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激突

「懐かしい顔だな・・・その服、騎士団の精鋭部隊だろ。偉くなったな。二年という歳月は人を変えるな」


黒いロングコートに身を包み、散歩するような歩調で歩いてきた緋色は言う。その様子は、まるで勇者の前に現れる魔王の貫禄だ。


「変わったのは、お前じゃないのか。緋色」


「変わった?・・・俺は、昔のままさ。変わったと思うならそれは、おまえが俺を理解出来なかっただけだ」


「ッ・・・」


御影は、顔をしかめた。その顔には、後悔と怒りが浮かんでいる。


「それで?騎士をそんなに連れてこんなところに何をしに来た」


騎士団の面々、50人を目にして全く声のトーンも変わらず、問う。


「我々の情報網をなめるな。お前が、ここで確認されて放っておくとでも?」


「くくくく、職務怠慢はよくないぞ。御影。お前ここのことを何も知らないでここに来たのか?呆れた男だ」


緋色は、心底おかしいというような調子で笑っている。


「何だと・・・ここはここは研究所だろう。おまえこそこんなところに何の目的があったんだ。いや、それ以前に、お前は何が目的なんだ?」


御影は、困惑したようにつぶやくが相手のペースに乗せられていることに勘づき問い返す。


「探し物をな・・・まあ、いい。俺は、お前らに期待などしていないのだから・・・お前らでは、何も変えられない。正しい行いが、正しい結果を生むとは限らない。そういうことだ。だから、お前らはせめて俺の前に立つな!」


「「ッ・・・・・」」


冷風とともに、殺気が緋色から放たれる。精鋭部隊の人間は、能力、実戦ともに高い者が選ばれるのだが、その彼らをもってしても緋色の気迫に押し負けていた。


「クソ、本当に何も変わっていないな。緋色。その恐ろしい実力に少しは近づけていたと思っていたが」


「思い上がりだな。全力のお前でも俺を一人で相手取ることは出来ない」


「ああ、だが・・・私は一人ではないんだ。緋色」


「・・・・・・・・・」


緋色は、後ろに控えている精鋭部隊の面々を視界に入れる・・・そして、笑った。


「それが、思い上がりだと教えてやる・・・」


「全員、構えろー。来るぞ」


御影は、腰の刀を引き抜いて仲間を鼓舞する。


「氷陣の杭」


瞬間、氷の杭が精鋭部隊の足元から現れる・・・その時間はほとんどないといってもいい。故に、躱しきれないものが続出し、戦いの流れは緋色に傾いていた。


「ぐわあああああああああ」


「いッ・・・・」


「クソ・・・・・・」


「随分躱したな・・・流石だ」


三分の一がやられ、残りはぎりぎりで躱し傷をほとんど受けていない・・・しかし、動揺は広がっていく・・・。


「何だあの、異常な魔法の発動速度は!」


「あんなの反則だろ」


「規模も段違いだ・・・副隊長並みだぞ」


「気を付けろ、あいつは、弱冠八歳にして当代最強とうたわれた男だ!」


「くくくくくく」


緋色は笑う・・・鮮烈に、嗤う。哂う。笑う。


「これで、分かったか?お前と俺との差が?」


顔を伏せる御影に、緋色は笑いかける・・・もちろん悪い意味でだが。


「ああ、私はお前に届くというのが分かったよ。私たちは、この程度でへこたれるようなやわな鍛え方などしていない!」


御影の目は死んでいなかった。


「何?」


緋色は、訝し気に顔をしかめる・・・その目には、警戒の色が浮かんでいた。気が付けば、動揺していた騎士たちももうそれほど動揺していない。


「蒼炎よ―――我が剣に力を」


御影の刀から青い炎が漏れ出て来ている。


「ほう・・・俺に接近戦か」


「強化・・・」


青炎は、御影の刀に覆いつくす。


「行くぞ?・・・緋色」



身体強化魔法によって底上げされた御影の一歩は、爆発的な加速を以って緋色との距離を詰める。


その勢いを殺さず、緋色に向かって御影は刀を一閃。

緋色は、バク中で回避してそのまま勢いを殺さずバックステップで距離を取る。


「造形 氷剣」


緋色は、氷の剣を作り御影に肉薄する。


「ッ・・・・・・・・」


緋色の上段からの攻撃に対し、御影は刀を斜めに構え受け流すという選択肢を取った。


しかしそれをあざ笑うかのように、緋色の剣は短剣へと形状を変える。


「何?」


緋色は、強引にそのままの体制から一回転して御影に再度切りかかる。迎撃の姿勢を取る御影だが短剣から長剣に姿を変えた緋色の剣をまともに受け刀を叩き落とされてしまう。


「終わりだ」


それだけでは止まらず、さらに追撃をしようとするが緋色の頭上に20を超えて炎の球が発生した。


「チッッ・・・・」


炎の雨が着弾する頃には、緋色は地を蹴り全力でその場を後退していた。緋色が先ほどまでいた場所には炎の球が雨のごとく降り、地面を焦がしている。それだけで炎の球に込められていた熱量を察する。


「なるほどな」


目を向けるとそこには腕を前にあげた騎士たちがいた。


「俺らのことも忘れるな!!!!!!」


騎士たちが、身体強化を掛け緋色に突っ込んでいく。緋色は嘆息しながらそれを迎え入れた。放たれる拳を躱し、十分に魔力を纏った手で騎士の一人の背中を押し、足を払う。バランスを崩した騎士は、反対側から突っ込んできていた騎士に激突した。


「い・・・」


怯んだその隙を逃がすほど緋色は甘くない。瞬時に、魔法を発動させる。


「『氷陣の茨』』


「ぐあああああ」


近くにいた騎士ごと氷の茨に巻き込まれる。


「緋色ォォォ!!!!」


全身に、炎を纏い御影が突っ込んできた。だが、


「残念だ」


 緋色は、手のひらを向ける。

 咆哮と共に放たれる拳を受け止めた。


 御影が驚愕の表情を浮かべるのとほぼ同時。

 足場であるアスファルトに氷が張り、それは四方八方へと瞬時に展開されて――。


「潮時だ―――『氷銀の世界』」


騎士団の動きを封じた。膝までを氷で拘束された騎士たちに動ける者はおらず、それは御影とて同じだった。


「ここに用はない。これ以上いて時間の無駄だ。また会おう」


「待ってもらおうか」


声が響いた――――――――。


男だか女だか判断のつかない声・・・御影でも、騎士団でもない声に緋色は驚き目を細める。


「誰だ?貴様・・・」


シルクハットに、仮面。正体不明の男が、翡翠を抱えて立っていた。


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