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奇術師

「ごきげんよう、諸君」


その男は、気配もなく降り立った。その男は、戦場に立つにはふさわしくない格好で、シルクハットに、何も描かれていない無地の仮面、そして極めつけは白いタキシードだ。完全に人を馬鹿に仕切っている。

しかし、俺は知っている。この男の名は、結露。コードネームは奇術師。原作ではラスボスが率いる秘密結社の幹部で・・・そして、その強さはラスボス一歩手前といわれるほど出鱈目なまでに強い。それは、仮にこいつのことを知らなくても理解するだろう・・・この男の魔力は、殺気は、存在感は、それほどまでに不気味でその上圧倒的だ。それが分かるからこそ、御影は本来、足止めをするためにはなった魔法である『白銀の世界』を解かずに、警戒したまま動けないのだろう。沈黙がいたい・・・取り合いず


「何者だ?」


一応初対面なはずなので聞いておく。


「これは失礼したね。私の名は、奇術師(ヴィアンカ)。しがない魔法使いさ。よろしく頼むよ・・・」


ヴィアンカは、大げさにお辞儀する。


「答えになっていないな。お前は何者だ?」


「おかしなことを言うね、自己紹介はしただろう」


「・・・お前の目的はなんだ?」


「・・・私がここに来た理由は一つ。最近話題の君を見に来た・・・ああ、あとは証拠を始末しに来たというべきかな」


そう言って、ヴィアンかは俺を見る。俺は、その視線に怯むことなくヴィアンカを見返す。

「証拠を始末しに来た」それを聞いただけで、俺はこの男が何を言いたいのかを悟った。背中に、嫌な汗が流れるのを感じる。


「そうか・・・好きにさせると思うか?」


「いや、思わないね。君がどうやってここを突き止めたのかは知らないけどここに来た以上目的は彼女だろう?」


ヴィアンカは、まるで俺を迎え入れるかのように両腕を広げて言う。


「・・・」


なんだか、妙な方向に話が転がりだしている・・・しかし、あの男は本気で彼女を殺す気だろう。それはかなりまずい・・・どうあってもとめる必要がある。


「ほう・・・素晴らしい殺意だ、これは面白いな」


俺から無意識に出ていた殺気に誰かが、ごくりと唾を呑み込んだ。

近くいるものにとっては、その音すら耳障りに感じてしまうほどの沈黙。


「炎よ―――――――疾く走よ」


ヴィアンカは腕を前に出し、炎を直線状に放出した。


「氷壁よ」


赤い紅蓮の炎が俺に迫るだが、万物を焼きかねないと錯覚させるほどの熱の塊は氷の壁に瞬時に鎮火されていく。


「風よ――――――疾く駆けよ」


彼の腕から発射された、乱気流がアスファルトを切り裂き迫って来る。


「バカな・・・二属性目だと」


御影の驚愕の声が聞こえてきた。確かに属性は、原則一つだ。確か、人体実験により複数の脳と連結させられ複数の属性が使える人間がいると知らなければ驚くのも無理はない・・・俺も、知らなければうろたえていただろう・・・。


「強化」


俺は、身体強化魔法でその場を全力で離れて回避した。


「・・・なるほど、今のに動揺しないか。それにその技量。いいだろう・・・今回は引いてあげよう」


「何?」


そう言って、彼は翡翠を投げてきた。慌てて、翡翠をキャッチしてそのまま彼から距離を取る。


「君とやり合えば、こちらもただでは済まないだろうしね。君が彼女を手元に置いているうちは始末が困難そうだ。結論を急ぐ必要はない・・・一先ず引くよ」


パチン――――――――。ヴィアンカは、指をはじく。瞬間、ヴィアンカを中心に風が吹き、砂塵を巻き上げる。その結果、騎士団と俺の視界を奪った。


「ごきげんよう諸君、そして柊君」



そんなセリフだけを置き去りにして、ヴィアンカは消えていった。


「俺も逃げよっと」


このままだと、逃げるタイミングを失いそうだった俺は、逃げることにした。




「君とやり合えば、こちらもただでは済まないだろうしね。君が彼女を手元に置いているうちは始末が困難そうだ。結論を急ぐ必要はない・・・一先ず引くよ」」


 このセリフの意味は、恐らく現時点では翡翠の殺害は最優先ではないのだろう。確かに、翡翠を殺すためにぽれと戦うのでは割に合わないだろう・・・少なくとも今は。原作で、騎士団のところにいれたのは、御影たちが上層部に隠していたのと、あいつらが翡翠の生存を認識していなかったからだ。すると翡翠は騎士団に預けるよりも俺のところにいたほうが安全ということになる。


とまあ、悩んだ挙句取り合いず翡翠は一時的に保護することにした。しかし問題が発生する・・・翡翠の面倒を見ながら仲間集めをするのは至難の業だということ・・・


「ねえ、ここは何処?」


起きたようだ。


「ここは、俺の隠れ家だ・・・そして一時的だがお前の住処でもある」


家を出てから、最初に探したのは騎士団の追跡を逃れるためのアジトだ・・・そして、目を付けたのはある場所の地下空間。原作知識故の発想だ。おかげで俺は見つからずに済んでいるわけだが。


「それと一応名乗っておく。俺の名前は緋色。当面の目的は、仲間集めだ。お前をここに置くのには問題はないが、役立たずを置く余裕は今はない・・・役に立ってもらうぞ。」


「・・・私の魔法は、特殊、研究者たちは系統外魔法と呼ばれてた。凄く珍しいらしい・・・でも使い方が分からない。」


系統外魔法・・・属性魔法に分類できない魔法の総称で、系統外魔法の使い手は少なく割合で言うと一万人に一人ぐらいだ。翡翠の魔法は、時間の巻き戻し。作中でもかなりチートな能力だ。ただ、かなり大きな代償が伴う魔法で下手に制御ができていないうちからは使わせられない


「良いだろう・・・お前に魔法の使い方というものを教えてやる」


せめて、自分の身を守れるくらいには仕上げておきたい・・・・・・・。






目が覚めてからあたりを見回す。コンクリートの壁に、天井にくるくる回る換気扇。そして、私の正面に本を読みながら座っている人が目に入る。そこでようやく、自分が研究所の水槽から出れたことを実感した。そうだ・・・私は、あそこから出れたんだ・・・。状況を理解して、新たな疑問がわいてくる。

体を起こし、私を助けてくれた人物に聞くことにする。


「ねえ、ここは何処?」


話しかけたら彼は木樽気に顔を上げ、こちらを見る。その碧い目には何が映っているのかわからない。


「ここは、俺の隠れ家だ・・・そして一時的だがお前の住処でもある」


どうやら、私の願いは聞き入れてくれたらしい・・・。安心で、力が抜ける。



「それと一応名乗っておく。俺の名前は緋色。当面の目的は、仲間集めだ。お前をここに置くのには問題はないが、役立たずを置く余裕は今はない・・・役に立ってもらうぞ。」


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