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小銃

自分の精神安定のために書きました。

読後感は微妙だと思います。

目の前に扉がある

アパートやマンションや洋風の一軒家などにある

玄関扉が私の前にある


私の右手には、小銃がある

黒い弾丸を弾数限界まで詰めた

白銀に光る小銃を握っている


夕闇に染まり落ちる景色の中

一人だけ小銃を握っている私は

他人の目には異様に映るのだろう


そんなこと知ったことじゃあない

意志の前には意思は不要だ


焦燥感に駆られながらも

抑制してきたが

もう限界だ

限界なんだよ、私は

もう自分を騙していることに疲れたんだ

知ってしまったからこその疲労を

溺れたままの後悔を

拭うためにここにいる


私は意を決すると、玄関扉の取っ手を乱暴に開いた


「誰だ? チャイムぐらい鳴らして……」


住人である男が気づく

私は気にせず、1LDKのアパートの

部屋のインテリアに

照準を構えて、発砲する


三発の発砲音を響かせて

遅れて破砕音が鳴り響く


酒のラベルが貼ってあるボトルを

パソコンの液晶画面を

紅砂の砂時計を


壊意を持って撃ち壊す


「……っ、ぁ……!?」


男にとっては突然だったのか

絶句したまま動かない


私は小銃を構えたまま男に近づく

自分自身に近づくという

奇妙な感じに内心で苦笑しながら

至近距離まで近づいた


「……なんで……なんで、私と同じ……顔なんだ。

……助けて……助けてくれ……。

……まだ死にたくない……死にたくないんだ……」


小銃を構えての襲撃に殺害されると思ったのか

私である男は命乞いを始める


しかし、私はそれを無視する

何故なら、私の襲撃は男が持ち込んだものだから

男の存在こそ、私の襲撃理由になるからだ


「貴様は自分がやったことを知らないというつもりか

私がこの部屋に来た理由はな

罪を犯しておいて、酒に溺れるように無自覚だった過去の自分を

この小銃で撃ち殺すためだ


罪の逃亡者である自分自身を仮想断罪するため

私は小銃を取ったんだ


貴様が罪から溺れ逃れるためなら

私はその自己欺瞞から脱するために

貴様を撃ち殺しに来た


いい加減、目を覚まして

現実を見ろ! 罪を知れ! 償いの道を歩め!


この決別の銃弾に撃ち抜かれろ!」


私は男の――溺れている自分――へと

その腹に小銃の照準を合わせて

引き金を引いた


「ぐぎゃぁぁぁぁ……!?」


六連式の最後の三発が響きながら

溺れている自分の服を通して

銃弾が腹の肉をえぐり入り

赤い体液を撒き散らして

激痛を伴う死の腕に抱かせる


「今はこれで終わりだろうな

自分自身を殺すなんて言うのは、悪趣味紛いにも程がある


だが、やらなければならないことなのかも知れない」


私はそう自虐的に嗤うと、不意に即興歌を歌い始めた


「さようなら、罪に溺れた自分

さようなら、仮想断罪を受けた自分

さようなら、屍なる残滓である自分

さようなら、偽り者であった自分――」


どこか懐かしい気持ちになりながら

断罪与者である私は歩き始めた


これらは所詮、単なる幻想に過ぎない

溺れ受ける者と取り与える者との

繰り返される幻想断罪のいたちごっこ


罪を犯して逃げる過去の私と

過去の私を断罪する未来の私


現在の私はどちらにいるのか

断罪を終えた未来の私は、現在の私となるのか


それとも、新たなる罪を犯した新たなる過去の私となるのか


誰にも、自分自身にも、事実は分からないことだ


だが、嗚呼、願わくば

現在の私になったのだと祈りたい

過去の私にはならなかったのだと祈りたい


私は知っている

一歩間違えてしまえば

私の背後に広がる闇に

飢えたライオンが獲物を呑み込むように

現在の私は呑み込まれて

新たなる過去の私になってしまうことを


ゆえにこそ私は気をつけよう

ゆえにこそ私は注意深くあろう

ゆえにこそ私は見極めよう

ゆえにこそ私は自らを退けよう

ゆえにこそ私は学び取ろう


ゆえにこそ私は――


《終》

作品モチーフはノラガミのOPである「午後の待ち合わせ」?です。


インスピレーション通りになってしまいましたけど。

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