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ハロウィン

ジャック・オ・ランタンが主役の物語です。

 ジャック・オ・ランタンの詩


それは、天国はもちろん地獄にすらも

行けることは叶わない男の魂の名


生前に犯した罪は底知れず

地獄に向かうが相応しい

なのに、彼は地獄にいない

迎えの悪魔を騙したから

彼は地獄に墜ちなかった


しかし、天使たちは知っていた

彼が悪魔を騙したことを

悪魔を騙した男でも

真実を視る天使たちには

騙すことは叶わない


ゆえに、ジャック・オ・ランタンは

死後の長い永いその時を

消えない蝋燭が閉まったカボチャ頭と

ボロボロのまま朽ちない黒マントに取り憑いて

地上を彷徨い続けている――


夜の森を出歩いてはならないよ

カボチャのお化けが迷わせるから

夜の森で迷ってしまえば

夜の森で眠ってしまえば


魔物たちが黙っていないから

生きて、誰とも会えないから

別れたくなければ、出歩いてはならないよ


ジャック・オ・ランタンのカボチャの灯火は

迷い人を誘い出す灯火なのだから


灯火のいらない朝の息吹が来るまで

家の中で眠りなさい

安らぎの夢を味わいなさい

暖かな心地よさの中で

目覚める時まで――


ある夜の時のこと

天使たちの一人が

ジャック・オ・ランタンに伝言を伝えた

天国の主である神様が

天使を通して伝えた一つの伝言を


『地獄も天国も行けぬ哀れな魂よ

孤独に地上で生きるは辛かろう

されど、罪深いお前は

底知れぬ業のゆえに

煉獄に向かうことも許されない

半してなおも、罪が深いがゆえに


そんなお前に救済の余地を与えよう


魂を喰らう悪しき霊たちから

地上を彷徨う子供の霊を救い続けよ

生前のお前が犯した罪の

数倍の数の子供の霊たちを

お前の手で救い続けよ


そのための良心を与えよう

罪深いままの邪悪な心では

子供の霊たちを救うことはできないからな


子供の霊たちが臆さないように

良心をお前に与えよう』


天使たちの一人が

伝言を語り終えると

天から差した

一筋の柔らかな光が

ジャック・オ・ランタンの身体を包み込んだ


それは、浄化の光と呼ばれる光

罪人を洗い清める煉獄山の頂きにしか

差すことの無い光


その光に包まれたジャック・オ・ランタンは

与えられた良心のゆえに

夜の森で迷い込んだ人たちを

迷わせ続けたことを悔やみ始めた

魂すらも縛る良心の呵責に

ジャック・オ・ランタンは後悔の念に駆られた


そして、迷い人を誘った罪を償うために

ジャック・オ・ランタンは決意した


もう二度と、夜の森に迷い込んだ人たちを

迷わせ続けることはやめようと

自らの灯火で、正しき道へと案内しようと


良心が導いた道標に従うように――


天使たちによる神様からの伝言を聞いてからのジャック・オ・ランタンは

夜の森で泣きながら彷徨っていた

子供の霊を保護し

時には、魂を喰らう悪しき霊とも戦い

幾多の子供の霊を救ってきた


罪を償うために救済している

ジャック・オ・ランタンを見て


子供の霊たちを守る

ジャック・オ・ランタンの良心を感じて


子供の霊たちは安堵を覚えた


そして、時が満ちて

天使からの迎えが来る


天国へと向かう子供たちとの別れは

切ないものであったが

ジャック・オ・ランタンは子供たちのために祈る


どうか、次の生では長く生きられますように

途中で生命を落とすことがないように

そして、かつての自分のような罪深き悪人にならないように、と――


新しく生まれてきた子供たちは歌った

ジャック・オ・ランタンに救われた思いは

魂に残っていたから

ジャック・オ・ランタンのために

子供たちは新たな歌を紡ぎ出した


夜の森で迷ったなら

ジャック・オ・ランタンの灯火を見つけて

悪しき魔物に出会ったなら

ジャック・オ・ランタンを待ち望もう


カボチャの頭と黒いマントを見かけたら

悪しき魔物は退いて

救いの保護が得られるから


天使様が迎えに来るまで

ジャック・オ・ランタンが守ってくれる

優しい優しいジャック・オ・ランタン


夜の森の優しい守護者

子供の霊たちの救済者


ジャック・オ・ランタンに感謝しよう

新たなる生に導いてくれた

守り手であるジャック・オ・ランタンに――


ジャック・オ・ランタンが神様から与えられた良心を得てから

子供の霊たちの守り手になってから

数百年の時が経た


ある時、子供の霊たちが

天使たちに連れられて

天国へ向かったあとのこと


天使たちの一人が

子供の霊たちとすれ違うように

ジャック・オ・ランタンのもとへと降りて行った


それは、神様からの伝言を伝えるため

夜の森へと降りて行ったのだ


『ジャック・オ・ランタン

お前はこれまでの間

与えられた良心の働きに従って

子供の霊たちを救い守ってきた


お前の犯してきた罪の

数倍もの数の子供の霊たちを

確かに救ってきたのだ


ゆえにお前の罪の償いは

今、終えられたのだ


お前が望むならば、お前を天国へ迎え入れよう


されどまた、お前が望むならば

引き続きこの地上で、夜の森で

子供の霊たちを救い守り

天国へと導いていくが良い


それはお前が選ぶ

お前自身の決定だ


よくよく考えて選ぶがいい』


天使は神様からの伝言を

ジャック・オ・ランタンにそう告げると

ジャック・オ・ランタンの返事を待つかのように

月明かりを背にして佇んだ


逡巡の時がジャック・オ・ランタンに訪れたが

一駆けの夜風が吹くまで経ってから

ジャック・オ・ランタンは自らの内で駆け巡った結論を下した


それは、地上に残るという選択

天国に迎えば、罪無き無垢なる人間として

転生をすることができるだろう

しかし、数百年という歳月は

強く深い愛着を抱くのに

十分過ぎるほどに十分な時なのだ


子供の霊たちを守るなかで生まれた

純粋な無垢なる親愛から

離れることは

ジャック・オ・ランタンにはできなかったのだから


ジャック・オ・ランタンの決定を聞いた天使は

ジャック・オ・ランタンが良い決定を下したことに

喜びの笑みを浮かべ


別れと祝福を告げて

天国へと去っていった


それからしばらくして

夜の地上を照らす月を

雲が隠してしまった


そして、ジャック・オ・ランタンは気配を感じ取る


子供の霊たちを喰らおうとする

悪しき魔物の気配を


ジャック・オ・ランタンは迅速に動き出す

月明かり隠された夜の森を

転ぶことなく駆け出す


救済者として守り手として

新しい子供の霊を危機から救い出し

保護するために――


《終》

昨年書いたジャック・オ・ランタンとは違いますので。

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