わせる。せっかく作ったのにと。それにそれでもヘル1匹の方が強いんじゃないかと、自信も削がれながら。

「やはり一筋縄ではいかないか、独立自警団。しかしテムネルは無限だ」

カルベスの頭上に打ち上げられた紫黒のテムネル。それはすぐに2つに分かれ、やがてその1つが骸鬼のようなシルエットとなり、骸鬼が形成されていく。また骸鬼か。ジェクスもヘルも、アーサーもルアもそう思った矢先、出来立ての骸鬼にもう1つのテムネルの塊がくっついた。骸鬼が更にテムネルでコーティングされて、そしてドスンと着地したその骸鬼の胸元は光源が2つになり、背中から洩れるテムネルの羽は6枚となっていた。イシュレは虹色の瞳でその骸鬼を見つめる。

「魔法の鎧、強くなってる」

「見た目がちょっと変わったくらいだろ?」

すでにジェクス達が対峙する骸鬼はたった1体。だからエストーンはロケット弾を作り出し、レヴァクは指先に光を溜めた。大きく振りかぶってエストーンがロケット弾を投げ飛ばした直後、新しい骸鬼はキリッと目を向け、その眼光から音速で紫光の弾を放った。新しい骸鬼には遠く及ばずにロケット弾が凄まじい爆発を起こす中、空から1本のレーザービームが落ちてきた。目に見えるほどに凝縮されたレヴァクの霊気は、新しい骸鬼を包む見えないバリアを際立たせた。

「確かに強くなってる」

「貴様らが強くなるなら、私もそれに応えねばならない」

特に大きさは変わってないが、新しい骸鬼が瞬く間にジェクス達とヘル達の方に向けて紫光の弾を放つと、音速と共に、周囲100メートル以上をも吹き飛ばす強烈な爆発を引き起こすという脅威を見せた。

「骸鬼、弐式とでも称しよう」

舞い上がる粉塵、飛び散った瓦礫を光壁で押し退けながら、ジェクスは瓦礫に囲まれて戸惑うイシュレを見つける。

「イシュレ、大丈夫か」

「うん、それよりあの新しいの、霊気が濃縮されてる」

「あぁ。けど、骸鬼と戦ってもキリがない。カルベスを叩かないと」

すると直後、カルベスの頭上に紫黒のテムネルが打ち上げられた。

「くっもう1体作られるのか」

「なぁ」

そんな時にジェクス達に呼びかけたのはガグナだった。最早ダークエルフじゃ歯が立たない相手。だから隠れていたガグナだが、ふとジェクスはその眼差しに意志を感じた。

「お前らも、精霊と繋がればいいんじゃないのか?」

ジェクスはふと目を向けた。1人だけカルベスと戦うイエンに。そして振り返った先にはウリネックとエターがしょんぼりした雰囲気で佇んでいた。

「あなたは?」

イシュレは問いかけた。ガグナは「え?」と応える。

「マガツになればいいのに」

ふと目を合わせるガグナとジェクス。このままじゃダメだという事は言葉にせずとも2人は理解した。

「ウリネック、エター、あいつの仇取りたいんだ。力貸してくれるか?」

ジェクスに近寄るウリネックとエター。

「ぼくたちからも頼むよ」

「オレたちだけじゃ通用しないしな」

ドスンと着地した骸鬼弐式。それからカルベスは思わず目を向けた。砂漠に混じる天まで輝く金の粒が増えたから。その数は5つ。──マガツは先程1人吸収したはず。それから直後、空からレーザービームが落ちてきてカルベスの後頭部を襲った。

「ぐっ」

思わず膝を着くカルベス。それから視界に入ってきたのは高く打ち上げられてきて、ガシャンと墜落してきた骸鬼弐式。とっさに掌からレーザービームを放ち、ロケット弾を迎撃するカルベス。そしてそのとてつもない爆風の向こうに見たのは、ジェクス達とマガツエルフになったガグナだった。──マガツエルフ共、ならばこちらも本気を出してやろう。

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